日本語スルー

6月11日(水)

初級クラスで、昨日の宿題を集めました。教科書の内容に合わせたテーマについて、教科書で勉強した文法や語彙を使って10行程度の文章を書いてくるというものでした。出席者全員が提出しましたから、「このクラスはみんないい学生ですね」なんてほめながら学生を調子に乗せ、授業も順調に終わりました。

職員室に戻って内容をチェックしてみると、大変なことになっていました。半数近くの学生が、テーマを無視していたのです。主に成績中位から下位グループの学生たちでした。日本語で書かれていたテーマが読み取れなかったに違いありません。その下に学生たちの母語で書いてあった、“教科書で勉強した文法や語彙を使って…”というあたりは守られていました。

テーマの方が、注意書きよりも3倍ぐらい大きな字だったのですが、レベル1の学生たちには日本語よりも母語に視線が吸い取られてしまったのです。レベル1とはいえ、3か月近く日本語を勉強してきていますから、そこそこ日本語に慣れてきているはずです。いや、授業中には多少複雑な指示も聞き取ってその通りに動けるようになりました。それでもこういうことが起きてしまうのです。

母語の力って強いんですね。そして、その強力な母語の力を振り払って日本語に注意を向けられた学生とそれができなかった学生の境界線が、ちょうどこのクラスのど真ん中を走っていたことにも驚かされました。こういうのをさらに追究していくと、第二言語習得過程に関して興味深いデータが得られるのかもしれませんが、それは私の手に余る仕事です。

的外れな文章を書いてきた学生には、明日の先生から書き直しを命じてもらうことにしました。今度は、こういう行き違いが生じないような形で。

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