Monthly Archives: 4月 2015

学生気質

4月4日(土)

今年は空海が高野山を開いてから1200年になる記念の年です。そのため、高野山では秘仏が公開されるなど、いろいろな催しが行われます。また、春日大社では、ふだんは一般人は入れないご本殿に入ることができます。20年に1度の式年造替のため、神様が一時的に移されるからです。

何でこんなことを書き始めたかというと、今日は新入生のレベルテストがあったからです。その試験監督をしたのですが、レベルテストの試験監督は最初は何かと忙しいですが、最後のほうになるとすることがなくなり、連休の予定でも考えていないと眠くなってしまうのです。

最近の新入生は品がよくなり、レベルテストのときに暴れだしたり不正を働こうとしたりする学生がほとんどいなくなりました。挙動不審の学生も「いないわけではない」程度ですから、最初の科目のうちにチェックが済んでしまいます。今日、私がチェックしたのは2人だけでした。だから、最後の時間は根を詰めて見張る必要もなく、連休の計画立案にいそしんでしまったというわけです。

何で品がよくなったかというと、もちろんKCPが現地である程度入学志望者を選別していることもありますが、最大の理由は学生たちの国が豊かになったからでしょう。「衣食足りて礼節を知る」ですよ。最近の日本人のほうがよっぽど危ないところがありますね。

でも、入学してからはこれが必ずしもいい方向に働かないんですね。甘やかされてわがままという性格を遺憾なく発揮する学生が多くて…。自分の思い通りにことを進めるには手段を選ばないとなると、はなはだしく厄介です。そこまではレベルテストではなかなか見抜けないんですね。でも、去年は私のチェックした学生がものの見事に危ない方向に走ってしまった例がありましたから、今日の学生もちょっと心配です。

私がKCPに勤め始めた頃に比べると、学生の国の経済状況は大きく変化しました。端的に言えば豊かになり、我々教職員よりリッチな暮らしをしている学生も珍しくなくなりました。しかし、豊かさがいい面に現れている学生と悪い方向に働いている学生との差が激しくなったとも思います。

来週の月曜日は入学式、水曜日から授業です。連休の予定を考えていたわずかな時間は、嵐の前の静けさに過ぎません。

もう忘れちゃった?

4月3日(金)

初級のDさんは期末テストの文法と漢字の点数がちょっと足りなかったので、先週末、昨日来るようにと呼び出しをかけていました。電話を持っていないので、メールを送っておきました。しかし、来ませんでした。メールを見ていなかったそうです。寮の職員に電話を掛けて呼んでもらい、ようやく連絡がつきました。

そのDさん、今日の午後学校へ来ました。期末テストの範囲をしっかり勉強しておくようにと、先週末のメールには書いておいたのですが、それが伝わったのが昨日とあっては、十分な勉強をしてきたかどうかは怪しいものです。

その悪い予感が的中し、Dさんに確認テストを受けさせましたが、成績が下がってしまいました。期末テストが終わってから1週間ちょっと、どうやら遊びまくっていたようです。その成績が下がった答案用紙を目の前にしても、どこを直したらいいのかよくわからない様子でした。教科書を見ても、全部を直しきることはできませんでした。

そりゃそうですよ。初級じゃまだ頭に日本語の体系が定着していませんからね。Dさんは授業中でも母語を使うことがありましたから、特にそうでしょう。そこへもってきてメールにも目を通さないほど遊んじゃったら、なんにも残っちゃいませんよ。学期休み中に一時帰国した学生が、休み明けに日本語が出てこなくて、本人も教師も呆然としてしまうのと同じです。

語学は反復練習が大切です。頭や耳や目にある程度体系ができあがれば、多少のブランクならどうにかなるでしょう。でも、その手前の学習者にとっては、ちょっとの油断が「一歩前進、二歩後退」になりかねません。いや、「ふり出しに戻る」っていう例もいくつも見てきました。

Dさんには学期が始まるまでの宿題を出しました。あまりの量の多さに顔を引きつらせていましたが、それぐらいあれば遊ばずに毎日日本語脳を鍛えることになるでしょう。さて、新学期、Dさんはどんな顔で登校してくるでしょうか。

元日

4月1日(水)

今日からKCPに新人の職員・Oさんが入りました。KCPの教職員で初めての平成生まれです。学歴が昭和で完結してしまっている私なんかからすると、平成元年なんてほんに昨日ですよ。学生はもうだいぶ前から平成生まれが入っていて、今では昭和生まれは貴重な存在です。でも職員ですからね。これから仕事を頼んだり頼まれたりする間柄ですからね。感慨もひとしおと言うか、新鮮な驚きがあります。

Oさんは大学を出た後アメリカで働いていて、英語はペラペラだとか。今日は初日で英語を使う場面はありませんでしたが、そのうち実力を遺憾なく発揮するところが見られることでしょう。KCPの場合、英語が流暢なだけでは勤まりません。学生の気持ちをくみ取り、学生の心に訴えるコミュニケーションが求められます。英語に血が通っていなければなりません。

お昼過ぎにOさんから挨拶のメールが。簡にして要を得たメールで、しっかりした人柄が感じられました。私がKCPに入ったときはまだメールが普及しておらず、みんなの前でまとめて挨拶して終わりだったような気がします。もしメールがあったら、これだけの文章が書けただろうかと思いました。

Oさんのメールに感心するちょっと前に、来週月曜の入学式で在校生代表として挨拶することになっているCさんが原稿を持って来ました。何か所か手を加えましたが、こちらもまた感心させられる内容でした。新入生には翻訳文を通しての訴えとなりますが、ぜひとも耳を傾けてもらいたい話です。

OさんとCさん、今日は2人の小気味いい文章に触れられました。おかげで、2015年度の元日から、幸先のいいスタートが切れました。