感動を与える

10月13日(火)

いろんな事情があって、午前中は最上級クラスで始業日オリエンテーションをし、午後は日本語ゼロの新入生のクラスで、学生にとっては初めての日本語の授業を担当しました。最上級クラスで葉「君たちはKCPの良心だ」と語り、日本語ゼロクラスではゼスチャーを交えて自己紹介を教えました。私は慣れもありますから最上級クラスのほうが楽ですが、ゼロクラスの最初の授業というのも好きです。

「こんにちは」と言いながら教室に入った時、Tさんは不安げな顔つきで上目遣いで私を見ていました。自己紹介のパターンを教え始めて時は、明らかに何もわかっておらず、顔つきがどんどん暗くなっていきました。困ったなと思いながらも、わかっていそうな学生に自己紹介をやらせながらTさんを指名すると、たどたどしさは残るものの、きちんと自己紹介ができたではありませんか。

教えたばかりの教室用語「いいです」で答えてあげると、Tさんの顔つきがとたんに明るくなりました。これで自信が付いたのか、次のひらがなの導入もスムーズにいき、「おはようございます」なんて長音も、「きゅうじゅうきゅう」なんて拗音も、きちんと書き取れていました。何より、何でも吸収しようというTさんの瞳が、朝からの授業でいい加減疲れてきた私を元気付けてくれました。

Tさんたちは、今学期中に、助詞、動詞、形容詞、~は~が文、て形、ない形、辞書形、た形…と勉強していきます。それゆえ、自己紹介ができたからって、明るい未来が約束されているわけではありません。でも、Tさんは自己紹介がわかった時、できた時、間違いなく感動を覚えたはずです。そんな時、人に感動を与えられる職業ってすばらしいなと思います。これが、ゼロクラスの最初の授業の醍醐味なのです。

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