Category Archives: 成績

質問

11月14日(月)

「昨日のEJUはどうでしたか、Pさん」と、クラスの中で弁が立つPさんに聞きました。EJUの様子を詳しく語ってもらおうと思ったのですが、「まあまあです」とはぐらかされてしまいました。Pさんならそんなかわし方もできるということを見落としていた私の負けです。Yさんみたいな朴訥な学生のほうがかえってしゃべってくれたかもしれません。他のクラスの学生に聞いたところ、数学が難しかったと言っていました。

昨日はEJUでしたが、明日は中間テストです。学生にとっては「前門の虎、後門の狼」みたいな感じかもしれません。このクラスは文法テストの出来があまり芳しくありませんから、文法の復習をすることにしました。今学期勉強した内容をかいつまんで私がもう一度解説するというのは、あまりに親切すぎます。ですから、「まあまあです」の敵を取るつもりも加わり、「今学期勉強したところで質問がある人、どうぞ」と聞いてみました。ちょっと意地悪かなと思いつつも、だれが手をあげるだろうかという興味のほうが勝りました。

しばらくの沈黙ののち、「先生」と遠慮がちに質問したのはKさんでした。Kさんは、去年、レベル1で教えた学生です。中級で1回つまずいて、レベル1で同じクラスだった学生より1つ下のレベルで勉強しています。先学期の先生からの引継ぎでも、“できる”グループには入っていませんでした。「まあまあです」なんて気の利いた答え方は、無理でしょうね。しかし、休まずに学校に通い、真剣に授業を受けるKさんは、今までの蓄積がかなりあります。その蓄積がものを言い始めたのではないでしょうか。Kさんの質問は、実はみんなの疑問であり、私の板書をみんなが書き写していました。

まあ、昨日までEJUの勉強で、文法の復習にまで手が回らなかったということにしておいてあげましょう。でも、テストの採点は、そんなの関係なしですからね。

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奨学金がもらえない

2月15日(火)

まだ試験を受けている学生がいる一方で、すでに合格を決めた学生もいます。そんな学生たちを対象に、JASSOが奨学金受給者の募集をしています。何名かが応募しましたが、応募者全員が奨学金をもらえるわけではありません。まず、EJUで決められた科目を受けているか、そして、出席率もそうですが、KCPでの成績も基準を上回っていなければなりません。

調べてみると、Yさんだけが基準に届きませんでした。Yさんは先々学期受け持ちました。悪い学生ではないのですが、でも、それ以上でもありません。授業に集中していないのか、指名するととんちんかんな答えをすることが時たまありました。どうやら、自分はできると思っていたようです。学校の勉強なんか、試験の直前にまとめてやれば合格点ぐらいは取れる――と思っていた節も感じられました。

ところが、実際はそうではなく、平常テストでは不合格点も取ったし、作文も日本語教師だからどうにか読み取れるという程度だったし、結局はお情け進級組の1人でした。それでも志望校に合格したのは立派ですが、合格した後、ねじが緩みまくっているという報告を、先学期の担当の先生から聞いています。

JASSOの成績基準はそんなに厳しくはありませんが、それにすら引っ掛からなかったという点に心配が募ります。今学期はオンライン授業のため全然顔を見ていませんが、ちゃんと勉強しているのでしょうか。緩みっぱなしだと、「進学はしたけれど…」ということにもなりかねません。

もう間もなく、奨学金は受けられないという通知がYさんの元に届くでしょう。これを単にお金の問題ではなく、進学後にどれだけ実のある勉強ができるかという問題に置き換えて考えてもらいたいです。

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合格者1名かも

11月2日(火)

「君たちは予習課題もしないし、宿題もしない。だから、文が作れないんです。文が作れなければ、テストで点が取れない。問題3、短文作成の問題を見てください。5点×10問で50点です。この問題ができなかったら絶対合格なんかできません。O先生はやさしく採点なさいました。私が採点したら、その点数より5点か10点悪いです。そうすると、70点ぎりぎりで合格した人は不合格になります。80点以上取った学生は、このクラス、1人だから、合格者は1人しかいないということになる。ということは、君たち、このレベルで勉強続ける意味があると思う?」

…と、実際にはもう少々激烈な言葉で学生たちに反省を促しました。テストのフィードバックの時間でしたが、テストの解説以前のところで説教となってしまいました。なにがしか答えを書いて×になるならともかく、何も書かないというのは試合放棄、敵前逃亡です。私たちも口を酸っぱくしてきたつもりですが、テストの成績を見る限り、まだまだ足りなかったのでしょう。

私が受け持った先学期の同じレベルのクラスも、これほどではないにせよ、けっこう悲惨な状況でした。しかし、先学期のクラスはそこからV字回復しました。今学期も持ち上がりで何人かクラスで見ていますが、学生の日本語には自信が満ちています。今学期の学生たちも、何とかそこまで引っ張り上げたいのですが、果たしてできるでしょうか。

最大の心配は、このクラスの学生たち、「書く」ことがあまり好きではないらしいという点です。ノートを取ろうとしない学生が、今まで受け持ったクラスに比べて多いのです。板書したことすらきちんと書き留めているか怪しいものです。ましてや、口で言っただけの話なんて、記録されるわけがありません。O先生はそういう指導を厳しくなさっていますが、定着したとは言い難いのが現状です。

中間テストまでちょうど2週間です。今から手を打って動かないと、枕を並べて討ち死にという図も見えてきてしまいます。

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戦略

10月16日(土)

M先生から、今学期受け持つことになったOさんが志望校として超難関大学ばかり挙げているけれども、どうしたらいいだろうかと相談を受けました。Oさんは、先学期、私のクラスの学生でした。まじめでおとなしい学生で、成績はクラスの上位でした。6月のEJUでは上級の学生と比べても遜色のない成績でした。しかし、その成績をもってしても、Oさんが受けようとしている大学では、勝ち目の薄い戦いとなりそうです。

まず、Oさんはどこまで本気でこれら超難関校を志望校としているかです。何が何でもこのうちのどこかに入りたいというのなら、これ以外の大学には絶対行きたくないというのなら、玉砕覚悟で受験するほかありません。来年3月で受験が終わりではなく、長期戦に及ぶかもしれません。2浪か3浪してもいいのなら、絶対に手が届かないとも限りません。

もう少し事態を俯瞰して、自分の将来を支える学問をするために留学したのだと考えるなら、超難関大学に拘泥しなくてもいいはずです。将来Oさんが帰国して就職するときに、日本の超有名校の卒業証書が必要だというのなら、石にかじりついてでもそこに入らなければなりません。しかし、それはレアケースではないでしょうか。

大学研究が進んでいないとも考えられます。Oさんの志望校は誰もが憧れる大学ばかりです。Oさんの勉強したいことが勉強できる大学は、その大学だけではないはずです。調べていけば、掘り出し物の大学が現れるに違いありません。名前を聞いたことがある大学を志望校にしているだけだとしたら、たとえ学力があっても、面接は通りません。

1年前にOさんと同じような志望校を言っていたSさんやTさんは、すでに勝ち目のある戦いに切り替えています。Oさんも、今ならぎりぎり間に合いますよ。

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忙しい朝

9月25日(土)

Yさんは、今週行った受験講座の説明会に、都合が悪くて参加できませんでした。「土曜日の9時から」と約束したので、9時にZOOMを立ち上げて待っていました。9時5分になっても10分になってもYさんは姿を現しませんでした。そんなこともあろうかとお仕事を持って行ったので、それをしながらずっと待っていました。

10時からZさんとの約束がありますから、9時40分ごろ、ついにあきらめました。そのZさん、何を勘違いしたのか、9時から私がZOOMを開くのを待っていたそうです。こんなことならZさんを先にすればよかったなあと思いましたが、後の祭りです。

Zさんは文法の再試験です。こちらも、平日は都合が悪いとかで、土曜日になりました。まず、どこがどうして悪いのか教えてくれというので、なぜZさんの答えでは間違っているのか説明しました。Zさんの質問のレベルがお寒い感じなのが気になりましたが、再試の問題を送ってやらせました。本来の試験時間を若干オーバーしましたが、そこは大目に見ることにしました。再試は落とすための試験ではありませんから。

今、結果を知りたいというので、また、期末テストまで間がありませんから、すぐに採点しました。1回目よりは点が伸びましたが、合格点には2点足りませんでした。試験時間に目をつぶってやったのですから、この2点は負けるわけにはいきません。考える時間を長く与えたのに所定の点数が取れなかったのですから、情けのかけようがありません。

それでもZさん、「同じ言葉を使ってはいけない」という条件を見落としていたとか、こういう意味だと勘違いしていたとか、言い訳をしてきました。ばっさり切り捨てました。挙句の果てに、「先生、もう1つ再試があります」といって、別の不合格のテストの解説を求め、月曜日と火曜日は忙しいからすぐに再試をさせてくれと訴えてきました。間違えたところを自分でもう一度教科書やノートを見て十分理解した上で受けてこそ、再試の意義があるのです。Zさんのやり方じゃあ、記憶力テストみたいなものです。

やらせてみました。制限時間で提出させようとすると、最後の確認をしたいと言って、すぐには出しませんでした。すぐに採点してくれと言ってきたので、「Zさんだけのためにどれだけ時間を使ったと思ってるんですか」と言ったら、「はい、わかりました」と引き下がりました。

その後、Zさんのテストの採点をしました。合格点は取れていましたが、怪しい答えがいくつかありました。Yさんからは、お詫びのメールが届いていました。

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+180の夢

8月31日(火)

夏休みを挟んだため遅くなってしまいましたが、毎学期恒例の、中間テスト後の面接が始まりました。皮切りは、理科系志望ということもあり、Hさんでした。

HさんはS大学を第一志望としています。理工系学部を狙っている学生だれもが憧れる大学ですから、そう簡単に入れてくれません。Hさんも、6月のEJUの結果では、日本語+数学+理科で100~150点は足りないことはわかっています。しかし、11月にはそれを上回る180点ぐらいの上積みができると思っています。

根拠を聞くと、6月は全然勉強しないで受けたけど、11月はしっかり勉強してから受けるからそのぐらいの点は取れるだろうという程度です。こんな発想では、50点も伸びないでしょう。

更に困ったことに、S大学の滑り止めを全然考えていません。S大学を受けるのは自由ですが、S大学しか受けないとなると、来年の年明け早々、行き先が決まらなくて大慌てすることが目に見えています。そういうことを説いても、Hさんは動ずるところが全くありません。

しかし、Hさんは発話ができません。このやり取りだって、相手が私だからこそどうにか成り立ったのであり、普通の日本人は絶対に理解できないでしょう。もちろんS大学の面接官がHさんの気持ちをくみ取ってくれようはずがありません。面接や口頭試問とはどういうものかを話したら、聴解力にも自信がないHさん、さすがに不安を感じ始めたようでした。そして最後には、渋々とですが、滑り止めを考えてみると言いました。

緊急事態宣言中でも、受験シーズンは粛々と近づいてきています。

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軌道修正

6月15日(火)

私が教えている初級のオンラインクラスは、毎日宿題があります。一部は答えも送って、自分で答え合わせをするようにしています。そんなことをしたら答えを丸写しして提出するんじゃないかと思った方、KCPの学生の心はそこまで汚れてはいません。間違えたところは自分で赤で×を付けて、それを写真に撮って送ってきます。

しかし、ちゃんと直せているかとなると、個人差があります。成績のいい学生がきちんと直せて、芳しくない学生が間違い放置という図式は、容易に想像できると思います。問題をやってみてここはあやしいと思ったところを重点的に見て、間違いを見つけたらしっかり訂正する――ことができれば、自分の足で階段を上っていけます。それに対して、問題を解くことで精根尽きてしまうような学生は、異国の字どうしを引き比べて間違いを見つけるなど、至難の業です。

Yさんが提出した宿題には、大きなチェックマークがついていました。でも、ざっと眺めただけで間違いが3つ。うち1つは許してあげられないでもありませんが、ほかはちょっとねえ。最初の問題はすべての間違いが直してありましたが、その間違いが多くてうんざりしてしまったのでしょうか。

Mさんも間違いがけっこうありましたが、すべて直してありました。それにとどまらず、どうしてこの答えは不正解なのかという質問までありました。Mさんは今までもこういうパターンでした。間違いを自分で直し、納得がいかないところや疑問点を決して残しません。

気が付けば、期末テストまでちょうど1週間です。今学期学んだことをしっかり身につけて、すばらしい成績を挙げ、気持ちよく進級してもらいたいです。

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インクが減らない

6月14日(月)

今学期は、赤のボールペンのインクがさっぱり減りません。いつもの学期なら、テストの採点をはじめ、例文や作文の添削、宿題のチェック、学生からの質問への回答など、あっという間にインクがなくなっていきます。しかし、オンライン授業ばかりの今学期はそのどれもがなく、今月中にインクを使い切る見込みは全くありません。経済的で何よりです。

初級のクラスで、辞書形のテストがありました。formに書かせる(打たせる)ので、インクは1滴も減りません。採点も、まずはコンピューターがしてくれますから、私は「た べる」などのように不要なスペースがあるために不正解にされてしまったような例を救い上げるだけです。

要するに、うっかりスペースキーに触れてしまったとかという、紙のテストではありえないような間違いはなかったことにしてあげようという趣旨です。しかし、「もちます」の辞書形を「まつ」としてしまったのはどうでしょう。私のような老眼には、問題の字が小さいと「も」と「ま」を混同することもあり得ます。しかし、20歳前後の若い目にはそんなことはないでしょう。学生たちがローマ字入力ではなくひらがな入力をしているとすると、「も」と「ま」のキーは斜め上下の位置関係ですから、ミスタッチの可能性が否定できません。

でも、「た べる」は誤解を与えるおそれが非常に小さいでしょうが、「もつ/まつ」は致命的な誤解を与えかねません。ですから、こういうミスタッチはするなという意味でも、Xにします。

そして、そういう間違いを犯した学生は、試験時間を半分ぐらい余して答案用紙を送信しています。ろくに答えのチェックをせずに提出したのです。それに対して、クラスで最優秀のCさんは、一番あとに提出して満点です。

こういう分析が即座にできるところも、オンラインテストのいいところです。

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自信過剰

6月2日(水)

初級クラスで月曜日にした漢字テストの答案を改めてじっくり見直しました。明日返却ですから、採点チェックも兼ねて、各学生がどこを間違えたか、クラス全体でどんな傾向があるかを見ました。

Mさんは、文法などはよくできる学生で、発言も多いです。しかし、字はとても雑で、学期の最初のひらがな・カタカナを覚えるところでは大変苦労しました。私も他の先生方も、Mさんの字を徹底的に直しました。その甲斐あってか、今回の漢字テストでは時間をかけて丁寧に書いたことがわかる字でした。この努力は、何らかの形で評価したいです。

JさんとFさんは順当に100点。しかも字がきれいですから、言うことはありません。授業中いちばん積極的なOさんの100点もなるほどというところですが、いつもあまりパッとしないXさんやBさんも100点というのは、失礼ながら、ちょっと意外でした。漢字は自信を持っているのかな。逆に、漢字が苦手そうなのが、HさんとWさんです。何らかの手当をしなければならないかもしれません。

答え方が雑で減点が重なったのが、Lさん、Gさん、Sさんです。送り仮名を書かなかったり、楷書で書かずにXになったり、点画が微妙に違っていたりなどしていました。結果的に空欄が多かったHさんやWさんとあまり変わらない成績になってしまいました。このテスト結果を返されても、本人たちは、この間違いは大した問題ではないと思うでしょう。でも、大した問題なのです。こういういい加減な字を書き続けると、進学の際に困ります。願書や志望理由書など、入試以前の段階で身動きが取れなくなることも考えられます。

こうなると、漢字に自信を持っていない学生の方が、慎重に事を進めるでしょうから、かえって有利かもしれません。不穏な芽は、初級のうちに摘んでおきたいです。

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実力がある

5月26日(水)

Sさんは、レベル1の学生ですが、自分ではレベル2ぐらいの実力があると思っています。だから、レベル1の授業は気合が入らないと言います。こういう学生は、概して自分のできないことには目をつぶっています。できることのみを主張して、自分はこんなにできるのだからレベル1じゃないとかと訴えます。

Sさんもそのたぐいで、EJUの練習問題の読解は80%ぐらい解けると言います。聴解はそれよりも難しく感じていると言っていました。たとえ読解80%が本当だとしても、聴解が難しいということは、正解率40%ぐらいでしょうか。ということは、全体の正解率は60%程度、EJUの点数でいうと240点ぐらいでしょうか。“80%”が背伸びした正解率だとすると、実際には200点をやっと超える程度かもしれません。レベル1としては悪くはありませんが、この成績ではSさんが思い描いているであろうと考えられる、いわゆる“いい大学”には遠く及びません。

Sさんが提出した宿題やテストを見ると、Sさんが聴解が弱いと言ったのは事実です。文が正確に聞き取れておらず、だから受け答えがまるっきり方向違いです。また、筆記にしても、問題をよく読まずに答えている節が見られ、これまた質問に対する答えになっていません(もし、問題をきちんと読んでこの答えなら、救いようがありません)。また、文法的には合っていても、必要最低限の答えで、できる学生の答えに比べると見劣りがします。

そういうことを、具体例を挙げて指摘し、今なすべきことを示したら、今すぐ上のレベルのクラスに入りたいとは言わなくなりました。その後の授業でも、真面目に課題に取り組んでいたようですから、思ったより見込みがありそうです。これが長続きすれば、11月のEJUまでにはしかるべき成績が取れる実力が付くかもしれません。

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