明日、試験

10月24日(土)

今週から受験講座や選択授業が始まり、また、クラブ活動も再開し、今学期も定常運転に入りつつあります。10月期はEJUとJLPTがあり、大学・専門学校の受験シーズンでもあり、上級ほど落ち着かない雰囲気があります。私のパソコンにも志望理由書を直してくれとか、面接の受け答えはこれでいいかとかという学生からのメールが連日入ってきます。今学期のうちに行き先が決まってしまえば、最後の学期は日本語の勉強が楽しめることでしょう。

夏の入り口ぐらいに始まった日本語教師養成講座は、今日が私の担当講義の最終回。そして、明日が日本語教育能力検定試験です。それに向けての対策をびしびしやったわけではありませんから、合格の見込みがどのくらいかは見当がつきません。でも、受講初期に比べると、確実に日本語教師の発想ができるようになっていると思います。講義の中での私の質問に対して、最初のころは見当はずれな答えばかりでしたが、最近はかなりレベルの高い答えが出てくるようになりました。文法や語彙などで議論ができるようになりました。

それに比べると、私のところに入ってくる志望理由書などは、もう少し歯ごたえがほしいところです。進歩してないわけじゃありませんが、もっと大またで歩いてもらいたいところです。1段飛ばしで階段を駆け上がるくらいの勢いが感じられないところがじれったいです。受験講座で理科の過去問も解説を聞いている学生たちも、うなずくポイントがちょいと基礎側に寄ってるんじゃないかな。

世間では学問の秋と言いつつも、日本語学校にとっては受験の秋です。受験生の頭の中を熟成する時間がほしいですが、戦場に送り出さなければなりません。まずは、明日ですね。

第2志望

10月23日(木)

FさんがK大学に受かりました。第1志望の学科に落ちて、第2志望の学科だとは言っていましたが、声からも表情からも一安心という穏やかさと喜びが垣間見えました。確かに第1志望ではありませんが、1年生の時に本気で勉強して好成績を挙げれば転学科という目も出てくるかもしれません。また、そうしているうちに、その学科の学問に魅力を感じるようにならないとも限りません。

外国人留学生の場合、面接で志望動機や将来設計をかなり詳しく聞かれることが多いですから、必然的にそういうことについて深く考えるようになり、それゆえ、どうしても第1志望にっていう気持ちにもなります。しかし、その留学生より1つか2つ下の日本人の高校生は、大学入試の時点でそこまで厳しく追及されることはありません。だから、第2志望でもまあいいかって気持ちのところもあるでしょう。

確固たる志望動機や将来設計を持つことは大切ですが、それに縛られちゃいけません。自分が描いた絵図面以外の将来像はない、なんてことはありません。人間万事塞翁が馬ですよ。Fさんも、ゆったりと現実を受け止めたほうがいいです。目の前の事態のいい面を見つめることも必要です。

Gさんは少し遅れて進学コースに入学しました。だから、昼休みに受験講座の説明をしました。話を聞くと、数学ができないから文系に進みたいということだけは決めていましたが、そこ止まりでした。なんにも考えないで日本へ来ちゃったんだなと思いました。同時に、日本の高校生もこんなもんなんだろうなとも。

日本の高校生は大学に入ってから将来を考えても間に合いますが、留学生は大学に入る前にその部分をかたらねばなりません。Gさんをちょうど1年後の入試シーズンまでにFさん並みに鍛えることができるんだろうかって考えると、肩が重くなりました。

切りますか

10月22日(木)

Kさんは先学期末の受験講座説明会に出席し、申込用紙をもらっていました。でも、締切日までに申し込むのを忘れ、今日になって申し込んでもいいかと聞いてきました。

大学なら、履修登録締切日をすぎたら、絶対受け付けてもらえません。だから「ダメ」とはねつけることもできるのですが、ここは何かと日本語力に問題のある人たちがその問題をなくしていこうと勉強している学校ですから、そこまで冷たくしてしまうと、意欲のある学生から勉強するチャンスを奪ってしまいかねません。

かといって、学生の希望を何でも聞いていたら、かえって学生のためになりません。期日なんて守らなくても何とかなるって思うようになったら、進学や就職してからうんと痛い目に遭うことは明らかです。

こういう場合は、まず、本人の意図を確認します。Kさんは来春専門学校に入りたいといいます。とすると、受験講座じゃありません。Kさんと同期の学生たちは2017年の大学進学を目指していますから、Kさんがそういう学生向けの授業を受けても、あまりご利益はなさそうです。そういうことを踏まえて、Kさんには受験講座は受けなくてもいいというアドバイスをしました。そして、専門学校に出願したら必要となる面接の準備をしておくよう勧めました。

労働生産性って観点からすると、実に非効率な働き方です。でも、Kさんの満足げな後姿を見送ると、こういう仕事が私に与えられた仕事なんだろうなと思います。

ノートを取らせる

10月21日(水)

選択授業が始まりました。今学期は、また、身近な科学を担当します。水曜日は聴解関係の選択授業ということなので、単に私がしゃべるのではなく、ノートを取らせてそのノートを提出してもらうことにしました。大学や大学院に進学したら、教授の講義を聴いて、要点をノートしなければならないのですから、その練習です。

授業が終わって、そのノートを集め、点検してみると、まず、90分ノートを取り続けるのは大変らしく、中だるみが見られる学生が数名。パワーポイントをそのまま写そうとして失敗していたり、要点じゃないところを写していたりというのも数名。本人にはわかるのかもしれませんが、私には判読不能な地の学生が1名、初めから全くノートを取らなかったのが1名。その一方で、実にポイントを押さえたノートを取っている学生、絵入りで見た目もわかりやすくしている学生、明らかに読みやすさを意識しながらまとめている学生など、進学先でも十分にやっていけそうなノートの学生もいました。日本語力は同じぐらいなんだけど、ずいぶん差がつくものだと思いました。

きれいなノートの代表はOさん。美術系の大学進学が決まっているくらいですから、ノートにもデザイン性が感じられます。ノートの落書きも芸術的で、感心させられました。要点をとらえたノートの代表はLさん。私自身が自分の話の要点を再確認させられるくらいでした。でも、Lさんは自分の考えを作文にすることが苦手です。情報を受信する力だけでなく、発信する力もつけていってもらいたいです。

今学期の身近な科学はこんな調子でやっていきます。学生に、つまらなすぎてノートを取る気も起きなかった、なんて言われないような授業を心がけます。

倒れた???

10月20日(火)

9時10分前、午前クラスの教師たちの朝礼が始まってもE先生は姿を見せません。ゆうべ、「明日」の授業内容についてのメールを送り、それに対して10月20日という日付の入った教案を送ってきましたから、E先生が授業の日にちを忘れているとは思えません。事情を確認するためにE先生に電話をかけると、通勤途中に倒れて駅の救護室に運ばれていたことがわかりました。

午後クラスの先生に大急ぎで代講を頼みました。前半は漢字のプリントなどがありましたが、後半はE先生が独自の資料で授業をすることになっていましたから、どうにもなりません。これまた周りの先生からすぐ出てくる教材を借りて、急場をしのぎました。後刻E先生から送られてきた資料を見ると、私がお願いした授業内容を見事に反映した資料で、もしかするとこれを作るために寝不足になり、倒れてしまったのではと思えるほどの内容でした。

E先生は私の半分にも満たない年齢で、少なくとも見た目には不健康そうではありません。こういうふうに、若くてパワーがありそうな人が倒れたり病気になったりするたびに、何が健康を左右するんだろうかと考えさせられます。私のように食事も睡眠も不規則極まりなく、運動不足もはなはだしい者のほうが、よっぽど倒れちゃいそうなんですがねえ。酒煙草を全くやらないっていうのが、そんなに健康に効いているとも思えません。

いずれにしても、あれだけの力作が日の目を見なかったというのは、E先生自身が最も残念なはずです。さらに言えば、それだけの授業を聞きそこなった学生こそが最大の被害者かもしれません。次回のE先生の日に、その授業をしてもらおうかと、予定変更を考えています。

また始まりました

10月19日(月)

受験講座が始まりました。今学期は受講者のレベルなどの関係から、私の担当する物理と化学2クラス体制です。今日は物理がありました。

まず、この11月に勝負をかける学生たちのクラス。こちらはEJUまでひたすら過去問です。今年から出題傾向が少し変わりましたから、そちらの話も少し。でも、根幹は変わっていませんから、少しだけ。

その後、今学期から勉強を始める学生たちのクラス。こちらは、物理の基礎から説き起こします。大学で教える事項でも、大学入試に役立ちそうなことは教えていきます。EJUは時間との勝負ですから、答えを出すまでの時間短縮につながるのなら、大学の知識だってどんどん応用させます。

前半のクラスは1年近く付き合ってきた学生ですから、気心も知れています。後半の学生は初めて顔を合わせる学生ばかりですから、これから関係を築いていきます。今学期は初級ですが、1年後は上級で、私のクラスにいるかもしれません。その時に、「おっ、やっと上がってきたな」って言いながら、肩でもたたける仲になっていたいです。

何年か前は理科系の学生に個別面接をしていたのですが、最近は日本語の授業が忙しくて、そういう時間がなかなか取れません。先週、今学期から理科を取る学生たちを集めてオリエンテーションをしました。その時に、この受験講座のポリシーから進路選択の基本的な考え方まで話しましたが、こういうことは1回こっきりでは真意が伝わるものではありません。個別面接があると個々の学生に強く訴えかけられるんですがね。

今日の授業で、先週末に届いたEJUの受験票を各学生に渡しました。理科について言えば、EJUまで各科目とも3回です。新しい学生にばかり力を入れるのではなく、11月勝負クラスも土俵際で1問拾う力をつけさせていきたいです。

もう一度KCPに入りたい

10月17日(土)

夕方、去年の夏にKCPをやめて帰国したJさんが来ました。国で勉強して、再来日し、専門学校に進学しようか大学に入ろうか迷っているとのことで、その相談が目的でした。

在籍中のJさんは早起きが苦手で、遅刻・欠席が多かったです。学校へ来れば授業に積極的に参加するし、日本語に対するカンも鋭いし、クラスメートに刺激を与える学生でした。でも、いかんせん朝が弱すぎて、退学を決意したのです。

実は、先週、Jさんからメールをもらっていたのですが、文面に誤字脱字がなく、とても驚きました。この調子なら、もしかすると大学にも手が届くかなって思えるほどでした。実際に顔を合わせて話をしてみても、1年余りのブランクは感じられませんでした。

Jさんの今の心配事は、KCP在学中の出席率が低いことです。これがビザを取るときに悪影響を及ぼさないかと悩んでいます。悩んでみても出席率の数字が変わるわけではありません。だから、もう一度KCPに入り直して、今度はまじめに学校に通って、出席率を少しでも上げたいと言いますが、これは無理な相談。なまじKCPに多少在籍したがために、入学してもすぐに出て行かなければならないのです。

去年KCPにいたときに出席率が悪かったのは、Jさん自身の目標がはっきりしていなかったという面もあると思っています。今はそれが明確になったのに、前回の出席率が足を引っ張りかねない状況です。Jさんは日本へ来るのがちょっと早すぎたんじゃないかな。後悔先に立たずといいますが、自分の将来像を固めてからでも遅くなかったと思います。今、KCPに在籍している学生の中にも、なんとなく来ちゃった組がいます。そういう学生を早く何とかしなくちゃって思いながら、Jさんの話を聞いていました。

食費はいくら

10月16日(金)

朝刊に日本の大学生の生活費に関する調査の記事が出ていたので、上級クラスでその記事を取り上げました。記事によると、親元を離れて暮らす大学生の場合、全支出の約4割を住居費に使い、食費は2割だそうです。食費を削ってでも、住環境を整えたいようです。

記事を読ませる前に学生に聞いてみたところ、食費は2~3万円ぐらいが相場で、家賃はもうちょっと高いという学生が多かったです。つまり、日本人の大学生と同じ傾向です。学生たちが家賃に振り向けるお金は、食費よりも低いんじゃないかと思っていましたから、学生たちの答えはちょっと意外でした。でも、確かに、学生たちの住所にはマンションっぽい名前が目立ち、ストリートビューで見てみても、こじゃれた建物が多いです。

30年以上も昔の、私の学生時代と比べること自体がナンセンスかもしれませんが、この間に食はさほど変わっていないのに対し、住は大きく変わりました。イタリア料理が流行ったり、韓国料理が広まったり、マクドナルドのメニューもいくらか変わったりってことはありますが、食の基本ラインは同じです。ところが、私が住んでいたバストイレなしの4畳半なんて、もうどんなに探しても見つからないでしょう。

学生たちに家賃にお金をかける理由を聞いてみると、これまた日本人大学生と同じように、いいところに住みたいからという答えです。学生たちの家庭が豊になったのですね。快適な部屋で勉強に集中してもらおうというのが、学生たちの親の考えなのだと思います。

ただ、安くておなかが膨れる食事というと、おにぎり、パン、カップラーメンなど、炭水化物を挙げて来ましたので、太りすぎに注意してもらわなければなりません。そして、ビタミン豊富な果物を、是非、積極的に取って、健康維持に努めてもらいたいです。

4枚の切符

10月15日(木)

お昼を食べて帰ってきたら、1階の受付にKさんが立っていました。Kさんは大学受験のため、明日の授業後、新幹線で京都に向かいます。京都までののぞみの指定席を取ったのはいいのですが、乗り方がわからないと言います。乗車券と特急券とで片道2枚、往復で4枚の切符を目の前にして、戸惑っている様子でした。

.Kさんは超級クラスの学生で、日本に2年近く住んでいます。もちろん、Kさんの国にも鉄道はあります。それでも新宿駅で切符を4枚も渡されると、不安でたまらなくなってしまうのです。自分の人生を左右しかねない旅行だっていうプレッシャーがそうさせている面もあるでしょう。また、新宿駅の窓口で切符の使い方を聞こうと思ったけど、後ろに並んでる人がいたから遠慮したとも言ってました。そういう優しさはKさんの美点ではありますが、時にはずうずうしさ、ふてぶてしさも必要です。

私は旅行が好きで、まとまった休みのたびに旅行していますから、どんな切符でもビビることはありません。でも、旅慣れない人にとっては、乗車券と特急券の2枚だけでも怖気づいてしまうのでしょう。それが往復で2組あるとなると、間違ってしまうのではないか、そのためせっかく取った指定席に乗り損ねるのではないかって心配になるほうが普通の神経かもしれません。

乗車券と特急券を1枚にできないものでしょうか。いろいろと複雑な事情があって2枚としているのでしょうが、お客のほうに顔が向いていないと言われてもしかたがないシステムだと思います。まあ、常連さんはケータイをかざすだけで、通常料金より安く新幹線に乗れちゃうんですから、お得意様には優しいんですね。

いずれにしても、Kさんには、新幹線の切符ごときに振り回されることなく、あさっての入試で全力を出し切り、来月初旬に朗報を聞かせてもらいたいです。

不安をあおる

10月14日(水)

午前中の通常授業のあと、進学相談と、面接練習と、理科の受験講座のオリエンテーションと、志望理由書と小論文の添削とで日が暮れてしまいました。

Cさんは親に意向で大学院進学を目指していましたが、本人は専門学校に行きたいと思っていました。KCP入学以来1年間、大学院進学の準備をしてきましたが、自分の思いを抑えることができず、専門学校の体験入学に行ってきました。そうしたら、気持ちがさらに膨らみ、この夏に親に談判して、専門学校への進学を認めてもらったそうです。この判断が間違っていないかという最終確認の相談を受けました。背中を押してもらいたいんだけれども、大学院進学を完全に断ち切ってしまうことに、漠然とした不安も感じているのです。

今週末に面接試験を控えるKさんとFさんが面接練習をしました。もうすでに想定問答を作り、それを暗記するぐらい練習しているのですが、想定外の質問にどう対処したらいいか、1つでも多くのパターンを詰めておきたいのです。練習をどんなにやっても、KCPの教師は受験校の面接官じゃありませんから、すべての質問パターンを網羅することなど、不可能です。それはわかっていても、不安を解消するために、自分の思考の及ばない角度からの質問をしてもらい、自分をいじめずにはいられないのです。

Lさんは、志望校の小論文の過去問に答えては、原稿用紙を持ってきます。私が見れば十分合格点なのですが、どこか直してもらわないと気がすまないのです。直されたところを見たら、それだけ実力がついたような気がするのでしょう。Tさんは志望理由書です。何度ダメ出しをされても、果敢に再挑戦してきます。本番に試験以前に燃え尽きてしまうんじゃないかと、こちらが不安に感じるほどです。

その点、受験講座理科のオリエンテーションは、まだだいぶ時間がある学生たち相手ですから、Cさん、Kさん、Fさん、Lさん、Tさんのように切羽詰ったところはありません。でも、来年の今頃には、理科系ですから、口頭試問の練習をしてくれなんて言っているかもしれません。