Category Archives: 進学

運命の61日後

4月16日(火)

6月のEJUまでちょうど2か月――と進学指導の時間に言ったら、授業に出席していた学生たちは、一様に驚いた顔をしていました。6月16日(日)が試験日ですから、61日後です。

この学生たちは、ほぼ全員、来年4月の進学を目指しています。確かに、大学に入学するのは1年後です。しかし、入試は秋ごろ行う大学が多く、年内に合格発表のところは、ほぼ11月のEJUの成績は利用できません。ということは、6月のEJUがラストチャンスだとも言えます。61日後に運命が決まってしまいかねないのです。

こちらも、3月になっても進学先探しに右往左往したくはありません。早く安心したいものです。でも、1年後のことが2か月後に決まってしまうとなると、腕組みをしたくなります。

大学進学を目指す多くの留学生は、日本の高校3年生よりいくらか年上です。その分大人だということにもなりますが、それは数字の上の話に過ぎません。留学生は、未知の国へ来て、生活に慣れるのにも時間を費やしています。もう少し迷う時間を与えてもらってもばちは当たらないでしょう。志望理由書や面接練習などでそれらしい学修計画や将来設計を書いたり話したりさせていますが、どこまでが心の底からの声でしょう。

学校推薦型入試などによって、日本の高校生の進路決定が早まってきたという話をよく耳にします。大学や学部や学科をどこまで理解して受験するのでしょう。学生の確保は大学運営の至上課題だとも言われています。そんなことが起点になって日本の将来を担う若者の人生が歪められたとしたら、本末転倒です。

ほかの国はどうなのでしょう。もっと余裕のある留学生受け入れスケジュールのような気がします。走りながら考えることも必要でしょうが、走る前に目標を定めて見据える時間も欲しいです。

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入学式挨拶

みなさん、ご入学おめでとうございます。世界の各地から有為の若者がこのKCPに集まってきてくださったことをとてもうれしく思います。

新入生のみなさんの多くが、日本での進学を目標としていることかと思います。“A大学のB先生のもとでこういう研究がしたい”――大学院進学を希望している方は、このぐらいまで考えが進んでいるかもしれません。しかし、大半の方は、東大に行きたい、早稲田大学で勉強したいといったような、漠然とした夢ないしは憧れを抱いているだけではないでしょうか。

残念ながら、日本の大学・大学院は、夢や憧れだけで入れるほど甘くはありません。それを現実のものにするには、具体的な行動が必要です。それ以前に、みなさんは日本の大学についてどのぐらい知っていますか。日本には大学が何校あるか知っていますか。約800校あります。その中でいくつの大学の名前を知っていますか。東大と早稲田の2つしか知らないとしたら、日本での進学希望者としては大いに研究不足です。美術系志望の方で、知っているのは東京芸大と多摩美、ムサビだけだとしたら、見通しは暗いですね。美術が学べる大学は、少なく見積もっても30校はあるでしょう。

みなさんもご存じのように、日本は少子化が進み、大学を受験する18歳人口も減る一方です。大学は、何もしなくても学生が集まる時代ではなくなったので、それぞれの特色を打ち出すことに懸命です。今までにない教育をする学部学科を創設したり、世の中のニーズを先取りしたプログラムを始めたり、カリキュラムを根本的に改めたりと、どの大学も受験生に選ばれる大学、社会から求められる大学になろうとしています。

それと同時に、入学試験も変わってきました。知識量の多寡を問うのではなく、考える力や創造する力、さらには学問に対する姿勢を見ようとする試験を課す大学が増えてきました。入学してからの伸びしろが大きい学生、何か光るものを持っていそうな学生、学問に対して強い探求心を持ち、真理に向かって突き進んでいく意欲のある学生を見極めようとしています。

東大や早稲田にしても同じです。日本の中でさえ、「わざわざ東大に行かなくても、地元のC大学でもグローバルな人材になるための勉強ができる」と考える、地方の優秀な高校生が増えてきました。偏差値だけで志望校を決める時代は過ぎ去りつつあります。それゆえ、一昔前の有名校も安閑とはしていられないのです。

東大や早稲田大学の卒業証書が欲しかったら、何が何でも東大や早稲田大学に入らなければなりません。しかし、みなさんが真に入るべき大学は、みなさんが世界の将来を背負って立つ人材へと成長していける大学です。みなさんが抱いている夢や憧れ、あるいは将来構想を形にできる大学です。じっくり調べて考えた結果、自分の人生を実りあるものにする大学は早稲田大学をおいてほかにないとなったら、必死に勉強して早稲田大学に入ってください。私たちも全力で応援します。ろくに考えもせずに有名だからという理由で大学を選んだら、みなさんは人生において大きなチャンスを逃してしまうことになります。

では、日本の大学を知るにはどうしたらいいでしょうか。とっかかりはインターネットです。ネットで見て興味が持てたら、できれば実際にキャンパスを見に行くことをお勧めします。その大学に博物館があったら、そこもぜひ見学してください。大学院進学希望の方は、むしろ必須ですね。博物館の学芸員の方と質疑応答・議論ができるくらいになっておいてもらいたいです。

志望校を研究すると同時に、自分自身も研究してください。大学も大学院も、必ずと言っていいほど入試に面接があります。面接とは、単に面接官の質問に答えるだけではありません。面接官に、大学に、自分を売り込む場なのです。商品を売り込むには、その商品について熟知していなければなりません。すなわち、みなさん自身が自分を知ることこそ何より肝要なのです。大学院入試だったら、「私は先生の御研究にこんな貢献ができます」というところまで訴える必要があります。

KCPには、こうした大学や大学院が求める学生像に近づいていける授業や活動が数多くあります。私たち教職員一同も、総力を傾けてみなさんがそんな学生へと成長していくお手伝いをします。

みなさん、本日はご入学、本当におめでとうございました。

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明るい声で

2月15日(木)

中間テストの試験監督から職員室に戻って来ると、Pさんがいました。「先生、A大学に合格しました」と、いくらか暗い声で報告してくれました。私は深々と頭を下げました。

入学当初、Pさんは絶対東大に進学すると語っていました。A大学だって誰でも入れる大学ではありませんが、さすがに東大と比べられたら霞んでしまいます。それが暗い声の原因です。

Pさんが東大に入りたい理由は、偏差値が高いからです。こういう勉強がしたいからとか、こういう学生生活を送ってみたいからとかというのはなく、偏差値の高さが魅力なのです。

東大がそう簡単に入れないことは、入学後しばらくしたらわかってきました。その次に出してきた志望校は、東大の次か次の次ぐらいに偏差値の高い大学でした。偏差値が0.1でも高いところがお望みのようでした。

ですから、そういった大学もあきらめてA大学に出願したことは、Pさんにとっては屈辱的なことだったかもしれません。H大学やK大学はだめかなどと、最後まで粘りました。偏差値至上主義ですから、EJUの点数など数字で無理だというと、渋々納得しました。A大学で素晴らしい成績を挙げれば、大学院でH大学でもK大学でも東大でも行けると希望も持たせ、A大学受験に目を向けさせました。

Pさんから報告を受けた時私が深々と頭を下げたのは、こういった葛藤にけりをつけたことに対してよくぞ決断したと敬意を表したかったからです。これから入学金を振り込みに行くと言って、コンビニに向かいました。

Pさんにはテストには現れにくい日本語のセンスがあります。これを活かせば、A大学で充実した学生生活が送れることでしょう。そうすると、大学院もA大学に進みたいということにもなるでしょう。卒業式には、明るい声で「先生、お世話になりました」と言ってくれることを期待しています。

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陰ながら

1月18日(木)

Yさんは、今学期、日本語プラスの文科系の数学に登録しました。残念なことですが、文科系の数学は途中で挫折する学生が多いです。因数分解、2次関数、順列・組合せ・確率、三角比、平面図形など、文科系の学生にとっては高く長い山脈が待ち構えています。これを乗り越えてほしいのはやまやまですが、数学に力を入れるあまり総合科目がお留守になってしまっては、元も子もありません。そもそも日本語に力を入れてほしい学生だっています。ですから、数学の授業の初日に、今までに、いつ、どれくらい数学を勉強してきたか、受験においてどれくらい数学が必要かといったことを確かめることもあります。

Yさんに数式の展開と因数分解の公式を見せると、国の高校で勉強したと言いました。じゃあということで、公式を見ながら展開の問題をしてもらいました。すると、ある意味予想通り、すぐにつまずいてしまいました。勉強したことは確かでしょうが、すっかり忘れてしまっていることもまた事実です。問題を解いていくうちに勘を取り戻すといったこともなく、ギブアップ状態でした。

Yさんの志望校を聞くと、F大学でした。しかも文学部志望ですから、EJUの数学は必要ありません。日本語で1点でも高い点数を取ることに全精力を傾けるべきでしょう。そういうことを話すと、Yさんはほっとしたような顔をして、あっさり数学の授業をキャンセルしました。

ろくに教えもせずに引導を渡した形になり、多少心は痛みました。しかし、しかし、週にたった90分の数学がYさんの重荷になるのだとしたら、全体としてYさんの力を伸ばすことにつながるのだと思います。これから1年間、陰からそっと見守っていくことにしました。

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力を合わせて

1月11日(木)

始業日はどの先生も、新入生に追加のオリエンテーションをしたり、お情けで進級させた学生に出した宿題のチェックをしたり、忙しく立ち回ります。私は、新入生に日本語プラスの登録をさせました。オリエンテーションは昨日の入学式の後に済ませていましたが、どの受験科目を取るかなどの手続きをしてもらいました。

そういうデータを入力していたら、Kさんに呼ばれました。実は、Kさんは昨日私に電話で、年末に合格したO大学の手続き締め切り日が迫っているが、手続きがうまくできないと相談を持ち掛けてきました。期末テストの翌日ぐらいに一時帰国し、昨日戻ってきたら「あっ、締め切り日!」となってしまったのです。

そもそも、相談先を間違えています。入学金の振り込みがうまくいかないなどと訴えられても、私にはどうしようもありません。O大学に電話して事情を説明し、頭を下げまくって、振り込み方を説明してもらうなり、締め切りを延ばしてもらうなりしてもらうことこそ、まずなすべきことです。そんな伏線があったのです。

どうやら光が見えたようで、Kさんも昨日の湿っぽくとがった声ではなく、明るい笑顔で私を呼びました。話を聞くと、予想通りO大学との交渉は順調で、お金関係のやり取りも進んでいるようでした。もう1校G大学も受験しますが、行先が確保できていますから、力を存分に出して戦えることでしょう。

考えてみれば、この騒動の根本は、入学手続きをほったらかして一時帰国していたということです。やるべきことを片付けてから一時帰国するとか、クリスマスを家族と過ごすならお正月を端折って日本に早く戻るとか、それが受験生として取るべき態度でしょう。

1月期は、クラスの学生をどこかにどうにか押し込むことが私たちの役割です。そのためには全力を傾けます。でも、学生の側にもしかるべき行動をとってもらわないと、このプロジェクトはうまくいきません。学生と教師の協力態勢があって初めて、お互いの願いが成就するのです。

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悩める子羊

12月25日(月)

夕方、先週A大学に出願したPさんが進学相談に来ました。先週末に発表された11月のEJUの結果から、新たな出願校を考えたいということでした。でも、Pさんの成績は6月とほとんど変わりませんでした。それだったら、今までに話してきた大学の中からどこか1校か2校選べばいいのにと思いながら話を聞きました。

よくよく話を聞くと、11月の成績から30点ぐらい下の点数でも入れそうな大学を教えてくれということでした。30点ぐらいの差なら、面接でも逆転可能な場合が多いです。ですから、そんな大学を調べて出願しても、滑り止めになるとは限りません。11月と6月と、点数がほとんど変わらないのですから、すでに出願したA大学に確実に合格できるよう手を打っていくべきです。

そういう話をすると、心配の種が今度は面接の受け答えに移りました。Pさんが出願したのはS学科ですが、N学科の勉強もしたいと面接で言ったら印象が悪くなるだろうかとかと言い出しました。どちらにするか出願の際に悩んだことは確かですが、S学科の方が自分の将来の勉強に役立つと考えて、S学科に出願したのです。今更そこまで立ち帰って迷っても、どうしようもありません。S学科の先生方に、自分はどうしてもS学科で勉強したいと訴えることが肝心だと私が何度言っても、N学科の勉強も必要だという方向に考えが行ってしまいます。私が何か言うと、その瞬間は納得するのですが、いつの間にか考えが一周してN学科に戻ってしまいます。

S学科もN学科も同じ学部ですから、S学科の必修と授業時間が重なりさえしなければ、N学科の授業だって取れます。自分で勉強して、どうしてもわからないことがあったらN学科の先生に聞きに行くことだってできるでしょう。そういう話をしても。Pさんの心配は一向に解消されませんでした。

帰り際にはS学科に受かるための面接の受け答えを考えるということで納得した体ではありましたが、うちへ帰って一人で考えているうちにどう変わるかわかったものではありません。

この間2時間。作文の採点を終わらせようと思っていたのですが、5人分残ってしまいました。

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安全確実?

12月20日(水)

期末テストの試験監督から1階に戻ってくると、Fさんが職員室の前で待ち構えていました。昨日から進学相談がしたいと言われていたのですが、昨日の午後は代講でしたから、「明日、期末テストが終わったら1階まで来てね」ということにしていました。

まず、「先生、592点で入れる大学、ありますか」と聞かれました。592と点は、Fさんの6月のEJUの読解(記述を除く)+数学(コースⅡ)+物理・化学の成績です。A大学ならこの成績で十分勝負できるとして出願するのですが、さらに安全・確実な大学はどこかというわけです。

もうすぐ11月の成績が出るじゃないかと聞くと、今、自分が手にしている成績で確実なところを知りたいと言います。堅実なのか、11月の結果に自信がないのかわかりませんが、リクエストにお応えすることにしました。

データを見せながら、B大学やC大学など、いくつか紹介しました。そのたびにFさんが気にするのは、その大学を卒業すると東大や東北大など、一流大学の大学院に進学できるかということでした。入学したばかりの頃のAさんは、何が何でも東大と言っていました。それが収まり、現実的な選択ができるようになった、大人になったと思っていたら、根っこのところは全然変わっていませんでした。

確かに、私は「理科系は大学院入試でもう一度勝負できる」と言いました。だから、東大にこだわるなとアドバイスしました。しかし、それは学部生として入学する大学を東大大学院の予備校として考えろという意味ではありません。大学院は研究内容が合うかどうかが一番です。研究計画書が東大の先生の心をとらえられるかどうかです。それを無視して名前だけで大学院を判断したら、不幸な留学生活を送ることになるでしょう。

そもそも、「592点の大学」として私が提案したD大学、E大学は、志望理由書を書かなければならないから出願したくないなどと言っているようでは、東大の先生の心を動かす研究計画書など、100年かかっても書けるわけがありません。

さらに、これからA大学の出願書類を書くと言います。そのお手伝いならやぶさかではありませんでしたが、なんと、明日必着というではありませんか。何で先週のうちに仕上げておかないんだよと思いながら、履歴書から宛名カードまで、書き方を指導しました。

昨日の初級の代講以上にexhaustedでした。

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志望理由書と学習計画書

12月14日(木)

MさんはK大学への出願準備を進めています。午前の授業後、志望理由書と学習計画書を見てほしいと、私のところへ来ました。志望理由書と学習計画書は、A4・1枚の願書の一部分に設けられたあまり広くない空白に記入することになっていました。

Mさんは、志望理由書は思うところがたくさんあるようで、私の老眼にはかなり厳しい細かい文字ですき間なく書かれていました。国で働いた経験からこういう学問が必要だと痛感し、それが勉強できるK大学を志望するに至ったということがよくわかりました。

一方、学習計画書は、私にも読めるサイズの字でしたが、講義名をそのまま書いたようで、志望理由書ほどの熱意は感じられませんでした。“計画”という言葉に惑わされて、何年生で何の授業を取るという羅列に終わってしまったようでした。

全体として、志望理由にある、Mさんが必要としている学問と、それをどのように勉強していくかという学習計画とが結びついていない感じがしました。志望理由書はMさんにしか書けない内容でしたが、学習計画書は誰にでも書けるものでしかありませんでした。

Mさんが語りたいことは、志望理由にあります。しかし、このままこの願書を提出すると、面接での質問が学習計画に集中するおそれがあります。それはMさんにとっては不本意でしょうから、志望理由書と学習計画書を有機的に関連付けるよう指導しました。

K大学にしたら、学習計画書には、講義名ではなく、こんなことを学びたいと書いてもらった方が、Mさんをどう育てるかという道筋が立てやすいでしょう。大学は、何を教えたらいいかわからない学生ではなく、自分たちの教育によって成長した姿の見える学生を合格者として選ぶものではないでしょうか。

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通訳とは

12月6日(水)

今学期、水曜日の午後は初級の学生を対象に、進学の授業をしてきました。進学の授業とは、日本語やEJUの科目を教えるのではなく、日本の大学入試・大学進学の基礎知識を学んでもらう授業です。例えば、出願に必要な書類、EJUのしくみ、面接の内容、志望理由の書き方、合格後の入学手続きといった事柄を扱ってきました。毎週聞いてもらえれば、留学生入試の概略がわかってきます。

初級の学生が相手ですから、通訳が必要です。その通訳は、上級の学生に頼んでいます。Kさん、Sさん、Tさんなどが引き受けてくれました。私の日本語よりもだいぶ長く話していますから、きっと自分の経験も加えて、私の言葉をより実感の伴う話にしてくれているのでしょう。こういう通訳は、機械翻訳やAIにはできないと思います。

聞いている初級の学生たちも、通訳の学生の言葉を待ち構えています。学期末が近づいた今なら、初級とはいえ、私の言葉もだいぶわかるようになってきたと思います。こちらも語彙や文法を調節して、また板書やジェスチャーも交えて、少しでも初級の学生に伝わるようにしているつもりです。でも、通訳の学生が話す自分たちの母語のほうが、理解が深まるに違いありません。だから、信頼しきった眼で通訳の学生を見つめ、その声に耳を傾けるのです。

通訳の学生も、どこかいい気分なのでしょうね。1時間近く拘束されるのですが、授業が終わり、私が「どうもありがとう」と声をかけると、満足気に笑みをたたえて、「ありがとうございました。先生、さようなら」と返してくれます。この授業の時は、初級の学生も上級の学生も私も、効率性とは違った次元に生きているのです。

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初面接練習

12月1日(金)

中級の進学授業で、面接練習をしました。25年入学の学生も多いので、本番直前の面接練習というよりは、授業で教えてもらったことの実地訓練といったところです。

私の受け持ちは、Oさん、Kさん、Sさん。まず、Oさん。一目で緊張していることがわかる顔つきで、こちらの質問に必死に答えようとしますが、話がなかなかかみ合いませんでした。次はKさん。3人の中で日本語が一番上手でしたが、手が常に動き続け、緊張による落ち着きのなさが丸見えでした。最後はSさん。声が小さく早口で、答えをなるべく簡潔にすませてしまおうという魂胆がビンビン伝わってきました。

面接がいかに緊張するものかということを学生に実体験させることが主目的でしたから、十分成功と言えるでしょう。事前に答えを暗記しても本番ではあまり役に立ちそうにないということは、わかってもらえたのではないかと思います。

いつも思うことですが、私ぐらいで緊張していてはいけません。確かに、私はOさんたち3人のクラスの先生ではありません。しかし、学校内でちょくちょく見かけています。Oさんのクラスには、ついこの前、代講で入りました。そんな有利な条件でも緊張するのです。ましてや、初対面の先生方がずらりと居並ぶ本番の面接では、脈拍も血圧も200を超えてしまうのではないでしょうか。

もう1つ気になったのは、「失礼しまーす」というような、文末の“まーす”です。だらしない感じがして、私は好きになれません。ということは、同年代の面接官も同様だということであり、好印象にはつながりません。短くきびきびと“ます”と言い切るように指導しました。

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