Category Archives: 進学

まだまだ夏ですが

9月9日(火)

九月九日、重陽の節句、菊の節句です。しかし、そんな雰囲気は微塵も感じられず、日中は太陽パワー全開です。10月1日から衣更えの予定ですが、本当にできるんでしょうか。

そして、帳尻を合わせるかの如く、冬が駆け足でやってくるのでしょう。11月にはコートを着込むことになるとしたら、秋はひと月ほどにすぎません。となると、秋は味わうのではなく単なる通過点になってしまいます。今年の中秋の名月は10月6日だそうですが、それまでにススキは穂を出すのでしょうか。

季節の歩みは牛歩のごとくですが、受験カレンダーはトントンと進んでいます。明日とあさってはSさんがK大学の大学院を受験します。YさんはH大学の出願に使う出席成績証明書を申し込みました。先学期受け持ったUさんはあちこちの大学に出願しているようで、時折相談に来ます。金曜日には指定校推薦の校内面接第2弾が控えています。まだ暑いからと言ってのんびり構えていては、受験戦争に負けてしまいます。

日本語プラスの時間に、Rさんの模擬面接をしました。受験日の一番近いRさんを、他の学生の見本にしようという算段です。先週予告しておきましたから準備してきたのでしょうか、こちらの質問にすらすら答えてくれました。文法や言葉の使い方などのミスが全くないわけではありませんでしたが、誤解が生じるような間違え方ではなく、スムーズなコミュニケーションができました。見ていた学生のいいお手本になりました。本番もこのくらいやってくれたら、合格の可能性がぐっと高まります。

東京の日没は17:58でした。太陽運行の上での秋は、着実に訪れています。

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よかったね

9月4日(木)

Sさんは、去年、新入生の学期に初級のレベル2で受け持った学生です。とてもやる気に満ちあふれていて、自分でどんどん勉強を進めていきました。語学のセンスもあったのだと思いますが、レベル2のテストは毎回満点に近く、次の学期はレベル4に、その次の学期はレベル6に上がりました。また、日本語プラスの受験科目の教師をつかまえては、あれこれ質問していました。

EJUでもしかるべき成績をあげ、去年の秋ごろから受験に臨みました。しかし、Sさんの志望する歯学部はどの大学も留学生をあまりとらないため、25年4月入学の入試はすべて失敗でした。理学部や工学部など普通の学部なら十分合格できたはずなのですが、一敗地に塗れることとなってしまいました。

そこでSさんは方針を変えました。何が何でも歯医者さんにならなければならないわけではありませんから、Sさんのしたい勉強ができて、留学生も入学しやすい学部を選ぶことにしました。そんな相談を受けたのが、先学期の中頃だったでしょうか。いくつか候補の大学を挙げ、Sさんに考えてもらうことにしました。

その中で、SさんはK大学を選びました。先週入試でしたから、夏休み直前に面接練習をしました。受け答えが今一つまとまっていませんでした。こうしたほうが印象が良くなる、簡潔ですっきりした答えになる、面接官の気を引くなど、山ほどコメントしてしまいました。

12:15に午前クラス終業のチャイムが鳴ると、選択授業のクラスの学生たちは帰っていきました。最後に残ったSさんが、帰り支度をしている私に「先生、K大学に合格しました」と報告してくれました。報告だけではなく、もうすぐ出願のY大学も受けたほうがいいかどうかという相談も兼ねていました。

1年遅れではありますが、まずはよかった、よかった。受験すべきかどうかは、どちらの大学のほうが、Sさんの勉強したいことが勉強できるかにかかっています。そういうヒントを出しておけば、Sさんならきっと最善の道を選び取ってくれるでしょう。

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不安材料

9月3日(水)

レベル1は中間テスト後の面接が真っ盛り。授業前にKさんとJさんの面接をしました。

Kさんは美術系の大学への進学を考えています。しかし、現状では日本語力が足りません。授業中はいつも一生懸命練習していますが、なかなか日本語力が伸びてきません。聞く力と話す力が問題です。詳しく話を聞いてみると、学校外でそういう練習をしていないようです。今は教科書に付いているQRコードから直接聴解教材にアクセスできますが、そういうのを存分に利用している形跡がありません。また、志望校についても、東京藝術大学しか出てこないようでは、研究が足りません。

2027年進学だとしても、留学生入試は来年の今頃です。残された時間は1年半ではなく、1年なのです。少しは焦ってもらわなければなりません。でも、そういう切迫感みたいなものは、Kさんからは漂ってきません。留学生活をエンジョイするのは結構ですが、進学にも目を向けないと、泣きを見ることになります。

Jさんは中間テストの成績がよく、レベル1から3にジャンプするのもありかなと思いました。しかし、本人はレベル2をしっかり勉強して、レベル2から4へのジャンプを狙うと言います。堅実です。こちらは大学で経済を勉強するそうですが、現時点では超有名大学を志望校に挙げています。本気でそこを狙うなら、来年の6月のEJUで高得点を取る必要があります。そのためには、2から4に進級するくらいの勢いで突き進んでもらいたいです。そういう意気込みが感じられましたから、有望株の1つとしておきましょう。

でも、何よりも心配なのは、Yさんです。授業後に面接の予定だったのですが、用事があると担任のM先生に連絡してきて、学校を休んでしまいました。どんな用事か知りませんが、レベル1のうちからこんな調子で気安く休んでいるようだと、将来は決して明るくはなりません。

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グラフは嫌い?

8月5日(火)

選択授業の小論文は、中間テストをしました。今学期の前半はグラフを読んで小論文を書くということを目指してきましたが、先週の小論文は書けている学生が少なかったですから、中間テストは別の題材にしました。

書けていない原因として、まず、全体的にグラフが読めていないという点が挙げられます。2つのグラフを組み合わせて何か情報を得るということをしてもらいたかったのですが、その域に達している学生は少なかったです。個人作業にせず、数人で話し合わせてから書かせればよかったのかもしれません。三人寄れば文殊の知恵といいますから、額を集めて議論すると、面白い見方ができたのではないかとも思っています。

このまま中間テストでもグラフにこだわったら赤点続出になりかねないと思い、普通の問題に差し替えました。そう宣言した時、表情が明るくなった学生が3人ぐらいいました。グラフって、そんなに嫌なのでしょうか。大学や大学院に進学したら、文献を読むたびにグラフにぶち当たります。そのグラフから筆者の言わんとするところを読み取り、自分の研究に役立てていくということの連続です。その準備段階として、こういう企画を立てたのですが、すべってしまったようです。

来週の火曜日は選択授業以外の各科目の中間テスト、その次の週は夏休みですから、その間に態勢を立て直して夏休み明けの選択授業を迎えたいです。そして、期末テストでは、何とかグラフを読み取って書く小論文を出題したいものです。

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張り出し

8月1日(金)

指定校推薦の一覧表が張り出されました。老眼の目には厳しい大きさの字でびっしり書き込まれた表が、各階の掲示板にかなりのスペースを使って掲示されました。早い大学は9月上旬に出願締切ですから、我こそはと思う学生には今から準備を始めてもらう必要があります。そういう大学に推薦する学生は夏休み前に決定して、夏休み中に書類をそろえ、夏休み明けにすぐ出願というスケジュールでいきたいところです。

でも、多くの学生はその手前であきらめざるを得なくなります。出席率の規定があるからです。学校としては、いい学生だからこそ推薦するのであり、いい学生の条件の1つに出席率があるのはごく自然な流れです。絵に描いたような“後悔先に立たず”の学生が毎年出るのですが、今年も私の見えないところでほぞをかんでいる学生がきっといることでしょう。

しかし、本当の困り者は、指定校推薦入試で合格してから出席率が落ちる学生です。単に気が緩むのか、受かってしまえば入学まで遊び放題だと勘違いするのか、崩れてしまう学生がたまにいます。励ましたり脅したりして多少なりとも回復すれば、学生にとっても学校にとってもハッピーエンドです。しかし、崩れっぱなしとなると、指定校推薦は学校対学校の話ですから、学校も連帯責任を取らなければなりません。最悪の場合、恥を忍んで指定校推薦入試合格取り消しを申し出ることまで考えなければなりません。

それだけではなく、入学してからもいい学生であり続けてもらわねばなりません。KCPという旗指物を背負って4年間の大学生活を送るようなものです。その期待とプレッシャーに耐えられそうな学生を選ぶことが、私たちに求められるというわけです。そうです。選ぶ方も、プレッシャーがかかるのです。

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目標を作る

7月31日(木)

授業後に、上級クラスの面接3連発。今学期は、EJUの結果も出たので、卒業後の進路に関する面接を前倒しして行うことにしました。

MさんとWさんは大学院進学。2人ともすらすらと志望校、研究科、専攻の名前をすらすらと書きました。だから安心できるというわけではありませんが、目標が定まっているということは、指導もしやすいということです。出願に向けての準備も、着々と進めているようです。

Pさんは大学進学。6月のEJU日本語で300点は取れると思っていたのに、それに遠く及ばない成績でした。どうしていいかわからず、夜も眠れません。「11月に頑張ります」と言いますが、11月の結果が使えないところがたくさんありますから、それじゃ手遅れです。11月の結果が出るまで、すなわち年内は何もしないというのでは、行ける大学がなくなってしまいます。

Pさんの場合、将来の計画がはっきりしていない点が最大の問題です。日本でちょっと働いて国へ帰るというのでは、学部や学科の選びようがありません。絶対こうなりたいというものがないと、志望理由書も書けなければ、面接で突っ込まれても答えられません。10年以上昔の話になると思いますが、成績優秀だったのにどこにも受からなかったKさんが、やはり無目標でした。

手を変え品を変え、6月の成績で勝負できそうなところに出願することが大切だと説得しまくって、手が届きそうな2校について詳しく調べてみるというところまでこぎつけました。しかし、教師はここで安心してはいけません。Pさんの気が変わらぬように、常に常に見張って尻を叩き続けなければなりません。

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やめたいです

7月29日(火)

今学期の日本語プラスが始まって3週間目に入り、そろそろ脱落者がはっきりしてきました。いつの間にかクラスに来なくなる学生、きちんと届を出して辞めていく学生、調子いいことを言いつつ結局消えてしまう学生、いろいろな脱落のしかたがあります。

SさんとHさんは、きちんと届を出しました。授業内容が国で勉強したことと同じで易しいからという理由でした。国で勉強したことと同じことを勉強するというのは、その通りです。EJUの試験範囲は日本の高校の学習内容に合わせており、日本の高校と学生の国の高校と、勉強内容に大きな違いはありません。だから、日本語プラスの授業内容は国で勉強したことと同じだというのは、妥当な指摘です。

日本語プラスは、学生に勉強のペースを与えるという側面もあります。EJUまで自分できちんと勉強できるのであれば、日本語プラスを受けなくてもいいでしょう。でも、そういう学生は少ないんですよね。SさんとHさんがきちんと勉強できる学生かどうかわかりませんが、少し心配です。

それから、11月のEJUは受けないので、今すぐ勉強する必要はないという意味のことを言っているのも、気になるところです。27年4月の進学を考えているようですが、それには26年6月のEJUで好成績を残さなければなりません。そうでないと、志望校選びに苦労することになります。進学まであと1年半以上あることは確かですが、実は勝負が決まるまで1年足らずしかないのです。

そういうことをどんなに訴えても、学生にはなかなか伝わらないものです。

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グラフは苦手?

7月28日(月)

先週の授業で書かせた小論文を読み返していますが、どうもよろしくありません。グラフを見てそこから言えること、感じたこと、意見を書いてもらいましたが、グラフから読み取れることと意見とがごちゃごちゃになっている人が多かったです。そのグラフの読み取りも表面的なものが多く、大学の採点官をうならせるには至らなさそうな小論文が大半でした。また、学生たちはやりつけないことをやらされたので、文法や語彙の選択にまで注意が回らなかったようです。その前の週の小論文と比べると、誤用が目立ちました。

私は理系人間なので、グラフが出てくると喜び勇んで隅から隅までつっつき回します。小論文の試験だったら、グラフをねちこち見ているうちに時間がどんどん経ってしまい、結局何も書けなかったということになりかねません。学生たちは、私とはだいぶ違って、グラフをどう見たらいいのかよくわからなかった面もあるようです。

でも、それじゃ困るんですねえ。進学したら、文献を読んでそこに載っているデータから何かを探り当てるという作業を繰り返し、自分の論を打ち立て、それを検証していくということの繰り返しです。グラフを見て小論文を書くというのは、その前半部分のミニチュア版です。ここでつまずいているようだと、違うタイプの小論文試験で合格したとしても、進学後に苦しみそうです。進学後に日本語で困ることのないような実力をつけさせて学生を送り出すというのが、私たちの使命です。それに照らし合わせると、ここはもう一つ厳しくいかねばならないようです。

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どちらに進む?

7月22日(火)

Tさんは、日本語プラスの数学と化学と生物を取っています。動物が好きなので獣医になりたいと言っています。しかし、外国人留学生が獣医学部に入るのは、とても難しいです。私立大学なら、学費も半端じゃありません。薬剤師とも言っていますが、これまた獣医と同様です。

難しい所ばかり狙うのは、ご両親の影響もあるようです。Tさんが獣医や薬剤師のような高度な資格を取って、日本で生活していけたらいいとお考えのようです。確かにその通りですが、それは並大抵の努力ではかなわぬ望みです。その辺の事情が、Tさんもご両親も、明らかになっていません。

じゃあ、方向性を変えて、化学と物理で進学するとどんな道が開けてくるかという質問が出てきました。化学と物理なら、コンピューター全般をはじめ、逆説的ですが、獣医と薬剤師以外、だいたい何でもいけるのではないでしょうか。Tさんが好きなことと重なるかどうかわかりません。

親が子供の心配をするのは当然です。しかし、心配のしかたを誤ると、子供の将来を縛り、可能性を打ち消すことにもなりかねません。日本留学を決める前に、将来設計についてあれこれ調べ、比較検討し、相談を重ねて、進むべき方向性を決めたのだと思います。

でも、今、ご家族の中で、量的にも質的にも充実した日本留学の情報を持っているのは、Tさん自身です。Tさんは努力家ですから、安易な道に進むために情報を捻じ曲げるようなことはしません。そのTさんを軸に、もう一度きちんと話し合ってもらえないでしょうかねえ。

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わからない

7月17日(木)

「先生、Kさんは珍しい人ですね。日本語が全然上手になりませんよ。熱心に質問するのはいいんですが、何言ってるか全然わかりません。だから、質問されるとマーカー渡してホワイトボードに書いてもらうんです」と、数学のS先生がぼやいていました。

私の化学と物理の時間にもKさんは質問しますが、質問内容がわからないということはありません。私の答えを聞いているKさんの様子を見る限り、私の答えはKさんにとって的外れではなく、質疑応答が成り立ち、コミュニケーションも取れていたことになります。

S先生と私の最大の違いは、日本語教師であるかどうかです。つまり、Kさんの日本語は、日本語教師には通じますが、そうでない人には通じないのです。日本語教師は日々不完全な日本語にまみれて鍛えられていますから、一般の方には理解できない、ひどい発音やめちゃくちゃな文法もわかってしまうのです。

Kさんは決して不真面目な学生ではありません。出席率も100%です。授業中にいい加減なことをしているとは思えません。話す練習だって、一生懸命やっているでしょう。それでも、一般人のS先生には通じない日本語しか話せないのです。

だとすると、Kさんの資質ではなく、KCPの授業のあり方の問題なのかもしれません。確かに、私たちの授業をきちんと受ければ、大部分の学生は普通の日本人にも通じる話し方ができます。しかし、Kさんのような取りこぼしも出てしまっているのです。

Kさんは今年受験です。面接や口頭試問が待ち構えています。面接官、試験官は日本語教師ではありません。今のままでは、ここで点を稼ぐことは期待できません。どうにかして、この山を越える力をつけさせるのが、私たちの仕事です。

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