Category Archives: 進学

どうしたらいいんだろう

7月17日(水)

今学期から受験講座を受け始めた学生は、今が一番不安なときだと思います。クラスの日本語の授業では絶対に出てこない単語が次々と襲い掛かり、習ったばかりの文法や教科書の後ろの方にあった文法が連発され、教師の言葉を追いかけるだけで精一杯かもしれません。確かに国の高校で習った覚えのある内容なのですが、それを日本語で改めて勉強するとなると、また違った難しさを感じるでしょう。

私は初級を教えた経験もありますから、目の前の学生が知っているはずの文法を組み合わせて説明を組み立てることもできますが、そうでない先生方は言葉の加減が難しいと思います。でも、進学したら、進学先の先生方が留学生に合わせたやさしい日本語を使ってくれることは、まずないでしょう。日本語「を」勉強するのではなく、日本語「で」勉強する訓練を、受験講座を通してしてもらいたいと思っています。

先学期以前から勉強している学生たちも、試練の時です。大学の独自試験に照準を合わせた問題に取り組むとなると、EJUよりずっと大量の日本語を読まなければなりません。また、筆答式となると、自分の考えを簡潔にまとめることも求められます。日本人の受験生よりは甘く採点してもらえるとしても、限度というものがあります。採点官にとって意味不明の文だったら、点数はもらえません。採点官は、KCPの先生方のように広い心で留学生の書いた文の意味を受け取ってはくれないでしょう。口頭試問となったら、論理的に話を進めていく必要があります。これまた特訓あるのみです。

EJUで少しぐらい点が取れただけでは、考えている大学には手が届きません。苦しくてもここで力を伸ばすのです。夏に鍛える――今年はまだ夏らしい日がありませんが…。

光と影

7月11日(木)

午後、E大学の留学生担当の方2名がが、今シーズンの入試制度の説明にいらっしゃいました。1名は先日お電話でお話しした方で、もう1名は、KCPの卒業生でSさんでした。顔を見た瞬間、思わず指を差して「あーっ」と言ってしまいました。

Sさんは、8年前にKCPを卒業してE大学の大学院に進学して、その後、E大学の留学生担当の職員になったとか。そんなに前になるかなあ。KCPにいたころと全く変わらない顔だけど(だから、指差しちゃったんですが)。話し方は、さすがに仕事をしているだけあって、かなり鍛えられていました。最近KCPからE大学に進学した学生の状況の説明なんか、堂に入ったものでした。

国にいたころや来日当初は、こういう将来など、予想だにしなかったでしょう。日本で働くつもりではあったでしょうが、一般企業に就職するかそこで経験を積んで起業するかなどということを、漠然と考えていたに違いありません。いろんな偶然が重なってE大学に職を得ることになったのですが、E大学在学中、学業面でも学業外でも光る存在だったからこそ、お声もかかったのです。

Sさんの話は喜ばしい限りですが、ショッキングな話も。E大学も日本の高校の夏休みに合わせてオープンキャンパスを開きますが、そのオープンキャンパスが予約制になったのです。以前からオープンキャンパスに予約制を取り入れている大学はありましたが、最近はどこの大学でもと言いたくなるほど広がりました。当日フラッと行って見られるオープンキャンパスが少なくなりました。

E大学の方のお話によると。不特定多数を相手にするのではなく、E大学に進学を希望する気持ちの強い人たちに手厚く対応したいので、予約制にしたそうです。定員厳格化の影響かもしれないとも思いました。でも、予約制にした大学のインターネットでの予約申込書が、同じひな形から作られているのを見て、言いようのない恐ろしいものを感じました。こういう形で個人のデータを採取し、そこから何かを得ようとしている巨大な影がぼんやり見えました。何となく、息苦しくなりました。

暗いムード

7月9日(火)

7月期の初日は最上級クラスでした。半分ぐらいがどこかで教えたことのある学生でした。大半が進学するので、オリエンテーションの後、東京や東京近郊の大学には容易に進学できないという話をしました。どうしても東京というのなら、思い切って志望校のレベルを落とし、滑り止めを確保すること、さもなければ首都圏以外の大学を志望校に加えることと、半分命令口調で訴えました。

初日からいきなり暗い話題で、学生たちは沈んでしまいましたが、今から言い続けないと、3月の卒業式のころに泣きを見るのは学生たち自身です。KCPの先生方が手分けしていろいろな大学の留学生担当者に話を聞いた結果、どこもかしこも難化しているので、学生たちに考え方を変えさせなければならないという結論に至りました。

さらに、進学後にビザをもらうとき、入管が日本語学校の出席率を重視するようになったという話もしました。心当たりのある学生は、いくらか顔が引きつってきました。こちらもまた、多くの大学の方が異口同音におっしゃっていたことです。上級ともなると在籍期間の長い学生もいて、それで入学以来の出席率が悪いとなると、挽回不可能かもしれません。たとえそうだったとしても、今までに何度となく注意されたのに行いが改まらなかった自分自身が悪いのです。目の前の快楽を追求したために将来の夢が消えたとしたら、帰国後同じ過ちを繰り返さないようにすることで、留学の成果につなげていくほかはありません。

2月や3月になってから、教師の言葉は真実だったと気が付いても、もはや手遅れです。今から毎日学校へ来れば、受かる大学を確実にものにしていけば、にっこり笑って卒業できるでしょう。私の話が、その第一歩につながってくれればと思っています。

初戦をものにせよ

6月19日(水)

留学生入試のトップを切って、早稲田大学の出願がもうすぐ始まります。そこで、志願者を集めて、卒業証明書など出願書類を点検し、志願表などの作成の注意点を伝えました。

今までいろいろな先生から何度も言われているはずなのに、「必着」の意味がよくわかっていない学生がいました。大学に直接持っていくなどと言っていましたが、入試要項には大学窓口では一切受け付けないとしっかり書かれています。1人の学生を救いました。

受験料の納め方にも質問が来ました。学生たちの出身国は日本より現金を使うことが少ないので、カードやアリペイなどで払うと思っていたら、みんなコンビニで現金で払うとのことで、ちょっとびっくりしました。

みんな志望理由書はこれからだそうです。ペンで書かなければならないので、間違えた時に修正テープを使ってもいいかというのが気になる点です。ダメとはどこにも書いてありませんが、日本人の心理としては、好ましい心証にはならないだろうと答えておきました。800字以上の文章を、精神を集中させて所定の原稿用紙に書かなければなりません。私もあまりしたい仕事ではありません。

早稲田大学は出願書類を電子的に作成するのですが、志望理由書だけは手書きを求めます。ワープロで書かれた文章からは漂ってこない志願者の体臭を感じたいのでしょうか。すべてキーボード入力で済ませられるとなると、志願者の本気度が盛り上がらないように思えます。一画一画丁寧に原稿用紙に刻み込むことによって、早稲田大学で学ぼうという気持ちが高まりそうな気がします。

26日必着ですから、遅くとも25日には郵便局へ持ち込まなければなりません。2020年度入試の初戦が始まりました。

外を見ろ

6月18日(火)

京都の大学の説明会を開きました。個々の大学の説明に先立って、京都市の留学生担当の方が、京都に留学する意義について話してくださいました。京都市の留学生に対する支援がとても手厚いことがよくわかりました。また、京都の大学全体が留学生を積極的に受け入れていこうとしていることも強く感じさせられました。

京都は、京大をはじめ、大学の街、学生の街というイメージがあります。市の人口の1割が大学生だそうですから、本当にそうなのです。同時に、市民も大学生を受け入れている、やさしく包み込んでいる感じがします。大学生は4年間しか京都で暮らさないかもしれないけれども、京都市民はよそから来た大学生に対して、その4年間、それこそ“おもてなし”の気持ちで接しているのでしょう。その延長線上に、留学生への支援体制があります。

京都は、明治維新後に天皇が東京に動座して、街が寂れかけた時、琵琶湖疎水をつくり、東山から市街地への落差を利用して水力発電を行い、その電力によって日本初の市街電車を誕生させました。このように、新しい文物を他に先んじて取り入れる気質もあります。だから、他の都市よりも一歩進んで留学生をドーンと受け入れようとしているのだと思います。

東京は、何もしなくても留学生が集まってくると思っているでしょうから、京都ほど留学生に対してフレンドリーではないような気がします。よーく探せば留学生支援策も見えてくるのでしょうが、東京都とかが音頭を取って京都市のように大学を取りまとめるというところには至っていません。もっとも、東京は大学が多すぎて、取りまとめる労力がとんでもなくかかってしまうのかもしれませんが。

何はともあれ、説明会に参加した学生たちは、京都の大学や京都で留学生活を送ることを真剣に考えてみるきっかけを得たようです。これを機に、東京から目を外に向けてくれればと思っています。

ダーティー

6月13日(木)

東京福祉大学の一件が世間を騒がせています。あんなに派手に留学生が行方不明になっちゃったら、学生管理が雑だったと言わざるを得ません。職員1人で100人もの留学生を見ることになっていたそうですが、本当に目が届いていたのはその1/5ぐらいじゃないでしょうか。

そもそも、“学部研究生”などという、法律違反でなければ何をしてもいいという脱法ドラッグみたいな発想で学生を集めることからして間違っています。大学関係者は学生に裏切られた的な釈明をしていますが、学生が支払う授業料などが目当てだったことは疑いありません。また、学生側にものびのびと働ける緩い管理へのニーズがあったことでしょう。この両者の利益が一致して、こういう仕儀になったのです。

日本語学校の側も、2月か3月になっても行き先の決まらない学生を引き取ってくれる大学を便利に使っていた面があります。日本語学習が非常に難しい背景を有する学生を大量に入学させてしまい、自分のところに在籍しているうちは不法滞在にさせたくないので、渡りに船とばかりにこうした大学に学生を送り込んだのでしょう。留学生30万人計画が達成間近だとはいっても、こういう到底留学生とは呼べないような存在も含めてのことですから、実際には道半ばです。

もう一つ、これが「福祉」大学を舞台に演じられているという点に不安を感じます。福祉というと、介護などで長時間労働低賃金というイメージがあり、それに加えてこうしたダーティーな話題を提供したとなると、さらに株が下がってしまうのではないでしょうか。日本人の福祉の担い手に悪影響が及ばないことを祈るばかりです。

眠そうな目

6月6日(木)

Kさんは今朝も眠そうな顔をして、遅刻寸前に教室に滑り込んできました。あと10日に迫ったEJUを受けますから、それに備えて夜遅くまで勉強していのでしょう。それはいいのですが、学校の勉強がおろそかになっているきらいがあります。最近、宿題を忘れたり毎日のテストでひどい点数を取ったりということが多くなりました。

Sさんは大学院入試が迫っています。やはり、その準備に追われていて、遅刻が目立ちます。「Sさん、それだけ勉強して大学院に合格しても、出席率が下がってビザが出なかったら勉強できなくなるんだよ」と注意していますが、今朝も重役出勤でした。遅刻のため平常テストが受けられず、進級にも影響が及びかねません。

「進学は先手必勝だ」と進路指導していますから、Kさんが6月のEJUにすべてをなげうつ気持ちも、Sさんが早い時期の入試を受けるのも、十分理解できます。でも、KさんもSさんも、今の日本語力では進学してから困ることは目に見えています。ちょうど日本語力を伸ばす時期が今なのです。ここで学校の勉強をおろそかにすると、基礎が不完全なまま中級や上級に進むことになり、砂上の楼閣が築かれることになります。

試験制度をいじって日本人の大学入試は早くなりそうになると、高校の勉強に差支えがあると大騒ぎになるのに、大学生の就活開始時期が早まることにも批判があるのに、留学生入試が6月に始まり、秋口ぐらいがピークだというのは野放し状態です。本気で世界の優秀な若者を集めようとしているのなら、留学生入試のありかたをもっともっと真剣に考えてもらいたいです。

書初め

6月4日(火)

昨日の夜、職員室の入り口から呼ばれ、推薦書を書いてほしいと頼まれました。私のクラスの学生でもないし、先学期受け持った学生でもないし、「私はあなたをよく知らないんですが、推薦書に何をどう書けばいいんですか」と聞きました。すると、「先生、Wですよ」という答えが返ってきました。思い出しました。去年S大学に進学したWさんでした。最後の学期は、私が担任でした。だから、推薦書と言えば私が書くことになります。

推薦書の材料にもしようと思って、詳しく話を聞いてみました。WさんはT大学の大学院に進学することを目的に来日したのですが、2018年度入試では失敗しました。それで、やむなくS大学に編入学しました。そういえばそんな事件がったなあとだんだん思い出してきました。そして、今回、T大学大学院に再挑戦するそうです。その出願書類の1つが、日本語学校からの推薦書なのです。

Wさんは、KCP在籍中、毎日図書室が閉まるまでずっと勉強していました。鋭いタイプの学生でも、要領のいい学生でもありませんでしたが、努力を継続できる学生でした。S大学に進んだ後も、T大学大学院への進学という大目標は決して忘れず、日本語の勉強をコツコツと続けてきました。それが実を結び、今では日経新聞が読みこなせるようになりました。ちょっと質問してみましたが、問題意識をもって日経を読んでいることがよくわかりました。

その他、将来計画なども聞き、推薦書のネタを十分に揃えました。そして、今朝、朝一番にWさんの推薦書に取り組みました。下書きから清書まで、1時間ちょっとでできました。今シーズン初の推薦書は、気持ちよく書けました。

大盛況

5月30日(木)

2時になっても、各大学のブースには順番待ちの学生が大勢いました。いつもなら1時半を過ぎれば会場はかなりスカスカになるのに、今回は終了予定時刻の2時を回っても、講堂は人いきれでムンムンしていました。

話を聞く学生があまりにも多く、いらっしゃったすべての大学の方々に名刺を配っている時間がありませんでした。留学生入試担当の方と直接お話をするというのが私の役目なのですが、それに影響が出るほどのにぎわいようでした。ピークのころは学生の勉強したいことを聞いては、比較的すいているブースを指示するという交通整理をしていました。例年より、会場でぼんやりしている学生が少ないように感じました。

大学院志望の学生は、さすがに大人で、自分の聞くべきことをきちんと考えてきたようです。話を聞くことができた大学の方たちは、そういう感想を漏らしていました。大学志望の学生はそこまでいかなかったようです。担当者が自分のスマホで大学のページを示し、ここに書いてあると教えていた場面も散見しました。

自分の欲しかった情報が得られた学生は、幾分興奮気味に私に報告してくれました。「先生、A大学は入試制度がこんなふうに変わりました」「B大学は出願締め切りが早くなりました」「C大学の先生に、TOEFLの点が高いと褒められました」「D大学に入りたかったけど、EJUで高い点が必要なのでやめました」「私の専門はE大学なら勉強できそうです」などなど、自分の日本語で得た貴重な情報を私に教えてくれました。

明日の運動会が終われば、EJUまで半月です。各自の志望校に向けて全力で突っ走り、この進学フェアで手に入れた情報を生かしてもらいたいものです。

80%

4月24日(水)

Jさんはとうとう学校へ来ませんでした。今月の出席率は、どうにか80%はキープしていますが、悪くはないという程度に過ぎません。このまま休み癖がついて楽な方へと落ちていったら、進学の目はなくなるでしょう。

このところ、進学先が日本語学校の出席率を重視するようになりました。成績が良くても出席率のせいで落とされてしまったと考えられる学生が現れています。Jさんもそういう道を歩み始めないとも限らないので、心配なのです。しかし、Jさんにそういう心配が伝わっていそうもなく、無断欠席を繰り返しています。

Jさんは、先学期は成績が振るわず、今学期進級できませんでした。そのため、同じ勉強をもう一度しているので、モチベーションが下がっているとも考えられます。でも、そんなことをしていたら、また進級できなくなってしまいます。同じレベルで足踏みを続けていたら、進学どころではありません。

もちろん、クラスの教師は注意していますが、こわいのは、Jさんが「またか」という気になってしまい、教師の言葉に耳を傾けなくなることです。卒業直前の切羽詰まった時期に及んで、頼れるのは日本語学校の教師しかいないという状況に追い込まれ、ようやく教師の言葉を正面から受け止めるようになる――という学生が毎年います。

進級を逃すくらいですから、Jさんはすばらしい日本語力を持っているとは言いかねます。出席率がよければそれをカバーすることもあり得ますが、80%をやっと上回る程度だったら、何のとりえもない学生になってしまいます。こういうことが、学生にはなかなか見えないんですよね。

だからと言って放置しておくわけにはいきません。4月なら修正可能ですから、手を尽くしていきましょう。