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始まりました

6月6日(月)

朝、出勤して受信トレイをのぞくと、Qさんからのメールが来ていました。この時間に届いている学生からのメールは、ほぼ間違いなく欠席の連絡です。読んでみると、案の定、欠席連絡でした。きちんと欠席連絡をしてきたのはほめられますが、「今日は休んでいただけませんか」はいただけません。「勉強したがっている学生がたくさんいますから、休むわけにはいかないんですけど…」と返信してやろうかとも思いましたが、この切り返しがQさんに通じるとは思えず、誤文を訂正するにとどめました。週の最初から脱力感をたっぷり味わわせてもらいました。

夕方、受験講座が終わって職員室に戻ってくると、午後の私のクラスのSさんが書いたW大学の志望理由書を渡されました。W大学の出願は今月末ですから、もう準備を始めないといけません。先週の面接の時に、SさんはW大学を受けたいと言っていましたから、まあ、予定の行動です。志望校について一生懸命調べて書いたのはよくわかりましたが、そこ止まりでした。調べた内容をSさんなりに咀嚼した跡が見られません。Sさんの人となりがうかがえる部分がないのです。

こちらは、脱力感というよりは、どうやって指導していけばいいのだろうかという、道のりの遠さに圧倒されそうでした。Sさんの志望理由書を読んで、今年も受験シーズンが始まったなと思わずにはいられませんでした。学生たちはEJUの勉強で戦闘開始でしょうが、進学指導をしていく教師は、志望理由書が書けるまでに学生を引っ張り上げていくことが、受験シーズンの最初の大仕事です。Qさんの志望校の出願はまだだいぶ先ですが、いずれこういう場面を迎えることになります。

東京地方は昨日梅雨入りしましたが、じとじとしている暇なんかありません。

紙が懐かしい

5月21日(土)

今学期から新しいシステムを導入し、出席はタブレット端末に入力し、テストの成績や宿題を提出したかどうかなどもコンピューター上の表に記録することになりました。ペーパーレス化を図ろうとしたわけですが、当方がまだ不慣れなせいもありますが、不便な点も見えてきました。

よく言われていることですが、一覧性という点においては、コンピューターは紙にかないません。誰がどのテストを受けていない、受けたけど不合格だというのは、紙なら文字通り一目瞭然ですが、コンピューターだと画面の大きさに限りがありますから、上下左右に画面を動かすことが必要です。

データがしっかり保護されているのはいいのですが、それゆえ目的のデータを目にするまでに何段階かの手続きが必要です。紙は、改変しようと思えばいくらでもできちゃいますが、見たいデータまで一直線にノンストップで進めました。

その他、まだまだ新システムの不便な点をあげつらうことはできますが、コンピューターの本領発揮はこれからです。コンピューターが得意とする点は、データをため込むことであり、ため込んだデータを検索して必要なデータを取り出すことです。システムが稼働して1学期も経っていませんから、たまったデータはまだ知れたものであり、検索の必要性はありません。しかし、たとえばある学生の入学から卒業までを追いかけられるくらいデータがたまってきたら、紙では頭を抱えてしまいそうな作業があっという間にでき、コンピューターの威力に恐れ入ることでしょう。

言うなれば、今は雌伏の期間です。学生の進路指導が本格化することには、新システムの恩恵が十分に感じられるようになるのではないかと期待しています。

運動会に来るかな

5月12日(木)

QさんはKCPの勉強を真面目にしようとしません。気が向いた時だけ授業に参加しているようで、毎日のように授業中にスマホをいじっては先生にしかられています。授業後は塾へ行って、そこで進学のための勉強をしているそうです。A大学が第一志望だと言っていますが、あのしゃべれなさ加減では、受験のテクニックを多少身に付けたところで、とうてい手が届かないと思います。

昨日とおとといは欠席で、ようやく出てきたところを捕まえて理由を聞きました。「どうして欠席したんですか」「11時に起きました」「何時に寝たんですか」「5時に寝ました」というような不毛の会話が続きました。要するに、学校を休んではいけないという気持ちが薄く、気ままな生活を送っているのです。塾に通ってさえいれば、A大学は自然に入れるとでも思っているのでしょうか。

奇跡でも何でもA大学に受かってしまえば万々歳ですが、おそらくそうはならず、その後始末がこちらに回ってくることと思います。今からQさんの力で入れそうな大学の目星を付けておかなければなりません。でも、Qさんの出席率で拾ってくれる大学があるかどうか…。どうして、KCPに対して何の感情も抱いていない学生のお世話に気をもまなければならないのか疑問に思うこともありますが、ビザを出した責任上、そこまで面倒を見なければならないのでしょう。

QさんにとってKCPは塾に通うための足がかりに過ぎませんから、ここには友達らしい友達はいません。塾に友達がいればまだ救われますが、Qさんのマイペースぶりだと、それも期待薄です。そんなQさんは、来週の運動会にちゃんと来るのでしょうか。競技のルール説明をした時の不熱心さを見る限り、非常に心もとないです。

明日から義捐金

4月18日(月)

熊本地震が、なかなか収まりそうにありません。一発目の地震は、震度こそ大きかったものの、そのわりに被害が大きくないと感じました。しかし、それ以後、けっこう規模の大きい地震が続き、被害がだんだん拡大し、ついに16日未明の(現時点では)本震と呼ばれる地震が発生しました。いつの間にか死者が42名を数えるまでになり、11万人もの方々が避難しています。震源が大分県方面に移動し、中九州地震と言ってもいいような様相を示しています。

今回の地震は、東日本大震災とは違って、活断層が引き起こした地震です。今回の震源域の活断層は、四国を東西に貫く中央構造線につながっています。この中央構造線が大暴れしたら、日本が割れてしまいかねません。そんなことはおそらくないでしょうが、悪い想像は尽きません。

14日の地震発生以来、海外から東京は大丈夫かという問い合わせが何件も来ています。震源域から東京まで、どういう測り方をしても800キロはあります。大丈夫に決まっていますが、1万キロも彼方から見ると、800キロなんて至近距離なのです。しかも、大事な子どもを預けているとあれば、わずかな不安でも見逃せないのでしょう。

今回は、今のところは福島原発のような事故は発生していません。でも、震源域の移動方向の逆方向には、稼働再開したばかりの川内原発があります。政府は稼働を続けることに問題はないと言っています。一抹の不安を感じると同時に、もし政府が稼働停止を命じたら、それが必要以上に海外の人々の不安をあおるのかもしれないとも思っています。

明日から今度の震災の被災者に送る義捐金の募金を始めます。募金活動のボランティアを募集したら、予想を上回る人数の学生が集まったとのことです。学生たちは地震の行方に関心を示しつつも、むやみに不安がることなく勉強に励んでいます。家族から離れた異国の地で、立派なものだと思います。

高をくくる

4月11日(月)

私は、コンピューターはなかなか壊れないって信じていますから、わりと度胸よくいろんな操作をします。コンピューターにめちゃめちゃ詳しいわけではありませんから、コンピューターの死命を制するような操作は知りません。自分の入力したデータが消えちゃうぐらいのことは時たまありますが、全体のデータを再起不能にするようなことはありません。コンピューターを物理的に破壊したことなどは、もちろんありません。

というか、どんなことをしたら壊れそうかっていうことは見当がつきますから、そのラインは踏み越さないようにしています。いい意味で高をくくれるのだと思います。ここまでなら冒険できる、たとえ失敗しても損害はこんなもんだろう、そういうことが直感的に見積もれますから、その直感にしたがって、ここまでしたらまずいだろうということを避けています。

カンが働かない人は、プロが予想もしないようなことをしでかしたり、逆に怖がりすぎてごく単純な操作しかしなかったりと、両極端の様相を示します。高がくくれない、言い換えれば危険度を予測できないから、コンピューターに致命的なダメージを与えたり、コンピューターの能力の100分の1も活用しなかったりということになってしまうのです。

今日から新学期で、新しい学生管理・授業管理システムの運用が始まりました。トラブルが全くなかったわけではありませんが、「大過なく」と言っていい初日だったと思います。トラブルに遭った先生にとっては「大過あり」だったでしょうが、皆さん適切に対処してくださったおかげで、全体としては上出来の滑り出しだったんじゃないかと思っています。

初日だから安全運転をしたという面もあるでしょう。慣れてくると悪い方向に高をくくり始めて、どこかで破綻を来たすかもしれません。油断と呼ばれる高のくくり方をしてはいけません。上手に高をくくって、このシステムを120%活用していきたいです。

入学式挨拶

皆さん、ご入学おめでとうございます。世界の国々からたくさんの勉学を志す若者が、このKCPに入学してくれたことをうれしく思います。

今ここにいる皆さんの中には、3か月の予定で入学した人もいれば、KCPで2年勉強して、そして日本の大学で4年、さらに大学院にまで進学するつもりの人もいるでしょう。勉強する期間は長短さまざまですが、今、この入学式の場で、私が皆さんに最も申し上げたいことは、10年後の自分にほめてもらえるような留学をしてほしいということです。10年後、2026年の皆さん自身が、今の皆さんに「2016年の私よ、よく日本留学を決意してくれた。そして、一生懸命勉学に励んでしてくれた。そのおかげで今の私があるんだ。本当にありがとう」と感謝したくなるような留学生活を送ってください。

この留学は、皆さん自身が皆さん自身に対して行う投資にほかなりません。勉学という、時間とお金と労力を必要とする投資は、すぐに何らかのリターンをもたらすわけではありません。今日勉強したことが、明日役立つとは限りません。10年後ぐらいに花が咲き、実りをもたらすのです。「10年後の自分からほめられる」ですから、目先のことだけではなく、自分の将来像を思い描きながら留学生活を送っていってください。

すぐに成果が出ないからあきらめてしまうのではなく、成果が出るまで努力を続けるようにしてください。中途半端な投資は、回収もままならず、丸損になってしまいます。皆さんは自分自身に投資し始めたのです。投資対象である自分自身がいい加減な気持ちだと、その投資は全く生きません。見方を変えれば、安易な気持ちで留学生活を送ることは、自分の手で自分の未来を閉ざすことなのです。10年後から叱り飛ばされるようなことは、絶対にしないでください。

もちろん、留学生活を楽しんでももらいたいです。でも、忘れないでください。楽しむだけでは充実した留学生活にはなりません。10年後の自分と相談しながら、今輝くよりも、将来を輝かせる留学を築いていってください。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

新システム

4月7日(木)

今学期から、学生の出席管理や成績管理の新しいシステムが稼働します。新システムは日々の授業の出欠から期末テストなどの成績、進路の決定まで、学生のKCPでの生活は何でも記録しておけます。今日は、新学期の打ち合わせを兼ねて、先生方への新システムの説明会を開きました。

システムを熟知しているM先生が実に要領よく説明なさったのですが、予定の時間をオーバーし、それでもまだ先生方の顔には不安げな表情が残っていました。機能が盛りだくさんですから、1回の説明ですべてをマスターするのは難しいです。授業のたびに使って、使いながら覚えていくっていうことになります。使い方が身についたら、裏ワザも開発され、システムの意外な効用が発揮されるようになるでしょう。そうなれば、私たちが学生を見る目も自分の仕事に対する姿勢も、ミクロな部分からマクロな広がりまで、磨きがかかるに違いありません。

というわけで、今は新システムへの移行期ですから、いつもと違った新学期前夜を迎えています。ひたすら新学期につながるデータを入力したり、こっそりシステムの使い方を練習したり、来週になったら失敗や準備不足は許されませんからね。

新システムになれば、受験講座も今よりがっちり管理できるようになります。それは、今よりきめ細かく学生を見守っていくことにもつながります。1人の学生に関する記録が集約されますから、受験講座と日々の授業や生活が有機的横断的につながり、クラスの先生からも、受験講座の講師からも、より的を射た指導ができるようになると考えています。

野良猫が来た

4月6日(水)

朝、太陽が顔をのぞかせてけっこう暖かかったので、今年初めて、学校の玄関のドアを思い切り開け放ちました。その玄関を通って、新入生がレベルテストを受けにどんどん入ってきました。予定より少し早く、テストを始めました。

レベルテストは、私たち教師にとっては新入生との初顔合わせです。どんな学生が入ってくるのか、厳しいチェックの目を入れます。

教室内飲食禁止だと告げ、飲食禁止の表示まで示したにもかかわらず、堂々とコンビニのコーヒーを飲んだKさん、マイナス10点。携帯電話はかばんにしまえと、ジェスチャーも交えて伝えたにもかかわらず、1科目目のテストが終わったら早速使おうとしたLさん、妙にぞんざいな口の利き方も含めて、マイナス20点。試験中に机の上から落ちた消しゴムを拾ってあげたら、きちんと「どうもありがとうございます」とお礼を言ったPさん、プラス15点。わからないことは手を挙げて積極的に質問していたCさん、プラス15点。試験中ずっときょろきょろしていたTさん、後から一人ぼっちで来日したと聞き、情状酌量して、マイナス5点。

こうした第一印象の評価って、わりと当たっちゃうんですね。おととし、レベルテストで私のクラスでチェックの対象だったSさんは、入学後、予想通り悪いほうで目立ちました。この3月の卒業まで、自由気ままな気質は変わらず、私は密かに「猫」と呼んでいました。でも、志望校に向かって突き進む時の姿は実に真摯でひたむきで、Sさんの蔵している底力の強さや能力の高さが感じられました。野良猫のまんまじゃどうにもなりませんが、それを矯めて自分自身も気づかなかった魅力を引き出すことが、私たちの仕事です。留学に来た本人も、送り出した親御さんも、自分(子ども)の新たな一面を探り出してもらえることを期待しているんじゃないのかな。

Kさん、Lさん、Pさん、Cさん、Tさんを、卒業までに私が受け持つかどうかは全くわかりませんが、教室で相まみえた時には、そういう気持ちで接します。

書類整理

3月30日(水)

職員室の席替えがあるため、教職員一同、身の回りの整理整頓に余念がありません。私は席の移動はありませんが、引き出しの中や机の上にたまった書類をずいぶん整理しました。

自分としては書類をため込んでいるつもりはなかったのですが、今は捨てられないとか、後で必要になるかもとか思ってどこかに突っ込んでおいた書類が、賞味期限切れとなって、わんさか見つかりました。一度捨てちゃったらもう復活できませんから、迷ったらキープなのですが、何で取っておいたのかわからないようなので机や引き出しが占領されているようじゃ、社会人失格ですね。

机まわりだけではありません。受け持ったクラスのプリント類も整理しなければなりません。欠席者に配り損ねた教材を見ていると、この3か月のことがありありと思い出されてきます。出席簿を見ると、卒業していった学生の顔が一人ひとり浮かび上がってきます。でも、そんな感傷に浸っている暇はありません。いらないものはばっさり捨てて、保存すべきものはしかるべきところに置き、新学期に備えました。

驚くべきはシュレッダー。ダストボックスが数時間も経たないうちに2回も満杯になりました。それだけの秘密書類が、この職員室から消え去りました。それだけ、思い責任を背負っているのだなと感じさせられました。でも、サーバーにはシュレッダー級の書類がその数百倍か数千倍か数万倍か、もしかすると、数億倍ぐらいあるに違いありません。二度と日の目を見ることのない電子的なデータが、これからも幾何級数的に増えていくことでしょう。

コンピューターの中に保存しておけば大丈夫って、私たちは書類整理を放棄している面があるんじゃないかなって、ふと思いました。

ハンドドライヤー

3月14日(月)

2階から5階の学生用トイレに、ハンドドライヤーがつきました。今年の卒業生一同が寄付してくれたものです。これまでにAED、廊下のベンチが卒業生からの寄付で贈られています。AEDは幸いにもまだ使用実績はありませんが、ベンチはすっかり定着して、学生たちのおしゃべりの場、軽い食事の場を提供してくれています。このハンドドライヤーも、すぐに空気のようにあたりまえの存在となることでしょう。

そもそも学生たちは、およそハンカチというものを持たず、トイレで手を洗うと、手を振って水気を飛ばそうとします。そのため、トイレの床は常に濡れており、それに外の土やらほこりやらが絡んで、どんなに掃除をしてもどこと泣く汚れた感じがありました。トイレの鏡もその水滴の標的となり、きれいとは言いがたい状態でした。

今年の卒業生は新校舎の1期生で、きれいな校舎が汚れていくのが耐えがたかったのでしょう。寄付物件として、ハンドドライヤーを選んでくれました。早速学生たちは使っています。1階の教職員トイレには取り付けられなかったので、私も3階の学生トイレで用を足して手を洗って使ってみました。思ったより強力で、あっという間に洗った手が乾きました。外は雨が降っていて、靴がいつもより汚れているはずですが、トイレの床はいつもよりきれいなような気がしました。

卒業生が後輩のために寄付をするというパターンが定着したようです。以前から同窓会組織はありましたが、ベンチやハンドドライヤーなど目に見える形で先輩に触れられるようになると、「同窓」という意識も強まるでしょう。

書類を取りになどでKCPへ来る卒業生がちょこちょこいます。明日からは、トイレを案内してあげようと思います。