Category Archives: 学生

EJUのもっと先

5月21日(火)

毎週火曜日は、日本語プラスで大学進学のガイダンスのような授業をしています。このところ大学の留学生入試の仕組みを説明してきました。先々週は志望理由書、先週は面接、そして今週は各大学の独自試験の日本語について話しました。

留学入試の日本語試験は各大学でまちまちです。JLPTの言語知識(文法と文字語彙)のような問題を出すところ、日本人の高校生でもハードに感じるだろうと思われる読解をさせるところ、聴解までやるところなど、千差万別です。超級では来学期あたりからこういう問題を授業に取り入れていくというのが例年のパターンですが、私が担当している日本語プラスの学生たちは中級が主力です。そういう問題に触れるのも初めてだったかもしれませんし、予告なしだったこともあり、面食らっているようでした。

小論文のパターンも紹介しました。長文を読んで意見をまとめるのは手に負えないでしょうから、軽めの過去問を紹介しました。それでもすぐに書ける代物ではないと感じているようでした。社会問題について意見を書く問題でしたから、その社会問題についてある程度の知識がないと書きようがありません。そして、今年の入試で取り上げられそうなテーマもいくつか挙げました。能登半島地震は知っていると言っていましたが、どこまで深く知っているのでしょう。そこから防災とか過疎化とか、更なる問題と関連付けて文章が書けるでしょうか。

少なくとも、日本や世界の動きに敏感であってほしいものです。円安だと仕送りを円にした時増えるからうれしいなんていう程度では、どこの大学も拾ってくれないでしょう。これをきっかけに、今から目を外に向けてもらえれば、学生たちの将来は明るくなるでしょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

座りっぱなし

5月18日(土)

昨日は川越課外授業でしたが、今学期の次の学校行事は、6月10日の大学・大学院進学フェアです。参加校がほぼ決定しましたから、来週あたりから学生たちに進学フェアがあることを伝え、進学するつもりが少しでもあるのなら必ず出るようにと指導していきます。

教師が口で出ろといくら繰り返しても、学生はそう簡単には動きません。ですから、パワーポイントで視覚に訴える資料を作ることにしました。参加校には、学生誰もが知っている大学もあれば、日本人には有名でも留学生には無名な大学もあります。また、学生たちが知っていると言っても、名前と偏差値レベル程度でしょう。ですから、パワーポイントで各大学のそれ以外の特徴を紹介して、学生たちに具体的なイメージを明確に持ってもらおうと思っています。

そう思って資料作りを始めると、私自身も各大学について特別詳しいわけではないことを痛感しました。例えば各大学の学部卒業生の大学院進学率を調べてみると、意外と高かったり低かったりしました。各大学のウリは何かとなると、かなり気合を入れて調べなければなりませんでした。まず、私がその大学に入りたくならなければならないんですよね。

試行錯誤を繰り返しながらでしたから、参加予定校の3分の1ほどで終わってしまいました。でも、資料作成の要領はつかめましたから、月曜日以降ははかどることでしょう。

昨日は朝から1日中川越の街を歩きつづけましたから、スマホの歩数計が3万4千歩余りを記録しました。しかし、今、歩数計を見てみたら、わずかに3729歩。そうだよね。お昼にちょっと外に出ただけで、ずっとパソコンの前だったもんね。そのぐらい根を詰めて作ったんですから、学生のみなさん、来週の大学紹介、見てね。見なくても10日は必ず出てね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

好天に恵まれました

5月17日(金)

朝から快晴。7時に本川越駅に着きました。先生方への事前説明で示したおすすめコースを歩いて氷川神社へ向かいました。大正浪漫通りにはたくさんの小ぶりのこいのぼりが、四万十川などで行われているような、川の両岸を差し渡してたなびかせるのと同様に、道をまたいで泳いでいました(ところが、いつの間にか片付けられてしまい、昼間通りがかったときには、夢幻のごとく、何もありませんでした)。富士見櫓跡に上ると、マンションのすき間から富士山の頂上部が見えました。新河岸川遊歩道から木立の向こうに氷川神社の大鳥居が見えると、やっぱり立派だなと感じました。菓子屋横丁は店がまだ開いておらず、観光客も皆無でした。蓮馨寺は、毎朝お参りしていると思われる地元の方が数人手を合わせていました。境内を掃除している方もいましたが、こちらも毎朝なのでしょうね。

1周して駅に戻ると、先生方が少しずつ集まり始めました。その後学生も来始めましたが、学生も教師もみんな直射日光を避けて日陰に集まったため、駅構内から出る通路を塞いでしまいました。これは反省事項です。

あれほど時間厳守と指導しておいたのに、定刻になっても学生の集まりは7~8割だったでしょうか。“いい学生”と評判の学生も、定刻過ぎの電車で到着し、慌てて集合場所に向かっていました。冷たくおっぱなして出発しても、結局こちらの手に負えなくなるだけですから、待たざるを得ません。これは永遠の課題です。

時の鐘付近で学生の整理に当たっていると、超級クラスのグループが来ました。正午少し前だったので、12時に鐘が鳴ると教えると、写真を撮りながら待っていました。私も時の鐘を聞くのは初めてでした。自動で撞木が鐘から離れ、今か今かと待ち構えていると、撞木が解き放たれて鐘を撞きました。思ったより小さな音(それでも付近には十分響きました)でした。鳴っていない鐘を見上げているくらいが、想像力が掻き立てられて、かえって面白いんじゃないかなと思いました。

超級グループの学生たちが鐘を聞いた後すぐに立ち去ろうとしたので、時の鐘の奥に祭られているお稲荷さんを拝んだかと尋ねました。拝んでいないと答えたので、「ここは合格に著しいご利益があると言われているのに、そこにお参りせずに行ってしまうんじゃ、お前ら全員だめだな」と脅したら、慌てて拝みに行きました。みんな、受験に関しては必死なんですね。

外歩きをする課外授業は、“天気よければすべてよし”みたいなところがあります。最終集合場所の蔵里にやってきた学生たちは、みんな満足そうでした。歩き疲れたDさんやGさんたちのように、しばらくの間座り込んでいる学生もいました。ここでも定刻になっても現れない学生がいて、教師が連絡を取る場面が見られました。体験イベントに夢中になっていたとのことでしたから、担任の先生からは大目に見てもらえたようです。

私は、うっかり、夕方歯医者の予約を入れてしまったので、へとへとの体を引きずって歯医者へ行きました。口を開けたまま、寝てしまいそうになりました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

聞く力

5月14日(火)

留学生の大学入試には、必ずと言っていいほど面接があります。受験生の日本語力を確かめることはもちろん、勉学に対する意欲や、4年あるいはそれ以上に及ぶ留学生活に耐えられるかどうかも見ていることでしょう。そして、各大学のアドミッションポリシーに合致した留学生を選抜していることと思われます。

いろいろな大学の先生方の話を総合すると、面接試験はコミュニケーション能力の試験でもあるようです。日本語でコミュニケーションが取れない学生は、指導のしようがないので入学させないという考えの大学もあります。志望理由や将来の計画など王道的な質問だけでは、暗記してきた模範解答でかわされてしまいます。それ以外に、受験生の人となりや社会性を見る質問もなされます。

さて、コミュニケーションとは何でしょうか。自分の気持ちや考えを相手に伝えられればコミュニケーションは完了でしょうか。いいえ、相手の気持ちや考えを理解することも含まれます。受験生はとかく前者に力を入れがちですが、後者がなければそれは自分の思いの押し付けに過ぎません。

そうならないためには、相手の話をきちんと聞いて受け止める力が重要です。しかし、この力は上級になれば身に付くといったものではありません。日頃からスマホではなく人間に向き合わなければ、この力は伸びません。翻訳ソフトの助けを借りてばかりでは、うわべだけの理解しかできません。その言葉に込められた重層的な意味など、想像の埒外でしょう。

日本語プラスの進学授業で、面接試験の大学側にとっての意義を訴えました。今のうちからそういう意識で準備していってもらえば、文字通り実りの秋が迎えられるはずです。天皇陛下も田植えをされたとのことです。今から秋を楽しみにしていましょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

5月13日(月)

Sさんは理科系の日本語プラスを取っています。Sさんのいいところは、わからないことをすぐ質問するところです。「ここまで、質問ありませんか」とこちらから誘いかけても質問しようとしない学生が多い中、Sさんは私が何もしなくても「先生、…」と聞いてきます。そして、その質問が的外れだったことはありません。「さっき説明したのに」とか、「それって、今までの話と全然関係ないじゃないか」などということはなく、他の学生にとってもためになることばかりです。宿題をきちんとやり、予習も怠りなくやっていることがよくわかります。勉強しているからこそ、疑問点も浮かび上がり、私の話で満足できないところも出てくるのです。

6月のEJUも大いに期待したいところですが、Sさんにとっては初めてのEJU受験です。日本語・読解の過去問では問題を解くスピードが全然足りません。解いた問題の正答率は非常に高いのですが、制限時間内では7、8問残してしまいます。すると、平均点は確保できますが、Sさんが考えている大学には手が届かない点数にしかなりません。理系科目にしても、「じっくり考えたらできる」では思い通りの成績は挙げられません。そう思って、いつもの学期より“ずるい解き方”を教えています。例えば素早く概算して答えを選ぶとか、化学式を見ただけで答えを絞り込むとか、まじめなSさんにとっては許しがたいと思われる考えを伝授しています。

いずれにしても、Sさんは2024年のKCPの期待のホープです。上手に育てていかねばと思っています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

教えやすい

5月10日(金)

F先生の代講で入ったクラスには、先学期レベル2で教えた学生が数名いました。また、日本語プラスで顔見知りになっている学生もいましたから、クラスの半分ぐらいは知っている学生でした。ですから、授業の終わりごろにはだいたい顔と名前が一致してきました。

そうすると、当然、顔と名前とできる・できないが紐づけられます。だから、この問題はこの学生に答えさせてみようとか、ここはあの学生の意見を聞いてみようとか、逆に、この学生からはろくな答えが返ってこないだろうから指名するのはやめておこうとか、授業を組み立てる面白さが感じられるようになってきます。

Qさんは、最初に指名した時に全然答えられず、その後こっそりスマホをいじっているのを見つけましたから、私の心の中では最低レベルにランク付けされました。Yさんは、発音はイマイチですが、前向きな姿勢が感じられ、上級でまた会いたいなと思いました。Nさんは先学期も教えた学生ですが、順調に伸びているのが感じられ、このまま力を付けていってほしいと思いました。Gさんも、相変わらずよくしゃべり、このクラスでも中心的存在のようで、安心しました。

何より、このクラスは学生たちの仲がいいので教えやすかったです。冷たい雰囲気のクラスだと、学生同士が名前を覚えません。このクラスは「じゃあ、次は◎△さん」なんて、学生が言い合っていましたから、学期が始まって1か月ほどでよくなじんでいるんだなと思いました。

こういうクラスの代講なら、もう一回ぐらい入ってもいいですね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

明るくなりました

5月8日(水)

Dさんは日本語プラスの理科系の科目に出ています。しかし、数学も理科も難しいと言います。確かに、物理や化学の授業中の様子を見ても、わかっているような顔はしていません。数学のS先生も、Dさんは苦しそうだとおっしゃっていました。そのDさんが、暗い顔をして、重い足取りで進学相談に来ました。

Dさんは大学で建築か機械を勉強したいという希望を持っています。建築と機械では分野がだいぶ違います。まだはっきり決められないというのが本音なのだと思います。とはいえ、6月のEJUで運命が決まってしまうケースが多いのが留学生入試です。その運命の6月16日まで39日。のんびり迷っている暇はありません。

機械工学を専攻するなら、数学や物理はかなり力を入れなければなりません。AIを搭載したロボットが作れたらいいなあといった夢や憧れだけでは勉強できません。一方、建築は、耐震構造とかという方面は数学や物理をハードに駆使します。しかし、デザインに重きを置いた建築なら、そこまでのハードさは求められません。その代わり、多少なりとも絵の素養は必要でしょうが。

Dさんに聞いたところ、デザイン系の建築も大いに考えているとのことでした。それなら、A大学はEJUの指定科目は日本語だけです。S大学は数学コース1(文科系)で受験できます。K大学は体験入学に参加すればEJU不要で合格証を手にすることができるかもしれません。K大学には、3月までKCPにいたDさんの国の先輩が進学していますから、その先輩から情報やアドバイスが得られるでしょう。

そんな話をすると、Dさんは先月からずっと感じていたストレスが消えたと、笑顔を見せてくれました。自分でも調べてみると言って、雨の中を帰っていきました。こうして早いうちから騒いでいる学生が、結局受験に勝つものです。Dさん、一歩前進かな。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

初欠席

5月2日(木)

プライベートレッスンを受けているHさんは、小学校入学以来、学校を休んだことがありません。体調が悪くても親が休ませてくれず、お腹が痛いとか言いながらも学校に出ました。ですから、小学校、中学、高校と皆勤賞をもらいました。その時は誇らしく思い、ひそかに優越感に浸りました。

そのHさん、なぜプライベートレッスンを受けているかというと、会社の仕事で日本語が必要だからです。通常のクラス授業に加えて、会話練習やJLPTの問題などに取り組んでいます。仕事に直結するとなると気合が入るものです。話し方の間違いを指摘するとすぐに言い直したり別のシチュエーションで使ってみたりしようとします。

ところが、連休明けに出張が入ってしまいました。そのため、どうしてもKCPを休まざるを得なくなりました。小学校から続けてきた皆勤が途切れると思うと、Hさんは残念でなりません。二日酔いの朝も、文字通り這うようにして登校してきたのです。私にまでその残念が乗り移り、「仕事だからしょうがないよ。Hさんはほかの学生みたいにいい加減な気持ちで休むんじゃないんだから」などと慰め役に回りました。

Hさんの爪の垢を煎じて飲ませたい学生がおおぜいいます。Dさんはまた日本語プラスを休みました。数学のS先生から才能があるとお墨付きをいただいているのに、このままでは宝の持ち腐れに終わってしまいそうです。RさんはA先生にたっぷり油を絞られていました。こちらも光るものを持っているんですがね。

明日からの連休、Hさんは出張の資料作りをするそうです。私は、例によって関西遠征です。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

悩み

4月26日(金)

文部科学省からの奨学金をもらう学生を決める面接をしました。正確には、KCPが奨学金をもらう学生として文科省に推薦する人を決める面接です。書類審査などで落とされる可能性がありますから。とはいえ、こちらから推薦した学生は例外なくもらえると考えていいくらいですから、事実上「奨学金をもらう学生を決める面接」なのです。

まず、奨学金が欲しい人を募集しました。出席率で制限を加えましたから、誰でもというわけにはいきません。毎日口を酸っぱくして休むなと言っているのですが、こういうところで残念な思いをする学生が後を絶ちません。また、日本で進学する留学生対象ですから、就職希望や帰国予定の学生は対象外です。

こちらの希望としては、お金に困っている学生にあげたいです。出席率や成績がよくても、裕福ない家庭の学生には、遠慮してもらいたいところです。お金の出所は私たちの税金ですから、奨学金を遊ぶ金や貯金の積み増しに使ってほしくはないです。ですから、面接の際には経済状況も聞きます。

Sさんは学業優秀で、出席率も問題なく、しっかりしたビジョンを持って進学しようとしていますから、当選確実です。残りの数名が横一線で、甲乙つけがたい状況です。Kさんはお金に困っていますが、成績が心配です。でも非常な努力家です。やはりお金の心配が絶えないCさんは、アルバイトがなかなか決まらないと言っていました。意外だったのがYさんで、あっさり落ちるだろうなと思っていたら、自分の将来に対してとても深い考えを持っていることがわかりました。好感度急上昇です。

…などなど、結局だれを選べばいいか決めかねて、継続審議ということになりました。各方面から情報を集め、最終決定します。もう少し受給者枠が多ければみんな推薦できるのにね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

連帯感

4月25日(木)

今学期の日本語プラス理科の各科目は、毎回宿題を出し、その答え合わせをしながらEJUの範囲を復習していくという形で進めています。EJUの直前までに全体をカバーし、最後の1、2回は過去問を通しでやってみようと考えています。

木曜日は物理です。Oさんはきっちり宿題をしてきました。時間はかかったけど最後までやったと言って、宿題用紙を見せてくれました。Sさんも、学校でもらったもの何でも突っ込んでいるのではと思われるファイルから、しわくちゃになった宿題用紙を引っ張り出しました。Mさんは真っ白に近い宿題用紙を机の上に置いて、私を見つめました。Kさんはやけに硬い表情でした。できなかったのかもしれません。

答え合わせは、全部についてやっていると時間が足りませんから、今回のテーマである力学の要点を解説するのにちょうどいい問題や、学生が知らないと思われる解き方がある問題や、学生がつまずきそうな問題や、先週教えたテクニックを使う問題や、要するに教えるのに都合のいい問題に絞りました。

宿題をきっちりやって来たOさんは質問します。しかし、発音が悪くてその質問の意図がなかなかつかめませんでした。質問内容は急所を突いており、Oさんの質問を起点に授業を広げられました。MさんやKさんにも良い影響を与えたことは確かです。それだけに、発音の悪さが気になります。口頭試問で苦労しそうな気がしました。

Sさんはくちゃくちゃの紙を出したわりには鋭い質問をしてきました。私が説明を省略しようとした問題について質問し、やはりクラス全体に盛り上げました。思ったより理解が進んでいる感じがしました。

出席したメンバー間には無言のうちに同じ道を進む者同士の絆みたいなものが生まれたように見受けました。今年のメンバーは、思ったより期待が持てそうです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ