Category Archives: 進学

見詰める

8月10日(木)

だんだん入試シーズンが近づいてきて、それに向けた指導も始まっています。面接での受け答えを見ていますが、現時点では私のクラスの学生で対外戦ができそうなのは2~3名程度でしょうか。独自色が全くないというか、面接官がうんざりするような話ばかりというか、まあ、自分を売り込むとか面接官の心を捕らえるとかというゴールの対極にあるような答え方ばかりでした。

1クラス分の答えを列挙してみると、似たり寄ったりの内容が並び、それを見た学生たち自身も、これではいけないと多少は刺激になったようです。刺激になったのはいいとして、じゃあ、横並びから脱することができるようなネタを持っているのかというと、それもまた怪しいような気がします。学生たちの人生や経験が無色で平板極まりないものだとは思えません。しかし、そういった「今まで」を、面接で点が取れる答えにまで加工していく技術が、学生たちにはまだまだ足りません。今ここで自分の人生を違った角度から見つめ直すことは、これから男盛り女盛りを迎える学生たちにとっては非常に有意義だと思います。入試のためなどという狭く功利的な気持ちから離れて、是非しておいてもらいたいことです。

ナンバーワンよりもオンリーワンとはよく言われますが、常にオンリーワンを目指し続けるというのも、精神的にはしんどいのではないでしょうか。でも、土曜日のスピーチコンテストの審査員をしてくれた卒業生たちは、オンリーワンを追求してきたのではないかとも思います。そういう先輩を見習って、今の学生たちにも敢えて茨の道を進んでもらいたいと思っています。

有名じゃないけど

8月4日(金)

スピーチコンテスト前日とあって、どこのクラスも応援やスピーチの練習に余念がありません。私のクラスも授業の最後の15分は応援練習にあて、「恥ずかしいと思わないで手足を思い切り動かせ。そうじゃないとかえって恥ずかしいぞ」などといっちょまえくさったアドバイスなんかしちゃいました。

スピーカーの練習が終わったころ、F大学の留学生担当の方がいらっしゃいました。F大学は今年Sさんが入った大学で、Sさんは勉強にもクラブ活動にも力を入れているとか。KCPにいるときにはおとなしい印象しかなかったんですが、F大学ではかなり積極的に動いているようです。

だから、今年もSさんのようなすばらしい学生を送ってくださいというのが、F大学の方の訪問主旨です。F大学は、首都圏では高い評価を得ている大学ですが、KCPの学生の母国では知名度がゼロに近いです。Sさんにとっても、私たちが紹介して始めて知った大学です。私たちがなぜF大学を紹介したかというと、F大学は進学した学生が非常に満足していて、奨学金制度も充実しているからです。F大学の担当の方は、それに加えて、留学生と日本人学生とのつながりが強いこと、就職のケアも手厚いことなども強調なさっていました。

日本人の18歳人口の激減を控え、どこの大学も生き残りに必死です。生き残り策の1つとして、にわかに留学生を増やそうというのには与したくありません。F大学のように誠実に留学生を育ててくれる大学とのつながりを築き、そういう大学に1人でも多くの学生を送り込みたいと思っています。

8月2日(水)

今学期から受験講座を受けているLさんは、まだ初級の学生です。Lさんが勉強しているEJU生物の過去問をさせてみると、問題文を読むのに恐ろしく時間がかかります。カタカナの言葉はからっきしだし、未習の和語に出くわすと意味が取れなくなってしまいます。

次のEJUまで3か月ちょっとありますが、この調子だと相当苦しい戦いになりそうです。確かに、問題文の意味や選択肢の内容を把握したら、ほぼ全問正解にたどり着きます。国でしっかり勉強してきたことがうかがえます。しかし、いかんせん時間がかかりすぎます。これでは、問1から問5までは全問正解だけど、問6以降は白紙などということにもなりかねません。化学も同様であることは想像に難くありません。

Lさんと同じレベルの学生でも、実戦に堪えるスピードで問題が解ける学生がいます。だから、この問題の根本は、Lさんの日本語読解力が足りないことだといえないこともありません。生物の問題の前に読解力と速読する力を付ける訓練をすべきだ――というのは正論です。しかし、Lさんに読解の練習問題ばかりさせたら、きっと勉強がいやになってしまうでしょう。Lさんが一番好きで一番得意な生物を通して、Lさんの日本語力を伸ばす手はないかと、模索している最中です。

同時に、日本語は日本留学の壁になっているのだなあとも思います。このままでは、EJUの問題が読めないがゆえに、Lさんは日本留学をあきらめざるをえなくなるおそれがあります。専門に関しては優秀な頭脳を持っているにもかかわらず、それを評価してもらうに至らず、日本を後にするかもしれないのです。もちろん、そんなことにならないように全力を尽くしますが…。

まだです

7月26日(水)

先週末に6月のEJUの成績通知書が学校に届いて学生たちに手渡しましたが、EJUの実施機関であるJASSOから実施結果の発表がまだありません。今までなら、成績通知発送と同時ぐらいに発表されていたのに、いったいどうしたことでしょう。成績通知書には平均点は記されていますが、全体の得点分布を見ないことには、自分の成績の位置づけが正確にはできません。

例えば、去年の日本語の場合だと、6月の270点と11月の300点が、上から20%強でだいたい同じでした。これが今回は果たしてどうなっているのでしょう。これは、JASSOが発表するデータを見ないことにはわかりません。センター試験はここまでは発表していませんが、受験産業各社が寄ってたかって分析しますから、その必要もないのかもしれません。

しかし、受験整数がセンター試験の10分の1にも満たないEJUは、受験産業がどうにかしてくれることはあありません。JASSOの発表だけが頼りで、私もそこから得られる情報を最大限に解析して、学生たちの進路指導やEJUの受験指導に供しています。

何かにつけて感じることですが、外国人留学生は軽く見られているような気がしてなりません。外国人留学生を増やすことは国是のようなものだと思っていますが、その入口の試験がこのようでは、国の看板が泣いてしまいます。大学や専門学校に入ってからはそのようなことはないと信じたいところですが、KCP卒業生の話によると、ケアが十分とは言い切れないところもあるようです。留学生が日本人の友達も満足に作れないような学校は、留学生を受け入れる資格がありません。

データがあろうがなかろうが、学生たちは進路相談に来ます。明日も、2人の学生が受験講座後相談に来ます。

根を下ろす

7月24日(月)

頭がまっ黄色の学生が何をしているんだろうと思って見ていたら、数年前に卒業してC大学に進学したTさんでした。入学してから、優秀な周りの学生と自分とを引き比べて自分の力のなさに気落ちして、休学も経験しました。しかし、見事に立ち直り、就職戦線を勝ち抜き、誰もがその名を知るS社から内定を得ました。

Tさんが目指した業界はライバル企業が多く、S社は、私のような門外漢からすると。知名度はあるけれども地味な感じがしました。しかし、Tさんは、S社の堅実な一面をしっかりと見ていて、表向きが派手な他社ではなくS社を選んだようです。

確かに、Tさんの話を聞くと、S社は一見地味なようでいて、意外と将来性があります。シロウト受けのするF社に対して、玄人好みのする会社のようです。福利厚生も充実しているし、海外などにこれからの伸び代もあるし、Tさんは実にうまみのある会社を選んだものだと感心させられました。

日本での進学を考えている学生の大半が、日本での就職を考えています。しかし、日本での就職が生易しいことではないことも、周知の事実です。Tさんの場合、休学で学年がずっこけているという更なるハンでも乗り越えて、S社という業界できらりと光る会社に入れたのです。大学でも海外留学プログラムに参加するなど、自分を磨くことに力を入れ、その効果を遺憾なく発揮した結果がこれなのでしょう。

KCPの学生たちの手元には6月のEJUの結果が届きました。喜んでいる学生も大勢いますが、その成績で志望校に入れたとしても、そこで終わりではありません。Tさんのように紆余曲折を経て自分の将来を託すに足る会社をつかみ取らなければなりません。そして、そこで自分の地位を築き、将来的に自分の夢を叶えていく…。長い長い道のりです。

脳づくり

7月18日(火)

理科の受験講座が始まりました。前半は先学期以前から勉強してきた学生が対象ですから、EJUそのものからちょっと離れた内容にトライしました。穴埋め問題でも選択肢ではない形式や、簡単な論述問題です。選択肢があると知識や記憶が多少いい加減でも正解を選べてしまうこともありますが、純粋な穴埋めだとそうはいきません。論述ともなれば、いくつかの知識を組み合わせ、それを採点官にわかってもらえる文章にする必要があります。

また、問題文が結構長いですから、読解力も必要です。また、漢字で書かれた専門用語も理解しなければなりません。これは、単語帳を作って覚えるという手もありますが、問題を解くことを通して、問題文をたくさん読むことによって、文脈ごと意味を感じ取ってもらいたいところです。こうすると、専門用語同士の連関も見えてきますから、知識体系が築かれていきます。

学生たちの勉強はEJUで終わりではありません。進学後に今までの勉強や知識をいかに活用していくかが、学問上の勝敗の分かれ目です。それゆえ、丸暗記とか断片的な知識の寄せ集めとかではなく、有機的なつながりのある、1本も2本も筋の通った理科的な頭脳を作り上げていってもらいたいです。

こういう学生に比べると、今学期からの学生が主力のクラスは「まだまだ」という感じが否めません。それだけに鍛え甲斐があるとも言えますが、11月までにそれなりのレベルに持っていかねばならないとなると、プレッシャーも感じます。

授業の最中、教室内にも音が響くほどの雨が降りました。都内には雹だったところもあるそうです。嵐を呼ぶ授業には程遠いですが、学生たちを目覚めさせる授業をしたいです。

星に願いを

7月7日(金)

新入生のオリエンテーションがありました。私は、例によって、進学コース全体のオリエンテーションを受け持ちました。この学期に入学する学生は、進学に関して非常に微妙な位置にいます。ある程度のレベル以上なら、翌年の4月の進学も可能ですが、人によっては志望校のレベルを落として早く進学するか、翌々年まで頑張って初志貫徹するかの決断に迫られます。その点も踏まえて、KCPでは楽しいばかりの留学生活にはならないかもしれないと訴えました。

Cさんは国の大学で英語を専攻し、副専攻で日本語も学んできました。自信を持ってレベルテストに臨んだのでしょうが、判定はレベル2でした。もう1つ上のレベルに入りたいと言ってきましたから、私が話を聞きました。しかし、私の日本語が時々理解できず、おかしな答えをすることもあれば、日本語より先に英語が出てきてしまうこともありました。ただ、その英語は、発音がきれいで文法的にも語彙的にも適切なものでした。ですから、語学の素養はあるのでしょう。今は日本へ来たばかりで、耳も口も日本語に慣れていないため、低いレベルに判定されたのでしょう。

Cさんには、レベル2で十分練習して、国で学んだ日本語がすぐに出てくるようになったら、次の学期はレベル4にジャンプすることだって夢ではないとさとしました。もちろん、それはたやすいことではありませんが、挑戦のしがいがあると思ったのでしょうか、Cさんは納得して留学生活の第一歩を踏み出していきました。

七夕の日に、夜までこんなによく晴れたのは久しぶりのことのように思います。東京の夜空じゃ、晴れたとしても織姫も彦星もよく見えないかもしれませんが、Cさんたち新入生が天の川にかかる橋を渡って志望校まで行けるようにと祈っています。

情報源

6月27日(火)

4月に進学した学生の多くが、ビザの変更の時期を迎えています。その手続きに必要な書類を申請しに来校する学生も多いです。当然、近況報告を聞くことにもなりますが、それは私たちにとっては貴重な情報源となります。大学のホームページや担当者の話などからは見えてこない大学の真の姿が見えてくることが多いからです。

Vさんは、ウチの大学は偏差値はそれほどでもないけれども授業は厳しくて、非常に鍛えられている感じがすると言っていました。他の大学に落ちて、そこに入るしかないと決まった時はあまりうれしそうではありませんでしたが、先日来てくれた時は大学らしい学問をしているという自信に満ちた顔つきをしていました。

Hさんは国では勉強できない勉強ができると張り切って進学しました。しかしHさんが進学した学部学科は留学生しかいませんでした。しかも、Hさんと同国人は誰もいません。大学で日本人の友だちを作るという夢も破れ、母語でのおしゃべりで息抜きをすることもできず、期待はずれの大学生活のようです。それでも日々の生活に楽しみを見つけ、留学を続けていこうとしています。

有名大学に進んだYさんは、日本人学生のだらしなさを嘆いていました。せっかくに憧れの大学に進んだのに、勉強しようという気持ちがそがれてしまったとも言っていました。講義そのものには満足しているようですから、今すぐやめてしまうということにはならないでしょう。

まだまだ今までの学生から手に入れた得がたい情報がたくさんありますが、こういう情報は在校生が進路に迷ったときに活かしていきます。オープンキャンパスに行っても見えてこない大学の真の姿、聞こえてこない学生の声、そういうものを伝えて学生が進路を誤らないようにするのが、私たちの役割ですから。

要注意人物

6月23日(金)

昨日の期末テストの作文の採点をしました。将来の自分について書いてもらいましたが、読み応えのある文章とそうでないのとの差がかなりありました。ある先生は、学生の夢のあるなしが如実に現れたとおっしゃっていましたが、確かにそうだと思いました。

私のような年寄りはともかく、学生たちの年代なら誰でも将来の夢を持っているはずです。夢があるからこそ、わざわざ日本という外国で勉強しようとしているのだと思います。しかし、その夢がどれだけ具体的か、夢に向かっての道のりがどれだけ明確かは、それぞれの学生によって違っています。具体的な夢の実現のためには何をすればいいか見えている学生にとっては、昨日の作文は難しい課題ではなかったと思います。それに対して、漠然とした夢しか描けていない学生にとっては、非常に書きにくかったでしょう。

「お金持ちになりたいです」などという話は初級の入口の学生でも書けます。「将来のためにもっと頑張ります」「一生懸命勉強していい大学に入りたいです」だけじゃ、面白くも何ともありません。こんな程度の学生は、これから数か月後に待ち受けている大学や大学院の面接試験で苦労することでしょう。図らずして、進路指導をしていく上での要注意人物が浮かび上がりました。

Gさんはその要注意人物の1人です。決して頭が悪いわけではありませんが、作文を読む限り、進学までに大きな壁がありそうです。来学期は、おそらく、私のクラスにはならないでしょうから、新しい先生に引き継がねばなりません。そうです。私たちの頭の中では、もう新学期が始まっているのです。

ばっちりキメて

6月8日(木)

毎年この時期恒例となったKCP進学フェアが行われました。午前中、受付開始時刻が近づくと、午後クラスの学生が会場に集まり始め、M大学やT大学のブースには人だかりができました。お昼過ぎに中上級クラスの授業が終わると、ちょっと低めに設定しておいたエアコンがちょうどいい具合になるほどの若い熱源が会場に押し寄せました。A大学やJ大学のブースはかなりの混雑で、午前中から込んでいたM大学、T大学はいすにも腰掛けられず、立って待っている学生も。

私もずっと会場内を歩き回っていましたが、今年は話を聞きたい大学を決めてきている学生が多かったようで、去年あたりとは違って、学生から相談を受けることはありませんでした。引き揚げていく学生に聞いてみると、厳しい話も含めて、手に入れたい情報が聞けたようでした。初級の学生も、美術系の大学を中心に、積極的に話を聞き、何かをつかんで午後の授業の教室へと向かったようでした。

終了時刻が近づき、参加してくださった大学の担当の方にお話を伺うと、KCPの学生はしっかりコミュニケーションが取れているというお褒めの言葉をいただきました。だからこそ、ほしい情報がもらえたのでしょう。

私のクラスの学生も大挙してきていましたが、女子学生はなぜかいつもよりおめかししていました。Lさんをつかまえて、進学フェアがあるからいつもよりきれいな格好をしてきたのかと聞いてみると、ウフッと首をすくめて消えていきました。面接は見た目も大事だと言いますからね。

進学フェアをすると、学生たちの認識が改まり、意識が高まります。午後の受験講座では、早速進路相談を受けました。学際的なやや特殊な専門について勉強したいが、進学フェアで話を聞いたY大学のほかにどこがあるかという、核心に迫る内容でした。EJUまで、ちょうどあと10日です。