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大学に入ってから困らないように

8月18日(火)

Cさんは、理科に関しては優秀な学生です。受験講座でこちらが一通り説明をすると、EJUの過去問はだいたい解けます。まだ中級ですから、問題文を読むのに時間がかかることがありますが、11月まで訓練を続ければかなりのところまで伸びるでしょう。数学も筋がいいという話を聞いていますから、11月に予定通りEJUが実施されたら、理系科目では高得点が期待できそうです。

Cさんに弱点があるとすれば、応用力です。知識を組み合わせたり想像力を働かせたりして答えを導き出すことが苦手のようです。単一の知識に基づいて答える問題には強いのですが、いくつかの知識を総合して答える必要がある問題となると、勢いが止まってしまいます。EJUの選択問題には答えられても、そこから発展した質問をすると、考えをまとめられないようです。

EJUなら、平均点など軽く上回る点が取れるでしょう。80点台も夢ではありません。しかし、大学の独自試験はどうでしょう。点数になる答案が書けるか心配です。口頭試問も、理路整然と説明できるかとなると、不安を感じずにはいられません。

Cさんの志望校がEJU+面接という大学なら、今のCさんでも勝負できます。しかし、それ以上の試験があるとなると、かなりの鍛錬が必要です。いや、たとえEJUだけで入れる大学であっても、Cさんがこのまま進学したら進級できないかもしれません。大学で壁にぶつかって身動きが取れなくなるなどということのないように、KCPにいるうちにマークシートでない発想法も身に付けさせておきたいです。

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ある変更

7月30日(木)

教育制度が国ごとに違うのは十分想像できることです。日本の高校で勉強することがある国では勉強しなかったり、その逆だったりということは時々あります。理系の数学は、そういうことがよく見られます。EJUの理系数学は高校の数学の範囲からまんべんなく出題されます。ですから、国で勉強しなかった(させてもらえなかった)項目も勉強しておかなければなりません。

勉強したのだけれども忘れてしまったというのもよく聞く話です。急に日本に留学しようと思いついて実行に移してしまった学生にありがちなパターンです。また、学校を出てからしばらく働いて、そして来日したなどという学生にも多いです。Yさんもそんな1人です。受験講座の理系数学を取ったものの、授業についていけず、国の教科書で勉強し直すことにしました。受験講座が始まって1か月足らずですが、こういう決断は早ければ早いほど好ましい結果につながります。EJUまで3か月ちょっとですから、けっこうぎりぎりの決心です。

今年は実質的に11月一発勝負ですから、すでに土俵際の状態です。一歩も下がれないと思って踏ん張らなければ、黒星を喫してしまいます。せめて土俵中央にまで押し返す力がないと、桟敷席まで吹っ飛ばされてしまいます。Yさんの志望校は決して生易しいところではありませんから、何となくEJUを受けただけでは勝ち名乗りは得られません。出席率100%で、まじめに勉強していて、理科に関してはセンスを感じさせてくれるYさんですから、何とか上を向いて花道を引き揚げてこられるようになってもらいたいです。

数学を国の教科書で独習するとしても、私たち受験講座担当者はYさんを支えていきます。

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気を抜くな

7月29日(水)

オンライン授業だと、Zoomの画面に学生の名前が並びますから、誰が出席しているかわかります。でも、授業の最初に名前を呼んで返事をしてもらって出席を確認します。つなぐだけつないで授業に参加しているふりをして、好き勝手なことをしているなどという不届き者が現れないようにするためです。顔も出させるし、次々と指名もして、授業時間内はこちらに集中してもらいます。オンライン授業が始まったばかりの頃は、授業中に指名してミュートを解除したらいびきが聞こえてきたなどという事例もありましたから、その辺は抜かりなくやっています。

もちろん、9割以上の学生は真面目に勉強しています。進学の意志があやふやな学生たちはほぼ帰国してしまい、今在籍している学生たちは、本気で進学しようと考えている、いわば精鋭たちです。ですから、オンラインであれ対面であれ、前向きな姿勢で課題に取り組み力を伸ばそうとしています。

水曜日は、オンライン授業の日。朝9時にFさんの名前を呼んで出席を取ると、眠そうな声で返事が。いかにも今起きたという雰囲気を漂わせていました。これはまずいと思い、すぐに指名すると、授業で使うことになっているプリントを用意していないと言います。やはり寝起きだったのです。その後何回か指名して、声がしゃきっとしてきたのが11時ごろ。ということは、9時からのオンライン授業にすっきりした頭で出席するには、7時に起きなければならないという計算になります。起きるべき時間は、通学する日と同じです。

だけど、授業終了間際に指名した時は、的外れな答えだったなあ。オンラインだと気合が入らないんでしょうか。世の在宅勤務のみなさんはどうなのでしょう。社会人は責任がありますから、ピシッとやってるはずですよね。

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明るいニュース

7月18日(土)

新規感染者数が増えたとか、Go To キャンペーンから東京を除外するとか、そんな重苦しく、ある種きな臭いニュースの陰にすっかり隠れてしまいましたが、今週は藤井聡太七段が渡辺明三冠から棋聖位を奪ったというさわやかさを感じさせてくれるニュースもありました。史上最年少のタイトルホルダーとなりました。私のようなへぼな者は、飛車角に金銀まで落としてもらっても勝てないでしょう。

藤井新棋聖の談話で感心させられたのは、感染症拡大防止のため棋戦が中止されていた期間、AIを使って差し方の研究をしていたということです。終盤は強いけど、序盤はそれほどの鋭さがなく、序盤で差を付けられるとあっさり負けてしまうという弱点がありました。それを克服すべくAI相手に工夫を重ねていたと言います。その成果が、初戴冠です。

巣ごもりの間に差がつくとは、ビジネスでも勉強でも言われていました。藤井新棋聖はそれを地で行ったわけです。新棋聖より少し年上のKCPの学生たちはどうだったでしょう。巣ごもり明けを見越して何かをしていた学生は、ほとんどいなかったんじゃないかなあ。話すのが下手になっていたり、字を書くのが遅く汚くなっていたり、こちらからの話の理解力がガタ落ちだったり、部屋の中でのんびりしていただけという学生が少なくないような気がします。

確実に伸びた学生もいます。ピンチをチャンスに変える力を持った学生と言えます。どんな変化にも自分を見失うことなく、最善の手を打てます。こういう学生は、どこの大学でも欲しがりますよ。大学院に進んだら、研究の核になれます。

月曜日は、進学フェア。のんびりの学生の尻に火をつけ、伸びた学生をより一層伸ばし、学生たちを夢に近づける場にしたいです。

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一抜けた

7月13日(月)

今シーズンの合格者第1号が出ました。9月入学の大学に照準を合わせて、かなり前から準備をしていたそうです。オンライン授業、EJU中止、オープンキャンパスなし、入試日程が決まらない、学生たちの焦りと危機意識の薄さなど、さえない話題が多かったところに、久々の明るいニュースです。

合格したHさんは、9月には、オンラインかもしれませんが、大学の授業が始まりますから、それまでにはKCPを退学します。でも、明日にでも辞めたいと言っていますが、それはいただけません。

まず、入管法を厳密に解釈すれば、大学に入学する2か月も前に日本語学校をやめてしまうと、その間所属機関がなくなり、身分が宙ぶらりんになるため、法律違反となります。今は状況が特別ですから、直ちに帰国しろとはならないかもしれませんが、それはあくまでも「かもしれない」話です。近々、一部の国からの入国規制が緩和されるとの話もありますが、そうなったら「帰国しろ」となるかもしれません。帰国した場合、最近の新規感染者数の増え具合から、Hさんの国が日本への渡航を差し止めることだってあるかもしれません。

それから、2か月ものんびり過ごしてしまったら、入学して授業が始まってからが恐ろしいです。3月にオンライン授業が始まる前に、日本は危ないからと一時帰国した学生がオンライン授業に参加すると、実に見事に日本語を忘れているんですねえ。KCPをやめても日本にいるのですから、一時帰国した学生に比べれば日本語に触れる機会もはるかにたくさんあるでしょう。しかし、国の言葉ですべてが解決するコミュニティー内で生活していたら、どうなるかわかったものではありません。

勉強しなくてもいいならそれで済ませたい気持ちはわかりますが、いやしくも最高学府で勉強しようと思っている学生が、勉強から逃げ出そうとしてはいけません。

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大量不合格

6月4日(木)

おととい入ったクラスで漢字のテストをしました。過半数が不合格という悲惨な結果になってしまいました。また、学期の後半なら試験時間を大幅に余らせて手持ち無沙汰にしている学生が何名かいるのが通例ですが、そういう学生は1人だけでした。その学生は、90点でクラス最高点でした。日々の漢字の授業で勉強した単語をそのまま出していますから、満点が数人いるのが普通です。

オンライン授業だと、シャープペンシルを手に持って書くという練習が、どうしてもおろそかになります。パソコンなどで文字を打ち込むことはかなり上達したようですが、この3か月間、手で文字を書くという行為をほとんどしてこなかったのではないでしょうか。中国の学生の答案には、簡体字があちこちに見られました。漢字の読みも不正確でした。音読するようにと指導しているのですが、きっとしてこなかったんでしょうね。

作文の授業もありました。原稿用紙を目の前にするのもやはり3カ月ぶりでしたから、なかなか筆が進まなかったようでした。この時期の中級クラスなら、30分で400字くらい楽勝のはずなのですが、時間内に提出できたのが2名でした。その2名も、400字にちょっと欠ける長さでした。

要するに、書き慣れていないんですよね。書くのが遅く不正確になりました。このままだと、入学試験が心配です。志望理由書などは手書きを要求するところが多いですし、小論文や独自試験の日本語は手書きそのものです。オンライン授業期間中、学生たちが手書きをしてこなかったということは、日常生活においては手書きがほとんど必要ないということを意味します。入試関連の事柄だけが、とびぬけて保守的だとも言えます。

今、それについてどうこう文句を言っても始まりません。東京アラートにも負けず、学生を鍛えていくだけです。

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わざわざ来ました

6月3日(水)

3時過ぎ、オンラインの受験講座の前半が終わって、窓際でぼんやり外を眺めていると、「先生、卒業生のWさんが書類の申し込みに来ています」と声をかけられました。数日前、ビザ更新に必要な書類を申し込みたいとメールを送ってきましたから、KCPのホームページから直接申請できると教えました。メールが来たのは緊急事態宣言が解除されたころでしたが、出歩かないに越したことはありませんから、そう答えておきました。

1階の受付まで下りると、Wさんが申請書類に必要事項を記入しているところでした。「KCPは学校で授業が始まったんですか」「うん、今週からね。でも、全部の学生が一緒にならないように、レベルによって来る日を変えてるんだ。Wさんのところは?」「うちの大学は、今学期は学校で授業がありません。オンラインだけです」「Wさんみたいな専門だと、それは困るよねえ」「はい。でも、私はコンピューターグラフィックスですから、まだましです。だけどやっぱり、大きな制作は大学に事前に申し込んで設備を使わせてもらってるんです。彫刻の学生なんかはかわいそうですよ、何にもできませんから」

去年の今頃思い描いていた大学生活とはだいぶ違うようです。1年生ですから、まだ焦ってはいないでしょうが、もどかしさは感じていることと思います。KCPまでわざわざ来たのも、うちから一歩も出られない、出る用事がない、そういう憂さを晴らす意味もあったのではないでしょうか。

今年就活とか大学院進学とかという卒業生はどうしているでしょうか。去年の秋あたりに夢を熱く語っていた何人かの顔が頭をよぎりました。

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数学の本

5月21日(木)

Tさんから、受験講座の数学の教科書がほしいというメールをもらいました。受験講座の数学は大学入試向けですから、理系の大学院を目指しているTさんにはやさしすぎます。ですから、私の手持ちの参考書を教えました。紀伊国屋が営業を再開したようですから、そこへ行って他の専門書も手に取って見てみてはどうかとアドバイスしました。

いつもの年なら今ごろはそろそろ大学院の先生に接触を始める時期ですが、今年は3月ぐらいからほとんど前に進めない状況に陥っています。Tさんは、そういうあたり、どうなっているのでしょう。することがないから数学の試験勉強でもするかっていう状況だったら、ちょっとまずいですね。でも、全受験生が同じように何もできないのなら、それもまた、ある意味平等です。

そうはいっても、受験生としては不安でしょう。大学院選びにしても、学生がいる狭い世界では真に意味での“いい大学院”が見つかるとは限りません。別の視点にも立って、立体的にこれからの学び舎や自分の将来を捕らえて初めて、進むべき道が浮かび上がってくるものです。研究計画書にしても、ネットの情報を集めて形を作っても、学生の初稿は穴だらけです。理屈の上ではコンピューター上で進学先を決定できないことはありません。でも、デジタルネイティブの学生たち自身が、それだけでは安心できない様子です。

進学先選びをする学生たちによくこう言います。これから、大学で4年、大学院で2年、生活するところを選ぶのです。単に学校の名前だけで選んではいけません。入学金やら授業料やらと考えると、数百万円の買い物です。悩んで当たり前、慎重にならない方がおかしいです。一時の勢いだけで決めてはいけません。

学校での授業が再開されたら、Tさんの話をじっくり聞いてみるつもりです。

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会いたいですね

5月12日(火)

今学期入学予定だったのにまだ入国できていない学生から、EJUの対策を聞かれました。受験地を日本にしているとすると、受験日までに入国して2週間程度の隔離期間を済ませられるかどうか微妙な状況ですが、それには触れずにどんな勉強をすればいいかについてだけ答えました。

日本語でネックになりそうなのは、読解よりも聴解・聴読解でしょう。日本にいないと、努めて求めないかぎり、日本語の音声を耳にする機会が非常に少なくなります。ですから、インターネットを利用して日本語の音に触れることを勧めました。聞くんだったら、ドラマよりもニュースでしょうね。規範的な日本語に耳を鳴らしておいた方が、EJUにおいては点が取りやすいのではないでしょうか。

日本語以外の科目は、これはという問題集や参考書がありません。出版されていないわけではありません。しかし問題の出し方が違っていたり、そもそも問題として成り立っていなかったり、答えの解説が不親切だったり、そもそも答えが間違っていたりなどという例が散見されます。レベル的にはセンター試験が近いのですが、やはり作問傾向が違いますから、自信を持ってお勧めとはいきません。国の親元にいるのなら、高校時代の教科書で基礎部分をがっちり復習しておくのが、結局は一番力がつく勉強になると思います。

以上のようなことを考えると、過去問がいちばんいいという結論になります。でも、過去問はすでに手を付けたからこういう質問が来たとも考えられます。その場合でも、同じ問題を繰り返し解くことを勧めます。間違えた問題の答えを見てわかった気になるのではなく、間違えなくなるまで解くことで力がつくのです。でも、これは地味でつまらない勉強法ですから、みんなやろうとしません。新しい問題、難しい問題に挑戦したがります。

まだ見ぬ学生たちは、私の回答にどんな反応を示すでしょうか。そして、しっかり勉強してくれるでしょうか。

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終わったけど、課題が山積

3月27日(金)

ようやく、長い学期が終わりました。どうにか期末テストの日までたどり着きました。

1月の始業日、マスクをしている学生が多いのにちょっと違和感を覚えましたが、今から思えば、そんなの序の口でした。バス旅行も卒業式もあっという間に濁流に押し流され、中間テスト後は教室で授業をすることすらできず、オンライン授業となりました。

初級は、別の目的で作っていた資料を転用することでオンライン授業にもかなり対応していたようですが、私が受け持っていた超級は、準備不足が否めませんでした。対面授業を前提とした教材ばかりで、それをオンライン向けにアレンジするのが一苦労でした。でも、著作権などの関係で使うことができない教材も多々あり、そういう心配のない教材を見つけ出すのに骨が折れました。

顔の見えない学生の興味を引き付けることも、大きな課題でした。私の授業のスタイルが、学生との掛け合いが大きな要素になっていますから、顔が見えないと調子が出ないのです。授業が上滑りしているようで、とても不安でした。学生の理解度が推し量れないことも、不安に輪をかけました。慣れてくればオンライン授業の要領もつかめ、授業の進行の計算も立つようになり、少しは穏やかな気持ちで授業ができるようになるのでしょう。

4月期がどういう形で始められるか不透明な面もありますが、オンライン授業開始以降中止の形になっている受験講座もどうにかしなければなりません。今のところ、EJUは予定通り行われるようですから、それに向けて学生た日を鍛えていけねばなりません。来週から、その作戦を練る日々が続きそうです。

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