Category Archives: 学校

行方不明

3月1日(月)

朝、学校へ来てパソコンを立ち上げると、Cさんからメールが来ていました。専門学校に出願するので推薦書がほしいと言います。Cさんの出席率を調べてみると、入学からは90%を超えていますが、ビザ更新後はKCPの推薦基準を大きく下回る数字でしかありません。今学期、私が担当したオンライン授業の時も、出席を取ると返事をしますが、授業中に指名しても答えが返ってきたためしがありません。そういう時は、文句なしで欠席にします。そういうのがたまりにたまって、ひどい出席率になったのです。

午前中、そのCさんのクラスの授業でした。朝一番に出席を取った時は返事がありました。その20分ぐらい後で教科書を読んでもらおうと指名したら、返事がありません。2度呼びかけましたが反応がありませんでしたから、授業に参加していないものとみなして、欠席にしました。休憩時間を挟み、後半の授業が始まる時に出席をとるとまた返事がありましたが、その後また行方不明に。授業の開始から終了まで、パソコンのカメラがオンになったことはありません。授業の最後にCさんに呼び掛け、授業後、出願しようと思っている専門学校の書類を全部持って学校へ来るようにと言いました。

約束の時間に現れたCさんは、悪びれたところもなく、推薦書はもらえないのかと聞きます。専門学校の書類を見ると、推薦書は必須ではありません。あると学費を減免してもらえるというものでした。出席率の話をし、KCPとしては推薦書を出せないと伝え、推薦書がなくても出願はできると伝えました。すると、Cさんは、わりとあっさり推薦書はあきらめました。

そもそも、推薦書を頼んだ相手の教師が担当する授業に返事だけして参加しないという根性がどうかしています。30分ほどCさんと話しましたが、出席率が下がったことに対する反省などは全くありませんでした。何でもオンライン授業のせいにしたくありませんが、入学してからオンライン授業が多かったCさんはKCPに対する愛着が薄いのでしょう。また、教師の目がないとなると好き勝手なことができると思い込んでいるに違いありません。

オリンピックとの兼ね合いもあり、8日に緊急事態宣言が解除されるという観測がもっぱらです。Cさんが日本でまじめに勉強するには、対面授業が欠かせないような気がします。4月か普通の学びができることを祈らずにはいられません。

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春一番の日に

2月4日(木)

観測史上最も早い春一番が吹いたそうです。お昼を食べに外に出た時、確かに強い風は吹いていましたが、暖かいとは思いませんでした。御苑の方から吹いていましたから南風でしたが、肌を刺す力は衰えておらず、春には程遠い感じがしました。

午後、教室でオンライン面接練習をしました。午前中使っていない教室でしたから、壁も床も椅子も机もキンキンに冷えていました。すぐにエアコンを入れ、風の強さを最高にし、どうにか練習ができる教室環境を整えました。KCPの教室は、道路に面している方は北向きで、廊下を挟んで反対側は窓を開けたらマンションで、いずれにしても日が差し込みにくいです。だから、使っていない教室は寒いのです。教室は、まだまだ冬真っ盛りです。それに加え、学生がいませんから、校舎全体がうすら寒いです。人間が放散する体熱ってバカにならないものだと、妙なところで感心させられています。

Kさんは。明後日がそのオンライン面接です。昨シーズンは留学生入試の面接をオンラインで行った大学は0に近かったですが、今シーズンは、夏の早稲田大学を皮切りに、オンライン面接が過半数ではないかという気がします。現状に鑑みれば、2・3月の入試はオンラインがほとんどなんじゃないでしょうか。

人にはそれぞれ得手不得手があるものですが、オンライン面接も想像よりずっと上手にこなす学生がいる一方で、カメラを通すと精彩を欠いてしまう学生もいます。Kさんは前者のようで、実にのびのびと受け答えをしていました。マイクのせいで聞き取りにくいことはありましたが、回答の内容は志望校の面接官を満足させられるのではないかと期待できるものでした。

Kさんは、自分の部屋でオンライン面接を受けるそうです。まさにホームゲームです。確実に勝ち点をゲットして、心の春を迎えてもらいたいです。

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面接3発

1月12日(火)

1月期の始業日でしたが、私は授業がなく、オンライン面接入試の学生のお世話役でした。お世話役といっても、学生を教室まで案内したら、後はほったらかすしかありません。私が教室内をうろちょろしようものなら、一発で不合格ですから。

まず、Cさん。試験開始予定時刻の1時間以上前、8時40分ごろ学校へ来ました。何事も完璧を求めるCさんのことですから、かなり早い時間に来ることは予想できたので、8時半ごろから教室を暖めておきました。ここまでは、作戦成功です。

ところが、10時になっても11時になっても、Cさんは1階に下りてきません。こっそり教室をのぞきに行くと、パソコンに向かって何かしていましたから、中に入るのははばかられました。12時半過ぎにやっと顔を見せてくれました。話を聞くと、同じ階の教室で授業をしている先生の声が入り込んで、面接官に注意されたとか。Cさんの教室のドアを突き破って響き渡る先生の声って、どのぐらい大きかったのでしょう。通信障害もあったそうです。それで、試験終了後、しばらく教室で落ち込んでいたとか。

こちらは落ち込んでいる暇などありません。教室を消毒し、午後一番のYさんに備えなければなりません。Yさんはオンライン入試を経験していますから、パソコンを立ち上げるのに要する時間分早く来ただけで、ゆとりと慣れが感じられました。Cさんの話をし、心配なら廊下から離れたところで試験を受けるようにと指示しました。こちらは想定問答よりもだいぶ易しい質問しか来ず、質問内容を記憶できるくらい余裕があったようです。

Yさんが帰ってほどなく、最後のJさんが受付から私を呼びました。Jさんはオンライン面接練習をしていますから、これまた落ち着き払っています。あとで様子を聞くと、学力試験みたいな問題を出されたと言っていましたが、答えには自信があるようです。

3人とも、果報は寝て待てとなるでしょうか…。

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前がすっきり

12月26日(土)

仕事納めの日ですから、年末恒例・大掃除をしました。私は1階の給湯室を中心に、磨いたり掃いたり吸ったりしました。自分のはたらきで身の回りがきれいになっていくと、気持ちがいいものです。特に、流しの排水口まわりは、わけのわからない汚れがこびりついていますから、化学の力や腕力でそれを落としていって地肌が現れると、感激もひとしおです。

私は化学の世界にいましたから、アルコールや塩素などの消毒液のにおいに慣れてもいますし、むしろ好きです。だから、水で薄めた消毒液から発するかすかなにおいに囲まれて掃除をするのは、ちょっとした快楽です。体には悪いでしょうね、きっと。

幸いにも、私が取り組んだ範囲からは歴史を感じさせるような、いつの時代か定かでない骨とう品は出てきませんでした。そういうものが出てくると、そちらに気を取られ、昔を懐かしんでいるうちに時間がいくらでも過ぎ去ってしまうんですよね。給湯室は、汚れを落として、今年はそれに消毒が加わっただけです。干からびた食べ物か何かがひょっこり出てこなくてよかったです。A先生みたいに、数年前の学生が書いた反省文かなんか出てきたら、新年を迎える気分もしぼんでしまいます。

掃除が終わったころ、新しいパーテションが届きました。今まで、職員室内のパーテションは、手作りの、実用本位、見てくれ後回でしたが、新年からあるのかないのかわからないくらいのパーテションで、視界が広がります。そうですね、2021年は見通しのいい年にしたいですね。

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最後まで

12月25日(金)

T先生は昨日の帰宅時から電車が空いてきたと言います。年末年始の分散休暇が始まったのではないかとまで言っています。でも、私は昨日の退勤時も今朝の出勤時も、電車の混みようは変わっていないように感じました。なんだかんだ言いつつ、正月休みはやっぱり来週からなんだろうなと思っていました。

KCPも来週1週間はお休みですから、今年の残り2日は大掃除です。先週あたりから少しずつ机の上の書類や引き出しの中のがらくたなどを処分し始めました。調子に乗って捨て始めたら、シュレッダーダストボックス2杯分ぐらいになってしまいました。引き出しの底から発掘した懐かしい書類も含まれていますから、今年1年でこんなに大量のごみを出したわけではありません。

M先生も、紙の神様に叱られそうだと言いながら、あちこちから紙ごみを引っ張り出してきていました。ペーパーレス化には程遠いKCPの現状です。今年はオンライン授業がたくさんありましたから、印刷せずに電子的に学生に配布した教材も少なくないはずなんですがね。

シュレッダーの山場を越えたころ、ZさんがY大学のオンライン面接のために学校へ来ました。今年は何人の学生を教室でオンライン入試を受けさせたでしょう。1度でいいから、オンライン面接のやり取りをじっくり見学してみたいですが、周囲に本人以外誰もいないことが受験条件でしょうから、ぐっと我慢しています。

Zさんがホッとした顔で引き揚げ、お昼にでも出ようかなあと思っていたら、XさんからW大学の志望理由書を見てくれというメールが舞い込みました。字数制限はありませんが、スペース的にXさんの力作をばっさり半分にしなければなりません。1行目からバリバリ切り捨てていったら、思ったより早く出来上がりました。でも、これを読んだらXさん、泣くかもしれないなあ。思い入れの強そうな文もシュレッダーに掛けちゃいましたから…。

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騒音

12月18日(金)

来週の火曜日が期末テストで、学生たちは翌日から年末年始の休みに入ります。学期休みや春の連休、夏休みなど、まとまった休みの直前には、休み中の生活の注意を全校一斉放送で流します。今までは事務職員が放送を担当してきましたが、今回は全員が出払っていて、暇そうにしていた私にお鉢が回ってきました。

年末年始休み直前は、今までは、一時帰国の注意をしてきました。しかし、今年は下手に一時帰国すると永久帰国になりかねません。学生たちもそれはよくわかっていますから、国内での過ごし方というか、うちから気安く出るなという話になってしまいました。

私は孤独を愛する人間ですから、出歩いたところで人込みには近寄らず、和気あいあいと会食することもありません。人気のない早朝に活動し、みなさんが盛り上がる夜の街には足を向けません。グルメじゃありませんから、コンビニ弁当やスーパーの見切り品でも十分ごちそうです。

でも、学生たちはそうではないでしょう。異郷で仲間と語らうことに喜びを感じ、また、それが息抜きや憂さ晴らしにもなります。精神衛生上は好ましいかもしれませんが、感染症対策上は最も避けなければならない行動様式です。そういう意味で、苦しい戦いがまだまだ続きそうです。

さて、私の放送は、声が響きすぎたそうです。隣のマンションから苦情が来そうだとも。先週コロナ対策の一斉放送には、聞き取りにくかったという意見がありました。ですから、マイクを、マスクに触れぬ程度に近づけ、声を張って話しました。それが効きすぎたようです。

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新機種導入

11月26日(木)

KCPにもようやくサーモグラフィーが導入され、今朝から使用開始しました。設置のしかたが悪いのか、微調整が足りないのか、すぐに反応しないこともあり、学生も教職員の、顔を近づけたり離したりしていました。私も3回ぐらい体を前後に揺らし、どうにか35.8度と測定され、めでたく入館を許されました。

今まではおでこに向けて赤外線を発射して体温を測っていました。この手の体温計で測定されることもよくありましたが、ほとんどの場合、測定後に「はい、どうぞ」とか言われて検問を通過させてもらうだけでした。でも、体温って非常にプライベートな数値ですよね。測定者はその数値が見られるのに、その体温の持ち主(?)であるこちらには知らされることなく処理されてしまいます。そんなとき、秘密を勝手に暴かれたような、プライバシーをのぞき見されたような、違和感というありふれた言葉で片付けてほしくない感情が残りました。

朝早く校内に入ってくる人に対しては、出勤しているのが私だけですから、私が体温を測っていました。私は上述の輸な感覚を抱いていましたから、おでこに向けてピッとやった後、体温計を180度回転させて、測定値を本人に見せていました。そのうえで「異常ありません。どうぞ」と言って、入ってもらいました。

街にサーモグラフィーが普及した結果、こんな違和感を覚えることはなくなりました。その代わり、サーモグラフィーが反応しないことで立ち止まらねばならないケースが出てきました。連休中、ある建物に入ろうとしたところ、サーモグラフィーの許可がもらえず、今朝の私のように体を揺らしたりかがんだりしなければなりませんでした。衆人環視というほどではありませんでしたが、何となく気恥ずかしかったです。

受付前の学生たちを見ていると、やはりサーモグラフィーでの検温がなかなか一発では決まらないようです。しばらくは、おでこにピッも併用していくことになるでしょう。

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やっと始まります

11月17日(火)

昼に中間テストの採点をしていると、M先生が私を呼びます。悪い学生に説教をしろというのでしょうか。出席率が悪いのか、成績が悪いのか、素行が悪いのか、いずれにせよ気が重い話です。

行ってみると、マスクで顔が半分以上隠れた青年が立っています。???という顔をしていると、「先生お久しぶりです」と言いながら、マスクを外して顔全体を見せてくれました。卒業生のNさんでした。「今度、姉がお世話になります。よろしくお願いします」と、隣に立っているNさんよりやや小ぶりな、少し緊張気味な顔をした女性を紹介しました。2週間余り前に来日し、待機期間を終えてようやく登校したという次第です。

先月から少しずつ新入生が入国し、先週あたりからぱらぱらとクラスに入り始めています。Nさんのお姉さんもその1人で、おそらく明日からKCPの授業を受けることになるのでしょう。去年までのように、一斉に固まって入ってきてくれませんから、受け入れ担当者は連日大忙しです。今までも遅れて来日した学生はいましたが、ごく少数でしたからどうにかなっていました。しかし今回は全員がそうですから、大変さは桁違いです。まだ始まったばかりで、これからどんどん入ってきます。学期末にはどうなっているのでしょうか。

ところが、このところ新規感染者数が増え続けています。このまま入国を進められるのか、若干暗雲が漂ってきました。1月期は通常に近い受け入れができるかなあと期待していましたが、見通しは明るくありません。まさか4月期に影響が及ぶのではと、不安は拡大する一方です。

でも、それはさておき、Nさんのお姉さんをはじめ、この厳しい時期に、それこそ万難を排して入学してくれた学生たちを大切に育てていきたいです。

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試験監督の目

11月13日(金)

中間テストがありました。私が監督したクラスは、何事もなく無事に終わりました。そのクラス、実は私が週に1日は入っているクラスで、テスト問題も一部は私が作りました。

自分が作った問題を目の前の学生が解くのを見ていると、何とも不思議な気持ちになります。この程度の難しさなら解いてほしいと願いながら作った問題に頭を抱えている学生を見かけると、なんだこいつと思ってしまいます。渾身の力を込めて、解けるものなら解いてみろというぐらいの問題は、苦しんでいる学生にもっと苦しめと心の中でつぶやいています。

あんまりすらすら解かれると、学生の力を見くびっていたかなと不安になります。全学生が呻吟しているとなると、合格者が1人もいなかったらどうしようと心配になります。75点平均ぐらいが、見ている立場でも、学生の力を測るという意味でも、穏やかな気持ちでいられます。

学生の答案をのぞき込むと、ひねりを利かせた問題に大半の学生がつまずいていました。大学進学クラスですから、こういう問題こそ正解にたどり着いてほしかったんですがね。来週からも手を緩めることなく鍛えていかねばなりません。期末テストでは、こちらからの攻撃を跳ね返してもらいたいものです。

採点してみると、やっぱり筆答問題がまだまだかなあ。本文の抜き書きで済まそうという答案が目立ち、それを要領よくまとめる力が足りません。授業中に感じていたことが、そのまま答案用紙上に現れました。四択から正解を選び出せても、本当の読解力とは言わないんですよ。

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朝日が沈む

11月12日(木)

この時期、私の出勤時間帯には、東の空がわずかに明るんでいます。御苑の駅から靖国通り方面に向かって進み、靖国通りの直前でKCPの方へ曲がると、ちょうど朝日の昇る方角になるのです。

2月の末ごろ、同じように出勤時の空にほの明るさを認めると、春が近づいてきたなと感じます。まさに光明を見出したわけであり、厳しい冬を乗り切った自分をほめてやりたくなります。気が付くと口元が緩んでいます。

しかし、今どきの同じような空の光景には、もう二度と光の世界に戻れないのではないかという恐怖心すら感じます。体を丸めて寒風に耐える自分が見えてきます。

いつの間にか、東京の最低気温が10度を割るようになりました。今朝は、あまりの風邪の冷たさに、マフラーを用意しました。でも、コートはまだです。それは、スーツの上着の下にカーディガンを着込んでいるからです。このカーディガンが意外に暖かく、コートなしでも苦になりません。

では、なぜカーディガンを着ているのでしょうか。それは、校舎内全体が寒いからです。換気のために窓とドアを開けっ払って授業をしていますから、校庭で授業するのと大して変わりありません。まさかコートを着て授業を行うわけにもいかず、夏の初めごろ在庫処分セールで買ったカーディガンが登場したというわけです。好判断をした半年前の自分をほめてやりたいです。

でも、まだ冬の入り口です。しかも、この先気温は平年を下回りそうだという長期予報も発表されています。ずっと換気優先の教室で授業していけるでしょうか。教室の暖房の設定温度を25度ぐらいにしないと、暖かい感じがしません。電気代がかさみそうです。

今年は、出勤時に朝日が見えなくなるのが一層寂しいです。

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