Category Archives: 試験

お国は中国です

5月15日(木)

中間テスト。普通なら、どこかのクラスに試験監督に入るのですが、今学期はレベル1のクラスを教えていますから、そのクラスの会話テストを担当しました。今までもアメリカの大学のプログラムで来ている学生の会話テストを何度もしたことがありますから、会話テストそのものは心配ありません。しかし、いつもは1日3人ぐらいなのに、今回は1クラス全員、20人の会話テストをしました。

3人だったら会話の内容はメモにとっておいて、あとで読み返せば十分に思い出せます。それに基づいて採点もできます。しかし、20人となると、そうはいきません。録音して、あとで聞き返しながら採点し、公平を期さなければなりません。質問もある程度は揃えておいた方が、実力の違いがよく見えてくるでしょう。

というわけで、自分のクラスの学生に対して少し白々しいのですが、「お国はどちらですか」という質問から始めました。この質問に、例えば「中国です」と答えれば、文句なしに○ですよね。ところが、「お国は中国です」と答えた学生が少なからずいました。

「トイレはどちらですか」「トイレはあちらです」は、もちろん○です。学生にしてみれば、トイレがお国に代わっただけなのに、「お国は中国です」はダメなのか、不思議に思うことでしょう。授業では、「お国はどちらですか」「中国です」を練習しています。自分に関することに尊敬語の“お”を付けてはいけないというルールも教わっているかもしれませんが、日本語を習い始めたばかりの学生の頭には残らなかったのだと思います。

「お国は中国です」と答えたからといって不合格になんかしませんが、教える側としては、考えさせられるものがありました。それ以外のやり取りでは、学生の知られざる一面が垣間見えて、楽しませてもらいました。学期後半の授業では、この会話テストで仕入れたネタを使って、授業を盛り上げていきたいです。

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できました

5月14日(水)

昨日に引き続き、最上級クラスの中間テストの読解問題作りに励みました。というか、今晩帰宅するまでに仕上げておかないと、テストの時間は確保してあるものの、テスト問題がないという前代未聞の事態になってしまいます。そうならないように、朝からコーヒーを飲んで目を覚まし、気合を入れて取り組みました。

今学期使っている読解テキストは初めて使う教材です。難解な文章が連なっており、教師も油断できません。学生にその文章を味わってもらおうとなると、留学生向け上級読解テキストを扱う時の数倍の力で立ち向かわなければなりません。試験問題を作ろうと読み直してみると、その数倍の力をもってしても読み落としていた部分がいくつも見えてきました。こんないい加減な授業をしてきた教師が試験問題を作るなど、おこがましいにも程があるとさえ思えてきました。同時に、この新発見を基に、もう一度授業をしたくなりました。でも、そんなことをされた学生は、いい迷惑でしょうね。

学生たちはどうなのでしょう。試験を明日に控えて教科書を読み返してみて、新たな発見をしているのでしょうか。そんなことができた学生がいたら、ぜひ、議論してみたいですね。そうやって、人生や社会や世の中を見つめる新たな眼が養われたのなら、読解の授業をやった甲斐があるというものです。

問題はどうにか作り上げました。授業で議論した内容を問題にし、合格点ぐらいは取れるようにしました。また、学生間の実力差が現れそうな問題も潜ませました。あとは印刷するだけです。

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持ち込み可

5月13日(火)

あさっては中間テストです。私が担当している最上級クラスでは、読解は教科書持ち込み可としました。最上級クラスですから、読解の問題文も長文になります。それだけの文章を入力するのも労力が非常にかかりますし、それを印刷する紙だってかなりの枚数になります。それを無駄だとまでは言いませんが、効率的だとは思えません。だから、教科書持ち込み可としたのです。

個人の教科書ならいろいろな書き込みがなされているのではないかと指摘する人もいるでしょう。でも、その書き込みは、その学生が授業をまじめに聴いていた証です。それを参考にして答えて高得点を挙げたとしても、授業をきちんと聞いていたか、ちゃんと参加していたかをチェックするという、中間テストの実施目的は達成されます。大学入試やJLPTみたいな試験ならそうはいきませんが、学校の定期試験は授業内容の理解度を見る試験ですから、これでいいのです。

でも、問題の作り方は変えなければなりません。穴埋め問題や並べ替えの問題は意味がありません。できれば学生の書き込みが生きるような問題を出してあげたいです。入力の手間が多少省けた分以上のロードがかかるかもしれませんが、これはかける価値があるロードではないかと思っています。

学生たちには、中間テストの読解は教科書がないと問題が解けないと、くどいほど伝えました。明日もダメを押してもらいます。そして、書き込みはいくらしておいてもいいとも言ってあります。これを聞いてわざわざ書き込みを付け加える学生がいるかどかわかりませんが、果たしてテストの結果はどうなるでしょう。

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自信回復

5月8日(木)

Sさんが進学の相談に来ました。Sさんは優秀な学生です。しかし、昨シーズンはどこの大学にも落ちてしまい、4月からもKCPで勉強をつづけ、捲土重来を期しています。

Sさんは国公立大学を狙っています。それぐらいの力は持っていると思います。でも、大学に落ち続けたことが尾を引いているようで、自信を失っています。「私のEJUの成績で行ける大学がありますか」という質問が最初に出てきました。あと1か月余りに迫った6月のEJUに対しても、おびえているような感じがしました。

試験が好きな人はいません。どんな簡単な試験でも、逆に落とし穴が仕込まれているのではないかと疑心暗鬼に陥ってしまいます。今のSさんは、それが高じているような気がします。自分の答えに自信を持ってもらいたいのですが、自信をつけさせるにはどう指導すればいいか、これが難しいのです。ただ単に「自信を持って!」なんて言ったところで、Sさんの心は変わりません。

Sさんが、去年の11月の成績で入れそうな国公立大学はないかと聞いてきましたから、まずはそれに答えることにしました。論拠となるデータを示した上で「X大学ならSさんの点数でも十分手が届くよ」と言ってあげられれば、Sさんの気持ちも多少は上向くのではないでしょうか。そういう大学も含めて、Sさんが勉強したいことが学べそうな大学を何校かリストアップしました。

まじめなSさんのことですから、リストを渡せばそれらの大学について自力で深く調べることでしょう。そうしているうちに、その大学に入りたいと思うようになり、試験におびえるのではなく、積極的に立ち向かおうという気持ちが沸いてきたらと思っています。

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「に」は重い?

4月28日(月)

先週に続いて、レベル1の文法テストの日に当たってしまいました。

“おんせん(   )はいりたいです。”という問題がありました。答えは、言うまでもなく「に」です。でも、「を」という誤答が目立ちました。助詞の「に」を「を」としてしまう誤りは、中級上級になっても尾を引きます。だから、何もないまっさらなレベル1の頭に「に」を印象付けたいところです。しかし、授業開始から半月余りで「を」の魔手が学生たちに襲い掛かり、その犠牲者が多数出てしまいました。

助詞「に」は、母語にかかわりなく、日本語学習者にとって難解のようです。“電車を乗ります”のような誤用は日々目にしています。「に」は、主格の「が」や目的格の「を」と違って、漠然と守備範囲が広いです。“(場所)に”にしたって、“(場所)で”と競合関係(?)にあり、テストでも作文でも、学生たちはよく間違えてくれます。

日本語文法の助詞の問題で、正解がいちばん多いのが「に」だそうです。私も、文法の問題を作るとなると、やはり「に」を問う問題を多く作ってしまいます。JLPTのような大規模テストでも、「に」が正答になることが多いように見受けられます。「に」が正しく使えるかどうかは、日本語教師にとってその学習者の力を測るバロメーターみたいなものなのです。逆の見方をすると、「に」を間違えずに使っている学習者は、相当できると見ていいでしょう。

これをお読みの日本人のみなさん、あなたの身の回りの外国人はいかがですか。同じくこれをお読みの日本語学習者のみなさん、ご自身の日本語はいかがですか。日本語が上手だと思われたかったら、「に」を磨いてください。

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初テストの出来栄え

4月21日(月)

レベル1のクラスで、初めての文法テストをしました。入学後2週間ですから、文法と言っても「コーヒーをのみますか。――いいえ、のみません」などという程度です。「ありがとうございます。でも、刺激物は控えておりまして…」なんていう答えは求めていません。

試験時間は20分。早々に解答し終えた学生もいましたが、その答えを覗き見ると、随所に間違いがありました。試験中ですから、学生個人に対しては間違いを指摘するわけにはいきません。「はい、あと5分です。みなさんの答え、本当にいいですか。“てんてん”、小さい“やゆよ”、小さい“つ”、長い音、大丈夫ですか。もう一度よーく見てください」と全体に注意するのが精一杯です。これだって、こういう注意をしなかったクラスに対して不公平だと言われてもしかたありません。

Mさんは、私の注意を聞いて、間違いを見つけて、直しました。しかし、Yさんは見直そうともしませんでした。レベル1だと、見直しても間違いに気づかない学生の方が多いものです。中級になると、こちらの思い通りに直してくれる学生が出てくるものなのですが。

さて、採点です。満点に近い学生からかろうじて0点を免れた学生まで、予想以上に点差が付きました。Sさんは不合格になってしまいました。来日が1週間近く遅れたので、授業で勉強・練習しなかったところがたくさん出たのが痛かったです。でも、この先必死に勉強すれば、まだまだ十分挽回可能です。

そのSさん、授業後に来日前に行われたテストの追試を受けて帰りました。また、授業に入った直後に行われたテストの不合格者への課題も提出しました。どちらも完璧な出来でした。昨日の宿題も、むしろ他の学生より高い内容を書いていました。この調子なら、次のテストは間違いなく合格でしょう。ただ、話す力がまだまだなのが気がかりです。

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伸びたなあ

4月19日(土)

Sさんは去年の10月期から理科系の日本語プラスを取っています。最初の学期は、11月のEJUの直前でしたから、EJU対策が中心でした。しかし、当時レベル3、中級にも達していなかったSさんには、授業の内容も私の日本語も難しく、何が何だか全然わかりませんでした。EJUが終わり、もう一度基礎からの授業になり、ようやく少しずつ話がわかってきました。

先学期は、授業を聞き、練習問題をし、ひたすら力を蓄えました。学期末には、過去問にもだいぶ歯が立つようになりました。

そして迎えた今学期、Sさんが取っている生物の授業は昨日から始まりました。半年前のSさんと同じように、レベル3の新しい学生が加わりました。オリエンテーションで生物の教科書に載っているような図を見せると、何の図かすぐに日本語で答えられました。問題文がやたら長い過去問も、少し時間はかかりましたが、正解でした。よくわからずにポカンとしていた同国人の新しい学生に、国の言葉で説明していました。

日本語でなくても、問題の解説ができるというのは、かなり実力をつけたという証拠です。人は教える間に教えられるといいます。わからない学生に教えるためには、自分自身の頭の中が整理されていなければなりません。Sさんの頭の中には、単に知識が堆積しているだけではなく、それがきちんと体系づけられているようです。もし、本当にそうなら、今度のEJUはかなり期待が持てます。

考えてみれば、Sさんももうすぐ上級のレベルにまで上ってきたのです。これぐらいできて当然かもしれません。毎週見ているとあまり感じられませんが、昨日みたいな姿をみると、成長を感じずにはいられません。

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困った

3月26日(水)

超級クラスのSさんから、専門学校に落ちたという連絡が入りました。Sさんは超級クラスの学生ですから、日本語に関しては心配ありません。専門学校も、日本語で落とされたのではないことだけは確かです。では何が原因かというと、KCPでの出席率以外に考えられません。

Sさんは、もともとは大学に進学するつもりでした。その気になれば、去年の4月に進学できたかもしれません。しかし、“いい大学”に進みたかったですから、もう1年勉強する道を選びました。結果的には、この選択が裏目に出てしまいました。いろいろな理由で学校に通えない日が増えてしまい、2024年度もあと5日という押し詰まった時期において、行先が決まっていないという状況に陥ってしまいました。

もちろん、KCPも手を拱いていたわけではありません。手を変え品を変え、飴を与えたり鞭で打ったり、相談に乗り指導をし、出席率浮揚策を打ってきましたが、浮かび上がるのは一時期だけでした。やはり、合格には出席率が不可欠なのです。

最近は、出席率90%でも、「どうして10%も休んだんですか」と聞かれることがあるそうです。となると、それよりもかなり悪い数字のSさんは、どう答えても苦しい立場に追い込まれます。病気と答えたら、そんな病弱の体で留学が続けられるのかと追及されるでしょう。

在校生で一番心配なのが、Jさんです。JさんもSさんに負けないくらいの日本語力を持っていますが、Sさん以上に出席率が心配です。来年の今頃、尾羽打ち枯らして「先生、どうしたらいいですか」なんてやっているのではないかと心配しています。

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あれ、1回だけ?

3月15日(金)

教材や教科書として使う本を探しに紀伊国屋まで行きました。開店直後だったのでわりとすいていました。1階を軽く見て、日本語学習書が置いてある7階に上がると、私が初めての客だったみたいで、直立不動の店員さんたちが一斉に私に向かって頭を下げました。

しばらくご無沙汰しているうちに、新しい教材や日本語教師側の参考書などがずいぶん出ていました。どれもみんなほしくなりましたが、そこはぐっとこらえました。そんなことをしたら破産してしまいますから。

しかし、EJU関連の本は代わり映えしませんでしたね。新しい本もありましたが、他の分野の活発さに比べると見劣りがしました。

そんな新しいEJU関連の本の1つに、2024年のEJU試験問題集がありました。2023年までは6月のと11月のと別々に出版されていましたが、2024年分は1冊にするというお知らせがだいぶ前にありました。ですから、2回分を1冊にまとめて出版されるのだろうと思っていましたが、売り場に出ていた問題集には1回分しか載っていませんでした。しかも、値上げされていました。

諸式高騰の折、値上げはやむを得ないとして、2回試験があったのに1回分しか出版しないというのはどういうことでしょう。EJUの過去問って、よっぽど売れないんですね。赤字を少しでも減らそうとして、本来2セットあるはずの問題を1回分だけにしたのでしょう。

国を挙げて留学生を呼ぼうとしているのに、こんなことでいいのでしょうか。1回分だけでも出版されるだけありがたく思えということなのでしょうか。

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誰が書いたの?

3月4日(火)

来週の水曜日が卒業式なので、上級の選択授業は今週が最終回です。卒業式で大半の学生がいなくなってしまうため、それ以降は選択授業が成り立たなくなるのです。

毎週火曜日に担当してきた小論文も、最終回を迎えました。この選択授業・小論文では、しっかりした根拠に基づいて論理的に書くということを目標にして、毎週600字程度の小論文を書いてもらってきました。ですから、課題を発表してから、インターネットで調べる時間を与えました。調べ終わったらスマホなしで書くという進め方をしてきました。

そうやって書いた(はずの)学生の小論文を読むと、まとまりすぎている文章が、毎週いくつかありました。根拠を調べる時間に、それっぽいことが書いてあるページを見つけて、それを丸写ししたのかもしれません。あるいは、ChatGPTなどに書いてもらったのかもしれません。

このような文章は、まとまってはいるのですが、濁点が落ちていたり、促音の「っ」が余計なところに入っていたり足りなかったり、「、」と「。」を書き違えていたりなど、文章の内容にそぐわない間違いが随所に見られます。しかし、現場を見ていないので、「コンピューターに書いてもらったでしょう」と断罪するわけにもいきませんでした。

しかし、先月末の中間テストと卒業認定試験では、下調べは一切なしでした。すると、今まですばらしい小論文を書いていた学生が、急に意味不明の日本語の羅列を書き綴りました。見事と言うほかない落差でした。

最終回では、クラスの学生が書いた誤文をピックアップし、それを訂正してもらいました。化けの皮がはがれた学生のウルトラ誤文も載せようと思ったのですが、クラスで一番優秀な学生でも直せそうもなかったので、もう少し直しやすいのにしました。

反則技を使った学生たちは、卒業していきます。「大学に入ったら、もう少し上手にAIを使おうね」と皮肉ってやろうかとも思いましたが、誤文訂正の所でボコボコにしましたから、やめておきました。

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