Monthly Archives: 6月 2018

チャイムが鳴るや否や

6月5日(火)

Bさんは今学期の新入生で、レベル1にいます。クラスの中では理解も早く、発言も多く、中間テストの成績も抜群でした。ですから、先週の面接の時に、次の学期にレベル3に上がるテストを受けたらどうかと勧めてみました。そのテストを受けるには担任のM先生の許可をもらう必要があります。そして、昨日、BさんはM先生から許可を得ようとしましたが、断られました。

終業のチャイムが鳴ると同時に、Bさんはメールを見ました。そのとき、M先生はまだ話をしていたそうです。M先生としては、まだ授業が終わったとは思っておらず、授業中に携帯電話を使ってはいけないというルールに触れたと判断したのです。ですから、ルールも守れない学生に上のレベルに進級するチャンスを与える必要はないと考え、Bさんの要求を拒否したというわけです。

KCPは勉強さえできればそれでよいというスタンスは取っていません。たとえチャイムが鳴っても、教師が「終わります」と宣言しない限り授業中です。もちろん、チャイムが鳴ってから10分も15分も授業を続けるというのは非常識とされてもしかたありません。しかし、チャイムの直後に携帯をいじったら、学生側がフライングを取られても文句は言えないと思います。そのとき教師の話に全く注意を向けていないのですから。

受験講座を終えて職員室に戻ってきたらBさんが泣きついてきましたので、そんな話をして、M先生に詫びを入れて、改めてチャンスをもらうようにとアドバイスしました。こういう苦労が日本語を伸ばすのです。塞翁が馬になってくれたらいいのですが、果たしてどうでしょう。

プレゼンは嫌い?

6月4日(月)

授業後の面接で、「先生、今学期もみんなでする発表がありますか」とLさんに聞かれました。グループで発表するタスクがあるかという意味です。「はい。今週の後半ぐらいから取り掛かる予定ですよ」と答えると、Lさんは眉を八の字にして、「日本はみんなの前で発表することが多いんですか」と聞いてきました。

Lさんは、自分独りで調べて勉強してレポートの形にまとめて提出するのはいいけれども、それをみんなの前で発表するとなるとプレッシャーを感じると言います。また、グループで何かをするのも好きではないそうです。ですから、グループで課題に取り組んで、その成果をクラスのみんなの前で発表するなんて、Lさんにとってはとんでもなく嫌な課題なのです。先学期も先々学期もそういう課題があり、今学期もそういう課題があるという噂を聞き、居ても立ってもいられなくなったのでしょう。

今は、専門学校でも大学でも大学院でも、学生にプレゼンテーションをさせる授業がよくあります。私の学生時代のように先生の話を一方的に聞くばかりというパターンは少なくなりました。自分の考えや学んだ成果を公にすることがより強く求められるようになったのです。社会が、そういうことができる人材を求めるようになったと考えてもいいでしょう。同様に、協調性を養う一形態として、グループタスクも盛んになってきています。

私も、こういう商売をしていますが、みんなの前で何かするよりは、こうして独りで静かに作業するほうが好きです。職人気質みたいなところがあると思っています。ですから、Lさんの気持ちもわからないではありませんが、Lさんが活躍する時代は自分を積極的に売り込むことをしていかないと、勝ち組にはなれません。AIとの競争にも敗れてしまうかもしれません。

そんなことまでは言いませんでしたが、Lさんの志望校は黙って授業を聞いているだけでは済みません。性格を改造するくらいの気概が必要です。そう考えると、私はのどかないい時代に生まれたのかもしれません。

違う頭

6月2日(土)

来週は養成講座の講義があるので、そこで使う資料の点検をしました。今までに何回か使ってきた資料ですが、読み返すたびにちょこちょこ手を入れたくなります。もう少し正確に言うと、しばらく動かしていなかった頭の部分に血を通わせながら資料に目を通すと、あれこれ疑問点が浮かび上がってくるのです。新鮮な目で見ると、前回まで使ったときには気づかなかったあらが見えてくるのです。

こういう説明やデータが足りないんじゃないかとか、これは回りくどい表現だとか、半年ぐらい前にその資料を作った自分自身に突っ込みを入れつつ作業を進めます。これは決して面倒くさい、できれば避けたい仕事ではなく、修正のために調べ物をすることは、心地よい脳みその体操です。

私の場合、日本語のほかに理科も教えています。午前中が日本語で、午後から理科というパターンもしょっちゅうです。そのたびに、脳の切り替えというか、頭を作り上げていく感じがします。日本語を教えているときは大脳の言語野が活性化されていて、理科のときは別の部分が働いているのでしょう。養成講座の講義では、これらとはまた違う部位を活動させているようにも感じます。一度、脳の血流を測る装置でも装着して授業をしてみたいです。

さらに私は、学校を一歩出たら読書人になります。朝の電車の中か昼の食事のときかに読んだストーリーを思い出し、電車に乗るや否やそこに没入します。頭のいろいろなところを使うとボケないとかいわれていますが、私の場合はどうなのでしょう。このごろ忘れっぽくなったり根気が続かなくなったりしています。マルチタスクでそういう劣化を何とか押さえ込みたいです。

耐久レース

6月1日(金)

今年の、主に私立大学の入試日程を調べています。「6月中旬発表」などというところが多いため、日程を完全に把握するには至っていませんが、いろいろと思うところがありました。

まず、改めて学部名が多彩になったと感じさせられました。工、理、医、薬、文、法、商など、漢字1文字の学部名が多かった私が受験生だった頃と違って、グローバル・コミュニケーション、キャリアデザイン、情報コミュニケーション、コミュニティ福祉など、カタカナ花盛りです。漢字1文字組も、デザイン工学部、システム理工学部、創造理工学部、情報理工学部、総合数理学部、化学生命工学部、生命医科学部などカタカナと組み合わせたり漢語を加えて一ひねりしたりしています。漢字にしても、総合政策学部、政策創造学部、総合文化政策学部、人間健康学部、人間福祉学部、総合人間科学部、地球社会共生学部など、名前が伸びる傾向があります。学科名はこれに輪をかけて複雑です。勉強内容を細分化明確化して受験生を引き付けようと考えているのでしょう。私たちも各学部で何が学べるのか、学生自身がどういう将来像が描けるのかきちんと研究して、進路指導していなければなりません。

それから、受験が長丁場になる例が相変わらず多いということも感じました。まだ残暑が厳しい頃に出願したのに、最終結果が出るのは年が明けてからという例もあります。11月のEJUの結果が出るのが12月29日ごろだというのも、その理由の一端だと思います。結果が出るまでは長丁場ではなくても、合否が決まってから入学まで半年もある例が見られます。ギャップイヤーのように有意義に過ごしてくれればいいですが、気が緩んでしまうのではないかと、心配になります。

今月は、上位校のオープンキャンパスがぼちぼち開催され、こちらにも学生を送り込みたいです。おとといの進学フェアで盛り上がった学生の意識レベルを保っていこうと思っています。