Monthly Archives: 7月 2021

身近なところに

7月5日(月)

土曜日の夜、駅の近くの小さなスーパーがやけに混んでいました。お惣菜の棚なんか、ほとんどすっからかんでした。よほどの目玉商品があったのだろうと思いながら家の近くまで来ると、何となく暗いのです。ショッピングモールの中核をなすスーパーが臨時休業でした。金曜日の夜は、ごく普通に営業していたんですけどね。

入口の張り紙を読むと、スーパー内の魚屋で陽性者が出たため、急遽休むことにしたとのことでした。今まで、私の親戚縁者、職場、友人など、親しい人に感染者はいませんでした。よく行く店がこういう形で臨時休業になるのも初めてでした(去年、最初の緊急事態宣言が出た時は、紀伊国屋書店が休業になり、大迷惑でしたが…)。ですから、私にとって、この魚屋さんが、一番身近な感染者となりました。

このスーパーに最後に入ったのは、確か先週の水曜日で、その時間にはもう魚屋は閉まっていました。ですから、私が濃厚接触者となる可能性はゼロです。でも、こういう心配をしなければならなくなったというあたりに、東京での感染の広がりを実感しました。

ここのところ、前の週に比べて1.2倍のペースで新規感染者が増えています。何としても有観客でオリンピックを開こうとしている菅首相を嘲笑うかのごとき増えようです。菅さんの夢を打ち砕くために苦しい思いをする新型肺炎にかかる人はいませんが、あたかもそうであるかのようにさえ見えます。都議選だって、前回が負けすぎですから多少は議席が増えましたが、到底勝ったとは言えません。

今週末から新学期ですが、学生たちも安全安心とは思っていないでしょう。

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不幸な合格者

7月3日(土)

昨日、K先生がM大学へ行って、先生と話をしてきました。その中で、今年M大学に進学したWさんが話題になりました。Wさんは留学生が少ない学部に進学しました。その学部に、Wさんと同じ国から直接募集でこの春に入学した学生がいるそうです。その学生は、入試の成績はWさんよりよかったのですが、M大学の先生とのコミュニケーションがほとんどとれず、Wさんを介してやり取りを行っているとか。

Wさんは入試フルコースを受けて合格しました。ペーパーテストの成績はさほどでもなかったのですが、面接で点を稼ぎました。Wさんと同じ国から来た新入生は、面接試験がなかったようです。だから、生の日本人の発話が聞き取れなかったり、生の日本人に自分の意思を伝える発話ができなかったりしているのでしょう。

Wさんは私たちと普通に話をしていました。わからないことをわかるまで聞き続けるなど、JLPTやEJUの聴解問題をやるだけでは絶対に身に付かないコミュニケーション力を、知らず知らずのうちに鍛えていたのです。それが、進学してから物を言っているのであり、そういう訓練をしてこなかった同級生との差になって表れているのです。

KCPの学生の中にも、せっかく日本で勉強しているのに、自分の国のコミュニティーから抜け出ようとせず、いつまでたっても話せない聞けない学生がいます。そういう学生は、授業で指名された時が、日本人と話す唯一のチャンスなのです。でも、こういう学生に限って、テストの点が高かったりするんですよね。そして、進学してからコミュニケーションが取れないことで大きな苦労を味わい、こんなはずじゃ…と絶望するのです。

7月期後半は、入試が始まります。不幸な合格者を出さないようにしていかなければなりません。

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心配事

7月2日(金)

大学や専門学校の留学生担当の方が時々いらっしゃいます。しかし、今年は学生がいません。オリパラが終わるまでは留学生の入国は難しいでしょうから、今、海外にいてKCPに入学を希望している人たちの入学は、早くて10月になりそうです。毎年、4月に入学して1年で進学していく学生もいますが、来日が遅れるとその分だけその数は少なくなるでしょう。

そして、11月のEJUの出願は7月ですが、11月に日本で受験できる確証がないと、出願する意欲も鈍って当然です。去年も、出願はしたものの、試験日までに待機明けの自由の身になれず、受験できなかった学生がいました。多くの大学がEJUを必須としているので、22年4月に大学に送り込める学生の数となると、本当に限られてしまいます。

大学院にしたって、状況は大きく変わりません。海外から日本の大学院の先生に接触する手はありますが、順調に来日し、試験を受け、進学の運びとなる学生が19年までと同等になるとは考えにくいです。

21年度入試で面接試験を省いたところは、日本語でコミュニケーションが取れない学生が入学してしまって困っているという話を聞きます。そうすると、現時点で日本にいて、面接試験が受けられる学生が有利だとも考えられます。もちろん、面接でコミュニケーション力が発揮でき売ればという仮定の下ですが。

大学や専門学校は学生数を確保したいでしょうが、学生の質も落としたくないに違いありません。学生の質は教育の質に直結していますから。そう考えると、今の学生たち、ちょっと心配だなあ…。

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文法を教える

7月1日(木)

月が替わりました。私は養成講座の授業が始まりました。中上級の文法です。でも、日本語の骨格を成す“文法”は、初級で勉強してしまいます。動詞の活用、助詞のはたらき、日本語の文構造、そういった事柄は、みんなの日本語の赤い本と青い本でほぼ勉強し尽くします。厳密に言うと、中級や上級の文法の時間に勉強することは、句法や語法です。

実は、中級や上級は、文法以外の時間に文法を勉強していることが多いのです。初級で勉強した文字通りの文法をどのように応用していくか、字面の裏側に隠された話者の真意をいかに探り当てるかなどを追求していきます。また、日本の文化や日本人の伝統的な考え方に基づいた言葉の使い方や表現の方法といったことも、機会あるごとに触れていきます。

これらは、日本人にとって当たり前すぎることなので、授業などで見過ごされがちです。また、受験のテクニックとも違いますから、問題集などで扱われることもあまり多くありません。しかし、学習者が日本人と意思疎通を図りながら日本で暮らしていく上は、どうしても必要なことです。JLPTや大学入試の点数につながらなくても、日本を生活の舞台とするなら、身につけておかねばなりません。その役目を担うべきは、日本語教師です。

日本語は、英語とは違って国際共通語ではありません。英語は、ノンネイティブ同士のコミュニケーションにも活発に使われています。しかし、日本語の場合、ノンネイティブはネイティブとのコミュニケーションの場面に使うのがほとんどでしょう。だから、上述のような日本語の使い方ができるようになっておく必要があるのです。

学習者が日本語を生かしていく際に不可欠なことは何か、それを受講生に伝えていきたいです。

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