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朝の採点

6月12日(水)

今朝、出勤して最初に取り組んだ仕事は、昨日の日本語プラスの時間に学生に書かせたEJU記述の採点でした。昨日のうちにざっと目を通してだいたい何点ぐらいか見当をつけておきましたから、2度目はじっくり読んで添削しながら最終的に採点しました。今度の日曜日がEJUの本番ですから、急いで採点して午前の授業の時に、学生に返してもらおうと思ったわけです。

EJUの記述は、独創性はあまり要求されません。何と言っても論理構成が採点のポイントです。文法の間違いや誤字脱字もないに越したことはありませんが、それよりも話の筋が通っているかどうかです。問題文の指示に従って、自分の意見まで書けたら、毎回35点前後の平均点ぐらいはどうにかなるでしょう。

さて、採点してみると、初級のLさんは最後の段落が書ききれませんでしたが、言いたいことは十分にわかりました。自分の考えが書きかけでしたから、ちょっと厳しいかもしれませんが、35点。Sさんは制限時間の数分前には書き終わっていたようでした。文章全体の骨組みはできているのですが、1つ1つの文がひどすぎます。KCPの学生たちの例文や作文によって日々鍛えられている私が、添削という和文和訳をしながら読んでもピンとこなかったのですから、EJUの採点官にわかってもらえる可能性は低いでしょう。25点じゃ甘いかな。Tさんはさすが上級で、内容はよくわかりました。話の進め方が若干強引なので、45点。Cさんもまとまっていましたが、Tさんのよりいくらかわかりにくかったので、40点。

こんな調子で全員分採点し、午前の先生方にお渡しできました。多少なりとも学生たちの成績を伸ばすことに貢献できたら、うれしい限りです。

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時間との闘い

6月11日(火)

先週から、日本語プラスの理科は、EJUと同じ試験時間、80分で過去問2科目を解き、マークシートまできっちり塗る練習をしています。EJUの理科の問題は、時間さえあれば必ず解けます。1題1題は決して難しくないのですが、受験生は問題数で圧倒されてしまうのです。科目間の時間配分と、それを守るためのスピード感を実地に体験して、本番に備えてもらおうという趣旨です。

授業では計算のスピードを上げる方法を伝授しています。問題を解いている最中にそれを思い出せうるかどうか、思い出してその方法で答えを出すに至ったか、そういったことも確かめてもらいたいです。先週はこの点があまりうまくいかなかったようでした。まじめな学生たちですから、みんな真正面から計算してしまいます。そうすると、80分で2科目は厳しくなります。果たして、今週はどうだったのでしょう。

80分で2科目、40問弱を解かなければなりません。マークシートを塗りつぶす時間を含めて、1問2分ほどです。計算問題が多い物理に少し長めに時間をかけるとすると、化学にかけられる時間はおのずと限られてきます。また、ある問題を10分かけて正解を得たとしても、その時間で他の問題4~5問解いた方が、いい点数が取れるでしょう。5分かけても解けなかったら、スパッとあきらめることだって必要です。

ほとんどの学生が80分をフルに使いました。解答用紙を集めてから、正解+解説を配りました。毎期、正解の番号しか見ない学生が多い中、今学期はみんな解説まで読んでいましたから、希望が持てそうな気がします。

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背中を押す

6月10日(月)

開場の12時少し前に私が挨拶をしていると、学生が入口からちらっと顔をのぞかせました。ほどなく挨拶が終わり、会場の外で待っていたその学生に中に入るようにと言いました。さらにもう3名ほど、続いて入場しました。今年の大学・大学院進学フェアは、こうして始まりました。

12時は、中上級クラスはまだ授業中ですから、1番に入った学生たちはみんな初級の学生です。でも、果敢に志望校のブースに向かい、拙いながらも日本語で質問していました。大学や大学院の話を聞くというよりも、自分の日本語がKCPの先生以外の日本人に通じたことを喜んでいるようにも見えました。

12:15、午前の授業が終わると、中上級クラスの学生がやって来ました。こちらは今年が勝負ですから真剣です。でも、その真剣さがあだとなり、きちんとした日本語で質問しなければと思ってしまった学生が少なくなかったようです。Sさんもその1人で、どこのブースにも行こうとしませんから、たまたま席が空いたA大学のブースに座らせようとしたら、「先生、ちょっと緊張しています」と言って動こうとしませんでした。でも、勇気を振り絞ってA大学の先生と話をしてみると案外通じたのか、C大学、H大学、F大学などを回っていました。教師の役割は、学生に大学・大学院で勉強したいことを聞いて、それにふさわしい大学のブースに学生を送り込むことです。Sさんのように、背中を押せば前進できる学生が多いのです。

今年の進学フェアは、国立大学のT大学とY大学が参加してくださいました。どちらのブースも、多くの学生でにぎわっていました。この中から何人でもいいですから、本当にT大学やY大学に進学する学生が現れたら、企画した側としてはうれしい限りです。

フェアの終了間際に、何校かの先生に直接お話を伺いました。「いい学生さんが多いですね」と、半分ヨイショでしょうが、そう言ってくださいました。本当にいい学生だったかどうかは、半年前後先の入試の結果でわかります。気を引き締めて指導してゆかねばなりません。

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みもの

6月7日(金)

新任のT先生の授業見学をしました。今学期はもうすぐ終わりですが、新学期に向けてどんなことに力を入れて研究していただくか、そんなアドバイスができればというわけです。

上級クラスですから、JLPTのN1を意識した授業でした。T先生はきちんと教案を立て、学生に示す例文も考えてきていました。不正解の選択肢についても説明が加えられるよう、例文が作ってありました。私なんかの数倍、いや、数十倍も計画的に授業を組み立ててきていました。

けれども、授業の進行が硬いんですねえ。教案通りに授業が一歩ずつ前へ前へと進みます。でも、そこまでです。教科書はどんどん先へ行くんですが、ゆとりがありません。

Sさんが、教科書の例文中の“見物客”を“みものきゃく”と読みました。T先生は「“けんぶつきゃく”と読んでください」と注意して、問題の答えの解説を始めました。私だったらここぞとばかりに脱線します。“みもの”と“けんぶつ”の違いを、これでもかというほど、でもSさんいじめにならない程度に語るでしょうね。

私の場合、隙あらば脱線するという根性で授業していますから、T先生が“みもの”をスルーしたのがもったいなくてたまりませんでした。脱線と言いますが、学生に印象付けようと思っているのです。学生の1人でも2人でも、“みもの”と一緒にその文に出てきた文法を覚えてもらえたらそれでいいのです。

T先生の教案はきっちり設計されていますから、“みもの”が入り込む余地がありません。それが、授業の硬さとして表れているように感じました。でも、川越でのT先生は、このクラスの学生たちに慕われているようでした。きちんと教えてくれるという誠実な姿が、学生たちに信頼感を与えているのでしょう。

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666

6月6日(木)

令和6年6月6日、しかも大安。縁起がよさそうな日です。だからというわけではありませんが、来学期の新入生のプレースメントテストをしました。もちろん、学生たちは来日していません。オンラインでの試験です。パンデミックですべてがオンラインになってから、新入生のプレースメントテストは、来日前にオンラインで行うようになりました。パンデミックが収まってからも、来日前に済ませてしまった方が日程に余裕ができますから、プレースメントテストはオンラインでしています。

私は、午前中のテストで中級以上の日本語力と判定された新入生たちが、中級以上のどのレベルに当たるか判定するテストの試験監督をしました。試験監督といっても、パソコンを眺めて、所定の時刻に所定の問題を送り、所定の試験時間後に解答を提出させ、また新しい試験問題を送り、所定時間後に回収するという、腰かけたままできる楽な仕事でした。教室での試験では、受験生の間を歩き回らなければなりませんから、たとえ受験者が少なくてもずっと座っているわけにはいきません。しかも、みんな中級以上ですから、少しゆっくり目に話せば日本語も通じます。こんないい商売はありません。

画面上に映し出された受験生たちは、日本語がよくできると思って見るからでしょうか、みんな賢そうに見えました。受験生の背景の部屋は、きちんと整理整頓されていました。日本でもこういう生活を続けられれば、順調に力を付けて志望校に入れるんだろうなあと思いました。

試験は無事終わりました。「日本で会いましょうね」と言いながら画面に手を振ったら、みんな手を振り返してくれました。この学生たちに実際に会うのは、来月の入学式です。

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なくした

6月5日(水)

午前の授業が終わって数分経った頃、Kさんが職員室へ来ました。16日(日)に行われるEJUの受験票をなくしたので、再発行はできないかと言います。

「うちの中、どこを探してもないんですか」「はい、探しませんでした」。言っておきますが、ここでの“探しませんでした”は、“見つかりませんでした”という意味です。Kさんは何もせずに私のところへ来たわけではありません。“見つける”とか“見つかる”とかという単語が出てこないのが、Kさんのような中級の学生の姿です。

それはさておき、学校で団体申し込みをした分のEJUの受験票を配ったのは、わりと最近のことです。もうなくしちゃったのかよと言いたくなります。どうしてないのかと聞くと、Kさんは「捨てたと思います」と答えました。せめて「捨ててしまったと思います」ぐらい言えないのでしょうか。

とにかく早く受験票がない状況から脱したいという意識がビンビンと感じられました。EJUの仮受験票はオンラインで簡単に出すことができます。しかし、Kさんには明日まで待てと言いました。自分はとんでもないことをしでかしたんだと、少しでも反省してもらいたいのです。仮受験票はA4の紙1枚ですから、本物の受験票をいとも簡単になくしたKさんなら、そんな紙っぺらなどあっという間にどこかにやってしまうに違いありません。

受験票がないのに気づいたのが試験当日だったというよりはましかもしれません。でも、私とのやり取り日本語からしても、Kさんには多くは期待できませんね。

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牛乳対日本語

6月4日(火)

欠席したYさんに電話をかけて休んだ理由を聞くと、「ゆうべ、賞味期限が過ぎた牛乳を飲んで、お腹を壊しました」という答えが返ってきました。飲むとお腹を壊すほどの牛乳って、相当傷んでいると思います。飲むときに嫌なにおいがしなかったのでしょうか。タンパク質が腐ると、吐き気を催すようなにおいがするものです。味だって、酸味や苦味がしてくるはずです。変なにおいや味がしたら、もったいないからといっても、生理的に体が受け付けず、吐き出してしまうと思います。

賞味期限はだいぶ余裕を持って決められていますから、1日でも過ぎたら絶対アウトというものではありません。しかるべき温度の冷蔵庫の中に保存してあれば、たとえ開封されていても、直ちに菌が増殖するものではありません。牛乳パックに歯垢たっぷりの口を付けて飲んだら、賞味期限前でも悪くなってしまうかもしれませんが、ちゃんと清潔なコップに移して飲んでいれば、そう簡単に悪くなるとは思えません。

「近頃の若者はひ弱で困る」という結論に持って行きたくはありませんが、こういう理由で休む学生はYさんだけに限りません。よく聞く話です。となると、そう結論付けざるを得ません。さもなければ、こういった学生はずる休みをしていることになります。

気になるのは、Yさんに電話をかけて欠席理由を問うた時、何かを操作したような音がしたことです。パソコンかタブレットで国の言葉を翻訳して答えた可能性もあります。上述のようなわりと単純な理由が日本語で言えないとなると、Yさんの日本語力を疑いたくなります。勉強がわからないから学校へ行きたくないのだとしたら、ひ弱な若者が多いことより深刻な問題です。果たして、真相はどうなのでしょう。

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アラーム発報

6月3日(月)

午前中T先生の代講をすることになっていたので、朝、1人でその準備をしていると、職員室のあちこちでけたたましい警戒音が鳴り響きました。「地震です、地震です」という声に驚いてスマホを見ると、6:32。「富山湾で地震発生」とスマホは叫び続けます。富山湾から東京までなら1分ぐらいかかるだろうと思うと同時に、震度は最大4ぐらいかなと思いました。いや、緊急地震速報が出るということは、東京でも震度5クラスかもしれません。そうなったら、富山や能登半島は震度7だろうかと、悪い方向に想像が広がりました。

しかし、1分経っても2分経っても揺れは来ませんでした。気象庁の最新の地震のページはちょっと混んでいましたが、ほどなく入れました。見てみると、石川県の最大震度が5強でした。ということは、気象庁が予測したのに比べてだいぶ弱い地震だったようです。だいぶ弱いと言っても、震度7と比べての話ですから、5強だった地域のみなさんは、さぞかし肝をつぶしたり冷やしたりしたことでしょう。

学生たちは大半が夢の中だったようです。代講のクラスでこの話を持ち出しても、反応は薄かったです。今朝は結果的に何もしなくてもよかったですが、地震大国ニッポンは適切に反応しないと命にかかわることだってありえます。今朝の私だって、何はともあれ机の下に身を隠すべきだったでしょう。

これをお読みのみなさんは、どんな行動を取られましたか。何もなさらなかったみなさんは、今回は結果オーライでしたが、次回も同じだという保証はありません。警報が空振りだったら、訓練だと思えばいいのです。本棚の前の席から動かなかった私も、自戒を込めて警報の後にするべきことを洗い直してみます。

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リスト入り

6月1日(土)

月が替わって早々、5月の出席不良者のリストが回ってきました。4月のリストに載っていたSさんの名前が消えていました。指定校推薦でH大学などと言っていたのにリスト入りしてしまい、どうしちゃったのだろうと心配していましたが、どうやら一時の気の迷いだったようです。根はまじめな学生ですから、立ち直って目標に向かって進んでいると思っていいでしょう。

Dさんはまたもリスト入り。確かに病弱なのですが、リスト入りが続くとビザが心配です。「そんなに病気ばかりしているんだったら、留学なんかできませんよねえ」というのが入管の考え方ですから、どうにかしてもらわなければなりません。クラスの先生からはたびたび指導を受けているはずですが、それでも出席率が上がらないとなると、本気で帰国を考えなければならないかもしれません。

Jさんもリストに載っていました。授業後に机をきちんと並べてくれたりなど、性格はいいのですが、出席率だけはさっぱりよくなりません。Jさんもよく病気になる学生です。厳しい言い方かもしれませんが、病気に逃げている面があるような気がします。そんなことを続けていたら、いつまでたっても何もできませんよ。国へ帰ったって、学校も仕事も無理なんじゃないかな。

そして、なんと、Aさんもリストアップされているではありませんか。6月までで帰国するという話を聞いていますが、それで気が緩んでいるのでしょうか。去年、私が受け持った頃のAさんは、向上心がとても強く、出席率も100%でした。その意欲を最後まで持続させることって、やっぱり難しいのでしょう。そう考えると、皆勤賞の学生たちって、本当に偉いなあと思います。卒業式はまだだいぶ先ですが…。

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漢字の不思議

5月31日(金)

今学期はあちこちのクラスに代講で入っています。だいたいどのクラスでも、漢字が正しく読めるのは、中国の学生ではなくアメリカの学生です。理由は非常に簡単で、中国の学生は漢字を“見た”だけで意味がわかってしまい、読み方を深く追求しない学生が多いのです。アメリカの学生は、生まれて初めて漢字を見るようなものですから、読み方も意味も必死に覚えようとします。それゆえ、漢字の読めない中国の学生と、漢字に強いアメリカの学生が生まれてしまいます。

先日、進学の授業で経費支弁書を書く練習をしたら、ある中国の学生が、「●×△(自分の名前)は私の子どもですから、学費は全部私が払います」と言いながら、“~私の児(の簡体字)ですから~”と書いていました。その学生の頭の中では、児(の簡体字)の訓読み(?)は“こども”なのです。意味的には確かにそうですが、そんな書類を見たら、普通の日本人は“???”となってしまうでしょう。

JLPTやEJUの読解問題となったら、中国の学生はアメリカの学生より強いです。漢字の蓄積量が違いますから。文章の音読はできなくても、意味はつかんでしまいます。しかし、マークシートでなくなると、途端にこのアドバンテージを利用できなくなってしまう学生が少なくないのです。頭の中の理解を日本語でうまく表現できなかったり、表現できても“私の児”みたいな表記をしたりといったように、悲惨な解答欄が出来上がってしまいます。

もちろん、本当に優秀な学生もいますよ、先日この稿で取り上げたSさんもその1人です。日本語力が目に見えて伸びてきています。周りの学生はこういう同級生をどう見ているのでしょう。ぜひ見習ってほしいんですが…。

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