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引っかかるなあ

8月5日(月)

午後から奨学金と指定校推薦の面接をしました。

奨学金受給希望者のAさんは、堂々とした受け答えで、さすが上級と思わせられました。KCPから推薦することは問題ありませんが、他校から推薦された学生と比較したときに果たしてどうでしょう。かなりのレベルでも対抗できると思いますが、どのくらいのライバルが出現するか見当がつきませんから、予断は許しません。

指定校推薦のBさんもCさんもDさんも、さすがに大学の研究はしてきています。志望理由や大学で勉強したいことなどについては、的外れの答えはありませんでした。でも、こちらからの質問には苦しい答弁になってしまう場面も見受けられました。例えば、3人とも、EJUの成績があまりよくありませんでしたからその辺をつつくと、それまでの勢いが止まってしまいました。言い訳をしてほしいのではありませんが、こちらに、これなら進学してからもやっていけそうだという安心感を抱かせてほしかったです。

Bさんは面接のマナーもイマイチでした。まだ8月初旬ですからしかたがないとところもありますが、面接の最後に一言挨拶がほしかったですね。Cさんは、いかんせん声が小さかったです。2メートル弱ぐらいしかないのに、聞き取れるか取れないかでしたから、面接本番では完全にアウトです。Dさんは語彙が少ない感じがしました。似た意味の単語を最初から最後まで誤用していました。要するに、3人ともKCPから推薦するにしても、かなりの特訓が必要だというわけです。

留学生を取り巻く大学進学の環境がどんどん厳しくなってきています。これに打ち勝てるだけの地力をつけさせることが、私たちに課せられた責務です。

現実を見つつ

8月3日(土)

平日は授業がぎっちり詰まっていて、その準備と後処理で1日が終わってしまいます。そのため、思索にふける時間がなかなか取れません。その点、土曜日は学生が押し寄せてくることもなく、少しのんびりできます。

その“のんびり”の時間を使って、6月のEJUの結果をまとめました。今回は、平均点は今までとあまり差がありませんが、2~3期連続で受けた学生が点を伸ばしたというのが特徴と言えます。2期連続受験の学生の得点を見ると、いつもなら“あーあ”という学生がそこかしこに出てくるのですが、今回はゼロではないという程度で済みました。多くの学生が数十点成績を上げました。3期連続組も大半が得点を増やし、中には1年前に比べて100点以上も伸びた学生もいました。

学生本人が満足しているかどうかは別です。80点伸ばすつもりだったのが50点“しか”伸びなかったなどと思っている学生もいるでしょう。伸びは大きかったけれども、点数の絶対値がまだまだだと思っている学生もいるに違いありません。現状に満足せずにさらに上を目指すことこそ、進歩のカギです。でも、上を見るばかりではなく、今の実力にも向き合わなければなりません。

いろいろと不満はあるでしょうが、6月の成績で受かりそうなところに出願することが、昨今の厳しい留学生入試状況を乗り切るキモです。11月に期待してもいいですが、過大な期待は禁物です。先物取引で大やけどをするようなことは、絶対にしてはいけません。

もうすでに進学相談に来ている学生もいますが、来週からはこちらから学生を捕まえて上述のような指導をしていきます。出遅れると、3月まで影響が及びかねません。厳しく指導していきますから、学生の皆さん、覚悟しておいてください。

奇遇

8月1日(木)

職員室で午前のクラスの後処理と午後の授業の準備を進めているところを、Yさんに呼ばれました。Yさんは先学期受け持った学生で、今学期は教えていません。昼休みに自分のクラスではない学生からお呼びがかかると、だいたい受験講座関係か、何かややこしい事柄です。ちょっと渋い顔をしながらYさんのところへ行くと、「明日からの京都ツアーに行くのは私1人ですか」と聞かれました。

京都ツアーとは、この週末に京都で開かれるオープンキャンパスを巡るツアーで、企画には京都市も1枚かんでいます。明日の昼過ぎに京都駅近くに集合ですから、明日朝の新幹線で京都に向かいます。京都まで1人で行くのは寂しいから、KCPで他にも参加する学生がいたら紹介してほしいというのが用件でした。

たまたま、このツアーに参加するLさんがロビーにいたので、急いで呼び込んで顔合わせをさせました。2人とも新幹線の自由席で行くようで、時間の調整をしていました。

詳しく聞いていませんが、おそらくYさんは東京の外に出るのが初めてなのでしょう。志望校探しの一環として京都ツアーに申し込んではみたものの、出発が近づくにつれて不安が高まってきたのに違いありません。イチかバチか私に聞いてみたところ、その場で同行者に出会えるという最もラッキーな結果になったというわけです。

何はともあれ、東京から離れたところの大学に目を向けようというのは、好ましい傾向です。こういうツアーを組むということは、ぜひとも留学生に来てほしいというサインですから、その流れに乗らなきゃ損です。Yさん、Lさんには、回った大学の中から志望校を見つけてもらいたいです。

でも、天気予報を見ると、明日の京都の予想最高気温は38度、この先1週間、猛暑日の熱帯夜と出ています。「暑くてかなわん」とあきらめてしまうんじゃないかと心配しています。

直面

7月30日(火)

EJUの結果が学生の手元に届いてだいぶになりますが、Zさんは誰にも成績を教えません。「悪い」と言うだけで、具体的な点数に関しては口をつぐんでいます。いい成績ではないと思っていたようですが、予想を超えるひどさだったようです。11月も受験すると言っていますが、11月も思い通りの点が取れなかったらという恐怖に駆られています。急にどこを受験したらいいかと騒ぎ始めました。

早く動き出そうというのは結構なことですが、Zさんの場合、浮足立っているというべき慌てようで、見ていて心配になりました。自分の勉強したいことが勉強できそうな大学を自分なりに調べているのですが、あっちへフラフラ、こっちへフラフラで、さっぱり的が定まりません。こちらからアドバイスを出しても、上の空のようです。

一昔、いや、半昔前なら、夏の盛りのころから志望校だ出願だ受験だとピーピーガーガー言っていた学生は、第2志望ぐらいには引っかかったものでした。しかし、今はそうは問屋が卸しません。去年も、早く動き出しても卒業式のころまでどうにもならなかった学生がいました。夏の時点で第2志望どころか第3志望にもなっていなかった大学を受けざるを得なくなった学生もいました。

どうやら、Zさんは、強権を発動してどこかに出願させでもしないと、腰が定まらないようです。遠大な目標ではなく、手が届きそうなところにゴールを設けて、それに向けて集中していけば、落ち着きも取り戻せましょう。計画的に物事を進めようという気持ちにもなるだろうと期待もしています。

でも、Zさんは自分の成績を直視しています。LさんやKさんは「これは自分の点数ではない」と言って、出願に関しては全く動こうとしていません。こちらが、もっとずっと心配です。

夏初日

7月29日(月)

昨今の留学生入試事情にはかなり厳しいものがあり、夢や憧れや見栄だけではどうにもなりません。「東京の大学に入りたい」というのは簡単ですが、定員の厳格化も相まって、その実現は決してたやすいものではありません。

学生たちには、6月のEJUの点数で受かりそうなところに出願するように指導しています。6月のEJUの成績がどんなに不満でも、自分の実力はこんなもんじゃないと思っても、公式記録は、大学に通知される成績は、その低い点数なのです。学生は11月には成績が伸びると信じたがりますが、それは往々にして淡い期待に終わります。そして、11月のEJUの成績も使える大学は、国立大学を中心に限られた大学また、6月の成績で前期試験を、11月の成績で後期試験を実施する大学は、間違いなく後期試験の方が入りにくいです。ですから、11月の成績は当てにしてはいけません。6月で勝負しなければならないのです。

そういう指導をずっとしてきたのですが、学生にこちらの真意を伝えるのは難しく、6月の成績を見て愕然としている学生が少ないのが現状です。6月の成績を見て7月中に志望校を決定せよ言い続けてきたので、中にはあれこれ相談に来る学生もいます。でも、大部分の学生は夢の域から脱しきれないのが現状です。

そんな中、H大学の進学説明会が開かれました。予想を上回る学生が集まり、資料が足りなくなるほどでした。H大学は生半可な成績では入れない大学ですが、志望校を決めなければという意識が感じられました。H大学を本命としていると思しき学生は、説明が終わっても会場に残って質問を続けていました。

関東甲信地方は梅雨明け。夏本番=受験シーズンの幕開けです。

希望の星になってくれるかな

7月24日(水)

今学期の受験講座が始まって、もうすぐ2週間になります。私が担当している理科を今学期から受け始めた学生たちは、まだどうにかこうにかついてきています。その中に2人ほど、理科ができそうな学生がいます。

2人に共通するのは、国できちんと理科を勉強してきたらしいところです。物理や化学や生物に関する知識が豊富です。しかも、頭の中に乱雑に知識が詰め込まれているのではなく、系統立てて整理されている気がします。上手に育てれば、KCPの進学実績に大きく貢献してくれることが期待できます。

ただ、こわいのは、天狗になることです。2人とも、自分は他の学生たちよりもできると感じているようなところがあります。これが程よい自信とプライドにつながれば、大きく伸びていくことでしょう。しかし、過信やうぬぼれになったり、他の学生たちを見下したりするようになったら、伸びは期待できません。知識をひけらかすような場面が時たま見られますから、ちょっと気になっています。

こちらとしては、適当なところで天狗の鼻をへし折ってやらねばなりません。へし折られて再び立ち上がった学生は、いわゆる“いい大学”に進学しています。しかし、へし折られたのに気づかず、いつまでも自分は一番と思い込んでいる学生は、気が付いたら進学先がなくなっていたということにもなります。

そういう学生に共通していることは、日本語力をバカにしている点です。理系の進学は理科さえできれば心配無用などと考えている節があります。だから、クラス授業中に理科の問題を解いてみたり、会話練習を軽視したり、汚い字の殴り書きで提出物を書いたりということを繰り返します。教師にどんなに注意されても、改めようとしません。

もうすぐ6月のEJUの結果が学生の手元に届きます。ホープ君たちはどんな成績なのでしょう。

どうしたらいいんだろう

7月17日(水)

今学期から受験講座を受け始めた学生は、今が一番不安なときだと思います。クラスの日本語の授業では絶対に出てこない単語が次々と襲い掛かり、習ったばかりの文法や教科書の後ろの方にあった文法が連発され、教師の言葉を追いかけるだけで精一杯かもしれません。確かに国の高校で習った覚えのある内容なのですが、それを日本語で改めて勉強するとなると、また違った難しさを感じるでしょう。

私は初級を教えた経験もありますから、目の前の学生が知っているはずの文法を組み合わせて説明を組み立てることもできますが、そうでない先生方は言葉の加減が難しいと思います。でも、進学したら、進学先の先生方が留学生に合わせたやさしい日本語を使ってくれることは、まずないでしょう。日本語「を」勉強するのではなく、日本語「で」勉強する訓練を、受験講座を通してしてもらいたいと思っています。

先学期以前から勉強している学生たちも、試練の時です。大学の独自試験に照準を合わせた問題に取り組むとなると、EJUよりずっと大量の日本語を読まなければなりません。また、筆答式となると、自分の考えを簡潔にまとめることも求められます。日本人の受験生よりは甘く採点してもらえるとしても、限度というものがあります。採点官にとって意味不明の文だったら、点数はもらえません。採点官は、KCPの先生方のように広い心で留学生の書いた文の意味を受け取ってはくれないでしょう。口頭試問となったら、論理的に話を進めていく必要があります。これまた特訓あるのみです。

EJUで少しぐらい点が取れただけでは、考えている大学には手が届きません。苦しくてもここで力を伸ばすのです。夏に鍛える――今年はまだ夏らしい日がありませんが…。

光と影

7月11日(木)

午後、E大学の留学生担当の方2名がが、今シーズンの入試制度の説明にいらっしゃいました。1名は先日お電話でお話しした方で、もう1名は、KCPの卒業生でSさんでした。顔を見た瞬間、思わず指を差して「あーっ」と言ってしまいました。

Sさんは、8年前にKCPを卒業してE大学の大学院に進学して、その後、E大学の留学生担当の職員になったとか。そんなに前になるかなあ。KCPにいたころと全く変わらない顔だけど(だから、指差しちゃったんですが)。話し方は、さすがに仕事をしているだけあって、かなり鍛えられていました。最近KCPからE大学に進学した学生の状況の説明なんか、堂に入ったものでした。

国にいたころや来日当初は、こういう将来など、予想だにしなかったでしょう。日本で働くつもりではあったでしょうが、一般企業に就職するかそこで経験を積んで起業するかなどということを、漠然と考えていたに違いありません。いろんな偶然が重なってE大学に職を得ることになったのですが、E大学在学中、学業面でも学業外でも光る存在だったからこそ、お声もかかったのです。

Sさんの話は喜ばしい限りですが、ショッキングな話も。E大学も日本の高校の夏休みに合わせてオープンキャンパスを開きますが、そのオープンキャンパスが予約制になったのです。以前からオープンキャンパスに予約制を取り入れている大学はありましたが、最近はどこの大学でもと言いたくなるほど広がりました。当日フラッと行って見られるオープンキャンパスが少なくなりました。

E大学の方のお話によると。不特定多数を相手にするのではなく、E大学に進学を希望する気持ちの強い人たちに手厚く対応したいので、予約制にしたそうです。定員厳格化の影響かもしれないとも思いました。でも、予約制にした大学のインターネットでの予約申込書が、同じひな形から作られているのを見て、言いようのない恐ろしいものを感じました。こういう形で個人のデータを採取し、そこから何かを得ようとしている巨大な影がぼんやり見えました。何となく、息苦しくなりました。

暗いムード

7月9日(火)

7月期の初日は最上級クラスでした。半分ぐらいがどこかで教えたことのある学生でした。大半が進学するので、オリエンテーションの後、東京や東京近郊の大学には容易に進学できないという話をしました。どうしても東京というのなら、思い切って志望校のレベルを落とし、滑り止めを確保すること、さもなければ首都圏以外の大学を志望校に加えることと、半分命令口調で訴えました。

初日からいきなり暗い話題で、学生たちは沈んでしまいましたが、今から言い続けないと、3月の卒業式のころに泣きを見るのは学生たち自身です。KCPの先生方が手分けしていろいろな大学の留学生担当者に話を聞いた結果、どこもかしこも難化しているので、学生たちに考え方を変えさせなければならないという結論に至りました。

さらに、進学後にビザをもらうとき、入管が日本語学校の出席率を重視するようになったという話もしました。心当たりのある学生は、いくらか顔が引きつってきました。こちらもまた、多くの大学の方が異口同音におっしゃっていたことです。上級ともなると在籍期間の長い学生もいて、それで入学以来の出席率が悪いとなると、挽回不可能かもしれません。たとえそうだったとしても、今までに何度となく注意されたのに行いが改まらなかった自分自身が悪いのです。目の前の快楽を追求したために将来の夢が消えたとしたら、帰国後同じ過ちを繰り返さないようにすることで、留学の成果につなげていくほかはありません。

2月や3月になってから、教師の言葉は真実だったと気が付いても、もはや手遅れです。今から毎日学校へ来れば、受かる大学を確実にものにしていけば、にっこり笑って卒業できるでしょう。私の話が、その第一歩につながってくれればと思っています。

初戦をものにせよ

6月19日(水)

留学生入試のトップを切って、早稲田大学の出願がもうすぐ始まります。そこで、志願者を集めて、卒業証明書など出願書類を点検し、志願表などの作成の注意点を伝えました。

今までいろいろな先生から何度も言われているはずなのに、「必着」の意味がよくわかっていない学生がいました。大学に直接持っていくなどと言っていましたが、入試要項には大学窓口では一切受け付けないとしっかり書かれています。1人の学生を救いました。

受験料の納め方にも質問が来ました。学生たちの出身国は日本より現金を使うことが少ないので、カードやアリペイなどで払うと思っていたら、みんなコンビニで現金で払うとのことで、ちょっとびっくりしました。

みんな志望理由書はこれからだそうです。ペンで書かなければならないので、間違えた時に修正テープを使ってもいいかというのが気になる点です。ダメとはどこにも書いてありませんが、日本人の心理としては、好ましい心証にはならないだろうと答えておきました。800字以上の文章を、精神を集中させて所定の原稿用紙に書かなければなりません。私もあまりしたい仕事ではありません。

早稲田大学は出願書類を電子的に作成するのですが、志望理由書だけは手書きを求めます。ワープロで書かれた文章からは漂ってこない志願者の体臭を感じたいのでしょうか。すべてキーボード入力で済ませられるとなると、志願者の本気度が盛り上がらないように思えます。一画一画丁寧に原稿用紙に刻み込むことによって、早稲田大学で学ぼうという気持ちが高まりそうな気がします。

26日必着ですから、遅くとも25日には郵便局へ持ち込まなければなりません。2020年度入試の初戦が始まりました。