Monthly Archives: 2月 2019

不審者出没?

2月28日(水)

来週の月曜日に卒業式を控え、授業時間を割いて卒業生たちの予行演習をしました。6階の講堂のステージを使い、本番と同じようにステージに上がり、証書をもらい、文集を受け取り、ステージを下りるという動作を確認しました。日本人にとっては当たり前の証書のもらい方も、日本文化に深く傾倒した学生にとってさえ戸惑うもののようです。みんな、私の説明をいつになく真剣に聞いていました。

卒業式は学校で一番大きな儀式ですから、厳かな雰囲気を持たせたいです。ですから、キメるべきところはビシッとキメてほしいのです。だらっと手を出して証書を受け取るようなことはしてほしくありません。いかに親しき仲とはいえ、私に微笑みかけてくるようなこともやめてもらいたいです。そんな細かいことまでは言いませんでしたが、今までとは違うぞという空気は感じ取ってもらえたと思います。

困るのは、この予行演習に参加しなかった学生どもです。授業を欠席するほどですから、そもそもが怪しいやつらです。それに加えて要領をつかんでいませんから、怪しさ倍増なんていうものではありません。月曜日の本番では、おどおどしながら私の前に出てくるのでしょうね。

もう一つ心配なのは服装です。面接試験に着ていくような服を着て来いと伝えましたが、欠席学生には伝わっていません。燃えないごみでも捨てに来たのかと言いたくなるようなかっこうで出現するやからが、毎年何名か必ずいます。私のクラスのCさんも、最近さっぱり姿を見かけません。ジャージ姿のぼさぼさ頭で、眠そうな顔をしながら式場にぬっと現れるのではないかと気をもんでいます。

あと一歩で

2月27日(水)

卒業式当日を含めてあと4日という段階まで来て、入学以来皆勤だったSさんが欠席しました。腹痛とのことですが、Sさん自身も皆勤を意識していたでしょうから、さぞかし残念だったでしょう。先学期、選択授業で私のクラスにいたときからずっとマスクをしていましたから、体調は決してよくなかったと思います。でも、休んではいけないと言う気持ちだけで出席を続けてきたに違いありません。それがどうにもこうにも行かなくなって、無念の欠席に踏み切ったのだと思います。

この欠席を、Sさんがどう思っているかは現時点ではわかりませんが、一つの物事を完璧にやり遂げることの難しさを痛感しているのではないでしょうか。単純なことでも、単純なことだからこそ、2年間の出席率が99%でも立派なものですが、優秀な人ほど残りの1%に目が行ってしまうものです。その1%を、次は0%にしようという気持ちこそが、向上心を生むのです。今までのSさんを見る限り、Sさんはそういう人だと思います。

でも、現実には、1日休んだら“どうでもいいや”と思ってしまう人が大半です。1日休んだら、2日休んでも3日休んでも同じことだと、ずぶずぶと楽な方へ楽な方へと落ちていくのが普通です。そこから持ち直すのは、100%を続けるより何倍も難しいものです。“明日から“と言いつつ、“明日”がさっぱり来ない学生を、今まで何人見てきたことでしょう。

10年ぐらい前にも、卒業式寸前で寝坊のため遅刻して皆勤を逃した学生がいました。その学生は、遅延証明をもらおうと思えばもらえるところに住んでいましたが、変な言い訳は一切せず、その1コマの欠席のまま卒業式を迎えました。そして、堂々と精勤賞を受賞しました。Sさんも、胸を張って明日からまた学校へ来てもらいたいです。

適度な偏屈者

2月26日(火)

私が担任をしている中級クラスのXさんがI大学の、TさんはH大学の、それぞれ大学院に合格しました。2人とも、今学期は大学院入試を控えて授業中は上の空みたいなところもありましたが、結果よければ全てよしというところでしょうか。入学して1年で志望校に受かったのです。よくやったといっていいでしょう。

XさんもTさんも、ちょっと癖のある学生です。扱いが難しいといえば実にその通りですが、そのくらいとがったところがないと、I大学やH大学のような一流と言われているところの競争には勝てないのかもしれません。でも、ただ特徴があればいいという問題でもありません。コミュニケーションを取ることができる、心に通じ合うものがあるという感覚も必要です。単なる偏屈者では、どこからもお呼びがかかりません。

残念ながら、その偏屈者というか、社会性に欠けるというか、私が面接官だったら絶対落とすだろうなという学生が、このKCPにもいます。能力がありながらどこも決まらなかった学生は、どこかそういうにおいがします。初志貫徹といえば聞こえはいいですが、アドバイスを聞く耳を持たず八方塞に陥ったというのが実情です。

XさんやTさんは、個性の出し方をわきまえていたとも言えるのではないでしょうか。絶対自分を曲げないわけでもなく、かといって押されっぱなしでもない、絶妙の力加減を身に付けていたのです。SさんやKさんは天然ボケの部分があって、受験がうまくいかないというのは、その面が強く出てしまっているのではないかと見ています。絶対受かると踏んでいた学校にも落ちたというのは、多かれ少なかれ唯我独尊に走ってしまったんじゃないかな。

何はともあれ、XさんとTさんです。明日は2人のクラスに入りますから、おめでとうと言ってあげましょう。

初心者

2月25日(月)

「あ、チャイムが鳴りましたね。じゃ、この問題、休憩の間に考えておいてください。15分休みましょう」と、教室を出ようとしたとき、Sさんが声をかけてきました。「先生、面接の練習をしたいんですが、いつ、お時間ありますか」「うーん、明日もあさってもダメだから…、じゃ、授業が終わったらそのまま教室に残って。ここでしましょう」ということで、急遽、面接練習をすることになりました。

授業後、他の学生が帰り、Sさんだけが残りました。Sさんは来年進学する予定でしたが、今学期になってから今年進学することに方針変更しました。すでに超級クラスですから、進学先でやっていけるだけの日本語力は十分あります。また、周りの学生がみんな出ていってしまうので、寂しくなりそうだということもあると思います。

練習を始めると、Sさんは面接室の入り方からしてガタガタです。質問を始めても、視線は一定しないし、声は小さいし、答えは抽象的でぼんやりしているし、発音や文法がすばらしいだけで、合格ラインには程遠いというのが正直な感想でした。

Sさんのような学生は毎年何名かいます。日本語力で進学はできちゃいますが、進学先でどうなのかはよく見えていません。たまに「おかげさまで就職が決まりました」なんて報告に来てくれる学生もいますが、泥縄式に進路を決めた学生が平均的にどうなるかまでは、なかなか追跡できません。

Sさんには私が感じたことをそのまま伝えました。そして、面接の受け答えのコツも教えました。Sさんは、出席もいいことですし、私のアドバイスを守ってくれさえすれば、おそらく合格するでしょう。決していい加減な気持ちで進路変更したのではないというSさんの言葉を信じて、かげながら応援しましょう。

密かな天気予報

2月23日(土)

今学期は、始業日の前から天気予報を追いかけてきました。バス旅行当日の天気をきっちり予報しなければならなかったからです。栃木県日光地方の週間予報をずっと記録し、1週間前に出された予報がどのくらい当たるか追跡していました。

結論から言うと、思っていたよりも当たっていました。ただし、予報は、日光江戸村そのものずばりではなく、日光市今市のですから、当てやすかったとは思います。今市はぎりぎり北辺であっても関東平野ですし、関東平野なら冬は基本は晴ですから。日光江戸村は、今市から鬼怒川を7~8キロほどさかのぼった谷あいにあります。その分雪も降りやすいですし、川に沿って吹き抜ける風が思わぬいたずらをしないとも限りません。

現に、江戸村のはずれのほうには溶けかけた雪がわずかに残っていました。また、今市の予報は1日中晴でしたが、江戸村はくもりがちの時間帯もありました。風はけっこう冷たく、私は手袋をして歩きました。そうはいっても雨には降られず、また、凍えるほどの寒さでもなく、そういう点では今市の予報でも十分役に立ちました。

2月21日について言えば、週間予報が出たときからずっと晴ベースの予報で、現実にも晴でした。前日か遅くとも当日未明のうちに低気圧が関東近辺を通り抜け、21日は好天という予報でした。低気圧は予報より早く、19日のうちに抜けた模様で、1週間前の予報では雨だった20日も、実際には晴れでした。もし、バス旅行が20日だったら、バス旅行実施可否の最終決定日に、自信を持ってGOサインを出せたかどうか疑問です。

この次に私が真剣に予報を出さなければならないのは、4月の学期が始まってからの御苑でのお花見の日でしょう。芝生に腰を下ろすとなると、前夜の雨や当日朝の冷え込みによる朝露まで考慮に入れる必要があります。また、4月ともなれば日差しが思いのほか強いので、そちらの心配もします。責任感で胃は多少痛くなりますが、その痛みが楽しみだといったら、Mでしょうか…。

実力差

2月22日(金)

先週、今週と、受験講座の物理は6か月以上勉強してきた学生のクラスと今学期から勉強を始めた学生のクラスとが、同じ項目を勉強しています。前者は中級以上で後者は初級が主力、前者にとっては復習に当たる内容ですから当たり前のことですが、こちらの言葉のしみ込み具合が全然違います。

6か月以上組は自分がどこでつまずいたかすぐわかり、私に質問することで解決しようとします。私がさらに噛み砕いた解説をすれば、どうにか理解レベルに到達します。初級主力組は、つまずきそうなところでこちらから確認を取らないと、わからないこともそのまま通過してしまいます。表情やしぐさなどからわからないというサインを見逃さないようにしていかなければなりませんから、疲れることはなはだしいです。

でも、6か月以上組も最初はそうでした。日本語力が不十分な時期に日本語で物理や化学の高度な内容の話を聞くのは、相当に厳しかったに違いありません。しかし、日本語力が付くにつれて理解が早まりかつ深まり、加速度的に理科の実力も伸びていきました。この苦しい時期を乗り切れるかどうかに、日本での進学が当初の希望通りになるかどうかがかかっています。

6か月以上組のSさんは、25日の国立大学集中試験日に遠征します。東京から西に向かうのは初めてのようで、富士山が見えるかどうかを気にしていました。進行方向右側の窓側に陣取れば、晴れてさえいれば富士山は見えます。受験ですから、幸せの左富士の話もしました。見えたら合格疑いなしと、景気づけしておきました。

忍者大流行

2月21日(木)

「先生、忍者ですか」と、何人に聞かれたでしょうか。今回のバス旅行では、日光江戸村内でKCPの教職員のだれかが忍者となって5種類の江戸時代グッズのどれかを持って歩いているので、その教職員を見つけてシールをもらい、5種類コンプリートすると、記念品がもらえるという企画を実施しました。それで、学生たちは私も何か持っているのではないかと見て、忍者か聞いてきたというわけです。中にはあからさまに「先生、シールありますか」と聞いてくる学生もいましたから、そういう学生には「シールはないけど、ごみならあるよ」と、ポケットからくしゃくしゃに丸めたビニール袋を出すと、あわてて逃げていきました。

私が引率したクラスでは、Yさんが見事に5種類のシールを全て集めました。どんな賞品かは知りませんが、今学期で帰国するYさんにとっては、いい思い出になったのではないでしょうか。Yさんに限らず、卒業予定の学生たちは、KCPでの生活の名残を惜しむかのように、江戸村のアトラクションを楽しんだり屋台で買った串などを食べたりしていました。

今までになく人気を集めていたのが、手裏剣道場でした。その前を通るたびに誰かが出入りしていましたし、手裏剣を的に命中させてゲットした賞品を見せびらかしている学生もあちこちにいました。KCP忍者とかいってあおったからでしょうかね。

もちろん毎度おなじみの変身を楽しんだ学生もいました。和装をすると、普段顔を合わせている学生も見違えてしまいます。着付けが上手だからという面も見逃せませんがね。私も毎度おなじみの変身をしました。今年もお大尽様をさせていただきました。学生から「江戸村の役者さんみたいですね」と言われて、「KCPをやめたらここに就職しようかな」なんて、いい気になっている私がいました。

成長を感じる

2月20日(水)

選択授業の作文は、先週の中間テストのフィードバックをしました。全体的には思ったよりよく書けていましたが、もちろん間違いは山ほどありました。その間違いを乗り越えて学生たちの思いが伝わってきたということは、学生たちの筆力がけっこう高いということでしょうか…。

いつものように、各学生の文章から誤用を含む文を1つずつ選び、それを1枚のプリントにまとめ、学生に配って訂正させました。1人でクラス全員文を直していたら日が暮れても終わらないでしょうから、数人で数本の誤文訂正をしてもらいました。このやり方に慣れてきたのか、クラスも違うあまり話したことがない学生とも議論を交わすことができるようになっていました。

そして何より、話し合いの結果を発表してもらうと、ほとんどの文の間違いがきちんと訂正されていたのです。こちらの狙い通りの文法を使い、単語の誤用を改め、文意を明確にするために前後を入れ替えるなど、心の中では密かに驚いていました。三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものです。

でも、これを自分ひとりでできるようにならなければならないんですよね。授業で文章を書くときは誰の助けも借りられないのですから。こういうことを繰り返していけば、自分とは違った視点から文章を見る目が養われるのではないか、そうなると今まで犯していた間違いがなくなるのではないかと期待しています。今週は新しい課題に取り組みませんでしたが、来週は今学期前半とは違ったタイプの文章を書いてもらうつもりです。そのときに、この効果を遺憾なく発揮してもらうことを大いに期待しています。

前向きに

2月19日(火)

午前の授業を終えて職員室に戻ると、Bさんが私を待っていました。先週末K大学を受け、その試験問題でわからないところを聞きに来たのです。その問題は、先週まで取り組んでいた記号で答える問題ばかりの過去問とは違って、「〇〇字程度で答えなさい」という記述問題がいくつもあり、かなり傾向が変わっていました。去年までの問題も留学生にとっては荷が重いと思っていましたが、今年のは記述が加わった分だけ、さらに難度が上がりました。

そういった問題を、教科書や参考書を見ながら、Bさんと議論しながら解くというのは、私にとっても大いに勉強になります。最近の学問の傾向もつかめますし、EJU対策の受験講座では見過ごしがちになる部分にも目を向けさせられます。筆記問題も制限字数にぴったり合うようにまとめるとなると、知識の整理をしなければなりません。

1時間ぐらいBさんに付き合ったでしょうか。午後の授業の先生方が教室に向かったら、午前のクラスで欠席した学生への連絡です。ところが、最近の学生は留守番電話の設定をしていませんから、一向につながりません。スマホはラインのための道具だといわんばかりです。現に音声通話を全然していない学生が少なからずいます。ここまで来たら、もはや電「話」じゃありませんね。こういう後ろ向きの仕事をすると、なんとなく落ち込みます。

午後の受験講座から帰ってくると、T先生が2人の学生を引き連れてきました。学校の前のホテルの駐車場の脇の喫煙所に無断で入り、タバコを吸っていた学生たちです。学校の喫煙所以外ではタバコを吸ってはいけないといわれていたのに、どうしてわざわざ他人の敷地まで行ってタバコを吸ったのかと聞くと、喫煙所は煙いからだと言います。お前がその原因を作ってるんだろうと突っ込みを入れましたが、初級の学生には通じなかったようで…。

こちらは住居不法侵入ですから、立派過ぎるくらいの犯罪です。2人のうち1人は未成年ですから、罪を2つ犯したことになります。警察に通報されたら、一発で手が後ろに回ります。こういう学生を説教することが校長の仕事だと言われれば実にその通りですが、これまたあまり前向きの仕事ではありません。

悪い学生がいなければ、毎日1時間は早く帰れるでしょうね。悪い学生にむしり取られている時間をいい学生に振り向けられれば、優秀な学生をもっともっと伸ばせるんでしょうけどね。

比例

2月18日(月)

中間テストがありました。午前中は卒業クラスの試験監督をしました。今学期は私が入っていないクラスですが、大半が以前受け持っていたり選択授業のクラスにいたり受験講座を受けていたりということで、何がしかの接触がある学生でした。そりゃあ、2年近くいたらどこかで引っ掛かりがあるものですよ。

そういう彼らが、KCPで最後の試験に呻吟しています。ある学生にはここが踏ん張りどころだと心の中で応援し、別の学生にはいい気味だと冷たく見ていました。申し訳ないけど、授業態度が悪かったりそもそも欠席が多かったりする学生は、あんまり応援したくありませんね。えこひいきするわけではありませんが、ひたむきに努力を重ねている学生は、そっとおしりを押してあげたくなります。

さて、夕方から、その学生たちの採点をしました。おしりを押したくなった学生は、手心を加えるまでもなく合格点を取り、応援したくない学生は多少甘めに付けたところで不合格でした。教師の好みに合うとか合わないとかという以前に、授業をまじめに聞いていない学生は点が取れないのです。きっちり授業に参加してきた学生は、それなり以上の成績を収めるものです。

テストの採点と並行して、バス旅行の準備が進められています。明日はしおりを配って行程の説明をします。日光江戸村の中でいつ何を見るかも決めていかなければなりません。教師は行き帰りのバスの中で何をするかも決めておかねばなりません。バス旅行が終わったらすぐに卒業式です。あれこれ行事が重なって忙しいのが、毎年のこの時期です。