進路指導

8月12日(水)

現在中級の学生は、ほぼ全員、来年の3月にKCPを出なければなりません。日本語学校に在籍できるのは、最長で2年までですから、どうしても進学しなければならないのです。でも、去年の10月に入学した学生は、去年11月のEJUは出願できなかったし、今年6月のEJUは中止になったしで、自分の実力を公平に測ったことがありません。7月入学の学生も、「まだまだ」と思って去年の11月に出願しなかったり、受験しても玉砕だったりで、参考になるデータは、やはりありません。それゆえ、志望校を決める手掛かりがなく、右往左往するか動くに動けないか、いずれにしても宙ぶらりんの状況です。

志望校一つにしても、自分の実力がつかめていませんから、憧れが先行したり、知っている大学名を列挙しただけだったりという学生が少なくありません。どんな大学があるか知らないということも見逃せません。また、大学で勉強するとはどういうことなのかということすら、はっきりと見えていない気がします。

そんな学生たちに進学についての柱となる考え方を植え付けてほしいと、中級の先生方から言われています。そういう話をするのは必要だというか、遅いくらいですが、どんな話をすればいいかとなると、私もこういう状況を経験したことがありませんから、難しいものがあります。ここでぎゅっと押さえておかないと、年が明けてから苦労するのは教師の側もですからね。

だけど、来年の4月には大学が通常の授業ができるくらいに、日本の国自体が回復しているでしょうか。オンラインばっかりだったら、受かったけど帰国する何という学生も出てくるのではないでしょうか。それが学生自身のためになるなら、気持ちよく帰すのも、私たちの仕事だと思います。

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ドームが満席

8月11日(月)

新型肺炎の累計感染者数が5万人を超えました。春先に中国の感染者数が8万人以上になった時、いくらなんでもあそこまでひどいことにはならないだろうと思ったものです。ですが、今や、中国の背中が見えたどころか、この勢いなら今月中にも中国を追い越してしまうかもしれません。

もはや、感染者をクラスターレベルでとらえることも、感染経路を明確に把握することもできません。市中感染が広がっていると言われていますが、誰もが無症状感染者であると言ってもいいのではないでしょうか。ですから、大勢が集まってマスクを外して会食し談笑すれば、病原体の密度が高まり、より多くの病原体を体内に取り込むことになります。その中には自分が持っているのと違うタイプの病原体もあり、免疫の力が及ばず、発症に至ることもあるでしょう。

日々、自分がウィルスをまき散らしているかもしれないと思って生活すべきです。私は、必要最小限しか口を開かないことにしています。最近は買い物をするたびに「袋は要りますか」と聞かれますが、首を振って拒否の意思を示します。昼食は店が空いている時間帯を狙っていきますから、11時台か2時以降です。学校の外では一言も口を利かず、電車の中ではひたすら本を読みます。

不思議なのはエスカレーターでのアナウンスです。「手すりにつかまって…」と言いますが、電車のつり革や握り棒もつかむと危ないと言われているのに、どこの誰がつかんだかわからないエスカレーターの手すりなんか、触っていいわけがないじゃありませんか。みなさん、足腰の鍛錬と感染防止のために、階段を使いましょう。

5万人と言えば、各地のドーム球場の最大キャパです。猛暑日が続いていますが、冬の寒さをやり過ごすがごとく体を固くして、マスクが外せる日を待っています。

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暑さの中で

8月8日(土)

7月は天候不順で長袖のお世話にまでなりましたが、8月になって梅雨が明けてからは、真夏日・熱帯夜のコンビが東京を支配しています。こういう日が続くと心配になるのが、エアコンをつけたまま寝て風を引いたという学生が出てくることです。毎年こう言っては休む学生が後を絶ちません。今のところ、私が関係しているクラスではそのような話は聞いていませんが、無断欠席の学生の中にはそんなのがいたのかもしれません。

私は、寝るときはエアコンをつけません。幸いにも虫には縁遠いところに住んでいますから、窓を開けて寝ます。近くを走る電車の音が入ってきますが、さほど気になりません。幹線道路からはだいぶ離れていますから、車の走行音に悩まされることはありません。夜風を感じる頭ほどではありませんが、横になってタオルケットをお腹にかければ、すぐに眠ってしまいます。

体温が微妙に下がっただけで、免疫機能はぐっと低下するそうです。眠っている時は体温の管理まで気が回りませんから、体温を必要以上に下げるかもしれないエアコンは避けています。多少暑いくらいがちょうどいいと考えています。

今年はいつもの年とは違って、健康には特別に気をつかわねばなりません。風邪をひいて病院通いなどをすると、さらにもっと危ないものを拾ってしまうおそれがあります。まあ、去年までに比べたらはるかに頻繁に手を洗ったり拭いたりしていますから、そして、うがい薬は使いませんがよくうがいもしていますから、病原菌を体内に持ち込む機会は、私の人生の中で最低に近いレベルではないでしょうか。

来週は連休+お盆ウィークで、本来なら東京はぐっと静かになるはずですが、実際にはどうなのでしょう。KCPは通常営業で、14日は中間テストです。

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90%の壁

8月7日(金)

上級クラスの授業で、最後にちょっと時間が余ったので、今週T大学の先生がいらっしゃったときに聞いた話をしました。T大学は、毎年コンスタントにKCPから学生が進学している大学です。今年もきっと何名かお世話になるでしょう。

T大学は出願書類として日本語学校の出席成績証明書が必要です。そこに記されている入学以来の出席率が90%を下回る場合は、入試の成績から減点するとのことでした。出席率100%でも加点することはないそうですから、T大学は出席率が80%台以下の学生は勉強する資格がないと考えているのです。逆の言い方をすると、まじめに勉強しようという意志のある学生なら、授業を1割以上も休むなんて考えられないということです。

最近、出席率を重視する大学が増えていますが、好ましい傾向だと思います。「自分のペースで勉強している」「枠にとらわれずに目標に向かっている」などと言えば聞こえはいいですが、実態は最低限のルールも守れないわがままな若造に過ぎません。自由奔放に創造力を発揮するのもいいですが、社会の構成員の1人だということを忘れてはいけません。

自分が身に付けた学問を通して社会に何らかの貢献をしようというのなら、周囲の人々から認められなければなりません。我が道を行きすぎると、高度な知識や技術を自分のものとし、すばらしい研究を行ったとしても、誰からも相手にされないでしょう。そうなってしまったら、幸せな人生とは言えないんじゃないでしょうか。まあ、それは大げさな想像ですが、欠席が学生たちの人生を狭めていくことは疑いのない事実です。

学生たちは神妙な顔つきで聞いていました。授業後、受付まで自分の出席率を確認しに来た学生がいたそうです。来週から遅刻欠席の多い学生の行状が改まるといいのですが…。

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打ちのめされる前に

8月6日(木)

DさんはW大学に出願し、入試は来月です。独自試験は小論文と面接です。その小論文の対策をしたいと、授業後、私のところに相談に来ました。対策と言っても、試験日まで1か月ほどとなったら、過去問に挑戦してもらうのが一番です。Dさんもあれこれ手を回して、去年の入試問題を手に入れました。それ1つだけだと不安なので、私を頼ろうとしたようです。

Dさんが言うには、出題された資料について答える問題は易しく、手ごたえがないそうです。これを聞いた時、危ないなと思いました。本当に易しい問題だとすると、W大学ほどのレベルなら、完全に正解することが合格の最低条件となるでしょう。筆答問題ですから、誤字脱字文法ミスがなく、要領よくポイントをまとめた答えが要求されます。文章を読んで内容が理解できたというだけでは、ここまでには至りません。授業中に返した作文がB評価でしたから、「200字以内で説明せよ」などという問題に的確に答えられるかと言ったら、大きな疑問符を付けざるを得ません。

W大学の試験時間と同じ時間で問題を解いて、その答えを持って来るという約束をしました。週末に解いて、来週持って来るのでしょう。おそらく、そこで頭の中身を文字化することの難しさを感じさせられるでしょう。私の手にかかったら、Dさんの答案用紙は血まみれになること、疑いなしです。完膚なきまでに叩きのめされて再び立ち上がる時間が、今ならあります。

KCPの学生には、伝統的に自信過剰が多いようです。世間を知らないから根拠のない万能感を抱き、そのまま対外試合に臨み、本番で初めて世の中の広さを知り、ショックを受けるというパターンを毎年繰り返しています。せっかく相談に来たのですから、Dさんにはその道を歩んでほしくはありません。

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何がいい大学?

8月5日(水)

新型肺炎が広まったせいで影響を受けている大学生に、大学がどのような支援策を講じているかを扱った新聞記事をネタに、超級の学生に意見を聞きました。中にはこの4月に大学や大学院に進学していたかもしれない学生もいますから、わがことのように考えてくれました。

記事によると、多くの大学で何らかの支援金を支給しています。それ以外にもアイデアを絞って学生を経済的困窮から救おうという姿勢が感じられました。しかし、学費の返金には原則として応じていません。

KCPの学生は、オンライン授業だったらその分学費を下げてほしいというのが共通の意見でした。どのくらいと聞いてもはっきり答えられる学生はあまりいませんでしたが、オンライン授業よりも通学して講義を聞くことの方に価値を認めていることがわかりました。政府は大学にオンライン授業ばかりではいけないと言い始めました。これについては記事に書かれていませんでしたから、学生には聞きませんでした。感染するリスクも見積もりつつ、可能な限りキャンパスに通いたいというのが、学生たちの平均的な思いのようです。

経済的支援以外には、在宅でも研究が進められるように、大学で触れられるデータに個人的にアクセスできるようにしてほしいというものがありました。大学院進学を目指している学生の意見です。確かにその通りですが、セキュリティー面で実現は難しいでしょうね。

このクラスの学生は、全員が進学します。そもそも入学試験が例年通り行われるかどうか見通せない状況ですから、漠然とした不安がないとは言えません。そういう悪条件を乗り越えて進学した学生をしっかりサポートしてくれる大学・大学院に、学生を送り込みたいと思っています。

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愚痴は愚痴として

8月4日(火)

「K先生、お疲れ様です。授業、いかがでしたか」「学生があまり反応しないので、なんだかやりにくいですね」「それはマスクをしてるからですよ。それに、あんまりしゃべるなって指導してますから」「そうですよねえ。しゃべり過ぎたら何が起こるかわかりませんからね。それから、誰が発言したかわかりにくいですね」「自由に答えさせると誰が答えたかつかめませんから、私はどんどん指名してるんですよ、名簿を見ながらでも。そうすれば教師がコントロールできますから」「確かにそうですね。あと、マスクしてると反応も見えませんね。わかってるのか、わかってないのか、なんだかつかめなくて…」「ありますね、それは。しなくてもいい説明をしちゃったり、しなきゃいけない説明を飛ばしちゃったり…」「安全サイドに走ると話が延びちゃうんですよ。それに加えて、グループで話し合いもさせられないでしょ。これも辛いですね」「そうですよねえ。まあ、どういう授業をしても、わかるやつはすぐわかる、わからないやつはいつまでたってもわからないっていうのが真実じゃないんですか」

…と、まあ、午前の授業が終わった昼休みに、マスク越しの授業の愚痴を言い合いました。こういう情勢ですから、教師がしゃべりまくるという、養成講座などで絶対にしてはいけないと教わった授業をせざるを得ません。学生から話を引き出すのを必要最低限に抑える授業なんて、KCPではありえなかったんですけど。

それでも、対面授業には、学生のかすかな反応を瞬時に捕らえてそれに対応したり、カメラを通してはできない大きな説明ができたり、学生と学生が顔を合わせることによって生じる相乗効果が見られたりなど、捨てがたい長所があります。わざわざ日本という、学生にとっては異国まで足を運んできてもらっているのですから、その期待に応えられる授業をしていきたいです。

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要約に苦戦

8月3日(月)

大学進学クラスで、文章の要約を取り上げました。ほんの数行の内容を要約する課題でしたが、みんな悪戦苦闘していました。学生たちは、本文から丸ごと抜き出して答えるのには慣れていますが、そこから不要な部分を切り捨て、問題が求めている内容を抽出するという作業ができないのです。“〇字で抜き出しなさい”という問題はどうにかできても、“〇字以内に要約しなさい”となると、手も足も出なくなります。

このクラスの学生が受験すると思われる大学は、独自試験に“〇字以内に要約しなさい”レベルの問題が出ることが十分予想されます。数行の文章の要約でアップアップだと、先が思いやられます。また、こういう力は大学に進学してからも必要となります。専門書を読んで、要するにどういうことなんだということを把握し、それを積み重ねて専門分野の勉強を深めるものです。

文章の要約にとどまらず、講義や講演を聞いてその要点をまとめたり、議論をするとき参加者の発言の主旨を理解したりするにも必要な技能・脳力です。本筋とそうではない部分を切り分けて、本筋だけを取り出し、それを理解したりそれに反論したりするというのが、学問を深める際の基本的な手法だと思います。

“要約しなさい”は、日本人だって好きな問題ではありません。それが抵抗なくできることを外国人留学生に求めるのは、少々気の毒かもしれません。でも、逆に、これができたら非常に力のある学生だと言えます。高度な要求だと百も承知していますが、私はこのクラスの学生に、そのレベルにまで達してもらいたいし、そうなるように力を尽くしたいです。

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8月の始まりは夏の始まり

8月1日(土)

久しぶりに、天気予報に晴れマークが並んでいましたから、“もしかしたら”と思っていたら、やっと関東甲信地方も梅雨が明けました。天気図を見ると、おとといあたりまで本州を東西に分断するようにのさばっていた梅雨前線が、本州のはるか東に退いています。ただ、天気図を見る限り太平洋高気圧がでんと構える感じではありませんから、お昼に出た時に見上げた空には、梅雨っぽい雲も広がっていました。

日照不足で農作物が高騰しています。“梅雨明け十日”といって、梅雨が明けた直後はお天気が安定するものですから、カーッと日照りが続いて生育不良を挽回してもらいたいところです。夏が暑くないと、コメをはじめとする秋に収穫期を迎える農作物にも悪影響が現れかねません。週間予報によると、東北から沖縄までは晴れが主体のようですから、あまり心配しなくてもよさそうです。

夏の暑さが本格的になると、マスクが鬱陶しくなりそうだと方々で言われています。暑苦しいからってみんながマスクを外したら、そうでなくても増えつつある感染者が一気に天井を突き抜けてしまうかもしれません。暑かったらうちの中でエアコンをつけてじっとしているのが一番だということなのでしょう。やっぱり今は、“Go To”じゃなくて“Stay Home”みたいですね。新型肺炎が広がり始めた頃、“夏になって真夏日が続くようになったら、こんなの消えてなくなる”などという説もありましたよね。もちろん、今、そんなのを信じている人などどこにもいません。

換気のために開けた職員室の窓から、セミの声が入ってきます。KCPの周りにセミが止まれるような木があったかどうか記憶にないのですが、夏らしさを盛り上げてくれています。

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目を開く

7月31日(金)

7月が終わります。でも、学生の進学に向けての動きがあまり活発ではありません。EJUがなかったため、受験モードになる機会が失われ、本試験の壁に弾き飛ばされて自分のできなさ加減に気づくこともなく、みんなどことなくのんびりしています。TOEFLなど英語試験を受けた学生ですら、私の目からすると「キミは何年計画で大学に入るんだい」と言いたくなるくらい緊迫感がありません。

だから、尻に火をつけるべく教師側も動いています。先週の進学フェアも、昨日のH大学の説明会も、指定校推薦の大学名を公表したのも、その希望者受付を始めたのも、そういう意味合いを込めています。私も、授業をしたクラスでEJU中止の影響を解説したり、志望校の選び方の手ほどきをしたりしています。

今年はJASSOの進学フェアも中止になりましたから、学生が多くの大学を知る機会が奪われました。また、オープンキャンパスは中止か、開催されてもオンラインで、学生たちの動きが鈍いように見えます。というわけで、受験生なのに大学の名前を知りません。「早稲田に慶應にMARCH、あとは…???」というレベルの学生が少なくありません。これでは困りますから、各大学の詳しい内容はさておき、せめて名前だけでも覚えてもらおうと、東京近辺の大学紹介をしました。

ただ大学の名前だけ羅列したにでは学生の興味を引きませんから、KCPから進学した学生の声も交えました。また、その大学を卒業した学生がどんな仕事をしているかなども、可能な限り紹介しました。そうすると、学生たちの知らない大学が、意外に“いい大学”だったりするのです。学生の顔つきを見ていると、少しは学生の視野を広げられたかなと思います。

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