Category Archives: 作文

明日から寒くなります

12月5日(水)

私が持っている初級のクラスで、推量の「ようだ」を扱いました。導入をして、絵を見せて、そこに描かれている事柄について「ようだ」を使って文を作らせました。全体に聞いても答えが出てこないだろうと思って、1人ずつ指名して自分が書いた文を言ってもらいました。ところが、3人目ぐらいから、学生たちが自然に次々と文を言うようになりました。直前の人の文を発展させた文を作り出すなど、大いに驚かせられました。

優秀な学生もいるけど発話力に関しては疑問を抱き続けてきましたが、学期末が近づいてきて、ようやく一皮むけたようです。今学期、これほど学生の力の伸びを感じたことはありません。どうやらクリティカルポイントを越えて、中級にグッと近づいたのではないでしょうか。

初級と中級とは連続していますが、初級の終盤には胸突き八丁の坂があります。今、このクラスの学生たちはその坂を上っている最中ですが、どうやら峠の向こう側の景色が見え始めてきたようです。このままの勢いで進んでくれると、みんな進級できそうです。

しかし…。授業後に集めた宿題をチェックすると、つい先ほど感じた喜びが、いっぺんに完全に吹き飛んでしまいました。できるだけ長い例文を書くようにという指示があるのに、超省エネの例文ばかり。「どこかに/どこかで/どこに/どこで」の区別がついていない例文がざくざく。長音、濁音、促音、みんな怪しいです。近づいたかに見えた中級は、蜃気楼のように消え去ってしまいました。

明日の先生への申し送りを書く筆の重いこと。明日からの寒波が身にしみそうです。

受験後方支援

11月19日(月)

土曜日休んだため、今朝はメールが山ほど届いていました。まず、Tさんからのメールから。Tさんは金曜日に志望理由書を見てほしいと言っていましたが、私の退勤時までにその志望理由書が送られてきませんでした。週末はずっとそれが気になっていたのですが、メールの受信時刻を見ると、私が帰宅してから間もなく送られてきたようです。大急ぎで添削しました。

Tさんの志望理由書は、文法的な間違いはほとんどなく、少なくとも今シーズン最高の文章でした。しかし、局地戦にのめりこんでしまい、戦局全体を見る目を欠いていました。つまり、専門の勉強がしたいという気持ちは伝わってきましたが、その勉強をその大学でする必然性が見えてこなかったのです。これだと、その勉強ができれば大学はどこでもいいのかなと思われてしまいかねません。

専門的過ぎる部分をばっさり切り捨てたら短くなってしまったので、どんなことを書いて字数を増やすか指示を出して、Tさんに送り返しました。それが7時過ぎ。授業前に見てくれていれば授業後に質問に来るかなと思っていたら、ラウンジでばったり会いました。Tさんはにこやかに「大丈夫です」と言っていましたから、あさってが締め切りでもありますから、ちょっと手を加えて出願するのでしょう。

授業後にはMさんからも志望理由書の添削を頼まれました。ワープロで打った原稿を持って来られたので、即手直し。こちらも語彙や文法の破綻はないのですが、流れがスムーズではないので段落の一部を入れ換えました。また、インパクトが弱いので、少々強気の言葉も加えました。あとは面接でこの志望理由書の本意を補ってもらうだけです。

Mさんの志望理由書の添削を済ませてロビーに下りると、先週さんざん面接練習したLさんがいました。練習した質問が出てきたそうで、それはうまく答えられたとのことです。ただ、「ここまでどうやって来ましたか」という質問に変な答え方をしたとか言って、気に病んでいました。それは、Lさんの緊張をほぐすためのやりとりで、直接合否にかかわらないよと言ってあげたら、多少は安心したようでした。

明日も、面接練習が2件入っています。

赤からの出発

11月6日(火)

先週の選択授業で学生たちに書かせた小論文を返しました。でも、その前に、各学生の文章から1つずつ選んだ誤文を並べ、それを直させました。先週書き上げたときには、書いた本人は気がつかなかった間違いを、違った目で見て直すのです。

他人の間違いは蜜の味なのでしょうか、思いのほか真剣に取り組み、岡目八目なのでしょうか、わりと要領を得た答えが返ってきました。書いた本人にどこまで響いたかはなかなか測り難いのですが、同様のミスが少しでも減ってくれればやった甲斐があるというものです。

私が担当しているのは中級クラスで、前回が初めての小論文でした。ですから、まず、小論文の型ができているかどうかで成績をつけました。客観的な論理や深い考察があればそれに越したことはありませんが、いきなりそれを求めるのは無理というものですから、上級の文章を見る目は封印しました。

そんなふうに甘めの採点でしたが、ほとんどの学生は原稿用紙が血まみれになりました。前後を入れ換えたほうがいいとか言い方を変えたほうがいいとか、もちろん、誤字脱字とか、隙間なく赤が入って変わり果てた自分の小論文を見て、呆然としていた学生もいました。

ひとつ気になったのが、「~と思う」の多用です。日本語の限らずどんな言語でも、言い切りの形が主張を最も強く表現するものです。しかし、学生たちの小論文にはいたるところに「~と思う」があり、ひ弱な印象を受けました。上述の間違い探しにも入れ、読み手の印象を薄くする「~と思う」について解説しました。

もし、学生たちが批判を恐れて言い切りを使わなかったとしたら、由々しきことです。批判も起きないような意見は存在意義がありません。万人受けする意見は、毒にも害にもなりません。学生たちには、毒にも害にもなるスパイキーな小論文を書いてもらいたいです。

お先真っ暗?

10月30日(火)

火曜日の選択授業は作文です先学期は初級クラスの作文を担当しましたが、今学期は中級クラスの小論文です。まだ小論文の基礎段階の学生たちですから、意見をまとめやすいテーマを選びました。

授業後、早速読んでみると、さすが中級、先学期の初級の作文に比べると、格段にすらすら読めます。もちろん、文法や語彙の誤りはありますが、何回読んでもいっこうに意味がつかめないという“作品”はありませんでした。

…といきたいところだったのですが、4人目ぐらいから雲行きが怪しくなり、8人目ぐらいは土砂降り状態でした。習った文法や語彙をどんどん使えと言ったのが裏目に出て、難しい表現を無理やり使おうとしたあげく、意味不明の文を産出している学生が続出しました。初級よりも文章が長い分だけたちが悪いとも言えます。

小論文ですから論理性を重視しているのですが、その論理に飛躍があり、私が置いてけぼりを食らったり、接続詞がいい加減でわけがわからなくなったり、段落の途中で話が急に変わってしまったりなど、“読解”を思う存分させていただきました。テーマとはまるで関係ない結論を出していた学生もいました。

この学生たちがこれから小論文試験のある大学を受けるのかと思うと、頭を抱えたくなります。EJUの記述はどうにか切り抜けられても、単にいい悪いとか好き嫌いではなく、社会性や論理性が求められる文章にはどう対応させていけばいいでしょうか。何とか合格したとしても、大学に入ってからのレポートはどうするのでしょうか。どうしようもない文章を書いていたTさんも、進学してから文章を書くのに非常に苦労したと言っていました。このクラスの学生の何名かはそういう道を歩むのでしょうね。

初めての志望理由書

10月29日(月)

朝、パソコンを立ち上げると、Hさんからのメールが来ていました。先週、K大学の志望理由書を見てもらいたいと言っていましたから、それが届いたのです。早速中を見てみると、文法や語彙の間違いはほとんどないのですが、書いてあることが一貫していません。前半と中盤と後半で、将来設計が微妙に違うのです。このままでは、何のためにK大学に入ろうと思っているのかわからないとされてもしかたがありません。

Hさんは先学期の新入生で、志望理由書を書くのも今回が初めてです。だから、いきなり上手な志望理由書が書けなかったとしてもしかたがありません。1年近く練習しても意味不明の志望理由書を書き続ける学生が山ほどいました。そういう人たちに比べれば、スタート地点がグッと高いと言えます。

調べてみると、K大学の出願締め切りは来月の半ば過ぎです。今から文章を練り上げていけば、立派な志望理由書になるに違いありません。また、その過程で自分自身がなぜK大学を目指すのか、K大学で勉強する意義を見つめ直すこともできるでしょう。そして、K大学がさらにもっと好きになることができたら、合格の可能性が上がることは疑いありません。

Hさんの場合、日本語の基本の部分がしっかりしていますから、「何も考えずにこれを書き写せ」などという強引な指導をする必要はありません。Hさん自身の言葉で志望理由を語ることができます。これは非常に大きな点で、意味不明な文章を書く学生は自分の思いを日本語で表現できないことが多いのです。私がどんなに感度を上げてその学生の気持ちになろうとしても、ギャップを完全に埋めることはできません。最初に述べた将来設計の部分さえきちんと書ければ、K大学の先生の心をつかむこともできるでしょう。

授業前に添削して返信しておきました。あさってあたりに第2弾が届くのではないかと期待しています。

十人十色

10月4日(木)

期末テストの作文の採点をしました。先週のうちにざっと目を通し、気になるところには朱を入れておきましたから、2度目は内容までよく吟味して、主張がどれだけ伝わってくるか、独自性がどのくらい発揮されているかといったあたりを中心に、深く読んでいきます。深くといっても、初級の作文ですから、そんなに複雑・高度なことが書かれているわけではありません。ですから、文ではなく文章のレベルで書かれているか、今までに習った文法や語彙を使うべきときに使っているかといったあたりが、主たるチェックポイントになります。

とはいえ、クラス内でかなり差がついてしまっていることも確かです。Kさんは文法のミスがいくつかあったものの、言わんとすることが十分伝わってくる個性的な文章が書けています。中級に上がって、抽象語や微妙なニュアンスを表す文法を覚えれば、社会性のある論理的かつ説得力のある文章が書けるようになるでしょう。一方、Tさんは主張はわかりますが、文法の間違いがあまりにも多く、高い評価はできません。Sさんは論理が破綻しており、このまま中級の課題に取り組んだら、教師泣かせの作文を大量生産することになるでしょう。

Nさんは、成績はいいです。でも、どうやら安全運転に走った形跡があり、習った文法を思い切りよく応用しようという姿勢がありません。作文の採点基準に従うと、Nさんのようにミスの少ない文章が高得点になりやすいのですが、期末テストのNさんの作文にはもどかしさを感じます。点数はKさんといい勝負ですが、読後感は段違いです。

作文は文字の形で跡が残りますから、会話のように勢いですり抜けることはできません。文法力や語彙力を積み上げ、論理に従って書き上げるものです。私の学生たちが、新しいクラスでどのように伸びていくのでしょうか。

知られざる大天才?

9月22日(土)

朝、パソコンを立ち上げると、Yさんからメールが来ていました。土曜日だから欠席の連絡じゃないし、何だろうと思いながら開くと、自分が書いた小論文を見てくれというものでした。Yさんは初級の学生ですが、1000字弱の文章を送ってきました。

内容は、日本人の言う「恥」について書かれていて、ユニークな切り口で考えさせられるところが多かったです。もちろん、文法や語彙の面では突っ込みどころが満載でしたが、発想そのものは興味深いものがありました。

Yさんは授業の時でも他の学生とは違った毛色の例文を書きます。教師が授業で示した文にちょっと手を加えただけの、安全運転の例文は書きません。日本語で日本の小説、それも芥川とか川端とかを読んでいるそうですが、その一場面を題材に選んだり、小説で覚えたと思われる単語を使ったりして例文を作ってくることもあります。今朝のメールは、その大掛かりなものだと考えれば自然な流れだと思います。

私はYさんのクラスの作文も見ていますが、Yさんは細かいところに気を使わなさ過ぎるところがあります。主張は立派なのですが、文法や表記のミスが多くて点数が伸びません。磨けば光るものを持っているのですが、Yさんには磨く気がないように思っていました。ですが、小論文を送ってきたところを見ると、何がしかの決意をしたのかもしれません。その決意を鈍らせないために、朝の予定を変更して、すぐに添削して返信しました。

Yさんも進学希望ですが、今年は受験しません。今から訓練を積んでいったら、Yさん固有の独創性と相まって、来年の受験期には読み手を引き付ける文章が書けるようになっていることでしょう。

真っ赤

8月7日(火)

先週の作文を返しました。来週が中間テストですから、じっくりフィードバックしたかったのですが、他の科目の進み具合もあり、本当にエッセンスだけにとどめました。

私が担当しているクラスはまだ初級ですから、語彙が足りないのはやむを得ません。しかし、知っているはずの語彙を正しく使えないのは問題です。意味もそうですが、それよりももっとずっと手前の、例えば「ほんどに(←本当に)」などという、自分の普段の発音をそのままひらがなにしてしまうような間違いを指摘しました。

また、習った文法を使うべきところで使えないという例も多いです。今学期勉強した「~ので」とか様態の「そうです」とかを、ここぞというところで使ってくれないんですねえ。先学期勉強した「~てしまいます」など補助動詞はだいぶ使ってくれるようになりましたが、それでもタラちゃんのほうがきちんと使っているような気がします。

私が作文を採点すると、文法の間違いや誤字脱字などを厳しくチェックしますから、たぶん他のクラスより平均点が悪くなると思います。他の先生は「よく頑張りました」という意味の丸をどこかに描くのですが、私が見た原稿用紙は、その丸を描くスペースすらないほど真っ赤になります。それでも初級相手ですから多少は手加減しているつもりです。赤を入れすぎると、どこが真っ先に直すべきところかわからなくなってしまうとも思います。でも、指摘しておかないとそれでいいと思われてしまうのではないかと、半ば強迫観念に駆られて、どんどん赤くしてしまうのです。

来週は中間テストです。直す箇所が少ない作文を書いてくれることを祈っています。

書く力

8月3日(金)

文法がわかると、文が書けるようになります。センスの良し悪しはあるにせよ、例文を見れば文法が理解できたかどうかはわかります。でも、文章が書けるようになるとは限りません。文章を書くには論理の組み立てが必要ですから、文法的に正しい文を積み重ねれば文章になるという問題ではないのです。

今学期は初級クラスの作文を担当しています。教えた文法も限られているので、決して高度な内容を要求してはいないのですが、提出された作文の出来にはかなりの差があります。

まず、作文のテーマを理解していない学生がいます。話があさってのほうに進んでしまい、読み手の頭の中は疑問符で満たされてしまいます。解題ができないのですから、高い評価は与えられません。これはばっさり切り捨てるだけですから、採点者としては気が楽です。

次は、テーマには沿っているものの、意味不明の文を書く学生です。文法ミスによる減点はそんなに多くなくても、論理の飛躍や逆戻りがあって、話の筋道を追いかけるのが難しいのです。読み終わると、疲労感が残ります。

その次は大山鳴動型の文章でしょうか。竜頭蛇尾型と言ってもいいでしょう。仰々しく始まったのに、ありきたりのどうでもいいような結論に終わるのです。創造力不足で論理を展開していけないのでしょう。だしも何も利いていない、薄味以下の料理を食べさせられたようです。

でもクラスに1人ぐらいは、習った文法と語彙を上手に組み合わせて、思わずうなってしまうような文章を各学生がいます。また、ガタガタの文法をものともせず学生の情熱がほとばしり出てきている文章も、読んでいて気持ちがいいものです。これもまた、クラスに1人いるかいないかですがね。

今週の作文は、比較的おもしろかったです。もちろん、文字は日本語だけど文章は日本語ではないというのもありましたが。下読みが終わりましたから、明日はじっくり読んで採点です。

例文の表情

7月17日(火)

先週末に、先学期習った文法で例文を作ってくる宿題が出ており、それを回収しました。冒険をせずに、教科書の例文にちょっと手を加えただけの文を書いてきた学生もいれば、独自のアイデアで例文を作ってきた学生もいました。もちろん、後者の例文は読んでいて面白いですし、その学生の人となりもうかがわれて、新学期早々で学生の顔と名前が完全に一致していない教師としてはありがたい限りです。

Gさんはやたらとお酒をテーマにしています。「私は酒を飲むのが好きです」と、ど真ん中の直球を投げ込まれると、思わず笑ってしまいます。大学院志望の学生ですから、お酒を飲んではいけない年齢ではありませんが、飲みすぎが気になります。でも、こういう学生がよくクラスの核になってくれるんですよね。

このクラスの学生は海を見るのが好きらしく、「海はいい景色」関係の例文が4名ほど。学生たちの出身地までは把握していませんが、海は憧れの的なのでしょうか。北海道も人気で、3名が取り上げていました。週末は猛暑が続きましたから、北海道になおのこと惹かれるのかな。

気になるのはWさんで、「友達が私の教科書を持ってきてくれました」と、文法的には整っていますが、いったいどういう場面なのだろうと首をひねらざるを得ない例文を提出してきました。本人の頭の中では、例えば「私が学校に忘れた教科書」とかいうことで破綻が生じていないのかもしれませんが、自己完結している点が問題です。明日の先生に、返すときに真意を確かめてもらいます。

初級の学生の例文ですから、“文は人なり”などとは言いません。でも、学生の本当の表情を垣間見ながら、楽しく添削できました。