Category Archives: 学生

2000円?

7月11日(金)

教室の学生に「お米、いくらで買っていますか」と聞いたら、5キロで3880円、3450円などという声があがりました。税込みなのか税別なのかわかりませんが、4000円を少し切るくらいが相場のようです。「高いと思う?」と聞くと、高いという声ばかりでした。「いくらぐらいがいい?」と、学生にとっての適正価格を聞くと、2000円と返ってきました。今の買値の半値ぐらいです。

そんなやり取りをして、ニュースの映像を見せました。米不足の原因を探るニュースです。老舗の米屋が売る米がなくなり廃業したとか、農協の倉庫にも米がないとか、その農協が農家を回って米をかき集めているとか、そんな話が続きました。そして、農家の方が、「肥料代も人件費も燃料費も上がっているので、今の米価では全然もうけがない」とぼやくシーンが出てきました。

そんな映像を見て、農家がもうかるように米価を決めたらいくらぐらいになりそうか、学生に聞いてみました。すると、4500円などという意見が出てきました。そこで、4500円の米を買うかと聞くと、みんな買わないと答えました。「じゃあ食事はどうするの?」「パンを食べる」「そうすると、日本文化はご飯じゃなくてパンになるの? 刺身を食べる時もパン?」「農業を機械化すれば人件費がかからなくなる」「でも、さっきの映像で見たでしょ。広い田んぼを1人のおじいさんが機械で田植えしてたじゃない。機械化は進んでるし、人件費もそう簡単に減らないよ」「…」「パン文化にならないようにするには、どうしたらいい?」「政府がお金を払って米の値段を下げればいい」「そのお金はどこから来るの?」「税金」「じゃあ、消費税が15%とか20%とかになってもいい?」「…」「日本は福祉や少子化対策にもお金がかかるよ。そうなると消費税は15%どころか50%になるかもしれないよ。あんたたち、それでも日本に留学する? 大学卒業したら日本で働く?」

今すぐこんなことにはならないでしょうが、日本はそちらに向かって歩み続けていることは確かです。どうすれば米作りをする農家も私たち消費者も幸せになるのでしょう。選挙を戦っている候補者のみなさん、真剣に考えてますか。

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雨のおかげで

7月10日(木)

東京は6時過ぎから18ミリの雷雨がありました。雷の音だけ聞いていると、新宿ではもっと降ったような気もします。この雨とそれを降らせた寒気のおかげで、日中よりも気温が10度も下がりました。朝の最低気温は26度台だったのに、今の気温は23度台です。今夜は、少しは寝やすくなるでしょうか。

ここ数日、最高気温が35度前後の日が続いていましたが、明日以降は30度を下回るという予報が出ています。そうなってくれると、午後の授業が楽になります。実は、昨日もそうでしたが、午後授業の教室は暑いのです。教室のエアコンの設定を23度とかにしても、とても23度とは思えない生ぬるい空気が吹き出してくることがあります。各教室でエアコンを強力な設定にしますから、校舎全体としての冷房能力が追い付かないのでしょう。教室には若さの塊のような、熱をいっぱい放散しそうな学生たちが大勢いますから、弱々しい冷房では熱の方が買ってしまうのです。一方、職員室は年寄りばかりで、しかも人口密度も教室ほどではありませんから、設定温度をそれほど下げなくてもそこそこ涼しいです。

気温が上がらないのは結構なことですが、そうすると学生の風邪が心配です。昨晩までの熱帯夜と同じ調子でエアコンをガンガンに利かせて、上に何も掛けずに寝たら、やられちゃうでしょうね。学生は意外とひ弱ですから。今朝、「熱中症かもしれない」と欠席メールを送ってきたSさんは、今晩は健やかに寝られるでしょうか。それとも風邪への道をまっしぐらということになってしまうのでしょうか。

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7月9日(水)

今学期も、水曜日はレベル1です。このクラスには、よくできるけど授業にあまりまじめに参加しない学生がいると引継ぎがあり、ちょっといじめてやろうかなと思って教室に入りました。

うわさ通り、Aさんはコーラスの際に口を開きません。でも、指名するとすらっと答えます。隣の人とのペア練習では、相手になったCさんに引っ張られて、会話をしていました。「隣の人じゃない人と練習してください」と指示すると、練習相手を求めて教室中を歩いていました。でも、やっぱり、つまらなそうな表情でコーラスに参加しない様子を見ていると、何かツッコミを入れたくなります。

少し複雑な自己紹介の練習をする時です。AさんとCさんにモデル会話をしてもらいました。

C:はじめまして。Cです。先月、アメリカのボストンから来ました。

A:はじめまして。Aです。先月、アメリカのシカゴから来ました。

と、こちらの計算通りの会話をしてくれました。そこで私が乗り出して、「Cさん、言いました。「先月、アメリカから来ました」。Aさん言いました。「先月、アメリカから来ました」。いいですか」とクラス全体に聞きました。大部分の学生はポカンとしていましたが、勘のいいPさんが、「私も」と自信なさげにつぶやきました。

それを待っていたのです。助詞“も”は、昨日勉強しました。Aさんの立場で、“も”を使ってほしかったのです。「私も先月、アメリカのシカゴから来ました」とした方が、親しみが感じられます。“も”を使うことで、あなたと私は同じだよという親近感がにじみ出てくるのです。初対面では、この親近感が大切です。

Aさんがさすがなところは、Pさんの「私も」を聞いて、すぐに軌道修正できるところです。言い直して、めでたくモデル会話の役を果たしてくれました。

君はよくできるけど、まだまだ勉強しなければならないことがたくさんあるよ――という、私からのメッセージは届いたでしょうか。

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読む難しさ

7月8日(火)

今学期は、火曜日と金曜日に、上級に進級したばかりのクラスを担当します。まだ上級2日目ですから、なんちゃって上級です。例えば、みんな張り切って読解の予習をしてきましたが、それがまだまだです。語彙リストに従って意味や漢字の読み方を調べてきた点は評価しますが、品詞まで調べてきた学生はほとんどいませんでした。「この中で“する”をくっつけて動詞になるのはどれ? “な”をくっつけて形容詞になるのはどれ?」と聞いてみても、すぐには答えは返ってきません。慌ててスマホで調べて答えようとしますが、すべてを見つけることは難しいようです。

中級あたりの学生がよく犯す間違いに、“熱心する”“熱中な”があります。「A先生は進路指導を熱心します」なんていう文を平気で書いたり言ったりします。言わんとすることはわかりますが、○はあげられません。この手の類の誤用を撲滅したいのです。

次は、本文の内容に入る前に、読解の教科書を音読させました。“ゲームクリエイター”という単語が出てきましたが、これを山型のアクセントではなく、“ゲーム、クリエーター”とあたかも2語のように読むのです。ゲーム研究者、ゲーム業界も、注意しても山型に読んでくれません。要するに、せいぜい単語レベルでしかテキストを見ていないのです。“ゲーム”という非常になじみ深い単語が目に飛び込むと、その次の“クリエーター”は目に入らないのです。これも、上級としてはいただけません。

それから、「遊びを欠いた」というフレーズも、「遊びを書いた」のごとく読んでくれました。“欠く”と“書く”のアクセントの違いを示した辞書は少ないでしょうからしかたがありませんが、次回からはきちんと読んでもらいたいです。

1学期かけて、上級らしいテキストの読み方ができるようになれば、私としては目標達成です。

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上がりたい

7月7日(月)

始業日の授業を終えて職員室に戻ると、Xさんが待ち構えていました。Xさんは先学期レベル1で教えた学生です。しかし、文法と会話の点数が合格点に少し足りなくて、レベル2に進級できませんでした。足りないのは“少し”だから、どうしてもレベル2に上がりたいというのが、Xさんの主張です。

“少し”とはいうものの、中間テストより期末テストの方が、点数が下がっています。下がり具合は決して“少し”ではありません。教師の目で見ると、レベル1の後半は授業が理解できなかった、実力が伸びなかったという感じがします。だから、このままレベル2に上げてもレベル2は合格できず、10月期もレベル2を繰り返すのは明らかです。それどころか、1月期もレベル2をしなければならないかもしれません。

Xさんは、レベル2を勉強しながらレベル1の復習をすると言います。しかし、レベル1の後半がわからないのにレベル2を勉強しても、その勉強が身に付くわけがありません。そのなれの果てが、上述のような“レベル2の主”です。いいことは何1つありません。

Xさんは、来年4月に専門学校に進学したいと言います。JLPTのN3と日本語学校在学1年で受験できる専門学校があるので、レベル2に上がればそういうコースで進学できるとXさんは訴えます。進学できたとしましょう。しかし、N3程度の日本語力で専門学校の授業についていけるとは思えません。ついていけたとしたら、その専門学校の教育レベルは高が知れたものです。そこを卒業しても、知識や技術も身に付かず、日本での就職もまず不可能でしょう。

レベル1の前半は理解できているようだから、その間に先学期よくわからなかったレベル1の後半の勉強をしておき、レベル1の後半の勉強がよくわかったところでレベル2の勉強を始めれば、レベル2の日本語もしっかり身に付くはずだ――という構想を示し、もう一度レベル1をすることを納得させました。

…こう書くと、激しい議論が行われたように見えますが、実は、Xさんは翻訳アプリを使っていましたから、ほとんど日本語を話しませんでした。だから会話が不合格だったのです。知っている日本語を組み合わせて自己表現しようという気持ちが働かないようなら、レベル2など到底無理です。

上を見ることは大切ですが、上ばかり見ていると、いつまで経っても上へは行けません。

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デビュー戦

7月4日(金)

Sさんは最上級クラスの学生です。読解も作文もよくできて、クラスの中でもトップを争う成績です。最上級クラスの首席をうかがうということは、KCPで一番日本語力が高いということです。唯一の弱点は、口数が少ないことで、こちらから水を向けないと授業中一言もしゃべらないことすらあります。でも、グループワークでは、ユニークなアイデアを出したり他のメンバーが気づかない点から発言したりしていますから、クラスのみんなから一目置かれています。

そのSさんに入学式の通訳を頼んだのは、期末テストの直前だったでしょうか。断られるかなと思ったら、「できると思います」と返事をしてくれました。Sさんにはこういう晴れの場で自信をつけて、さらに力を伸ばしてもらいたいと思って、通訳に選んだのです。

入学式の通訳は、基本は司会の教師の日本語を自分の母国語で新入生に伝えるのが任務です。台本がありますが、それを読み上げるだけではありません。臨機応変に対応しなければならないこともあります。また、入学式の後は新入生との懇談会(?)で自分の体験を披露したり、時には留学生活のアドバイスをしたりします。ですから、ただ単に日本語が上手なだけでは務まらないのです。

通訳は、自分の語学力を他人のために使う仕事です。人助けという面もあります。やさしい気持ちにもなります。ですから、やり遂げた時の充実感、高揚感が大きいようです。それを味わったSさんの笑顔を、今から楽しみにしています。

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暑いですね

6月27日(金)

朝、出勤のために外に出たら、ムッとした熱気を感じました。地面が濡れていましたから、夜中に雨が降ったようです。雨が降って気温が下がればいいのですが、湿度が上がって蒸し暑くなり、その熱気が私に襲い掛かってきたのです。真夏ほどではありませんが、駅まで数分の道のりで、うっすら汗をかきました。

午前中仕事をしていると、近畿以西が梅雨明けしたというニュースが聞こえてきました。ほんの数日前、梅雨明けまで1か月くらいかかりそうだという話を聞いたような気がするんですが、九州から近畿までは、平年よりかなり早い梅雨明けを迎えました。

関東も、もうすぐ梅雨明けかなと思って予想天気図を見てみると、梅雨前線の動きが微妙です。南下する予報が出ています。週間予報を見ても、傘マークこそ出ていませんが、“梅雨明け10日”と言われるような晴天続きにもならないみたいです。何より、日中は晴れたものの湿度が高かったですから、東京を覆っている空気がまだ梅雨です。気象庁の観測データを見ても、東京の湿度は70%前後で、梅雨が明けた大阪は50%を切っていますから、だいぶ高いです。

さて、そんな中、アメリカの大学のプログラムで来ている学生たちは、そのプログラムの一環として、山梨旅行をしています。アメダスの観測によると、甲府の最高気温は35.0℃で猛暑日、全国2位タイでした。よりによってとんでもない日に行ったものです。何の連絡もないということは、熱中症で倒れたとかという人もいなかったのでしょう。この暑さも、日本の思い出になるのかな。

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文章を書く

6月26日(木)

もうじわじわと2026年度入試が始まっていますが、最近は志望理由書など受験生が頭を使って考えなければならないはずの書類も、生成AIに書いてもらうのが常識となりつつあります。大学側もそれを前提に書類を受け取り、別の方法で学生の真の力を測ろうと方向転換を始めています。

だいぶ前になりますが、ZさんがA大学の志望理由書を持ってきました。文法的には直すところがほぼありませんでした。構成も非常に整っていて、このまま出してもそこそこ以上の評価はしてもらえそうでした。でも、同時に、どこかつかみどころのない、つるんとした印象も残りました。チャット君に書いてもらったのかなと思いましたが、本人に確認は取りませんでした。

私は“つるん”にとがった何かを取り付けようと、Zさんにあれこれ注文を付けました。Zさんの勉強したいことも知っていましたから、それが際立つようにと「このあたりはばっさり切ってしまえ」なんてアドバイスもしました。読み手の心に引っかかり、面接の場で議論になることを期待しました。

しかし、Zさんが書き直した改訂版は、初版とあまり変わりませんでした。私の意見は、チャット君に却下されたようです。私がZさんの心を動かせなかった、AIに負けたということです。でも、大学の先生はこんなに甘くはありません。A大学のようなレベルの高い大学なら、どこまで本気で考えているか、厳しく問うてくることでしょう。

最近、「Aiに書けない文章を書く」(前田安正、ちくまプリマ―新書)を読みました。「Aiは、文書は書けるけれども文章は書けない」と筆者は述べています。文書と文章の違いについて触れるとネタバレになりかねませんから、ここから先は「AIに…」をお読みください。

Zさんは志望理由書という文書を作成し、私は文章にしようとしたけど果たせなかったというのが、Zさんと私のやり取りの結果です。面接の場で志望理由書を文章にすべく、Zさんを鍛えていくほかないでしょう。

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こちらは梅雨空

6月25日(水)

昨日に引き続き、新入生のインタビュー。アメリカにいる学生が相手でしたから、朝6:30から始めました。私は6:30なら毎日もう仕事を始めている時間ですから、自分の席でzoomの画面に向かいました。

「おはようございます」とあいさつすると、画面の学生も「おはようございます」とあいさつを返してくれます。「でも、そちらは“こんばんは”ですね」と続けると、「はい、そうです。こんばんは」と打ち解けてくれます。KCPでのレベルを決める面接だとなると新入生たちは緊張するものですから、リラックスしてもらうためになにがしかの仕掛けをします。数時間以上の時差があるがくせいなら、この挨拶作戦が簡単にできて効果的です。

時差があるとか季節が違うとかとなると、日本という遠い国まで行くんだと実感できるのかもしれません。それを留学に対する不安ではなく期待に持って行くのも、このインタビューの隠れた目的だと思っています。「東京は雨が降って蒸し暑いですよ」などという、どちらかというとネガティブな情報も、乾燥した地域に住んでいる学生にとっては好奇心を掻き立てられる話題です。

食事もそんな話題の1つですね。「食事はどうしようと思っていますか」と聞くと、「私は料理が下手ですからレストランで食べます」「簡単な料理なら作れます」「今も毎日自分で作っていますから、心配していません」などなど、多種多様な答えが返ってきますから、それを起点に突っ込んでいきます。興味も沸きますが、こんなやり取りを通して新入生の日本語力を測っているのです。6:30の学生は、日本のいろいろなファストフードを食べてみたいという、今まで聞いたことのないユニークな答えをしてくれました。

Zoomで知り合った学生に生で会うのは、来週の入学式。今から楽しみです。

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インタビュー

6月24日(火)

プレースメントテストの結果、中級以上に入りそうな学生にzoomで面接をしました。毎学期、zoomでの面接をしているのですが、数年前とは違って、zoomを使うのはこんな時だけです。3か月ごとにしか使いませんから、s使い方を忘れていたり、zoomが微妙にバージョンアップしていたりなど、毎回おっかなびっくりです。

まずはEさん。いきなりやらかしてしまいました。Eさんの声がさっぱり聞こえないと思ったら、zoomの設定ではなく、私が使ったタブレットがミュートの状態でした。通常授業ではミュートが定位置なものですから、うっかりそのまま使ってしまったという次第です。ロスタイム2分ぐらいでしたから、被害は最小限に抑えられました。

入学式まで1週間以上も間があるのでまだ国にいるのかと思ったら、Eさんはつい最近まで日本で働いていました。もっと会話が上手になりたいということで、KCPに入学したそうです。今でも十分上手ですが、さらに磨きをかけて、日本語勝負したいそうです。教え甲斐がありそうです。…と言っても、私のクラスになるかどうかは全くわかりませんが。

続いてGさん。Gさんもすでに入国していて、その気になればKCPから歩いて行けそうなところに住んでいます。そして、やはり、できれば日本で就職したいそうです。大学の副専攻で日本語を学んでいますから、自分の歩む道を計画的に築いてきました。KCPはその仕上げなのでしょう。

EさんもGさんも、日本での進学を目指す学生とは違うプログラムでKCPに入ります。こういう学生が進学の学生に刺激を与えるところに、KCPの特長があるのです。

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