Category Archives: 社会

何がいい大学?

8月5日(水)

新型肺炎が広まったせいで影響を受けている大学生に、大学がどのような支援策を講じているかを扱った新聞記事をネタに、超級の学生に意見を聞きました。中にはこの4月に大学や大学院に進学していたかもしれない学生もいますから、わがことのように考えてくれました。

記事によると、多くの大学で何らかの支援金を支給しています。それ以外にもアイデアを絞って学生を経済的困窮から救おうという姿勢が感じられました。しかし、学費の返金には原則として応じていません。

KCPの学生は、オンライン授業だったらその分学費を下げてほしいというのが共通の意見でした。どのくらいと聞いてもはっきり答えられる学生はあまりいませんでしたが、オンライン授業よりも通学して講義を聞くことの方に価値を認めていることがわかりました。政府は大学にオンライン授業ばかりではいけないと言い始めました。これについては記事に書かれていませんでしたから、学生には聞きませんでした。感染するリスクも見積もりつつ、可能な限りキャンパスに通いたいというのが、学生たちの平均的な思いのようです。

経済的支援以外には、在宅でも研究が進められるように、大学で触れられるデータに個人的にアクセスできるようにしてほしいというものがありました。大学院進学を目指している学生の意見です。確かにその通りですが、セキュリティー面で実現は難しいでしょうね。

このクラスの学生は、全員が進学します。そもそも入学試験が例年通り行われるかどうか見通せない状況ですから、漠然とした不安がないとは言えません。そういう悪条件を乗り越えて進学した学生をしっかりサポートしてくれる大学・大学院に、学生を送り込みたいと思っています。

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8月の始まりは夏の始まり

8月1日(土)

久しぶりに、天気予報に晴れマークが並んでいましたから、“もしかしたら”と思っていたら、やっと関東甲信地方も梅雨が明けました。天気図を見ると、おとといあたりまで本州を東西に分断するようにのさばっていた梅雨前線が、本州のはるか東に退いています。ただ、天気図を見る限り太平洋高気圧がでんと構える感じではありませんから、お昼に出た時に見上げた空には、梅雨っぽい雲も広がっていました。

日照不足で農作物が高騰しています。“梅雨明け十日”といって、梅雨が明けた直後はお天気が安定するものですから、カーッと日照りが続いて生育不良を挽回してもらいたいところです。夏が暑くないと、コメをはじめとする秋に収穫期を迎える農作物にも悪影響が現れかねません。週間予報によると、東北から沖縄までは晴れが主体のようですから、あまり心配しなくてもよさそうです。

夏の暑さが本格的になると、マスクが鬱陶しくなりそうだと方々で言われています。暑苦しいからってみんながマスクを外したら、そうでなくても増えつつある感染者が一気に天井を突き抜けてしまうかもしれません。暑かったらうちの中でエアコンをつけてじっとしているのが一番だということなのでしょう。やっぱり今は、“Go To”じゃなくて“Stay Home”みたいですね。新型肺炎が広がり始めた頃、“夏になって真夏日が続くようになったら、こんなの消えてなくなる”などという説もありましたよね。もちろん、今、そんなのを信じている人などどこにもいません。

換気のために開けた職員室の窓から、セミの声が入ってきます。KCPの周りにセミが止まれるような木があったかどうか記憶にないのですが、夏らしさを盛り上げてくれています。

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灯台下暗し

7月27日(月)

先週、H先生が出勤するなり「新宿駅に広い通路ができたんですよ」と、JR新宿駅に新設された東西連絡通路について語ってくれたことがありました。ネットのニュースで見てみると、確かに今までにない空間が生まれていました。

それが何となく気になっていましたから、連休中のある日、新宿に所用があったので、ついでにJR新宿駅まで足を延ばして見てきました。行ってみると、東口と西口の改札をなくして、JR線の地下にサッカーができるんじゃないかというくらいの広場(?)がデーンと構えているじゃありませんか。休日の、しかもお昼ちょっと前という人手の比較的少ない時間でしたから、人がいっぱいという感じではありませんでした。でも、地下鉄の上のメトロプロムナードは明らかに人が減っており、その分がJR側に流れたことは確かです。

そうそう、東口・西口の券売機が、新通路に面した新改札口の横に移動していました。みどりの窓口も移動するみたいです。その跡地はどうするのでしょう。JR得意のエキナカにして、新たな稼ぎ口にするつもりなのかな。

そのJRの通路をしげしげと眺めたところ、新宿駅長、新宿区長をはじめ、関係者の顔写真とあいさつが壁に出ていました。それは当然かもしれませんが、その関係者全員が男性でした。あーあ、まだ男社会なんですね。小池さんは忙しくてあいさつ文を考える暇もなかったのでしょうか。

新宿で働いているんだから、新宿駅くらいすぐに行けるんじゃないかとお考えの方もおいででしょう。しかし、私の通勤経路は新宿駅を経由せず、仕事帰りに逆方向に向かう元気はなく、新宿駅付近で昼ご飯を食べたら密に巻き込まれそうだし、結局、寄り付くきっかけがないんですね。いや、活動力の低下は、老化の動かざる証拠です。

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明るいニュース

7月18日(土)

新規感染者数が増えたとか、Go To キャンペーンから東京を除外するとか、そんな重苦しく、ある種きな臭いニュースの陰にすっかり隠れてしまいましたが、今週は藤井聡太七段が渡辺明三冠から棋聖位を奪ったというさわやかさを感じさせてくれるニュースもありました。史上最年少のタイトルホルダーとなりました。私のようなへぼな者は、飛車角に金銀まで落としてもらっても勝てないでしょう。

藤井新棋聖の談話で感心させられたのは、感染症拡大防止のため棋戦が中止されていた期間、AIを使って差し方の研究をしていたということです。終盤は強いけど、序盤はそれほどの鋭さがなく、序盤で差を付けられるとあっさり負けてしまうという弱点がありました。それを克服すべくAI相手に工夫を重ねていたと言います。その成果が、初戴冠です。

巣ごもりの間に差がつくとは、ビジネスでも勉強でも言われていました。藤井新棋聖はそれを地で行ったわけです。新棋聖より少し年上のKCPの学生たちはどうだったでしょう。巣ごもり明けを見越して何かをしていた学生は、ほとんどいなかったんじゃないかなあ。話すのが下手になっていたり、字を書くのが遅く汚くなっていたり、こちらからの話の理解力がガタ落ちだったり、部屋の中でのんびりしていただけという学生が少なくないような気がします。

確実に伸びた学生もいます。ピンチをチャンスに変える力を持った学生と言えます。どんな変化にも自分を見失うことなく、最善の手を打てます。こういう学生は、どこの大学でも欲しがりますよ。大学院に進んだら、研究の核になれます。

月曜日は、進学フェア。のんびりの学生の尻に火をつけ、伸びた学生をより一層伸ばし、学生たちを夢に近づける場にしたいです。

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おとなしさの陰に

7月9日(木)

新学期が始まりました。今学期の担当クラスは、大学受験の学生を集めたクラスです。6月のEJUが中止になり、11月に懸けている学生たちの切磋琢磨の場です。優れた素質を持った学生たちだということなので、KCPの看板にもなってもらいたいところです。

とはいえ、まだ粗削りなところがありますから、今学期中にどこまで鍛えられるかで学生の運命が決まります。教師が一人で張り切っても意味はなく、個々の学生の伸びようとする意志が必須です。初日の様子を見る限り、よく言えば内に秘めた闘志を感じ、悪く言えば覇気が表に出ていません。戦う集団に育ってくれるのだろうかという不安もよぎりました。

このクラスは通常の日本語の授業もしますが、進路指導もしていきます。EJUが先延ばしになったからと言って、のんびり構えられては困りますから、最初にガツンとという意味も含めて、2021年度外国人留学生入試の出願戦略について話しました。本当は、私が語るのではなく、学生たちと議論をしたかったのですが、闘志は内に秘められていますから、そこまでには至りませんでした。6月が中止になっただけに、自分たちが受験生だという自覚が湧いてきていないのかもしれません。

授業の後処理をして、お昼を食べて戻ってくると、東京の新規感染者が224人というではありませんか。緊急事態宣言の頃よりもひどい数字です。こんな状況が続くと、そもそもまともな入試が行われるかも危なくなってしまいます。大学だって、1年中オンライン授業かもしれません。アメリカはオンライン授業ばかりなら留学ビザを出さないそうですが、学生も留学した気にならないでしょうね。

将来に対するこんな不透明さが、学生をおとなしくさせていたのかもしれません。

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敬語

7月8日(水)

おとといに引き続き行った養成講座の授業のテーマは待遇表現。敬語が中心でした。敬語はみんなの日本語の49課と50課、初級の最後に勉強します。毎学期、学生たちが苦労させられるところです。でも、みんなの日本語レベルの敬語が使えれば、日本社会でそれなりにやっていけます。いや、49・50課を身に付けたら、“ガイジン”などと侮られることは絶対にないでしょう。

その敬語ですが、養成講座受講生のみなさんも、毎期、かなり苦労なさいます。尊敬語と謙譲語を混同するくらいは当たり前で、敬語の誤用訂正となると、ほとんどお手上げ状態ですね。社会経験のある方でも、そうそうすんなりいくものではありません。だって、KCPの教師ですら、よーく聞いてみると完璧とは言えませんからね。他人の敬語の間違いに気づいて一人でにやけている私みたいな人種が異常なのです。

毎回話題になるのは“おられる”です。「社長は会議室におられます」「先生はラウンジでくつろいでおられます」は、敬語という観点から正しいかどうかです。“目上の人がどこかにいる”または“目上の人が何かしている”という意味で“おられる”を使っていいかと聞かれたら、少なくとも私は絶対に使いません。

“おる”は“いる”の謙譲語です。その謙譲語を尊敬動詞にしたところで、根本のところでへりくだっているのですから、目上の人に対して敬意を表したことにはなりません。ただし、西日本では「どこにおったん(=どこにいたの)」「ちょっと子供見とって(見ておって=見ていて)」のように、謙譲とか尊敬とか関係なく“いる”の意味で“おる”を使います。ですから、西日本の方の“おられる”は、尊敬動詞と考えてもいいでしょう。

日本語教師を目指そうという、日本語に対する意識が高い方々にとってもこれぐらいややこしいのですから、学生がすぐには使えないのも当然です。明日から、また学生たちがそれに向かって挑戦していきます。

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塩素のにおい

7月7日(火)

あさってから新学期なので、午後から教室の消毒をしました。教職員が全教室を手分けして、いすや机をはじめ、学生・教師が触れそうなところを、消毒液でよく拭きました。毎日の授業後も消毒液を吹きかけていましたから、どうしようもなく汚れているということはなかったでしょう。しかし、最近、じわじわと感染者数が増えて来ていますから、念を入れておくに越したことはありません。

床とか窓とか、しゃがみこんだり伸び上がったりしないと手が届かない場所まで手掛けたわけではないのですが、うっすら汗をかくほどの仕事量でした。今学期は始業日までに新入生が大挙してやってくることはありませんから、学期前の準備も比較的楽でした。ですから、ちょっと額に汗するくらいで、新学期を迎えるにふさわしい雰囲気になります。お正月を迎えるにあたって大掃除をするようなものでしょうか。

九州の大雨に見舞われた地域に比べれば、教室の消毒なんてゴミみたいなものです。家の中を濁流が通り抜けたんですよ。倒木やら車やら、果ては隣の家まで流れ込んできたんですよ。畳も家具も衣類も家電製品も台所用品も仕事道具もみんな泥水に浸かっちゃったんですよ。消毒液でちょちょいと拭けば終わりじゃありません。

大きな被害を受けた熊本県人吉市へは、5年ほど前の夏休みに行きました。鎌倉時代から続く相良氏の城下町で、街の人たちはその歴史に誇りを持っています。また、熊本県唯一の国宝・青井阿蘇神社は風格を感じさせる拝殿を持っていますが、球磨川のほとりと言ってもいいところにありますから、被害が心配です。

消毒後の教室には、かすかに塩素のにおいが残っていました。人吉のみなさんは塩素まみれになるくらいに消毒をするところから立ち上がるんだろうなと思いました。七夕の夜も、人吉には雨が降っているようです。

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厳しい戦い

6月23日(火)

昼食から戻って職員室で仕事をしていると、スーツ姿の見慣れぬ若者が入ってきました。新しい先生が来るという話も聞いていないし、このご時世ですから新入生という線も考えにくいです。それに、私の方を見て妙になれなれしく微笑みかけています。私の顔がよっぽど怪訝そうだったのでしょうか、マスクを外してくれました。笑顔の元が見えました。小さめの歯が隙間なく生えそろった口元は、まぎれもなく卒業生のYさんのものでした。

Yさんは、就活の真っ最中です。やはり、コロナの影響はかなりあるらしく、「採用は厳しい」とはっきり言われることもあるそうです。オンライン面接でも通常の面接でも、難しさは変わりないと言っていました。2種類の難しさのポイントが違う面接をこなさなければならないのですから、去年までの就活生より精神的にきついんじゃないでしょうか。

大学で何が一番大変かと聞いたら、「論文」と即答が返ってきました。Yさんの先生は、論文に関しては一家言ある方のようで、3年生の時に出した論文はボコボコにされたそうです。そういう厳しい訓練を受けたおかげでしょうか、Yさんが使う語彙は社会人のものになっていました。専門分野についても、今の社会についても、実のある議論ができる実力が備わっています。私はいわば身内の人間ですから採点が甘いのかもしれませんが、こんな学生を採ったら、その企業は10年後にきっといい人材を採ったと思うことでしょう。

去年の今頃は、世界中のだれもが1年後にこんな状況になっているなんて、夢想だにしませんでした。Yさんの同級生たちは、みんなどこかで就活に苦戦していることでしょう。どうにか勝ち抜いてほしいと、ひたすら願うのみです。

さて、私は、明日から遅ればせながらのゴールデンウィークと、少々早めの夏休みをいただきます。このブログも、しばらくお休みです。

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6月20日(土)

午前中は受験講座EJU、今学期最後の授業をしました。学期初めの計画では、「明日はいよいよEJU本番です。この授業を通して伸ばしてきた実力を発揮すれば、きっといい成績が取れるでしょう。今晩は早めに寝て、明日に備えてください」なんて挨拶をするはずだったのですが、肝心のEJUが中止になってしまい、はなはだしい空振りになってしまいました。

やはり、EJU中止が本決まりになってから、目標を見失ったのか、参加しなくなった学生が何名かいました。次の目標が5か月先となると、気も抜けてしまいますよね。だからこそ、最後まで休まずに出席し続けた学生たちの方をほめるべきでしょうか。

このEJUの中止について、今週になって朝日新聞が取り上げました。その少し前には、神戸新聞も取り上げています。でも、それ以上の広がりはありませんでした。世間の人々にとっては、大学入学共通テストの日程追加や、文科省が各大学に入試範囲の縮小を依頼したことが大きなニュースです。留学生よりうちの息子や隣のうちのお嬢さんです。

日本人の高校生が受ける入試は、こういう形でコロナ禍による授業の遅れへの配慮が見られます。留学生入試はどうなのでしょう。自粛で家にこもりっきりだった今年の日本語学校生は、去年までの学生に比べて発話力が弱いです。例年と同じ基準でばっさり切られてしまうと、留学生にとっては辛いですね。量より質ということで、定員厳格化もあり、情け容赦なくやられてしまうのではないかと、教師も落ち着きません。

同時に、日本に残っている日本語学校生も少なくなっているはずですから、案外楽には入れちゃうんじゃないかと、甘い期待も寄せています。しっかり見極めていかなければなりません。

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会話が弾む

6月19日(金)

午前の授業が終わった後、アメリカの大学のプログラムできている学生の面接テストをしました。月曜日に行われる文法や読解などのペーパーテストのほかに、このプログラムでは会話力も測定します。

私が担当した2名はどちらも上級の学生でした。マスク越しというハンデがあるにもかかわらず、発音が不明瞭になることもなく、あっという間に規定の時間が過ぎました。さすがに上級ですね。手加減せずに話しかけてもこちらの言っていることをきちんと理解し、適切な応答をしました。自分で会話を膨らませていくすべも身に付けていて、話がどんどん広がっていきました。

もちろん、ミスが皆無だったわけではありません。しかし、聞き手である私に誤解を与えるような間違え方ではなく、コミュニケーションを取る上では何の支障にもなりませんでした。陰険な日本語教師が相手だから重箱の隅をほじくり回して小骨の先っぽのような異物を摘出しますが、普通の日本人だったら気づかなかったかもしれません。私が今学期教えた中級の学生たちも、あと1学期か2学期のうちにこのくらいまで話せるようになってくれたらと思いました。でも、たぶん無理だろうなあ…。

Sさんは、納豆以外の和食はすべて食べられると豪語しました。自分以外はみんな日本人という会社への就職が決まっています。Sさんの会話力なら十分務まるでしょう。

Cさんは明治大正時代の日本史・日本文化、特に建築に興味があると言いました。具体的にどんな建築かと聞くと、きちんと答えが返ってきました。大学でその方面の勉強をするそうです。

しっかりした目標と興味を持っているからこそ、日本語の勉強にも身が入り、力がどんどん伸びたのでしょう。漢字の国ではないところから来て、初級で入学し、順調に進級してきているのです。立派なものです。

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