Category Archives: 学校

みんなが去って

3月10日(金)

久しぶりに四谷区民センターで卒業式を行いました。学校から荷物を運んで舞台上の整備をしていると、あっという間に学生集合時刻の10時に。今年は在校生にも参加してもらうことにしましたから、緞帳が上がると客席は結構にぎわっていました。卒業する同級生を見送ろうというつもりなのか、もう1年勉強することにしている上級クラスの学生も、そこかしこにいました。KさんやSさんのような、受験にかこつけてよく休んでいる学生の姿もありました。いや、9時じゃ間に合わないけど、10時なら間に合うという考えなのかな。

セレモニーとしての卒業式が終わると、学生主導のお楽しみコーナーが始まりました。学生が作った川柳や五行歌などが紹介され、思わず微笑んだり感心させられたりしました。YさんやDさんのユーモアのセンスには脱帽するばかりでした。私がチョイ役で出演する演劇部もこのコーナーで公演しました。今までの練習の時とは違って、広いステージでのびのびと役に没入していました。衣装もメイクも気合が入っていましたね。客席の反応からすると、卒業生も在校生も、みんなを引き付けられたんじゃないでしょうか。

式の後で記念写真を撮ると、卒業生は三々五々去っていきました。もう、この見慣れた面々が学校へ来なくなるのかと思うと、やはり寂しさがこみ上げてきます。卒業式は、後片付けをしているときが、一番感傷的になります。今年の卒業式は学生コーナーが盛り上がっただけに、より一層大きな穴を感じました。

来週からは、中央からやや外れた客席にいた在校生たちと新たな信頼関係を築いていくことになります。1年後に、同じくらいの寂しさが感じられるまでの仲になりたいものです。

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もう、春?

3月9日(木)

昨日は、日中は暖かくなりましたが、朝は少々寒かったですからコートを着ました。そのコートが、帰りには重くてたまりませんでした。しかし、今朝は新聞を取りに外に出た時から暖かく、今年初めてコートなしで出勤しました。ホームで電車を待っているときも、寒さは感じませんでした。電車内でダウンジャケットなんか着こんでいる人を見ると、“もう春だぜ”なんていう調子で、少し優越感に浸りました。もっとも、ワイシャツの下はヒートテックですから、完全に春装束というわけではありません。

学校に着いてからも、昨日までは暖房を入れるのが最初の仕事でしたが、今朝はまずブラインドを上げて外の明るさを職員室内に取り入れました。暖房がなくても震えながら仕事をするなどということもなく、誰もいない静かな職員室で卒業式以降の授業の準備がはかどりました。

こうなると、花園小学校の校庭の桜を見に行きたくなります。まだつぼみが膨らむまではいかないでしょうから、ごくほんのり青みを帯びた枝を見てみたいのです。しかし、授業後はいろいろと雑用が入り、あっという間に受験講座の時間となってしまいました。明日の卒業式の帰りにちょっと寄り道をして見てきましょう。来週になったらマスクを外してもよくなりますから、外でお昼ごはんとしゃれ込んでもいいですね。

今、ネットで調べてみたら、東京の開花予想日は16日というじゃありませんか。ちょうど1週間後ですよ。満開は24日、期末テストの翌日です。今年は何だか春が早いですねえ。

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最後の試験

2月24日(金)

9字7分前ぐらいに6階の試験会場に入ると、3名の学生が談笑しているだけでした。20名余りの学生がこの教室で卒業認定試験を受けることになっているのですが、どうしたのでしょう。定期試験の日は早めに登校して教室で勉強する学生が多いものなのですが、自信たっぷりなのでしょうか、それとも「卒業」をあきらめてしまったのでしょうか。

…などと気をもんでるうちに学生が集まりだし、9時3分過ぎぐらいには欠席2名となりました。卒業認定試験は学生にとってKCPで受ける最後の試験なのですが、始業時刻直前に駆け込むという日常が繰り返されました。

KCPは、卒業認定試験に合格しないと、卒業式でもらう証書が「卒業」証書ではなく、「修了」証書になります。修了証書になったところで大学合格が取り消されるわけではありませんが、送り出す側としては有終の美を飾ってほしいと思っています。この学校で最後まで全力で日本語を勉強したという証が、卒業証書なのですから。

欠席した2名のうちの1名、Kさんは、最近授業に対するやる気が感じられず、認定試験は逃げるんじゃないかなと思っていたら、案の定でした。お昼過ぎに、「体調不良で欠席しました」というメールが届きました。完全な無断欠席でなかったことで良しとしなければならないでしょう。

もちろん、試験の成績も吟味します。Tさん、Dさん、Wさん、Sさん、Rさんあたりはきちんと勉強して受けた形跡があります。Yさんは、苦手科目には手を付けなかったのかな。どの科目も早々に提出したJさんは、他の学生が大苦戦した会話の問題でほぼ満点でしたが、ほかの科目は散々でした。

上級担当教師は卒業認定試験が終わると一山越えた感じになりますが、まだ合格が決まっていない学生への指導が待っています。Gさん、Lさん、あんたたちが片付かない限り、私に安らぎの日は来ません。頑張るだけでは意味がありません。結果を出してください。

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初めての素顔

2月22日(水)

久しぶりに、新宿御苑へ行きました。去年の卒業式後に卒業生を連れて行って以来です。節分の日に春を探しに行こうと計画していたのですが、あまりの寒さに中止しました。そのリベンジという面もありますが、上級のクラス写真を早咲きの桜の下で撮ろうというのが主たる目的です。

前半の授業を終えて、11時少し前に学校を出ました。気温は上がっていませんでしたが、抜けるような青空で、風も弱く、覚悟していたより寒くはありませんでした。入苑時に御苑の職員がたっぷりお役所仕事をしてくれたようで、10分以上は待たされました。それでも、学生から「寒い」という声は聞こえてきませんでした。スマホに夢中だったからかもしれませんが…。

苑内は、ぱっと見は冬枯れですが、木々をよく見ると新芽を膨らませているのもありました。大城戸門からしばらく歩くと、下見でT先生が目をつけていた早咲きの桜が、白と濃いめのピンクの花を誇っていました。周りが殺風景なだけに、目を引きますね。スマホで接写している学生もいました。きっと、春のかけらが欲しいのでしょう。

写真の時は、屋外でもあることだし、マスクを外してもらいました。私にとって、大半の学生が初めての素顔でした。意外と子供っぽい顔、思ったより大人びた顔、勝手な想像とは逆にふっくらした顔、オンラインの画面で見た時よりもずっと精悍な顔など、実に様々でした。

そんな顔を見ながら、秋に進学したAさんや、病気のために帰国を余儀なくされたBさんや、今ここにいる学生たちと机を並べた面々を思い出しました。みなさんどうしているのでしょうね。

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始動

2月18日(土)

この週末や来月に入ってから受験する学生がいる一方で、今週の月曜日から6月のEJUの出願が始まっています。2024年度の入試が動き始めました。

受験講座を受けている学生たちは意識高い系ですから、6月に向けて準備もしていますし、だからこそ、心配もしています。6月の成績を使って出願して、早々とどこかに合格しておけと発破をかけていますから。

去年の4月に入学したときは何が何でも東大に入る、東大以外は大学じゃないとまで言っていたPさんは、穏やかな表情でEJUの目標点を語っています。自分の実力を冷静に見極められるようになり、自分の実力の相場を知り、それを少しでも高めるにはどうしたらいいかと考えられるようになりました。大人になったというのか、人間的に丸くなったというのか、この1年で大きく変わりました。20歳前の1年は“長い”と感じさせられます。Pさん自身も自分の成長を感じていて、1年前の話をすると恥ずかしがります。

現在一番危ないのは、昨年10月に入学した初級の学生たちです。「6月はまだ日本語が下手ですから、EJUは受けません」と言っている学生が少なくないのですが、それが困るのです。たとえ低くてもEJUの点数がないと出願すらできない大学が結構あります。そういう大学の受験のチャンスを、自らの手で摘み取ってしまうわけですから。中には後期とか3期とか言って、11月の成績でも出願できる入試制度を設けている大学もあります。でも、そういう大学は早い入試ほど入りやすいのです。6月に受けたという実績が必要なのです。

しかし、これがなかなか伝わらないんですよね。毎年、6月を受けずに後悔する学生がいます。6月の受験をかたくなに拒否した学生に限って、「先生、どうしよう」ということになるのです。そんな学生は「自己責任」と突き放すのが今の日本のやり方なのでしょうが、結局世話を焼いてしまうんですよ、私たちは。

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油断大敵

2月16日(木)

年を取って血の巡りが悪くなったせいか、最近は手先が冷えていけません。胴体はヒートテックで守ることもできますが、手袋をしていては仕事になりません。私が出勤する朝の職員室は空気が冷えていますから、手指は熱を奪われる一方です。首筋に手を当てたり、お尻の下に手をはさんだりして手を温めます。日中も手先は冷たいままで、かじかむというほどではありませんが、動きがいくらか鈍いような気がします。

そこで、カップにお湯を入れて、そのカップを両手で包んで指先を温めています。給湯室の湯沸かしポットから熱湯を注いだばかりのカップはかなり熱いのですが、その熱さが気持ちいいんですね。指先から手のひらにかけてカップの熱を感じながら、キーボードをたたいたり、作文の添削をしたりしています。カップの中身がぬるま湯以下になったら、また入れ替えて熱さを楽しみます。

カイロでもいいのですが、両手でカップからの熱を受け止めると、手ばかりでなく体中が温まるような気がするのです。温かさは、カイロのほうが長持ちしますが、熱の伝わる面積は、カップを両手で握るようにして持つ方が広く、温まっていく実感が伴います。

午後、職員室で仕事をしているところを学生に呼び出されました。「卒業が近いので先生の写真を撮りたい」というので、モデルになりました。そのあとで、「選択授業の日本の古典で、和歌を教えてもらいました。私は“め”から始まる歌を作りました。『めったに見ない、片手でカップを持つ金原先生』という歌にしました」という報告をいただきました。私がカップを抱えるのは職員室の中だけですが、学生は見ているんですねえ。寒そうに背中を丸めながら大事そうにカップを両手で包む姿が、その学生にとっての“金原先生”なのでしょう。その姿を脳裏に刻み付けてKCPを卒業していくのでしょうか。もう少しシャキシャキしているところを印象に残したかったですね。

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たった3人?

2月15日(水)

朝、教室に入ったら、学生が3人しかいませんでした。その後、始業の9時までに駆け込みがいて、どうにか9人。出席を取り終わった直後ぐらいに3人来て、12人で授業を始めました。昨日の中間テストが終わって、気が抜けてしまったのでしょうか。

欠席者のうちKさんからは、夜中のうちにメールが入っていました。爪が割れてしまっていたくてたまらないので病院へ行くとのことでした。毎日両手の指を派手にデコっていましたから、爪が耐え切れなくなったのでしょう。10時半の休憩時間に職員室に戻ると、Gさんからもメールが来ていました。トイレに行きたくて途中下車したらスイカの残額が足りなくて新宿御苑前まで行けなくなったとのことですが、定期を買っていなかったのでしょうか。現金の持ち合わせはなかったのでしょうか。そもそも、改札の中にトイレはなかったのでしょうか。意味不明の欠席理由です。Tさんからは体調不良というメールが入っていましたが、送信日時が10:01になっていましたから、寝坊かもしれません。Yさんは受験日だといいます。そんな話、全然聞いていませんでしたが…。

どれもこれも、欠席理由としては弱いというか、ほんの少し注意すればどうにかなったはずだというか、割り切れないものがあります。受験だというYさんにしても、事前に断っておいてくれれば、私だって腹を立てずに済んだのに。GさんとTさんは、1月の出席率が悪かったので理由書を書いています。休まないようにする対策も書きましたが、それが実行されていません。

さらに悪いのは、何の連絡もよこさず、授業後に電話をかけても応答しなかったJさんとRさんです。2人ともまだまだ日本にいるつもりらしいですが、こんないい加減なことをしていたら、いられなくなってしまいます。出席率はKCP内部だけの数字じゃないんですよ。Gさん、Tさん、Jさん、Rさん、わかっていますか。

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窓を閉める

1月25日(水)

寒い1日でしたね。朝、マンションの外に出たら、寒さが頬に突き刺さりました。那覇を除く都道府県庁所在地の最低気温が氷点下になったそうです。昨日のクラスのディクテーションで「今期最強寒波到来」なんてやりましたが、まさにその通りになりました。

水曜日のクラスは外階段わきの教室ですから、私はいつも外階段で行き来します。通常、廊下の外階段側の扉は、換気のため少し開けてあります。しかし、今朝は、2か所で扉が閉められていました。扉に挟む木片が、外階段側にむなしく転がっていました。ラウンジで朝ご飯を食べていた学生たちはよほど寒かったんでしょうね。

教室の窓も、“ピッタリしまっていない”という程度でした。授業開始の9時ごろはまだ氷点下で、その寒さのせいか、今朝は遅刻が多く、私が教室に入ったときはいつもよりさらに人数が少なかったです。ベッドから抜け出せず、うちから出られずという感じだったのでしょう。教室に駆け込んで人心地という顔つきでした。

ニュースによると、東京近辺以外は全国各地大変なことになっているようです。関東平野を取り囲む山々が季節風をブロックしてくれるおかげです。そういえば、受験で関西へ行っているQさんは無事でしょうか。交通機関が乱れているという話ですが…。

午後は面接練習と受験講座。どちらも冷え切った教室でするのはかないませんから、早々に暖房を入れておきました。少し開けておいた窓は、私が改めて教室に入ったときには、しっかり閉められていました。

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30秒前精神?

1月18日(水)

今学期私が持っているクラスの学生たちは、みんなスリルを味わうのが好きなようです。8:55ぐらいに教室に行っても誰もいないということすらありました。私はタブレットの接続具合を確認したり、授業で使う資料を画面に出す準備をしたりしたいので、授業が始まる5分前ぐらいには教室に入るようにしています。その時に誰もいないとか、いても1人とか2人とかというと、学生が来るんだろうかと心配になってきます。

でも、毎日、8時59分30秒あたりから、学生が怒涛のごとく押し寄せます。そして、始業のチャイムが鳴り、出席を取っている最中にもなだれ込み、出席簿上遅刻扱いにならずに済む学生がほとんどです。出席を取り終わった時点で遅刻・欠席の学生は、せいぜい2人ぐらいとなります。

綱渡り常習者のLさんは、丸ノ内線沿線に住んでいます。最寄駅8:41発の電車に乗れば教室に9時ちょうどに着くと計算しています。しかし、うちを出るのがほんのちょっと遅れ、その電車を逃すと次の電車は8:44発となり、教室着が9:03で、惜しくも遅刻です。8:41発に乗れても、その電車が微妙に遅れればアウトです。どうしてもう1本前の電車に乗らないのかと聞いても、Lさんは頭をかくばかりです。

他の学生も似たり寄ったりでしょう。時間の観念がないわけではなく、むしろありすぎるからこそ、9時ピッタリに滑り込むのです。じゃあ時間の無駄遣いをしていないのかと言ったら、間違ってもそんなことはありません。せめて、その時間の観念を5分早めてもらいたいです。

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どこへ行こうか

1月14日(土)

2019年以前は、節分の日に、学生を連れて豆まきを見に日枝神社へ行っていました。力士数名、有名人少々を含む方々が、仮設の舞台から福豆の入った袋をまき、我々下々の民はそれをダイレクトキャッチし、福をつかむという図式でした。袋の中に“当たり”が入っていると、景品がもらえました。氏子になっている企業がスポンサーになっているのでしょう。私なんかは、たくさんキャッチした学生から、“はずれ”の豆の袋を1つ2つ分けてもらうのが常でした。

2020年は、ちょうど感染が拡大し始めるころでした。日枝神社の豆まき自体は行われたものの、学生も教師も人込みを恐れて日枝神社まで行きませんでした。去年とおととしは、オンライン授業だったり、出かけるような空気ではなかったりということで、日枝神社なんて全く念頭にありませんでした。

今年こそは日枝神社復活と思ったのですが、残念ながら、今年も豆まきはしないそうです。他の神社へ行ってもいいのですが、午前クラスの授業にちょうどいい時間帯に豆まきをしてくれるのは、日枝神社ぐらいなのです。4時ごろからというところが多いようです。最近の感染状況や新しい菌株の感染力を見ると、現時点で予定しているところも中止に追い込まれるかもしれません。今年も教室でひっそりなんでしょうか。

豆まきの準備中の神社やお寺を見ても面白くないでしょうし、でも、教室で豆まきの動画を見るだけでは不完全燃焼のような気もします。もう少し、頭を悩ますことにします。

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