Category Archives: 行事

新しいスピーチコンテスト

9月2日(木)

久しぶりのスピーチコンテストを、初めてのオンラインで開催しました。私は審査とりまとめ役でしたが、集計方法などで戸惑いました。各教職員、それぞれの担当でそれぞれの苦労があったようです。昨日までリハーサルを繰り返しましたが、実際にやってみると意外なところから問題が噴出してきました。致命的な失敗はありませんでしたが、明日に向けての反省材料はたっぷりあります。そうです。今回は2日間の分散開催なのです。

オンライン授業のためスピーチの練習の機会が少なかったのではないかと心配していましたが、それを跳ね返して立派なスピーチをしてくれました。今までに比べて開催時期が遅いことが有利に働いた面もあるようです。授業や面接では発音の悪い学生をたくさん見てきましたが、さすがにクラス代表に選ばれただけあって、きれいな発音を聞かせてもらえました。発音はやっぱり訓練の量がものをいうのですね。

ただ、自室でパソコンに向かって話しているからでしょうか、熱弁が少なかったように感じました。印象的なスピーチは、会場の生の反応との相乗効果で生まれるものです。拍手や笑い、うなずきに支えられて練習以上のスピーチを繰り広げる学生がいたものですが、今回はそういう大化けのスピーカーはいなかったようです。

自室からのスピーチならではの工夫もありました。自分が飼っているペットを見せてくれたり、いかにもリラックスした表情で話していたりなど、今までとは違った雰囲気のスピーチもありました。

さて、明日はどんなスピーチが聞けるのでしょうか。

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自分本位

7月20日(火)

Sさんは、スピーチコンテストのクラス予選での発表を拒否し続けています。これも授業の一環であり、発表は学生の義務だと言っても、興味がないからやりたくないと言い張ります。入学以来、自分がやりたくない課題はやろうとせず、他人がどう思っていようが一切お構いなしの学生だったようです。

ところが、Sさんは、J大学の志望理由書を見てほしいと、担任のH先生に頼んでいます。志望理由書はSさんにとって最大関心事ですからまっ先に手掛け、不義理の先であるH先生にチェックを依頼することにも、何の不思議も感じていないに違いありません。自分はKCPの学生なのだから、KCPの教師が自分の進学に協力するのは当然だという発想なのでしょう。

私たちは可能な限り学生のために働こうと思っています。また、それが私たちに課せられた使命だとも認識しています。しかし、ここは学校であり、みんなと一緒に学ぶ場です。学校行事を大切にするのが校風だと、学生募集の際に伝えています。それを承知の上で入学したのですから、個人のわがままを押し通すような行為は控えてもらいたいです。私たちは個々の学生の家庭教師ではありません。いや、家庭教師であっても、やるべきことをやろうとしない生徒に対しては、きちんとやっている生徒に比べて情熱の度合いが下がるのではないでしょうか。

現に、H先生はSさんのほかに数人の学生から志望理由書のチェックを頼まれています。Sさんの優先順位が最下位になったとしても、無理はないでしょう。

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もうすぐ運動会?

5月25日(火)

昼食を食べに出た帰りに、陽気に誘われて、外で本を読もうと、花園小学校へ向かいました。校庭の隅っこにベンチがあり、春はお花見、夏は緑陰と、お昼のひと時を過ごすのに絶好の場所なのです。

先客もいないベンチに腰を下ろすと、目の前の校庭では、低学年と思わられる子どもたちが、トラックに沿って、もちろんしかるべき間隔を置いて、丸くなっていました。みんな、赤系統の体操着を着ていました。私たちの頃は赤といえば女の子だったのですが、今は性別による色分けはしないのでしょう。

何が始まるんだろうと、読書そっちのけで子どもたちを見ていたら、音楽がかかって踊りだしました。振り付けは習っていたのでしょうが、全然バラバラでした。教室の中でビデオかなんかを見ながらまねしてみるのと、校庭に出て他のクラスや学年の見知らぬ顔と一緒に体を動かすのとでは、だいぶ勝手が違います。小さな顔も背中も手足も、みんな戸惑っていました。

先生たちの表情まではうかがえませんでしたが、マイクを持った先生は、盛んに児童らをほめていました。どうやら、運動会で披露するようです。運動会は今週末なのでしょうか。だとしたら、これから一気にムードを盛り上げて、みんなをのせて、本番で120%の力を発揮させなければなりません。KCPの受験に気を取られている学生たちを引っ張るよりは熱くさせやすいかもしれませんが、また別の苦労があるのでしょう。

その証拠に、音楽が終わるとすぐにみんなを座らせていました。熱中症で倒れたなんてことは、絶対に起こしてはなりません。私は木陰でしたが、校庭は南中高度75度の直射日光です。用心に越したことはありません。

花園小学校のホームページを見ましたが、運動会の予定は出ていませんでした。現代は、そういうことにも気を使わなければならないんですね。

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鎧兜

4月30日(金)

去年は全然何もできなかった学校行事が、やっと復活しました。端午の節句です。毎年連休の直前に行っていましたが、去年はオンラインで細々と触れた程度でした。でも、今年は2年ぶりに五月人形を飾り、日本の伝統文化の一端を学ぶとともに、ちょっとしたゲームも楽しみました。

私たちにとっては、五月人形は珍しくも何ともありませんが、学生たちはしげしげと眺め、写真を撮っていました。教室で一通り説明を受けて来ても、いや、受けて来たからこそ、興味津々だったのでしょう。鎧兜姿の大将、桃太郎、菖蒲の花など、飾ってあるものすべてにスマホを向けていました。

ゲームは、桃太郎にちなんで鬼退治です。軍手を丸めて作ったボールを、厚紙で作った鬼に向かって投げ、鬼が倒れたら点がもらえるというものです。単純なゲームでしたが、思いのほか盛り上がりました。クラスメートの投げるボールにまさしく一喜一憂で、久しぶりに学生の歓声を聞きました。

おととしまでは、クラスみんなで柏餅を食べましたが、今年はもちろん中止。6階の講堂の半分で五月人形を見て、もう半分で柏餅を食べながら歓談という流れでしたが、幸いにも(?)学生数が減ったため、クラス完全入れ替え制でも時間にゆとりがありました。

その代わり忙しかったのがO先生たちで、この行事を海外でオンライン授業を受けている学生たちに中継するために大いに汗を流していました。モニターで見る限り、オンラインの学生たちも画面を通して端午の節句を味わっていたようです。

この先感染拡大がどうなるか見通せませんが、こうして少しずつ平常を取り戻していきたいです。

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リクルートスーツ

4月2日(金)

リクルートスーツそのままといったいでたちの若者が、学校の周りにも出現しています。マスク越しに笑い声も聞こえましたが、新入社員に皆さんには、もうしばらく緊張の日々が続きます。去年も同じ光景を目にしていたはずなのに、よく覚えていません。患者数は今の方がずっと多いのに、慣れなのでしょうか、余裕なのでしょうか。

KCPでも、入学式を行いました。去年の1月期以来、1年3か月ぶりです。現時点で新入生は入国できませんから、KCP史上初のオンラインでの入学式です。

挨拶をする立場としては、授業でだいぶ鍛えられたとはいえ、画面やカメラに向かってしゃべるのは、やりにくいですね。やっぱり、私の話を聞いてうなずいてくれる人が目の前にいてほしいです。それに、入学式は事前に原稿を書いてその翻訳が画面に出ますから、あんまり脱線するわけにはいきません。日本語がわからない人たちばかりだから日本語と翻訳に違いがあってもわからないという考えもありますが、それは不誠実な感じがして、やりたくはありません。そうすると、なおのこと、いつものペースに乗れなくなってしまうのです。

新入生はオリエンテーションやプレースメントテストを受けた後、オンラインで授業です。日本が開国したら一刻も早く入国して教室での授業に加わってもらいたいです。日本で進学するつもりなら、国にいるうちから周到な準備を始めておいてほしいです。そして、来日したら、リクルートスーツの新入社員よりずっと打ち解けた表情で学校の周りを歩いてください。

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最後のふれあい

3月8日(月)

時折雨の降るあいにくの天気でしたが、卒業式を行いました。密を避けるため、3回に分けました。だから、忙しかったです。でも、卒業生の顔が間近に見られるお手頃サイズの式になりました。去年はついに行うことができず、日時予約制で卒業生に証書などを取り来てもらいました。それを考えると、大きな進歩かもしれません。

ずっとオンライン授業が続いたからでしょうか、ラフな服装で出席した学生が多かったと感じました。フォーマルな服装でと、先週、口頭でもメールでも何回か注意してきたんですがね。図らずして、お知らせの伝わりにくさを実感させられました。もちろん、朝、「昨日熱を出したから、大事を取って卒業式は欠席する」と欠席連絡をしてきた学生もいます。

別の角度から見ると、学生たちはこのように連絡が伝わりにくい悪条件の中で勉強を続け、卒業式にまでたどり着いたのです。確かに私たちも苦労しましたが、学生たちの苦労も察してあげるべきだと思いました。とかく、教師は教師側のもどかしさを語りがちですが、学生の不自由さにも思いをはせて授業を作っていくことが、2年目に突入したオンライン授業の課題です。

3回目の卒業式を終えて職員室に戻る途中、2階のラウンジをのぞいてみると、学生たちの輪がいくつかできていました。天気がよければ校庭に集まってもらいたいのですが、雨がぱらつくこの寒さじゃやむを得ません。“1つのテーブルに1人”などと無粋なことは言わず、目をつぶることにしました。やっぱり、会って話をしたいんですよね。

それから、もう1つ。今年はサイン帳を持って教師や学生から“ひとこと”をもらっている学生を何人か目にしました。これもまた、リアルな触れ合いを求める傾向の1つなのかなと思いました。

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ああ、バーベキュー

3月6日(土)

先週の卒業認定試験の際に行った卒業生アンケートに目を通しました。KCPでいちばん記憶に残っていることは何かという質問には、2019年秋のバーベキューという答えが圧倒的に多かったです。そう、卒業生にとって、これが、全校生が集まって実施した最後のイベントなのです。その後、イベントがなかったわけではありませんが、みんなで盛り上がるということはありませんでした。

このバーベキューのような全校行事をすると、クラスの何名かは、やりたくないとか出席のためだけに参加するとか自分に仕事は割り振らないでくれとか言い出します。実際にバーベキューの最中にずっとスマホをいじっていた学生もいました。しかし、アンケートを見てみると、参加したくないと絶対に言いそうな学生まで、楽しかったと答えています。オンライン授業ですぐどこかへ行っちゃうような自己中心的な学生も、みんなと一緒でおもしろかったと感想を述べています。私たちは、行事の実施に自信を持っていいようです。

そうは言っても、緊急事態宣言が延長されましたし、近い将来解除されたとしても、おととしのように何百人も集まって体育館で運動会というわけにはいきません。今年の卒業生はかすかに楽しい思い出がありますが、来年の卒業生はどうなることでしょうか。zoomとマスクの留学生活では、あまりにも寂しいです。

みんなで集まらなくても楽しめるイベントを生み出す、これもまた、with Coronaに向けての1つの課題です。オンライン授業の技を磨けばそれで十分というほど、甘くはありません。

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今年初

2月26日(金)

今学期初めて、大勢の学生が登校しました。卒業認定試験を学校で行ったのです。卒業認定試験はKCPとしては一番重みのある試験ですから、“何でも持ち込み可”になりかねないオンラインのテストではなく、学生たちにご足労願ったのです。やはり、きちんとした試験でそれぞれの学生を卒業に値するかどうか判断するのが、学生に対する礼儀でもあると思います。入管提出用の書類を書いてもらうという面もありましたがね。

私は別件があったので試験監督に入りませんでしたから、教室のにぎわいを直接感じることはできませんでした。しかし、午後のクラスの教室に向かうとき、試験を終えた学生たちとすれ違いました。「先生、こんにちは」という声を久しぶりに耳にしました。マスクで顔の半分が覆われていますから誰が誰やらわかりませんでしたが、校舎にあふれる活気のかけらを味わえました。

実は、昨日の夜、T先生やA先生が1階のエレベーターの向かい側にひな人形を飾ってくださいました。ひな祭り当日の3月3日はオンライン授業で学生は登校しませんから、卒業生がみんな登校する卒業認定試験の日に合わせて桃の節句と春の訪れを感じてもらおうという趣向です。朝は試験前ですから目を向ける余裕もなかったようですが、試験終了後はスマホを向ける学生もいました。

次にこの学生たちが学校へ来るのは、卒業式の日です。密にならないように、いつもの年とは違う形で式を行いますが、精一杯心を込めて、卒業生を送り出す準備をしていきます。

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1人1人の卒業式

3月16日(月)

朝から、卒業生が続々と証書を受け取りに来ました。一番早く来たのはOさんで、7時40分ごろでしたでしょうか。混んだ電車に乗るのは嫌だから空いている時間に来たと言います。いまどきらしい理由だと思いました。でも、カメラマンをはじめ、スタッフがまだ来る前でしたから、9時まで待ってもらいました。

Oさんを皮切りに、三々五々というより一々三々ぐらいの規模で学生がぽろぽろと来ました。オンライン授業中のため教師も全員いるわけではなく、ギャラリーは10名いるかいないかぐらいの教職員だけでしたが、それだけ非常に距離の近い証書の授与ができました。私も、手渡す学生全員に、以下同文ではなく、証書の文面をすべて読み上げました。そして、1人1人と記念写真を撮りました。用意した学生の寄せ書きコーナーの模造紙も、1枚目はすべて埋まり、夕方には2枚目に突入してしまいました。

それでも、お昼過ぎは学生が数名集まり、ちょっと渋滞もしました。しかし、見守る学生たちも穏やかで、自分の番になるとちょっとおどけて見せたりしていました。もちろん、卒業生たちは教師と思い出話に花を咲かせることも忘れてはいません。心のこもった「ありがとうございました」「お世話になりました」が、1日中聞こえました。

夕方、金曜日に証書をもらって東京を去っていったZさんから、引っ越しが無事に終わったというメールが入りました。義理堅いものですね。周りに知っている人のいない新しい環境で生活をはじめるのは、不安や心配がいっぱいあるでしょう。進学先の入学式もオリエンテーションも中止だとか言いますから、さらに心細さが募るのではないでしょうか。しばらくしたら、景気づけにメールを送ってあげましょうか。

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濁流に溺れる

3月7日(土)

結局、卒業式は中止のやむなきに至りました。なんだか、濁流に押し流されていくようで、無力感が漂います。個人的に言わせてもらえば、予定通りに卒業式を執り行っても、誰も発症しないでしょう。あとで振り返って、「いい卒業式だったね」っていうことになるに違いありません。しかし、万に一つ、発症者を出してしまった場合のリスクは計り知れないものがあります。私はもちろんのこと、学校全体としても、そのリスクを背負いきれません。もしかすると、その発症者の人生を左右することになるかもしれませんから。

職員室で来週の授業の準備をしていたら、KさんがE大学に合格したと報告に来てくれました。E大学は受験生をよく観察してくれる大学ですから、Kさんのような明るく前向きな性格で、日本語力もある学生には有利です。過去にもそういう学生が進学しています。勉強に偏った学生は、成績がよくても落とされています。

Kさんは、もちろん、オンライン授業には毎日参加しています。突然指名してもきちんと答えますから、出席確認の時に接続してあとは知らんぷりなどという不届きな輩とは違います。でも、友達の声は聞けても会えないから寂しいのだそうです。SさんやYさんも同じようなことを言っていました。そういう学生たちのために、何とかみんなが集う機会を設けたかったのですが、上述のような仕儀に相成りました。全国の小中学校・高校でも、同じような状況が繰り広げられていると思います。

このブログを読み返してみると、オンライン授業が決まってから、ほぼ毎日、同じような話題です。違う話もしたいのですが、こちらがあまりに大きくて重くて、どうにもなりません。

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