Category Archives: 進学

リストを見ながら

2月17日(木)

学生は、大学や大学院、専門学校などに合格すると、担任の先生に報告します。こちらも、入学させた学生がどうなったか役所に報告することになっていますから、そういうルールにしています。中には、隠密行動で受験してこっそり受かっている学生もいますが、最後まで秘密を隠し通した学生はごくわずかなはずです。

学生が学校へ来ていると、自分のクラスではない学生からも、「先生、○○大学に合格しました」などと、直接報告を受けることがあります。廊下や階段、ロビー、ラウンジ、そんなところでばったり会ったついでに、そんなふうに声を掛けられることも少なくありません。

ところが今は全面オンラインですから、生身の学生に会うということがめったにありません。そのため、毎年恒例のうれしいお知らせに接することもほとんどありません。職員室で先生方の会話に聞き耳を立てて、学生の進学状況を把握しているというありさまです。

入管の特例で、2020年入学生に関しては在留期間の延長が認められています。この特例を利用するか否かの調査結果での一覧表に、各学生の合否状況が載っています。今年はこれを頼りにするほかないようです。

それを見ていると、今年は面接で落とされるのではと心配していた学生がわりと受かっているような気がします。頭脳明晰で話すのだけが苦手なWさんがあちこち受かっているのはともかくとして、コミュニケーション能力がゼロに近いCさんまで名の通ったところに合格しています。進学先で授業にもついていけないし、友だちもできないしなどということになったら、学生にとっても大学にとっても不幸です。

入学時に大言壮語していたZさんは、竜頭蛇尾の状態です。特例を利用しないみたいですが、あと1か月半ほどで大逆転があるのでしょうか。Tさんがもう1年と言っているのは、モラトリアムかな。その気になればCさん以上に合格を重ねてもおかしくないのに。

明日は早くも中間テスト。受験シーズンの終わりが近づいてきています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

奨学金がもらえない

2月15日(火)

まだ試験を受けている学生がいる一方で、すでに合格を決めた学生もいます。そんな学生たちを対象に、JASSOが奨学金受給者の募集をしています。何名かが応募しましたが、応募者全員が奨学金をもらえるわけではありません。まず、EJUで決められた科目を受けているか、そして、出席率もそうですが、KCPでの成績も基準を上回っていなければなりません。

調べてみると、Yさんだけが基準に届きませんでした。Yさんは先々学期受け持ちました。悪い学生ではないのですが、でも、それ以上でもありません。授業に集中していないのか、指名するととんちんかんな答えをすることが時たまありました。どうやら、自分はできると思っていたようです。学校の勉強なんか、試験の直前にまとめてやれば合格点ぐらいは取れる――と思っていた節も感じられました。

ところが、実際はそうではなく、平常テストでは不合格点も取ったし、作文も日本語教師だからどうにか読み取れるという程度だったし、結局はお情け進級組の1人でした。それでも志望校に合格したのは立派ですが、合格した後、ねじが緩みまくっているという報告を、先学期の担当の先生から聞いています。

JASSOの成績基準はそんなに厳しくはありませんが、それにすら引っ掛からなかったという点に心配が募ります。今学期はオンライン授業のため全然顔を見ていませんが、ちゃんと勉強しているのでしょうか。緩みっぱなしだと、「進学はしたけれど…」ということにもなりかねません。

もう間もなく、奨学金は受けられないという通知がYさんの元に届くでしょう。これを単にお金の問題ではなく、進学後にどれだけ実のある勉強ができるかという問題に置き換えて考えてもらいたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

次の段階

2月9日(水)

昨日面接をしたSさんが、指定校推薦の手続きをしに学校へ来ました。私はT大学に進学する意志の最終確認と、仮にも学校が推薦するのですから、それにふさわしい学生であり続けることなどをはじめとする、その他もろもろの注意事項の伝達をしました。Sさんは緊張気味に耳を傾けていました。

ここ何年か、指定校推薦で進学を決めた学生が、合格後にそれにふさわしくない行動に走る例が出ています。この制度は単なるすべり止めや他大学に落ちた場合の保険などではありません。また、ある特定の学生個人を利するために存在しているのでもありません。大学側が学生確保を図り、こちらがそれに乗っかっているわけでもありません。真に勉強する意志と能力のある学生を、その意志と能力を受け止めてくれる大学に送り込むための精度です。大学とKCPとの間の信頼関係に基づいて成り立っているのです。

この信頼関係にひびを入れるような振る舞いをしないようにと何本も釘を刺しておくというのが、指定校推薦における私の役どころです。指定校推薦の誓約書に書かれていることをすべて守ってくれたら、全教職員が心から応援したくなること疑いありません。いや、周囲の学生だって、“SさんにはT大学でいい勉強をしてほしい”と思うことでしょう。

指定校推薦の出願書類などを受け取り、作成方法の説明を受け、Sさんは帰って行きました。出願を済ませたら、今度はT大学での入試面接の練習も始めなければなりません。Sさんの思いがT大学の先生方に伝わるように、先生方の心をつかめるように、指導していきます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

久しぶりの面接

2月8日(火)

Sさんは、先学期と先々学期、私のクラスでした。若干頭の固いところはありますが、真面目な学生です。字が汚いのが最大の欠点で、Sさんの例文やテストの解答用紙や作文を読むのに苦労させられたものです。

そのSさんが、T大学の指定校推薦に応募しました。昨年秋からいくつかの大学を受験しましたが、EJUの点数や英語の成績など、何かどこかで引っかかり続けて、どれもうまくいきませんでした。そして、志望学部が合うT大学の指定校推薦に応募するに至ったのです。その推薦者決定の面接を、授業が終わった午後に行いました。

授業はオンラインなのに、指定校推薦の面接のためだけに学校まで出て来いというわけにもいかず、オンラインでの面接になりました。ZOOMに入ってきたSさんは、スーツ姿でした。人は見かけで判断してはいけないと言うものの、やっぱり印象はよくなっちゃいますよね。この指定校推薦にかける意気込みは感じられました。

T大学の志望理由など、お決まりの質問への回答は難なくこなしました。しかし、ちょっとひねった質問をすると、言葉が滑らかでなくなります。ただ、こちらの問いかけに真摯に答えようとしていることは十分に伝わってきました。コミュニケーションは取れていますが、やはり話す練習は必要です。この辺がオンライン授業の課題ですね。

結論として、SさんをT大学に推薦することにしました。夏ごろのSさんにとって、T大学は第1志望でも第2志望でもなかったに違いありません。しかし、今、Sさんは、T大学の中で、自分で道を切り開こうとしています。この気持ちさえあれば、今までに受験した大学に劣らぬ、Sさんの人生において価値のある学問ができることでしょう。

面接が終わった後、さえわたった青空を見上げながらお昼を食べに出かけました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

そうまでして

1月26日(水)

大学入学共通テストでカンニングが行われたようです。問題を写真に撮って家庭教師紹介サイトを通じて知り合った東大生に送ったと言います。その東大生は採用試験みたいなものだと思って、その問題を解いて送り返しました。何も知らないうちにカンニングの手伝いをさせられたわけです。これが事実だとしたら、その東大生にとってはとんだ災難というほかありません。

これが明るみに出たのは、当日の試験監督官による摘発ではなく、当の東大生の申し出からです。試験監督官は気が付かなかったのでしょうか。写真撮影、メール送信、そして返信の受信となれば、まさかコナンみたいな装備はしていないでしょうから、怪しげなしぐさが数回あったはずです。それをすべて見逃してこのような事態の発生を許したとなると、当然ほかにも同様の不正行為があったのではないかと疑わしくなります。

問題を外部に流出させた受験生がどんな人かはわかりません。偽計業務妨害罪で捕まったとしても、そのプロフィールが公になることはないでしょう。でも、どんな気持ちでこのような行為に及んだかは知りたいです。イチかバチかの勝負だったのでしょうか。ゲーム感覚のお遊びだったのでしょうか。追い詰められて精神に異常をきたしていたのでしょうか。

この稿でも何回か取り上げていますが、EJUでも、試験のたびに、カンニングの噂がささやかれます。やらなきゃ損と思っている受験生もいるとか。“いい大学”に入りたい気持ちはわかりますが、そんな無理をして入った大学で自分のためになる勉強ができるのでしょうか。日本人受験生にしても留学生にしても、先の長い人生なのですから、若いからこそ、ロングスパンで物事を考えてほしいなあ。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

後がない

1月20日(木)

1月期の受験講座は、6月のEJUを目指す学生たち向けの授業が始まります。化学は周期表、物理は等速直線運動と、基礎に戻ります。その一方で、先学期まで受験講座を受けていた学生たちの受験シーズンでもあり、面接練習などを依頼されることもよくあります。

受験講座から戻ると、Lさんが待っていました。親がどうしても国立大学と言うので、P大学、D大学、E大学に出願します。同じような学部学科に出願したならともかく、EJUの持ち点を基準に、興味の向かうままに学科を選んだので、生物やら機械やら、ベクトルが全くそろっていません。そういった学科で何が勉強できるかよくわからないから教えてくれという相談でした。

出願前ならそもそも論に立ち返って出願先の再考を促すところですが、今週末に面接という大学もあるくらいですから、そんな悠長なことは言っていられません。各大学のサイトを見せながら、見ておくべきポイントを教えていきました。こんなことは夏ぐらいにやっておくべきなのですが、その頃のLさんは私たちを全然頼りにしていませんでした。ぎりぎりになってから来られても、可能な指導は限られています。

Lさんの次はMさん。来週早々S大学の面接があるので、集中的に面接練習をしたいとのことでした。落ちたら帰国という背水の陣を敷いているのですが、Mさんの出願した学科はS大学の中でも屈指の競争率の学科です。それに加え、Sさんは11月のEJUで何かやらかしたらしく、実力よりもはるかに低い成績に終わっています。正直に言って、勝ち目の薄い勝負です。そういうことは承知の上で、やれるだけのことはやり、悔いが残らないようにしておこうというのがSさんの考えです。決意が固いようなので、引き受けることにしました。

Sさんと同じく、全滅だったら帰国すると言っていたWさんがT大学に合格したという知らせが聞こえてきました。Wさんも国立をいくつか受けると言っていましたから、面接練習が回ってくるかもしれません。なんだか忙しくなってきました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

 

%の争い

1月18日(火)

今学期は、大部分の学生が3月で卒業していきます。進路が決まっている学生はそのまま4月から進学先に通えばいいのですが、現時点では未定の学生も少なくありません。その中の一部の学生は、入管が打ち出した特例により、4月以降もKCPで勉強します。入国が大幅に遅れたために計画通りの日本語学習ができなかった留学生への救済措置です。これにより、日本語学校の在籍期間が2年を超えても勉強が続けられるようになりました。

しかし、この救済措置は誰でも受けられるわけではありません。出席率が低かったら、進学先が決まらなかったのは、日本語力が足りなかったからではなく、日本語習得に対する熱心さが足りなかったからでしょとされてしまいます。日本語学校の世界は出席率がすべてを取り仕切っていますから、当然のことです。

午後、Qさんが職員室で先生方と話していたのはその件です。これから受験する大学もありますが、本人的にはもう1年勉強して“いい大学”に進もうと思っているようです。しかし、お手軽に休んだツケが回ってきました。救済してもらえないおそれもある数字になっていました。

国費留学生87名の入国が認められるそうです。日本に入国できないまま卒業修了の時期が迫ってきた留学生たちが対象です。私費留学生、それも日本語学校への留学生の入国が認められるのはいつのことでしょう。そういう人たちのことを考えたら、Qさんは今日本にいるのですから、とても恵まれています。その好条件をみすみす逃しちゃうのかなあ。そういう危機的状況だということがわかっているのでしょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

久しぶりの超級クラス

1月12日(水)

今学期から、午前クラスの始業時刻を30分遅らせました。9時だとラッシュのピークにかかりますが、9:30始まりなら山場を越えていますから、多少なりとも密が避けられます。午後のクラスは、逆に、始業を30分早めました。そうすると、学生の帰宅時間帯が夕方のラッシュの直前になります。学生の安全を考えての変更ですが、学生たちは、「朝寝坊できていいや」とか「早く帰れてラッキー」とかって思っているだけかもしれません。

最上級クラスに代講が生じたので、そこに入りました。さすが最上級クラスだけあって、先学期の中級クラスとは日本語の通じぐあいが全然違います。ビザや日本語学校の在籍期間に関する複雑な話も、1回説明しただけで理解してくれました。

学生資料を見ると、このクラスの学生はみんな“いい学校”に進学することを目標に勉強してきました。すでに目標を達成した学生も、この3か月に勝負をかける学生もいます。いずれにしても、日本人の大学生や大学院生の中でも優秀な人たちに伍して勉強や研究をしていくことになります。とすると、進学したらおちおち日本語など勉強している暇などありません。

学問は議論です。議論とは相手の意見を正確に理解し、自分の主張を明確に相手に伝えることです。その繰り返しでお互いの考えが深まり、アウフヘーベンが生まれ、高みに達することができるのです。一方的にまくしたてたり、相手の言い分に聞き耳を立てたりしているだけでは、高い授業料を支払って高等教育の場に身を置く意味がありません。

だから、卒業式までにそういうことができるだけの日本語力を付けていってもらいたいのです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

暗黙の指定席

12月13日(月)

いつものように教室で授業の準備をしていると、いつものように出席率100%のBさんが入ってきました。時々欠席しますが来るときは早いQさん、教室にかばんを置いてよく廊下で朝ご飯を食べるSさんなどは来ましたが、始業の9:30になってもLさん、Kさん、Cさんなどが来ませんでした。いつもより幾分スカスカの教室で授業を始めました。

教室は指定席ではないのですが、面白いことに、一番出席率のいいLさんがいつも座っている席は空席のままでした。他の学生が比較的よく座る席はなんとなく埋まりましたから、Lさんがみんなから一目置かれていることが、図らずも見える化されたかっこうでした。

担任のH先生のところには、LさんやKさんから体調不良で休むという連絡が入っていました。胃の調子が悪いとのことだそうですから、どうやら受験ストレスのようです。この2人に限らず、今シーズンはぎりぎりの日本語力で勝負を挑まざるを得ない学生が多いです。Lさんは先日のJLPTでN1に受かったら第1志望の大学院に出願すると言っていました。Kさんはすでに受験していますが、面接練習でかなり厳しい指導を受けました。これからもまだ受験が続きますから、胃が痛くなってもおかしくはありません。

Mさんは最近休みが増えました。大学院への出願書類を作成するので手いっぱいだと聞いています。Mさんもきわどいところで合否が決まりそうですから、気が気ではないのでしょう。でも、Mさんの場合は休み癖がついてしまったような気がします。出席率の落ち込みが激しいと、ビザの問題が出てきます。

Mさんの“指定席”は、ごく普通に埋まっていました。早く教室に戻らないと、取り戻せませんよ。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

ご専門は?

12月7日(火)

午後、職員室で仕事をしていたら、上級担当のA先生に呼び出されました。クラスのEさんの話を聞いてくれと言います。Eさんは、国立大学の理科系学部を狙っています。どこに出願するかの最終段階なのですが、Eさんの勉強したいことがA先生に伝わりません。それで、私にお呼びがかかったというわけです。

Eさんは、自分がやりたいことを国の言葉で表し、それをネットで翻訳し、その日本語訳をA先生に言いました。しかし、その単語は、A先生がご自身の辞書で調べても全く引っ掛かってきませんでした。つまり、日本語訳と言いつつもさっぱり日本語になっていませんでした。そこで私がEさんから事情聴取し、本物の日本語でA先生にお伝えすることになったのです。

Eさんがやろうとしていることは、確かに世界でまだ誰も成功していないことです。しかし、それを全然日本語で説明できないというのはどうでしょう。上級の学生としては物足りないものがあります。そんなことより、この程度のことが日本語で説明できないとなると、面接が危ないです。Eさんの志望校は難関校ですから、こんな大きな弱点を抱えていては、望み薄と言わざるを得ません。

今シーズンは、Eさんのように説明力、表現力が落ちる学生が多いように思えます。オンライン授業のせいにしたくはありませんが、一番の鍛えどころの夏に、手元に置けなかったことが響いているように思えてなりません。

Eさんの後で相談を受けたCさんは、自分のEJUの持ち点からすると、夢のような志望校を挙げています。がっちり進路指導できていたらなあと思いました。

受験シーズンは、待ってはくれません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ