Monthly Archives: 7月 2017

趣味はスポーツです

7月5日(水)

先週から、アメリカの大学のプログラムで来ている学生たちが勉強しています。お昼を食べて、午後の仕事に取り掛かろうとしていたころ、その中で一番下のクラスの学生たちが、インタビューに来ました。習いたて、覚えたての日本語を駆使して職員室にいる教師に話を聞くというタスクはどこのレベルでもやりますが、一番下のクラスはようやくインタビューできるだけの日本語をどうにか覚えたという段階です。

「はじめまして。〇〇です。どうぞよろしく。失礼ですが、お名前は?」という学生の挨拶で始まります。この挨拶がスムーズに言えるかどうかが最初のチェックポイントですが、「私は金原です」と答えて、“きんばら”、せめて“kinbara”とメモできないようだと、実力的にかなり怪しいと覚悟しなければなりません。

ここまでである程度(かなりの程度?)学生の実力を判断し、次の質問を待ちます。「趣味は何ですか」ときたら、実力に応じて、「スポーツ」「音楽」「旅行」などと答えます。間違っても「特殊な地層を見て歩くことです」などと口走ってはいけません。話がそこで終わってしまいますから。

趣味はスポーツと答えると、次は「どんなスポーツが好きですか」ときます。これまた実力に応じてゴルフ、サッカー、ジョギング、バスケットボール、野球などという答えを用意しておきます。でも、今回の学生は、なぜか「私はスイミングが好きです」と自己主張する人が多く、その中の1人は乏しい語彙とジェスチャーを織り交ぜて、自分は何千メートルも泳げるんだと訴えてきました。

そして、準備した質問を聞き終わっても所定の時間にならないとなると、苦し紛れの質問が出てきます。趣味の話の後、突然、「昨日の夜、何を食べましたか」ときかれました。「トマトとヨーグルトを食べました」は聞き取れないでしょうから、「ラーメンを食べました」。そうすると、「私もラーメンが好きです。ラーメンはおいしいです」と、会話が続きます。「冷やし中華」じゃ、こうはいかないでしょうね。

そんなこんなをしているうちに、時間が来ました。学生たちはほっとした表情で「ありがとうございました」と言い、次のインタビューターゲットへと向かいました。

いいとこ取り

7月4日(火)

養成講座の授業をしました。今学期と来学期は養成講座と日本語の通常授業と受験講座の3種類の授業を並行して進めることになります。使う脳みその場所が少しずつ違うので、忙しくもありますが、気分転換にもなります。

私はいろんな職場で働きましたが、どこへ行ってもつぶしが利くというか何でもこなすというか、何か1つをどこまでも深く追究するという仕事のしかたをすることがありませんでした。それはそれで面白いのですが、元研究者の端くれとしては、心のどこかに1つの分野を掘り進みたいという気持ちはあります。

私が養成講座で担当しているのは文法を中心とする科目で、掘り下げようと思えばいくらでも掘り下げられる分野です。独自の文法理論を打ち立てようなどとは思っていませんが、自分なりに日本語文法を矛盾なく理解したいとは思っています。私にとって日本語教師養成講座は、その成果の発表の場でもあるのです。

ですから、私の授業は、諸先生の理論のいいとこ取りをして、さらに私の実感を加え、それらを私の独断で組み合わせて、1つの体系っぽく仕上げたものです。ある先生の理論に沿って教えていこうと思っても、どこかに納得のいかない部分が生まれ、それを何らかの形で補っていくうちに、こんな形になってしまいました。

じゃあ、すべてのことが丸く収まっているのかといわれると、そうでもありません。疑問に思いつつ教えている部分もあります。日本語がわからない学習者に教えていく分には大きな問題は生じないだろうと頬かむりをしている項目も、実はあります。それがどこかは、学生には秘密ですけどね。

明日も授業です。授業を楽しみたいです。

1+1=3

7月1日(金)

日本語教育能力検定試験に備えての勉強会が開かれています。O先生やF先生が中心となり、出題される各分野について理解を深めていこうという主旨です。夏から秋にかけて鍛えていけば、10月の本番で大きな力が発揮でき、合格につながることでしょう。

私がこの資格を取ったのは20年も前の話で、養成講座に通っているときです。O先生やF先生はようやく物心がついたころでしょうか。私も、やはり、その養成講座が主催する対策講座のようなものを受けました。自分でテキストを読み込んで勉強してもよかったのですが、それだと要点を絞り込めないものです。また、自分の力がどのレベルなのかもつかめず、のんびり構えてしまったり必要以上に焦ってしまったりして、不首尾に終わる心配もありました。

今とは試験の内容が幾分異なりますが、文法や語彙や音声などの日本語そのものに関する分野と、広い意味での言語学、それから世界と日本の地理・歴史に関わるところは自信がありましたから、そこでがっちり点数を稼ぎ、教えた経験がないと答えにくい部分での失点をカバーしようという作戦を立てました。幸いにもそれが奏功し、合格できたという次第です。

こういう作戦を立てられたのも、周りと自分を比較できたからです。自分の強みと弱みがわかったので、強みをさらに強化することで弱みを補えばどうにかなりそうだというのが見えてきました。日本語教育能力検定試験は、ある基準点を取れば合格というのではなさそうで、それと同時に上から20%ぐらいに入っていなければならないようでしたから、“孤独な戦い”は独りよがりにつながりかねない要素がありました。

勉強会に参加している皆さんはどうでしょう。1+1が3になればいいですね。