Monthly Archives: 9月 2020

にわか雨に降られて

9月11日(金)

密にならないうちに早めにお昼を食べに行こうと、職員室の窓から空を見上げると、いやな色の雲が広がっていました。念のために折り畳みを持って出かけました。

天ぷらをいただいて、食休みに昨日から電車の中でも読んでいる新選組の短編集を少し読んで店から出ると、ちょうど雨が降り出したところでした。アスファルトに当たった雨粒が跳ね上がるほど強い降りで、傘を持っていない人たちが雨宿り先を探して走り回っていました。折り畳みが無駄にならなかったのはいいのですが、もう少し小説を楽しんでいればよかったなあと思ったほどのにわか雨でした。学校まで5分かかるかかからないかでしたが、ズボンの裾はびっしょり濡れました。

雨は学校に着いて程なくやみました。30分も降っていませんでしたがけっこうな雨量だろうと思って気象庁のページを見ると、東京(千代田区)、練馬、府中、世田谷の新宿を取り囲む4地点のアメダスには降水が記録されていませんでした。雨雲の動きを見てみると、確かに新宿付近を強い雨雲が南から北へ通過していました。そこで、神奈川県の日吉、相模原中央、埼玉県のさいたま、越谷のアメダスの観測値も見ましたが、やはり降水量は0.0ミリでした。つまり、雨雲はアメダスの計測点を巧妙に避けて移動したため、私が遭遇したにわか雨は、気象庁のデータ上は、存在しなかったことになっているのです。

へーと思っていたら、TさんがK大学を受けるという噂が流れてきました。そんなそぶりは全然していなかったのに。毎年、こういう教師にとって寝耳に水の受験があります。受験日直前に面接練習をしてくれと言われて初めて気付き、すでにしょうもない志望理由書を出願書類として提出した後で、絶望的な気持ちで特訓するというパターンです。今回はどうにか事前にキャッチできましたが、中にはお昼の雨雲みたいに情報網をすり抜けて、落ちた時点で発覚というのもよくある話です。今年の入試は何があるかわかりませんから、こういう例はなくしたいです。

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難物

9月10日(木)

HさんはM大学のコミュニケーション関連の学部を目指しています。日本以外の外国でも暮らしtことがあり、異文化コミュニケーションに興味があるので、大学でもその方面の勉強をしたいと言っています。

ですから、「国を離れて外国で暮らした時、どんなところに異文化を感じましたか」と聞いてみました。すると、「食事と文化と生活方法に感じました」という答えが返ってきました。「もう少し具体的に言うと?」「A国の人は早起きでした。日本は通勤電車が混んでいます」という調子で、議論がかみ合いませんでした。こんな基本的なツッコミで焦点がぼやけた答えしかできないようでは、M大学に手が届きそうもありません。

異文化コミュニケーションという響きのよいカタカナ言葉にあこがれているのでしょう。あこがれも専門分野を選ぶきっかけにはなりますが、あこがれのままで熟成させることなく入試に臨んだら、合格の目はありません。Hさんは、これから出願までの間に、異文化コミュニケーションの何たるかを勉強し、大学で何を学ぶか自分の頭の中で組み立てなければなりません。

ロボットを作りたいというだけのCさんも、議論が深まらない学生です。どんなロボットかと聞いても要領を得ませんし、機械工学科で機械を勉強したいと訴えられても、聞き手は困ってしまいます。Cさんの頭の中には何かがあるのでしょうが、それがこちらには漠然としか伝わってきません。こちらも、徹底した脳内改革が必要です。

出願の山場に向かって、この手の学生が続々と現れてきそうです。繁忙期到来です。

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手ごたえがあるような

9月9日(水)

私の超級クラスの授業はオンラインです。学生を油断させないために、まず、次から次と指名します。すると、中には指名されてからプリントや教科書を探し始める学生もいます。Hさんなどは、毎週のように部屋でガサゴソやっています。とはいえ、多くの学生はきちんと予習して授業に臨んでいます。

指名するとだいたい正しい答えが返ってくるのはいいのですが、指名しないと答えが返ってこないことがよくあるのは問題です。チャットを使って発言するのもCさん始めごく限られています。まして、マイクを通して話し掛けてくる学生など、1回の授業で1人いればいい方です。オンライン授業の方が発言が多いという教師の声がよく紹介されていますが、私のやり方が悪いのでしょうか、実感がわきません。

ZOOMのブレークアウトセッションも、毎回利用しています。3人ぐらいのグループにすると、みんな意見を言い合うようです。セッション終了後にどんなことを話したか聞くと、こちらの狙いから多少外れていることがあるにせよ、実のある議論をしていたことがうかがわれます。お互いに刺激し合って、1人では湧き上がらなかった発想を手にすることもできるようです。教室で3人組でディスカッションするより高いレベルに到達しているのではないかと見ています。

学生たちはどう思っているのでしょうか。それこそ顔を合わせる機会がありませんから、聞いてみることすら難しいです。ZOOMに映し出される学生の顔は小さすぎて、表情もなかなか読み取れません。多少なりとも学生のためになっていると信じて、これからも授業を進めていきましょう。

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木陰の秋

9月8日(火)

台風10号は秋を呼び込む台風ではなかったようで、日本海側はフェーン現象のため猛暑日だらけです。東京も最高気温34.2度で、猛暑日をかろうじて免れた程度でした。昨日の夜、帰宅するときは、肌にまとわりつくような蒸し暑い空気の層が感じられませんでした。このまま涼しくなるのかなと思いきや夜中に気温が上がったらしく、今朝出勤するときは、空の暗さ以外真夏のままでした。

お昼に外に出た時も、蒸し暑さは変わりませんでした。しかし、木陰に入ると快適だったのです。花園小学校の校庭の端っこにある桜の木の下で、しばらく本を読んでいました。御苑の木陰の芝生に寝転がったら、受験講座の直前まで昼寝しちゃったんじゃないでしょうか。

午後は、K先生が受験相談の学生を連れてくることになっていたのですが、相談しなくてもよくなったみたいで、時間がぽっかり空きました。ですから、先週A先生からもらったT大学の過去問を解いてみました。あさっての受験クラスの練習問題に使えないかと思ったのですが、うーん、無理そうかな。

第1問が古典がらみの問題で、今までの授業で全然触れていない内容が出題されていました。紀貫之の書いた日記なんて、このクラスの学生は誰も答えられませんよ。第2問はわりと素直な文章で、これならいけるかもしれません。でも、筆答問題がなくて、ちょっと歯ごたえが足りないような…。他に適当な教材がなかったら、これを使うことにしましょう。

受験講座が終わり、日がだいぶ傾いても、まだ暑いですね。でも、気象庁の予報によると、今週末か来週には平年並みの気温になるそうです。とすると、台風10号は大きな気象の流れの中で秋のきっかけを作ったと言えるのかもしれません。

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台風10号は去ったけど

9月7日(月)

台風10号は、大騒ぎをした割には大きな被害をもたらさずに九州の西の海上を通り過ぎていきました。いや、大騒ぎして避難したり建物の補強をしたり交通機関を止めたりダムの放流をしたりしたため、被害が抑えられたと考えるべきでしょう。それでも土砂崩れなどによって人的被害が発生しました。7月の豪雨は、大騒ぎする以前に洪水になってしまったため、多数の死傷者が出たのです。

事前に「危ない、危ない」と言って何らかの手を打ち続ければ深手を負わずに済むというのは、受験の世界でも同じです。毎年卒業式間際までどころか卒業式を過ぎてからも試験を受けまくる学生は、スタートが遅い学生か自分の実力を直視しない学生です。

Kさんは9月になったのに自分のしたいことがよくわからないと言います。漠然と理科系、その中で電気か機械かなあという程度です。非常に危ない状況です。いくつかの大学を見繕ってKさんに示すことにしました。半分強制的に考えさせないと、最後まで残ってしまうでしょう。

Sさんはすでに志望校を数校選んでいます。その選び方も、難易度を散らしていますから理にかなっています。ただ、大学によって微妙に志望理由を変えなければならないところに苦労しています。やりたいことは決まっていますが、それと完全に一致する大学学部学科はほとんどなく、やりたいことのある部分に焦点を合わせて志望理由を書くということをしていくわけです。でも、道筋は見えていますから、油断さえしなければ、年末ぐらいまでにはきっと収穫があるの8ではないかと見ています。

明日はCさんの進学相談を受けることになりました。CさんはSさんに近い部類ですから、出願校の組み合わせについての話になりそうです。これから、私のところには続々と台風が襲ってきそうです。データを整えて準備しておかなければ…。

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嵐の前の静けさ

9月5日(土)

進学指導用の資料を作るために、いくつかの大学のデータを調査・比較しました。個々の大学の学部や学科の構成は、外からもわかりやすいというか、目にする機会も多いですから、“うん、そうだね”という程度です。でも、何校かの学部や学科を並べると、改めて新しい学部が増えたなあと思いました。

私が受験生だったのは40年以上も昔ですから、その頃は工学部とか経済学部とかという古典的な学部学科名ばかりでした。その代わり、名前を聞けばどんな勉強をするかだいたい見当がつきました。しかし、最近は一筋縄ではいかない名前の学部学科が増えました。また、似たような学部名でも勉強する内容がだいぶ違うという例もあります。学生に進路を誤らせないようにするには、指導する側もしっかり勉強し、データをアップデートしておかなければなりません。

それから、学部卒業後の進路に考えさせられました。まず、文科系学部の大学院進学率の低さです。国立大学ですら1桁%にとどまります。文科系大学院生の大半が留学生だという話はよく聞きます。理科系も、よく調べてみると思っていたよりも低く、50%程度でした。日本は先進国の中でいちばん学歴の低い国だというのも事実かもしれません。

新しい名前の学部が増えたのは、学際的分野の研究が進んだからでしょう。文学とか農学とかという前世紀のくくりでは収まらないほどに研究範囲が広がったのです。でも、それなら、学部の4年間だけではその範囲を学びきることなんてできないんではないでしょうか。「広く浅く」では、大学は教育の責務を果たしたとは言えません。また、学ぶ側も真に価値のある教育を受けたことにはなりません。4年のうち1年ぐらいは就活に費やされるんですから、なおさらです。

東京は、台風10号の影響もなく、暑いですが穏やかな1日でした。大きな嵐が近づいているのにのうのうと暮らしているあたり、低学歴なのに気づかず世界と競争することになる日本のようです。

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次の一手

9月4日(金)

XさんはA大学の指定校推薦の校内審査に応募したのですが、残念ながら通りませんでした。推薦してもいいレベルでしたが、推薦枠が少なく、出席率でも成績でもXさんを上回る学生がいたため、落とさざるを得ませんでした。

通ったGさんには指定校推薦で進学することの重みを説き、決して楽な入試制度ではないことを言って聞かせました。Gさんは手堅い性格ですから、浮かれすぎて失敗することはないでしょう。これからは入試の面接の準備をしていきます。

Xさんに対しても、落として終わりという冷たい仕打ちはしません。すぐさま進学相談に乗りました。Xさんは去年の11月のEJUを受けていませんから、今、出願するとなると、EJU不要で行ける大学を選ばなければなりません。そういう大学はあまり多くありませんが、Xさんはその中からN大学を選び、出願準備を始めました。

指定校推薦の被推薦者に選ばれなかったことで、Xさんは焦りと不安を感じているようです。早く合格を決めたいと言います。N大学のほかにも11月のEJUの前に出願・受験できる大学を知りたいとのことでしたから、私も調べてみました。2校ほど、Xさんの勉強したいことが勉強できそうな大学が見つかりましたから、知らせてあげました。「早く動け」とは常々言ってきましたから、それを実践しているXさんの力になってあげたいです。

今年の入試はイレギュラーですから、どこでどんなどんでん返しがあるかわかりません。番狂わせもきっと起こるでしょう。でも、「強いやつが勝つ」を信じて、こういう時こそ本当の力をつける授業をしていきたいです。

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理系脳の構築

9月3日(木)

このところ、理科の受験講座ではEJUの過去問をやっています。11月8日の本番までの授業時間数を考えて、先月末から各科目毎週1回分ずつ取り組んでいます。今までは10月になってから始めましたが、今年は事実上11月の試験の一発勝負ですから、少しでも早く試験に慣れておいてもらいたいのです。

もう一つ、過去問をやりながら、私の授業で説明が足りなかった部分や学生の理解が浅かった部分を補っていくという意味もあります。授業の時と同じスライドを見せることもありますが、一通り勉強した後で見ると、初めて見た時とは違う何かを感じるかもしれません。「ああ、そうか! これはこういうことだったのか!」「あれとこれはこういう関係があったんだ!」なんていう発見が必ずあるはずです。初めての時は、その項目のごく近傍しか見えていなかったのが、全体を勉強した後で復習すると、鳥瞰図的に見えてくるものです。

復習では、教える方も、学生にとって未習事項がなくなっていますから、意識的に他の項目と関連させて説明することができます。そうすることによって、各科目の全体像が立体的に浮かび上がってくると思います。これは、EJU対策というだけでなく、理科全体に思考回路を張り巡らすという意味も持っています。理科の知識が点在している状態から、それらが有機的につながった状態へとグレードアップしていくのです。

学生たちはまだ手ごたえを感じていないでしょうが、今から種をまき続ければ、11月にはきっと確かな実りを手にすることができるでしょう。

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東京で働く

9月2日(水)

3密を避けるため、満員の通勤電車に乗らなくてもいいような働き方を求める人が増えてきました。働き手が会社まで通わなくなるだけでなく、会社そのものが働き手を集めなくなったり、オフィスそのものを東京の外へ持って行ったりする例も見かけられます。久しく言われ続けてきた東京一極集中が、これからいくらかでも是正されるかもしれません。

超級クラスの学生にそんな記事を読ませて、意見交換をしてもらいました。このクラスの学生は大学院進学の学生が多く、これから受験という学生も、2年後には就職が決まっているかもしれません。そのくらいのタイムスパンなら、現今のこういった潮流がそう弱まっているとは思えません。

それで学生たちはどう考えているかというと、大半が東京で就職したいと言います。友達がいるから、生活の基盤があるから、便利だから、刺激的だから、おもしろいから、…いろいろな理由が挙がってきましたが、意外と考え方が古いなあと思いました。半世紀近く前、田舎の高校生が東京で働きたいと言った時の理由と大差ありません。木綿のハンカチーフの時代ですよ。

最近はやっている「ワーケーション」については賛否が分かれました。魅力を感じるという学生もいれば、仕事と余暇の間にはきっちり線を引きたいと考えている学生もいました。ただ、東京でワーケーションしたいというのはどうなのでしょう。夜な夜な遊びほうけるつもりなのでしょうか。

学生たちは目の前の受験で精一杯に違いありませんが、少し遠くの未来を見通すことが、気分転換にもつながるでしょうし、やる気の源泉にもなるでしょう。たまには息抜きも必要ですよ。

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泣く前に

9月1日(火)

K先生の代講で、中級の大学進学クラスに入りました。大学進学を目指しているにしては勉強のしかたが甘いと、このクラスに入っている先生方から聞かされていました。授業をしてみると、予習をしていなかったり、していても通り一遍だったりで、確かに先生方のおっしゃる通りだと思いました。

どうしてこうなったかというと、他流試合が不足しているからだと思います。このレベルの学生は、例年なら、6月のEJUの結果にショックを受けて、尻に火が付いているはずです。しかし、今年はそれがなく、その代わりにいくつかの外部試験を受けるように勧めてきましたが、受験者数はそれほどでもありませんでした。その試験の結果が大学入試には使えないからでしょう。そうじゃなくて自分の力を知るためだと力説しても、学生たちの心にはなかなか響きません。唯一、校内実力テストがほぼ全学生の受けたテストですが、「校内」なので、その結果のインパクトは今一つ弱いようです。

授業中にちょっと突っ込んだ質問をするとすぐ答えに詰まるというのが気になりました。私の質問のしかたが、K先生をはじめとするこのクラスの先生方とは違うという面もあるでしょう。でも、漢字の語彙として出てきた「満潮」の対義語ぐらいは調べてきてほしかったなあ。

おそらく、このクラスの学生たちは、かなり高いレベルの大学を志望校としているに違いありません。このまま放置しておいたら、私大入試第一陣の結果が出るころには、いたるところで悲鳴が上がっていることでしょう。最近は言ったいろいろなクラスで同じようなことを感じています。学生たちにそうさえないよう、手立てを考えなければなりません。

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