Monthly Archives: 12月 2020

密、マスク

12月14日(月)

今年の漢字は「密」になりました。私もたぶんそうじゃないかなあと思っていました。この字の活躍ぶりを思えば当然ですね。「三密」も、最初の頃は「山蜜」などと、とんでもない変換がなされましたが、今では“さんみ”打ち込んだだけで候補に挙がってきます。

午後からCさんの面接練習がありました。教室に2人だけですから、全然密ではありません。しかし、マスクをしているため、Cさんの声がとても聞き取りにくかったです。Cさんの声は、もともと遠くまで響く質ではありません。声の大きさも、さほどではありません。それにマスクが加わったものですから、2メートルぐらいの距離でしたが、かろうじて話の内容が理解できる程度でした。面接官が私よりも年寄りで耳が遠かったら、聞こえないということになりかねません。そして、往々にして、そういう年寄りが合否決定の場で大きな力を持っていることが多いのです。

でも、Cさんの声が確実に聞き取れる距離となると、3人ぐらいの面接官Cさんが顔を突き合わせるような、まさに密そのものの状態になってしまいます。ですから、Cさんには、マスクの中で口を精一杯動かして、可能な限り声をこもらせないようにと指示しました。どんなに素晴らしいことを語っても、相手の耳に届かなければ何も言わないのと同じです。

Cさんは、対面ではなくオンライン面接なら、マスクをしなくてもいいですから、力が発揮できるのではないでしょうか。オンラインなら密の心配もありませんしね。そういえば、今年は集団面接って行われているんでしょうか。あれも、考えてみれば、けっこうな密ですよね。

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想定外に負けるな

12月12日(土)

受験講座もなく、学生が来ないはずの土曜日ですが、10時過ぎにスーツ姿のJさんが来ました。いつものラフなスタイルとは打って変わって、営業をかけに来たどこかの会社の人と言っても何ら不思議ではありません。Jさんは、N大学の面接試験が対面からオンラインに変更されたため、学校の教室を借りに来たのです。おとといの夕方、使用予定の教室でカメラテストのようなことをして、面接の会場としてふさわしいと認められ、本番を迎えたという次第です。

大学入試のオンライン面接をつぶさに観察したいのはやまやまですが、会場の教室に受験生本人以外の人がいることが知られたら、不正行為とみなされてしまうでしょう。また、教室の外から、耳をそばだて娜からのぞき込むなどというのも、お行儀もよくないし、Jさんに余計なプレッシャーをかけてしまうことにもなりかねません。ですから、私は1階の職員室でJさんの面接試験が終わるのをずっと待っていました。

30分ほど経った後、「先生、終わりました」とJさんが。緊張が解けたからでしょうか、すっきりした顔をしていました。「どうだった?」と聞くと、想定外の質問が2つあったとか。うなだれたり目がおどおどしたりしていませんから、少なくとも志望理由などの王道の質問にはきちんと答えられたのでしょう。想定外と言っていた質問も、内容を覚えていましたから、パニックになったとかということはなさそうです。果報は寝て待てということにしておきましょう。

来週も、月曜日から面接練習です。今年は大掃除の日まで、学生の受験指導が続いそうです。

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2年ぶりぐらいかな

12月11日(金)

久しぶりにレベル1の授業に入りました。待機期間明けの新入生がぽつりぽつりと来始め、レベル1のクラスを増やすにあたり、私も駆り出されたという次第です。

今学期の新入生は、日本の入国制限によってなかなか日本へ来られず、散々じらされた挙句にホテルに来日後2週間も監禁され、どうにかこうにかKCPの教室にたどり着いたという学生たちです。そのためなのか、勉強しようという意欲は今までの新入生よりも強いと感じました。途中の休憩時間には、今までの勉強で疑問に思っていた事柄を、一斉に質問してきた感がありました。日本語の勉強に飢えていたんだなあと思いました。

生の日本語が聞ける楽しみもあるのでしょうか。発音練習、リピート、コーラスもまじめにやっていました。でも、耳が遅れていること、口が回っていないことは覆うべくもなく、発音のやり直しや、私が学生の言葉が聞き取れずに聞き返す場面も少なくありませんでした。

何でも吸収しようとする、教師にとっていい学生たちではありますが、実力の絶対値は知れたものです。大学進学希望の学生たちは、来年の6月、まだ初級の段階でEJUを受けなければなりません、その成績を持ち点として、来年の今頃ぐらいまでの入試を戦うのです。なんともつらいものがあります。

他の日本語学校も似たりよったりだとすると、存外、日本語力の伸び代を高く評価してもらえて、今私が考えているよりも好ましい結果が得られるかもしれません。来週は、来学期の受験講座の説明会があります。この教室の学生たちも参加します。

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お手本になれたかな

12月10日(木)

日本語教師養成講座の受講生Mさんが、実習生として私のクラスに入りました。これから1週間、授業を見学し、時には参加し、最終日には授業をします。実習生は、養成講座の講義の一環として、今までに何回か授業を見ていますが、自分が授業をやることを前提に見るとなると、自ずとポイントが違ってきます。

Mさんは、授業前に、来週担当する授業の教案を提出しました。しかし、それは実際の授業を知らない教案で、教師に都合よく授業が進んでいく形になっています。そういう教案になるのはしかたがありません。神様みたいな学生ばかりだったらその通りに進められるでしょうが、実際に教室にいるのは煩悩だらけの学生です。その学生をどのように引っ張って目標地点まで連れていくか、それを学ぶのがこの実習です。

だから、私の役回りは、Mさんの教案の参考になるような授業をすることです。学生への目の配り方、指名のしかた、そんなことを見せていきました。私にしたって、常に理想的な授業をしているわけではありません。考えた通りに進まなかったり、想定外のことが起こったり、日々薄氷を踏む思いです。そういうのも含めて、全部見てもらって、Mさんの血肉にしてもらおうと思っています。

さて、私の授業を観察したMさんはどうだったでしょう。実習ノートを見る限り、今までの授業見学とは違う気付きがあったようです。それをどのようにご自身の教案に生かしていくかが、直近の課題です。明日はK先生の授業を見学することになっています。K先生は私とは違うスタイルの授業をなさるでしょうから、そこからもまた、得るものがあるに違いありません。多くのものを得て、成長していってもらいたいです。

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難題

12月9日(水)

午後から進学関係のお仕事が2件。まずはJさん。高校の時から有機化学が好きなので、大学でも有機化学を勉強したいといいます。でも、有機化学のどの分野を勉強すればいいですかという、何をいまさらという感じの困った相談です。大学院に進学して日本で就職したいそうですが、そういう外枠しか決まっていません。「先生のおすすめは何ですか」と聞かれましたが、居酒屋のメニューを決めるノリで将来を決めちゃいけません。

とはいえ、自分で考えろと突き放したら、Jさんは何もできないでしょう。ですから、有機化学の範囲で、研究対象としてこれから有望そうな分野をいくつか挙げました。そこから先は、自分の国のサイトでいいからよく調べて、勉強の方向性を決めるように指示しました。そうしてやっと、面接対策のスタートラインに立てるのです。

次はZさんの面接練習。出願した大学の面接試験がオンラインに変更されたので、zoomを使っての面接練習です。オンラインで、授業はもう何回もしましたが、面接練習は私も初めてです。やってみると、視線を合わせにくいので、やりにくかったです。対面だと、面接官の目を見て話せとか顔全体に視線を注げとか指導しますが、カメラ越しだと、本人の意図には無関係に、カメラの位置によっていかにも目をそらしたようになってしまいます。また、照明の当たり具合によって、暗い顔つきに映ってしまうこともあります。

これらは本質的なことではありませんが、面接官に与える印象はおろそかにできません。ボーダーライン上なら、そのわずかな差が天国と地獄の分かれ道となります。考慮しなければならないファクターが増えて受験生には気の毒ですが、嘆いているだけでは明るい未来は開けません。

対面の面接練習なら、気づきをメモして渡すこともありますが、オンラインはそういうわけにもいきません。Jさんには、メールでフィードバックしておきました。

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意外

12月8日(火)

日本語教師養成講座の受講生が、私のクラスへ来て読解の授業に入ってくれました。テキストを一緒に読んで、受講生がテキストの背景にある日本文化を説明したり、テキストの内容について議論したりしました。

このクラスは大学受験の学生を集めて構成しており、しかも私の日はひたすらゴリゴリ勉強するばかりで、学生たちはこういうスタイルの授業に慣れていません。ですから、受講生の意欲が空振りするのではないかと気をもんでいました。

しかし、それは杞憂だったようで、時節柄、口角泡を飛ばすことのない程度に議論をし、普段口数の少ない学生も口を開いていました。受講生1名に対して学生2、3名でしたから、全員がなにがしかしゃべらざるを得なかったという面もあります。でも、学生たちが潜在的に、あるいは本能的に持っている話したいという意欲を、私の授業は抑え込んできたこともまた事実でしょう。

授業の最後に、各グループで話した内容を1分程度にまとめて発表してもらいました。1分でも時間を持て余すかなと心配していましたが、どのグループも1分を少々オーバーするくらい話しました。だらだらと話して1分を超えたのではなく、中身が詰まった1分超えでした。学生たちの力を見くびっていましたね。大変失礼いたしました。

授業のスタイルを変えなきゃとも思いますが、入試に通ることを第一に考えれば、“ゴリゴリ”を続けるのが、結局、学生たちのためなのかもしれません。4月から続けてきた成果が見えてき始めたところですから。まあ、私の日以外は話す活動もしているようですから、そちらの成果が現れたと考えれば、納得できないわけでもありません。

授業が終われば、進学相談やら面接練習やら。やっぱり、受験生クラスなのです。

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次の学期で

12月7日(月)

先月から、入国後の待機期間を終えた新入生が来始めています。レベルテストをしてレベルを決定するのは今までと変わりありませんが、今回は学期の途中から既存のクラスで授業を受け始めるケースがほとんどですから、私たちも手探りの部分があります。もはや期末テストまで2週間ほどですから、今からとなると1月期も同じレベルで勉強するケースも多いです。

大半が初級ですが、私が担当している中級クラスにも数名加わりました。次の学期も同じレベルというと何となく不満なところもあるようですが、聴解の生教材を聞かせると、黙ってしまいます。JLPTの練習問題など、作られた教材を聞き答えを選ぶ訓練はしてきましたが、まとまった話を聞いて内容を把握し、それを表現するとなると、KCPでずっと鍛えられてきた学生にはかなわないようです。全然聞き取れず、自信を失ったという新入生もいました。来学期も同じレベルで実力を蓄えることに納得したようです。

まあ、焦って1つ上のレベルに入ったところで、4月からの学期では同じクラスになってしまうでしょう。現在上級に在籍している学生たちは、みんな卒業しますから、今、中級の学生で、4月以降も残る学生が最上級クラスを構成することになるのです。そういうわけで、長期的に考えたら、基礎部分の穴をしっかり埋めておくことの方が、大きく伸びることにつながり、受験で好結果をもたらすことになるでしょう。

そういう学生たちを見ていると、学生たちがどうして日本で勉強したがるのかも見えてきます。問題集や教科書では培えない力を得たいのです。オンラインなら国でも受けられますが、そういう授業では学べないものに浸りたいのです。それに応えてこそ、学生の求める学校であり、理想的な教師なのです。

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できる・できない

12月4日(金)

XさんがT大学に落ちました。Xさんは決してできない学生ではありません。まじめに勉強しています。質問も的を射ていて、力を付けてきたことは確かです。しかし、狙ったところが心理学ですから、高度な日本語力を求められ、合格には至らなかったのでしょう。

私たちは、T大学ではなくN大学を受けるように勧めました。それぞれの大学の先生からお聞きした話を総合すると、T大学はある程度以上のレベルの学生に専門性を授けるという考え方で、N大学は受け入れた学生をいかに伸ばしていくかという方針です。それぞれに一長一短はありますが、私たちは、今のXさんならN大学の方がいい勉強ができるだろうと判断しました。

Xさんが何よりショックなのは、自分よりできない学生が受かったことです。他校の学生なのでどのくらいできないのか詳しくわかりませんが、その学生が受かり、Xさんが落ちたのですから、T大学合否判定基準ではその学生の方ができる学生なのです。XさんはT大学の2期にも出願すると言っていますが、T大学がそういう物差しを持っているとすると、厳しい結果になるような気がします。2期は1期より難しくなりますしね。

でも、今のXさんは、自分よりも実力の下の学生が受かったということに目を奪われています。そして、だから自分も受かるはずだという論理から抜け出せなくなっています。初志貫徹と言えば聞こえはいいですが、若いのに頭が固くなってしまっているようで、非常に危険なにおいがします。

来週、本人が少し冷静になったら、N大学をはじめ、他大学も受けるように勧めてみましょう。

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熱演が無駄

12月3日(木)

「はい、ここまでのことで、質問ありませんか。……ない? なかったら、例文を書いてください」と、学生たちに今やったばかりの文法を使った例文を書かせました。文法の授業を締めくくる恒例の儀式と言ってもいいでしょう。

学生が例文を書いている最中、私は教室中を回って、学生たちの手元をのぞき込みます。もちろん、密にならず、変なプレッシャーを与えずという距離は保ちます。学生が作ったばかりの悪い例文を見つけ出し、どこが悪いか学生全員に考えてもらいます。同時に、私の説明が足りなかったところや練習が必要だったところを補います。

Cさんの例文を見ると、私が書いてはいけないと注意したタイプの例文でした。赤で板書し、ホワイトボードをたたいてここが重要だと訴えたのに、それを無視した例文を作っていたのです。すぐに、教室全体に響く声で、「こういう文を書いてはいけないって言いましたよね。思い出してください」と再度注意しました。Cさんも、書いたばかりの例文を消して、また考え始めました。

ところが、Cさんの教科書やノートを見てみると、私が赤で書いた重要ポイントも、ホワイトボードをたたいて強調した注意点も、何も書かれていませんでした。わずかにその文法の意味しか記されていませんでした。参考になるのがそんなメモ書きみたいなものしかなかったら、教科書の例文を見たって、どこに目を向けるべきかわかるはずがありません。

Cさんみたいな学生は、板書事項をまとめた解説を配ったって、おそらく見ないでしょう。学生が書いて提出した例文は添削して返しますが、教師が入れた赤は読んでいないに違いありません。その証拠に、Cさんのこの前の文法テストは…、いや、お恥ずかしくて点数は明記できません。

2度目の解説はきちんと聞いていたようで、Cさんが提出した例文は、一応要点は捕らえていました。でも、別のところに文法ミスがあり、○にはできませんでした。その文法を勉強した時も、ろくにノートを取っていなかったんでしょうね。

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妥協できる?

12月2日(水)

まだどこにも受かっていないYさんが、滑り止めをどこにしたらいいか相談に来ました。今までに出願したところ、出願準備を進めているところは、すべて有名大学であり、たやすく入れるレベルではありません。明らかにYさんの憧れに沿った志望校です。もっと言ってしまうと、それ以外の大学を知らないのかもしれません。

11月のEJUはどうだったかと聞くと、各科目、不正解は3問だけですとか、2問しか間違えませんでしたとかという答えが返ってきました。そもそも、EJUの問題は持ち帰り厳禁ですから、通常の方法では正解不正解はわかりません。受験生が問題と答えを覚えてくるなど、不正を働かずに正解集が作れたとして、それがどこまで確かなものかはわかりません。それをもとに落としたのが何問だとかという議論をしても、そこにはかなりの誤差が含まれると考えるべきです。

しかも滑り止め校を決めるといいますから、Yさんの点数を低めに査定しました。今まで、「間違えたのは読解と聴読解1問ずつです」とか言っていた学生の実際の成績が280点だったなどという例をいくつも見てきました。日ごろの授業のYさんを見ていても、超素晴らしい点数は期待しない方が無難です。でも、私が口にした点数は、大いに不満足のようでした。

要するに、Yさんにとって一番望ましい答えは、今までにYさんが考えてきた大学の中に滑り止め校に相当するところがあるということなのです。しかし、私の見立てでは全滅のおそれもあります。滑り止めと言いつつこちらが本命となるだろうなあと思いながら、数校名前を挙げました。名前だけではそちらに気持ちが向かないでしょうから、就職とか大学院進学とか、少し先のことを考えさせました。その時に、これらの大学はYさんが考えてきた大学と比べて遜色がないという方向に話を持って行き、納得してもらいました。

毎年、妙にプライドが高い学生がいます。そういう学生が卒業式間際になって尾羽打ち枯らして相談に来ることを思えば、Yさんは現実的です。私が挙げた大学を、自分でも調べてみると言って帰りました。

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