Monthly Archives: 1月 2022

%の争い

1月18日(火)

今学期は、大部分の学生が3月で卒業していきます。進路が決まっている学生はそのまま4月から進学先に通えばいいのですが、現時点では未定の学生も少なくありません。その中の一部の学生は、入管が打ち出した特例により、4月以降もKCPで勉強します。入国が大幅に遅れたために計画通りの日本語学習ができなかった留学生への救済措置です。これにより、日本語学校の在籍期間が2年を超えても勉強が続けられるようになりました。

しかし、この救済措置は誰でも受けられるわけではありません。出席率が低かったら、進学先が決まらなかったのは、日本語力が足りなかったからではなく、日本語習得に対する熱心さが足りなかったからでしょとされてしまいます。日本語学校の世界は出席率がすべてを取り仕切っていますから、当然のことです。

午後、Qさんが職員室で先生方と話していたのはその件です。これから受験する大学もありますが、本人的にはもう1年勉強して“いい大学”に進もうと思っているようです。しかし、お手軽に休んだツケが回ってきました。救済してもらえないおそれもある数字になっていました。

国費留学生87名の入国が認められるそうです。日本に入国できないまま卒業修了の時期が迫ってきた留学生たちが対象です。私費留学生、それも日本語学校への留学生の入国が認められるのはいつのことでしょう。そういう人たちのことを考えたら、Qさんは今日本にいるのですから、とても恵まれています。その好条件をみすみす逃しちゃうのかなあ。そういう危機的状況だということがわかっているのでしょうか。

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EJU実施要項

1月17日(月)

EJUの実施要項が届きました。今年は6月19日と11月13日です。これは予定通りと言えましょう。その他の日程も受験料なども特段の変更はありません。いつもと同じかと思ったら、同封の書面には「2022年度より、団体申し込みをした受験生の成績を、受験者本人だけでなく、団体担当者も見られるようにいたします」と書かれていました。

JLPTではだいぶ前からこれができました。学校で団体申し込みすると、出願した学生の成績がコンピューター上で見られますから、学校としてのデータもまとめやすいですし、個々の学生の指導にも持って行きやすいです。しかし、EJUはそうなっておらず、進学指導の資料として使おうにも、学生からいちいち成績を聞き出さなければなりません。以前は成績通知書が学校に送られてきましたから、それを渡す時に学生に成績を申告させることができました。しかし、最近は成績通知書が廃止になったので、学生の成績を知るのが難しくなりました。

それなのに、EJUの成績は、日本語学校の学生管理の一環として、入管への報告事項の1つとなっています。これではどうしようもないですから、学校側で学生のEJUの成績が把握できるようにしてほしいと要望し続けてきましたが、やっとそれが実現しました。

そういったうれしいニュースの数行下に、「悪質なカンニングに対し、本機構では引き続き厳正に対応してまいります」と書いてありました。こういうことを書かなければならないほど、EJUでカンニングが横行しているという噂は毎回ささやかれています。昨日までの共通テストでは、スマホを股に挟んでいた受験生が摘発されたそうです。しかし、11月のEJUでは、問題を塾に送って解いてもらってそれをマークしたなどの不正行為がスルー状態だったと学生が言っていました。

このままの半鎖国状態が続けば、EJUの受験生は昨年よりさらに減りそうです。その少ない受験生に公正な試験を実施し、努力した受験生が報われる試験にしてもらいたいです。

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耳を鍛える

1月15日(土)

今学期の受験講座が始まりました。土曜日のメニューは、毎学期、EJUの日本語と、JLPTのN1とN2です。私はEJUの日本語を担当しました。「さあ、過去問やるよ」でもよかったのですが、受講する学生の意識を高めようと、先学期末に発表された昨年11月のEJUの結果について触れました。

やはり、留学生が入国できない影響は大きく、昨年11月のEJUの受験者数は、その2年前までの半分程度に落ち込みました。平均点があまり変わっていないのは、問題の質が安定しているからでしょうか、得点等化のおかげでしょうか。

EJUが始まったころは300点というのが一つの目標でしたが、今は300点では「悪くはないね」というくらいです。今回の結果に当てはめると、上から26%、偏差値で58ぐらいです。学生たちが考えている大学のレベルには距離がある感じです。偏差値65というと343点ですから、かなりがっつり訓練しなければ手が届きません。

そのぐらいの点を取るには、苦手分野を作ってはいけません。KCPの学生は、押し並べて聴解・聴読解が弱いようなので、今学期の受験講座では聴解力の強化に力を入れます。今までの分析によると、教授の講義を聞くタイプでつまずきやすいという結果が得られていますから、そこを重点的にやっていきます。大学に進学しようという人が教授の講義の内容をつかみかねていては、話になりません。

学生の手ごたえはどうだったのでしょう。大あくびをしていたCさんは、楽勝宣言かな、それとも集中力が途切れちゃったのかな…。

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チャイムがない日々

1月14日(金)

おととし、オンライン授業が始まって以来、校舎内のチャイムを止めています。学生がいなかったらチャイムは無意味だし、対面授業の時でも密を避けるためにレベルごとに授業時間をずらしていますから、全校が統一的に動くことがありません。それゆえ、学生が来ていてもチャイムは鳴らしません。

午前中、用事があって学校の中をうろちょろしていたら、外階段の踊り場でおしゃべりしている学生たちに会いました。時計を見ると、中級レベルの休憩時間に差し掛かっていました。私が通りかかると、わざわざおしゃべりを中断して「先生、こんにちは」とあいさつしてくれました。私も「こんにちは」とあいさつを返すと、その学生たちは安心したかのようにおしゃべりを再開しました。

校舎内に入ると、廊下のベンチで黙食している学生やエレベーターホールで立ち話している学生がちらほら程度。密回避にはなっているようでした。私が前を通ると、黙食の学生はぴょこんと頭を下げました。食べながらスマホに熱中している学生は、もちろんそのまま。立ち話の学生は「こんにちは」と言ってくれました。KCPの学生は義理堅いですね。担当の先生が教室に入ると、それにくっついて学生たちも教室に収まっていきました。

授業を担当している時は、チャイムが鳴らないのにすっかり慣れてしまいました。授業をしていない傍観者の立場だと、いつの間にか学生が湧きだしたり、潮が引くように消えていったり、その波が何回か押し寄せたりというのが、まだ不思議な感じがします。

新規感染者数が順調に力強く増えていますね。チャイムに合わせて全校一斉にという日が、ぐんぐん遠ざかっていくようです。

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何も書かない

1月13日(木)

私は、仕事柄、人前で話す機会が多いのですが、きっちりした原稿はあまり書きません。おとといこの稿に書いた修了式にしても、Aさんの人となりを思い浮かべつつ、こんなことを話そうといくつかのポイントを頭の中に入れておいただけでした。卒業式をはじめ、学校行事での挨拶も、まあこんなもんです。時事問題も織り込みつつ、持ち時間にも合わせて、話の内容を決めていきます。唯一、原稿をしっかり書くのが入学式での挨拶です。こちらは各国語に翻訳されて画面に映し出されますから、書かないわけにはいかないのです。

今、日本語教師養成講座の講義資料を作り直しています。こちらは、話そうと思ったことをワープロベタ打ちにしたメモがパソコンのそこかしこに散らばっています。そういうのを結集し、再編し、受講生の理解の助けになるようなパワーポイントなんかも作ろうという魂胆です。几帳面な方なら、パワーポイントのノートの欄に、せめて話の要点ぐらいは書き込むのでしょうが、私はしません。受講生の興味対象や、その時々の話題なども織り込んで、オーダーメイド感たっぷりの講義にしたいのです。

だから、出来上がったパワーポイントを使って講義のシミュレーションをすると、さっきと今とでセリフがかなり違うということが起きます。もちろん、根幹をなす部分は同じですよ。でも、そこまで持って行く部分とか、そこから派生した話とか、そんなあたりがやるたびに違ってくるんですねえ。講義の品質を管理するという意味においては困った現象かもしれませんが、そういうしゃべりが楽しくてこの仕事を引き受けている面も見逃せません。入学式は原稿通りに話さなくてはという意識が強く、セレモニーを楽しむ境地には至っていないのです。

資料を作りながら、私の講義って与太話が半分だなって思いました。入学式のようにきちんと原稿を書いて無駄を省いたら、講義の時間が半分になるかもしれません。短期集中で、受講生からは歓迎されるかな。でも、パワーポイントの真っ白なノート欄が、私の個性なんだと思っています。

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久しぶりの超級クラス

1月12日(水)

今学期から、午前クラスの始業時刻を30分遅らせました。9時だとラッシュのピークにかかりますが、9:30始まりなら山場を越えていますから、多少なりとも密が避けられます。午後のクラスは、逆に、始業を30分早めました。そうすると、学生の帰宅時間帯が夕方のラッシュの直前になります。学生の安全を考えての変更ですが、学生たちは、「朝寝坊できていいや」とか「早く帰れてラッキー」とかって思っているだけかもしれません。

最上級クラスに代講が生じたので、そこに入りました。さすが最上級クラスだけあって、先学期の中級クラスとは日本語の通じぐあいが全然違います。ビザや日本語学校の在籍期間に関する複雑な話も、1回説明しただけで理解してくれました。

学生資料を見ると、このクラスの学生はみんな“いい学校”に進学することを目標に勉強してきました。すでに目標を達成した学生も、この3か月に勝負をかける学生もいます。いずれにしても、日本人の大学生や大学院生の中でも優秀な人たちに伍して勉強や研究をしていくことになります。とすると、進学したらおちおち日本語など勉強している暇などありません。

学問は議論です。議論とは相手の意見を正確に理解し、自分の主張を明確に相手に伝えることです。その繰り返しでお互いの考えが深まり、アウフヘーベンが生まれ、高みに達することができるのです。一方的にまくしたてたり、相手の言い分に聞き耳を立てたりしているだけでは、高い授業料を支払って高等教育の場に身を置く意味がありません。

だから、卒業式までにそういうことができるだけの日本語力を付けていってもらいたいのです。

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みんな、知らないの?

1月11日(火)

午後、Aさんの修了式がありました。Aさんはアルファベットの国から来た学生です。1年前に来日し、昨年12月に予定していたKCPのプログラムが終了しました。他の学生とは違うコースなので、3月の卒業式などとは別に修了式を行いました。

Aさんは日本で就職しました。英語ができることは就活において武器になりましたが、日本語でのコミュニケーションが全く支障なくできることもまた、大きな決め手となりました。KCPの上級まで勉強したのですから、当然と言えば当然なのですが…。

昨年4月に就職したPさんも、同じように日本語のコミュニケーションがよくできました。あっという間に職場に溶け込み、みんなに愛される存在になっているようです。どこの国のどんな職場でもそうでしょうが、やはり心を通わせ合うことが、そこに根付く第一歩なのです。

Aさんが在学中に一番つらかったことはオンライン授業だったそうです。授業の時は、画面を通じてクラスのみんなと会えるけれども、授業が終わったらあっという間に一人ぼっちになってしまうのが寂しかったと言っていました。通学授業では、授業後に友達とおしゃべりをし、一緒に食事に行っていたAさんならではの悩みです。

また、Aさんは、世界の人が自分の国をいかに知らないかを知らされたとも言っていました。日本も、かつては「フジヤマ、ゲイシャ」でしたが、今もそれに「ゲンパツ」が加わったくらいでしょうか。でも、Aさんは、そういう事実を、世界が広がったと前向きにとらえていました。

午前中、専門学校の方がいらっしゃって、卒業生の状況を教えてくださいました。日本での就職が成功したという学生は、KCP時代からコミュニケーション力に富んでいて、前向きな性格でした。もちろん、専門学校での成績も優秀です。

明日から新学期です。在校生をこういう方向に引っ張っていきたいです。

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青春真っ盛り

1月7日(金)

東京の積雪は10㎝になりました。しかし、去年3月の卒業生のSさんは、こんなちんけな雪なんか、せせら笑っています。年末年始に北海道へ行って、スノーボードを存分に楽しんできました。ニセコと富良野だそうですから、一流どころを回ってきたことになります。写真を見ると、ウェア姿も堂に入っていました。

写真ではいかにも滑れそうな感じなのですが、スノーボードは全くの初心者でした。初日はさんざん転んで、背中やらお尻やら肩やら打ちまくったそうです。顔を同じ方向に向け続けていたので、首筋も痛くなったと聞いた時には、思わず笑ってしまいました。

北海道はスノーボードだけではありませんでした。旭山動物園でペンギンのお散歩も見たし、登別の地獄谷で硫黄のにおいも嗅いだし、洞爺湖温泉にもどっぷりつかったし、函館山からの夜景も満喫したし、初もうでは札幌伏見稲荷大社へ行ったし、おみくじが末吉だったし、北海道をしゃぶりつくした感じでした。

「夏の北海道もいいよ」と勧めると、夏は沖縄でサーフィンをするつもりだと言われてしまいました。大学は、授業はもうすべて終わって、後は試験だけだそうです。それが済んだら、アルバイトに励んで、夏の軍資金を稼ぐのだとか。留学生活は楽しくてたまらないと言っていました。

前期で単位を1つ落としたそうですが、進級はできそうだと言っていました。秋にスカイダイビングもへ体験したSさんのこの1年は、よく学び、よく遊びだったようです。本人が言うように、本当に充実した学生生活を送っています。在校生が聞いたら、もうひと頑張りという気になってくれるでしょうか。

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雪国?

1月6日(木)

お昼ごろから降り始めた雪は、学校の前の道路を真っ白にしています。外に止めてある車は、ボンネットも窓も屋根もすっかり雪で覆われて、大きな雪玉と化しています。人通りも少なく、たまに歩いている人はおっかなびっくりという感じで足を進めています。

昨シーズンは雪がほとんど降らなかったと思いますから、積雪はかなり久しぶりのはずです。そうすると、交通機関の備えが心配になってきます。すでに道路は通行止めのところが出ているようです。帰宅時間帯の電車はどうなるのでしょう。遠距離通勤のT先生は、無事帰れるでしょうか。

学校の中では、ハイフレックス授業の勉強会が行われました。対面とオンラインと、両方の学生を満足させ、学習意欲を損なうことなく効果的に実力を伸ばしていくにはどうしたらいいのか、みんなで考えました。この両刀づかいは、もはやできて当然、教師の標準装備となっています。

その一方で、職員室には学生の姿も。学期休み中に学校へ来ている学生は、前の学期の成績が振るわなかったとみて間違いありません。進級できないという連絡を受けて、何とかしてもらいたくて足を運んだのでしょう。雪の中、ご苦労様なことですが、その決定が覆ることは、まずないでしょう。

明日の朝は、Sさんの面接練習をすることになっています。天気図を見ると、この雪を降らせている低気圧は今晩中に東の海上に抜けることになっていますが、路面が凍結すると、雪が降りしきる中以上に足元が危なくなります。南国出身のSさん、ちゃんと来られるでしょうか。

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デジタルネイティブの本能

1月5日(水)

私の世代は、社会人になりたての頃は新人類などと呼ばれましたが、今や完全に旧人類です。コンピューターを本格的に使うようになったのは就職してからで、卒論や修論のデータは紙で管理が中心でした。それに比べると、今の学生たちはデジタルネイティブで、コンピューターを母語のように扱います。

そういう学生たちに、コンピューター経由で進学に関するアンケートを取りました。年末にフォームを送ったのですが、回収率が芳しくありません。催促のメールを送っても、なかなか反応してくれません。オンライン授業での提出物の様子を見ていると、すぐに100%近く回答が来ると思っていましたが、そうはありませんでした。

宿題やテストは提出しないとすぐに痛い目に遭わされますが、このアンケートはそんなことがないからかもしれません。しかし、アンケートを紙で配っていた時は、欠席者を除いてほぼ全員が提出していました。紙に書かれたデータを手入力するのは確かに手間でしたが、回収率の高さには代えられません。

紙のように課題が現物として存在すると、早く片付けなければという意識が働くのでしょう。パソコンかスマホの中の電子的な存在となると、緊急を要しないと見るや、後回しにしてしまうのです。デジタルネイティブのはずの学生たちも、根っこの部分にアナログな思考回路が垣間見えます。

嫌なこと、見えないものはなかったことにという、人間の本能とも言える発想が、デジタルネイティブの行動様式を変えてしまったとも考えられます。とすると、人間って意外と進歩しないものなんですね。真のデジタルネイティブは、今の学生の次の世代なのかもしれません。

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