春一番の日に

2月4日(木)

観測史上最も早い春一番が吹いたそうです。お昼を食べに外に出た時、確かに強い風は吹いていましたが、暖かいとは思いませんでした。御苑の方から吹いていましたから南風でしたが、肌を刺す力は衰えておらず、春には程遠い感じがしました。

午後、教室でオンライン面接練習をしました。午前中使っていない教室でしたから、壁も床も椅子も机もキンキンに冷えていました。すぐにエアコンを入れ、風の強さを最高にし、どうにか練習ができる教室環境を整えました。KCPの教室は、道路に面している方は北向きで、廊下を挟んで反対側は窓を開けたらマンションで、いずれにしても日が差し込みにくいです。だから、使っていない教室は寒いのです。教室は、まだまだ冬真っ盛りです。それに加え、学生がいませんから、校舎全体がうすら寒いです。人間が放散する体熱ってバカにならないものだと、妙なところで感心させられています。

Kさんは。明後日がそのオンライン面接です。昨シーズンは留学生入試の面接をオンラインで行った大学は0に近かったですが、今シーズンは、夏の早稲田大学を皮切りに、オンライン面接が過半数ではないかという気がします。現状に鑑みれば、2・3月の入試はオンラインがほとんどなんじゃないでしょうか。

人にはそれぞれ得手不得手があるものですが、オンライン面接も想像よりずっと上手にこなす学生がいる一方で、カメラを通すと精彩を欠いてしまう学生もいます。Kさんは前者のようで、実にのびのびと受け答えをしていました。マイクのせいで聞き取りにくいことはありましたが、回答の内容は志望校の面接官を満足させられるのではないかと期待できるものでした。

Kさんは、自分の部屋でオンライン面接を受けるそうです。まさにホームゲームです。確実に勝ち点をゲットして、心の春を迎えてもらいたいです。

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面接も読解も

2月3日(水)

午前中、午後クラスの学生の面接練習をしました。やっと中級になったくらいの学生たちですから、上級の学生に対するようなわけにはいきません。学生が緊張するようにプレッシャーをかけたのでよけいにいけないのでしょうが、「簡単に自己紹介してください」と聞くと、名前と出身地だけという、本当に簡単な自己紹介になってしまいました。やっぱり、何か一言でいいですから、自分を特徴づける、売り込む言葉がほしいですね。

Rさんは2度目ですが、プレッシャー下では覚えたことを答えるのが精いっぱいのようでした。それでも前回よりは内容の伴った答えになっていましたから、少しは進歩しています。自分の学びたいことが伝えられるようになっていましたから、光が見えてきました。本番までもう少し時間がありますから、一段階ずつ登っていきましょう。

経営学部志望のYさんは、中小企業診断士の資格を取りたいと言いました。大学院まで進学して、修了後は帰国して、中小企業が多い故郷の街の経済を支える人材になりたいと、拙い日本語ながらも将来構想を語ってくれました。今まで多くの学生の面接練習で面接官役をしてきましたが、こういう答えは初めてでした。経営学部といえば、みんな起業したりMBAを取ったりしたがります。その中で中小企業を支えることで地域貢献したいという目標は、大いに輝きます。

午後はRさん、Yさんのクラスを担当しました。う~ん、2人とも、読解も文法もまだまだだなあ。面接の受け答えだけ上手になっても、進学してから教科書が読めなかったら勉強どころじゃありませんよ。

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いい陽気ですね

2月2日(火)

初級クラスの漢字の時間に、「陽」の字を教えました。「陽」を使う熟語として「陽気」が挙げられていました。「陽気」には形容詞の用法と名詞の用法があります。形容詞の方は、教科書に出ている英語訳が“cheerful”、中国語訳が“快活的”となっており、「トムさんは陽気な人です」という例文も、まあ問題ないでしょう。

もう一方の名詞の「陽気」の英語訳は“weather”、中国語訳は“天気”となっていました。「天」の字を勉強した時に日本語の「天気」を勉強しており、その英語訳、中国語訳も“weather” “天気”でした。これだと、陽気=天気になってしまいます。

例文として出ている「いい陽気になりましたね」は、日本人の感覚では、絶対に「いい天気になりましたね」と同じではありません。後者は「晴れました」「青空が広がりました」に近い意味ですが、前者はそういう意味ではありません。2月の初旬に「いい陽気になりましたね」と言ったら、「暖かくなりましたね」でしょう。

じゃあ、天気と陽気は何が違うのでしょう。「東京は、5月が1年でいちばん陽気がいい」と言ったら、過ごしやすいという意味です。そもそも、「悪い陽気」とか「陽気が悪い」とかって、あまり言わないんじゃないでしょうか。「じめじめした陽気」ということもありますが、一般には「快適」というのが暗黙の了解になっていると思います。

お天気マニアとしてはいい加減に済ますことができませんから、無理を承知で初級の学生にそういう話をしました。しかもオンラインですから、こちらの気持ちがどれだけ伝わったかはなはだ心もとない限りです。初級担当のT先生がご覧になっていたら、即刻授業停止命令が出たことでしょう。

朝はけっこうな雨が降ってどうなることかと思いましたが、午後からはいい陽気になりました。124年ぶりの節分にふさわしい2月2日でした。

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画面の向こう側

2月1日(月)

オンライン授業の悩みの1つが、学生がどこまで本気かわかりにくいことです。すぐに顔を隠す学生が怪しいのは言うまでもありません。ですから、顔が出ていない学生はどんどん指名します。顔を出している学生も、部屋でぼんやりしているだけかもしれません。油断できませんから、顔が出ていても動きが少なかったら「はい、〇〇さん」と抜き打ちをかけます。

指名されても何をしたらいいかわからなかった学生は、1回は見逃してやります。しかし、2日目からは「はい、授業を聞いていませんでしたね。欠席です」と冷たく言い放ちます。指名に対して返答がなかったら、「××さん、いませんね。欠席ですね」と言って、欠席にします。何も言わずに欠席にしてもいいのですが、授業を聞いている学生に向けて、「授業に参加しないと欠席になるんだよ」と警告を発する意味も込めています。

そして、文法などの例文をチェックすると、授業を聞いていたかどうかは如実にわかります。特に上級は、単にどこかの例文集から引っ張ってきただけではうまくいきません。私の例文は要求度が高いですから、状況説明が足りないとか動作主がはっきりしないとか、理屈と膏薬はどこへでも付くさながら、ビシバシ文句を付けます。そういうろくでもない例文ばかりだったら、やはり授業を聞いていないと見なします。

これだけ学生を痛めつけても、zoomに名を連ねるだけの学生は少なくなりません。私たちも楽しい授業をと思っています。しかし、そういう流れをせき止めるような態度を取られると、強硬手段に出ざるを得ません。

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超想定

1月29日(金)

昨日、Cさんから、入試面接の想定問答集を直してほしいというメールが来ました。Cさんは、滑り止めには受かっていますが、どうにかもう少し上位校に入りたいと準備をしてきました。

早速その想定問答集に目を通してみると、日本語が中途半端にうまいのです。Cさんの知らなさそうな表現もあれば、生硬な言い回しもあります。Cさん一人で書き上げたのではなく、先輩か友だちに見てもらったのでしょう。もしかすると、コンピューターの翻訳も混じっているかもしれません。

面接でのセリフですから、文法的に語彙的に一字一句に至るまで正確である必要はありません。面接官に誤解を与えたり通じなかったりしそうな表現だけ直していきました。また、内容的に飾り立てても、突っ込まれた時に苦しくなるだけですから、自分で自分の首を絞めるようなものです。しかし、つじつまが合わないお話はいけません。「日本にだいぶ慣れたので、今ではどこにでも旅行に行きます」とありましたが、Cさんが日本に慣れたころからずっと、どこにでもひょいひょい行けるような空気ではなかったはずです。ネットで見つけた模範解答を写したのでしょうか。

こんな調子で朱を入れて、午前の授業前にCさんに返信しました。すると、来週早々面接練習をしてほしいとお願いのメールが来ました。面接練習の相手ぐらいいつでもしますが、そうするとせっかくの想定問答集が無駄になってしまいます。私はCさんの想定外の質問をバリバリしますから。

私が入試直前に面接練習をしたKさんが、立て続けに2校も合格しました。この勢いを持ってCさんの面接練習に臨みます。

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対外関係

1月28日(木)

進学には学生の一生がかかっていますから、あれこれ悩んで当然です。周りの人に相談することも必要です。しかし、ころころと方針を変えてばかりというのは、いただけません。相談した人の意見に流されて、日々言うことが違うとなると、こちらも進路指導のしようがありません。

そんな傾向を見せ始めているのがGさんです。Gさんの希望を聞き、EJUの成績を勘案し、ここなら実のある勉強ができると、いくつかの大学をリストアップしても、翌朝は全然違うことを言い始めます。誰に教えられたのか、とんでもなく評判の悪い大学名を出し、ここなら確実に入れる言い始めたこともありました。“昨日の目の輝きは何だったの?”と追及したくなります。Gさんが相談を持ち掛けた人に言わせれば、KCPは変な進路指導をする、ろくでもない学校なのでしょう。

いつの時代にも、親の言いなりになっている学生がいます。教育熱心なあまり、子供に干渉しすぎる親も、進路指導においては危険な存在です。日本の進学事情を表面的にしか知らないのに、本人も納得ずくで選んだ志望校をひっくり返します。親御さんの提案が妥当な範囲ならそれに報えて指導もしますが、往々にして無理難題に近いものです。Iさんは、今年進学ではありませんが、親が毎日のようにあれこれ指示を出してくるそうです。すでに、親の意見にはついていけないという顔をしています。

「親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない」とことわざに言いますけれども、最近の茄子は突然変異を起こしたのか、品種改悪が進んだのか、あだ花が増えたようで…。

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何とか押し込まねば

1月27日(水)

まだ行き先が決まっていないJさんが、Y大学の出願書類を持って来ました。最終チェックではなく、これから書類をそろえるのだが、何が必要か確認したいという相談でした。すでに合格して学費も払い込んで後は入学を待つばかりなどという学生に比べると、周回遅れどころの差ではありません。国の親に指示されてY大学を受けるようですから、どこか他人事なのかもしれません。

でも、来週はもう2月ですから、のんびりしている暇などありません。緊迫感が欲しいところですが、「“Y大学はいい大学ですから”という答えは面接でいいですか」などという質問が出てくるようじゃ、まだまだぜんぜんです。かなり尻をたたかないと、Y大学には届きません。これからが、本人にとっても教師にとっても山場です。

Jさんの隣で待ち構えていたのがXさん。こちらはJさんより1周は先に進んでいて、週末に迫ったT大学の面接練習でした。事前に想定問答を綿密に作ってきたのは立派ですが、それからはずれるととたんにしどろもどろになってしまうのも、こういう学生によくあるパターンです。その想定問答も、抽象論になっていましたから、かなり手を入れました。Xさんは私の指摘をちゃんとメモしていましたから、試験日までの追い込みに期待が持てます。

夕方は、外部奨学金受給者として候補に挙がっている学生の面接です。Kさんは先学期の途中からKCPの授業を受け始めた学生ですが、担当したどの先生からもいい学生だと評価されています。確かにいい学生ですが、日本語を聞いたり話したりするのにまだ慣れていない感じがしました。来日してから、ホテルで待機させられたりオンラインでおうち授業だったりと、音声によるコミュニケーション力を伸ばす機会に恵まれていません。こちらも、奨学金を出してくれる機関での面接までにかなり訓練しなければなりません。

気象庁の観測データによると、日中は暖かくなったようですが、それを味わう暇もありませんでした。

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大忙し

1月26日(火)

授業はしませんでしたが、忙しい1日でした。

午前中は、12月のJLPTの結果分析。例年に比べて合格率が高かったのは、実力不足やN1記念受験の学生が受けなかったからでしょうか。昨年は7月が中止になりましたから、本来は7月で受かっているはずの人達が12月に受けて受かったとも考えられます。感染が広まりつつある時期でしたから、出願したものの受験せずに帰国した学生もいました。残念だったでしょうね。

午後一番は、Cさんのオンライン面接練習。受け答えが浅いこともそうですが、音声が途切れることが気になりました。「学校で受けてもいいよ」と水を向けてみましたが、すでに大学によるチェックを受けた後だと言います。よくOKしたなあと思いましたが、Cさんの部屋で受けることに決まっているそうなので、当日の通信状況が良好であることを祈るのみです。

一息ついて、次はNさんの進学相談。2つの専門学校のどちらにしようか迷っています。正直に言って、両校ともしっかりした学校で、勉強内容に大きな差があるとは思えません。学費も年に数百円の差ですから、ないに等しいです。Nさん自身が実際に見に行った時の感じも甲乙つけがたいものだったようです。結局、決め手になったのは、日本人の学生がどれだけいるかでした。日本人ばかりのクラスに放り込まれる方を選びました。

続けてH大学とS大学に受かったAさんの、どちらの大学がいいかという相談です。これまた両校とも名門ですから、1つを選ぶのは難問です。Aさんは真面目な学生ですから、志望校選びをする時点でどうしても行きたい大学に絞っています。それゆえ、受かった中から1つに決めるのは至難の業です。私にできることは、Aさんとは違う角度からの意見を伝えることです。そういうことを総合して、Aさんは大学院に進学する希望を持っていますから、6年計画という要素も加味して最終決定するように言いました。

最後は受験講座の説明です。今学期の新入生で受験講座を取りたいという学生がぽつぽつ出てきています。緊急事態宣言中でこちらにいらっしゃれない先生がいるため、休講中の授業があるのが心苦しい限りです。

明日も、午前中は進学相談です。

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余力があり過ぎます

1月25日(月)

レベル1のクラスの代講に入りました。レベル1の授業そのものは面白いと思いますが、オンラインだとどうもリズムに乗れません。指名して、学生がマイクをオンにして答えがこちらに届くまでのわずかなタイムラグが、その原因です。0.5秒にも満たないくらいの短い時間でしょうが、そのためにペースがなかなかつかめないのです。

私の場合、初級は、何はともあれ、口を開けさせるという考えで授業を組み立てます。上級なら、多少教師が語っても授業は成り立ちますが、初級は、特に一番下のレベルは、一言でも多く話させることが授業の肝です。それが、わずかなタイムラグのせいでつまずいてばかりというのが、私の授業の現状です。

ブレークアウトセッションを多用するというのも一つの解決手段です。しかし、学生が見えないところへ行ってしまうのが、どうも怖いのです。初級のクラスは話したくてたまらない学生たちばかりですから、ブレークアウトセッションでだんまりを決め込むことはないでしょう。でも、こっそり母国語で話しているのではないかという疑心暗鬼を抑えきることはできません。

コーラスをさせても、「はい、今、4人“っ”を言いませんでした。もう一度!」などということができません。個々の学生の発音をいかにチェックしていくかも、大きな課題です。初級なら、助詞の抜け落ちや誤用にも厳しく目を光らせ、間違いを見つけ次第直ちに指摘して訂正させなければ、悪い癖がついてしまいます。それがなかなかできないもどかしさもあります。

オンラインだと、授業後の疲れ具合が対面に比べて、半分どころか一桁違う感じがします。養分を吸い取られたという感じがしないんですねえ。逆の見方をすると、学生たちにこちらが持っているものを与え切っていないんでしょうね。

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朝から受験講座

1月22日(金)

今学期は、受験講座が午前中です。受講生が全員午後クラスなので、受験講座を午前に持って行ったのです。KCPが受験講座を始めたころ、9時からの日本語授業の前に受験講座をやったことがありましたが、9時から理科の授業をするなんて、それ以来です。東日本大震災のはるか前ですから、15年ぐらい前の話です。

さて、2021年理科の受験講座の初回は、オリエンテーションをしました。EJUの理科の出題傾向、平均点の推移、時間配分など試験の心得、勉強のしかたなどを説きました。実際に過去問を解いてもらって、どんなところが難しいか実感してもらいました。毎年つまずく学生が出る、化学物質名などのカタカナ言葉に対しても、覚えるしかないと覚悟を決めてもらいました。

今まだ動き回っている、この4月に進学するつもりの学生たちが何に苦労しているかも、実況中継のごとく伝えました。面接練習などを指導する立場から、早いうちに訓練を始めておいてほしいことを言っておきました。受験講座も大切だけど、それ以上に日本語授業でコミュニケーション力を磨くことが必要だと訴えました。

最後に、日本へ来たばかりの学生はほんとうに日本の大学を知りませんから、大学紹介をしました。東大、早慶、MARCHしか知らなくても平均以上というのが毎年の例ですから、学生の目をそれ以外の大学に向けさせました。資料を出すと、身を乗り出して画面を見ている学生の姿が、zoomの小さなモニターに映し出されていました。例年より少ない受講生を丁寧に育てていきたいです。

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