喫煙厳禁

1月14日(火)

学校の中で、今年になってから一番大きく変わったのは、喫煙のルールです。地下にあった喫煙室が廃止になり、校内は完全禁煙となりました。健康増進法の改正に伴うもので、4月から法律的に学校や病院などの全面禁煙化を先取りし、KCPの敷地内は、建物の内も外も、たばこを吸えなくしました。

新宿区は路上喫煙も禁止ですから、学校の前と言えども道で吸うこともできません。花園公園も公共施設ですから禁煙です。付近のビルや駐車場は私有地ですから、たばこを吸いに立ち入ったりしようものなら、不法侵入となってしまいます。

要するに、KCPにいる間はたばこが吸えない、たばこを吸うなということです。学生たちの家から学校までの間も、たばこが吸えそうな場所はほとんどないんじゃないでしょうか。喫煙者にはつらいご時世となりましたが、たばこ1本で寿命が4分縮まるとか言われていますから、これを機に潔く禁煙に踏み切るのが正解だと思います。

さて、廃止した喫煙室ですが、壁やら天井やら、この校舎ができて5年余りの間のやにがこびりついてまっ茶色でした。これをきれいにしてもらうのに結構なお金がかかりました。喫煙室を使った卒業生たちに請求したいくらいです。

喫煙室の換気扇から排出される空気は、たばこ臭くてかないませんでした。休み時間になるたびにそれを吸わされていた私たちは、まさに受動喫煙そのものでした。喫煙室が満員だからと言って、外の吸ってはいけないところで吸っていた学生をどれだけ説教したことか。運動会やバス旅行やBBQなどでどれほど喫煙者に気を使っているか。喫煙者はコスト以外の何物でもありません。

たばこなんか、税金の塊を燃やしているようなものなのに、どうして吸うのでしょう。私は喫煙経験がありませんから、その辺の心理が理解できません。校内全面禁煙化をきっかけとして、“留学生活=きれいな肺”という公式を作っていきたいです。

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才能格差

1月11日(土)

Aさんは、アメリカの大学のプログラムで、今学期KCPに入学しました。でも、日本語はぺらぺらというに等しく、他の学生に、頭1つどころか体2つ分ぐらい差をつけています。

Aさんに話を聞くと、勉強のきっかけは日本のアニメだそうですから、これはよくある話です。当然、大学で日本語を専攻したか何かだろうと思っていたら、完全に独学だということで、とてもびっくりしました。そういう人は得てしてJLPTの問題は解けるけど話せないというパターンなのですが、Aさんは全然違います。話し慣れている感じがしました。Aさんの町にいた日本人と話していたそうです。日本は観光旅行で訪れたことがあり、初めてではないと言っていました。それだからなのかどうかわかりませんが、話し方に妙な癖がありません。

いろいろと恵まれた環境にあったのでしょうが、学校のような系統的に勉強する機関に属することなく、ここまで自然な日本語が使えるとは、Aさんは語学にたけていることは疑いようがありません。耳もいいのでしょうし、聞いた音をそのまま再現できる能力も、覚えた文法を応用していく力も、単語を覚えていく力も有り余るほどあるに違いありません。一を聞いて十を知るという頭脳なのでしょう。

このAさんに比べると、一生懸命勉強しているのにさっぱり伸びない学生は気の毒になってきます。こんなことを言ったら教師の敗北なのですが、日本語学習に向いていない学生って、やっぱりいるとおもいます。日本語につぎ込んでいる力を別の方面に向けた方がきっと幸せなのだろうなと思う学生もいます。

さて、新学期が始まります。学生全員がAさんだったら教師は楽なことこの上ありませんが、現実は学生に苦労を強いる側に回ることが多いです。KCPで日本語を深掘りしたいと抱負を語っていたAさんの横顔を見ながら、艱難辛苦に耐えている多くの学生たちの、眉間にしわを寄せた表情を思い浮かべました。

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入学式挨拶

みなさん、本日はご入学おめでとうございます。このように多くの若い方々が世界中からこのKCPに集まってきてくれたことをうれしく思います。

今、日本は大学入試を大きく変えようとしています。大学に進学しようと考えている日本の高校生の大半が受けるテストで、一部をマークシート方式から記述式にしようというものです。なぜこのような変更が行われようとしているかというと、受験生の考える力を測定したいからです。マークシート方式は、客観的な採点ができて公平であり、また、機械で採点できますから省力化も図れます。しかし、暗記で答えられたり、受験のテクニックが通用したりしますから、受験生の本当の力は見られないという批判がありました。こういった批判に応えるため、記述式を導入しようとしているのです。

日本人の高校生が受けるテストなので、留学生のみなさんには一見無関係のように感じられますが、日本の大学が求めている人材が変わりつつあるという点においては、みなさんにも大いに影響があるのです。つまり、目の前の課題に対して自分で考えて結論を導き出し、それを他人にわかるように表現する力が求められるようになるのです。出題者から与えられた答えを選ぶのではなく、自分で答えを導き出せる人物こそが、これからの日本や世界を支える人材だという認識に立って、大学は受験生の能力を吟味します。

“グローバル”という言葉が世の中に出てからかなりの時間が経ちます。その間、世界に横たわる問題は複雑化する一方で、超大国のリーダーが額を寄せ合っても問題の解決には至らないことが多くなりました。そこまで大きな問題ではなくても、多様化した人々の心を満たすのは、マークシート的な発想では無理でしょう。もちろん、迫りくるAIの影を振り払うには、人間の頭脳にしかできない複合的な思考力が必須です。

みなさんは国でどういう勉強をしてきましたか。考える訓練をしてきましたか。それとも、受験のテクニックを身に付ける練習をしてきましたか。確かに、EJUはマークシート方式です。受験のテクニックで解けてしまう問題もあります。マークシート方式のテストの特性に合わせた勉強だけで結構な点数を取って進学していった学生も実際にいます。しかし、そういう学生たちは、考えに考えて自分なりの答えにたどり着き、それを関係する人々に示し、議論し、より高い次元の問題解決へと登っていく人材を育成する教育に耐えられるでしょうか。

大学院に進もうと考えているみなさんには、大学進学希望者以上にこういう頭脳が要求されます。真の研究には模範解答などないのですから。道なき道を歩むことが、道を切り開きながら前進することが、大学院における研究です。研究の結果、ネガティブな結論に達することもあるでしょう。しかし、それもまた、立派な研究成果なのです。それを乗り越えて新たな地平に光明を見出すには、マークシート的思考では力不足です。

KCPでは、みなさんにこうした普遍的な力をつけてもらうべく、日本語での思考力を鍛える授業に取り組んでいます。時には何かを暗記させることもありますが、それはその彼方にある思考力を得るための一里塚なのです。

みなさん、真の思考力を身に付けて、私たちと日本語で議論しませんか。みなさんがそういう力をつけてもらうためとあれば、我々教職員一同は努力や支援を惜しみません。そして、みなさんと実際に議論できる日を、首を長くして待っております。

本日は、ご入学本当におめでとうございました。

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自己紹介

1月9日(木)

「Tさんですね。では、まず、簡単で結構ですから、自己紹介をしてください」「あ、はい。Tと申します」「…」「…、あの、まだ何か言いますか。誕生日も言いますか」「面接は何のためにするんだと思いますか。面接で大切なことは何ですか」「自己アピールをします」「そうですね。名前や誕生日を言うことは自己アピールになりますか」「いいえ」「じゃあ、何を言えばいいと思いますか。よく考えてください」

毎度おなじみの面接練習の一場面です。突然自己紹介をしろと言われると、上級の学生でも困ってしまうことが多いです。Tさんだってしゃべれないわけではありません。EJUではまあまあ以上の成績を取っています。それでも冒頭のようになってしまうものなのです。

Tさんには自己アピールのネタがないどころか、野球チームのピッチャーとして海外遠征までしています。これを訴えれば、絶対面接官の記憶に残ります。KCPの学生は、どうしてこうも奥ゆかしいのでしょう。面接は自己アピールの場だと頭ではわかっていても、そういうふうに教えられていても、具体的に考えたことがないのだと思います。それじゃあ、コミュニケーション力重視の昨今の面接には勝ち残れません。

Tさんのように語る材料を持っている学生は、その材料をどうまとめ上げるか、進学先での勉強や将来設計とどうつなげるかを考えれば、面接官の心をつかむことができるでしょう。語る材料がない学生は、まず、自分自身を徹底的に振り返らなければなりません。棚卸と言いましょうか、自分を特徴づけるものは何か見つけ出す必要があります。でも、そうやって自分について深く知ることを通して、改めて大学で何を学ぶべきか見つめ直すことにつながると思います。

Tさんはあさってが本番です。ストーリーを組み立て直して面接を乗り切ってくれるものと信じています。

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凍えそう

1月8日(水)

寒い1日でした。東京の最高気温は7.6度で、平年を2度ほど下回り、1年で最も寒い時期の平年気温よりも低くなりました。でも、予報では最高気温18度だったんですよ。10度も違うなんて、派手にはずしたものです。

気象庁のデータを見ると、神奈川県の横浜が8.5度なのに、三浦は16.4度。千葉県の木更津7.7度に対して、君津16.4度。どうやらこのあたりに寒気団と暖気団の境目があったようです。東京はそれよりも幾分北なので、真冬以上の寒さだったというわけです。予報はこの境目がもう少し北上すると踏んだけど、実際には神奈川と千葉を二分するにとどまりました。東西方向に移動する天気の予報はよく当たるけれども、南北方向には弱いという、天気予報の弱点がもろにあらわになりました。

この寒さにもめげず、新入生たちはプレースメントテストに挑みました。来るべき学生はみんな来たとのことですから、立派なものです。

このテストで、中国人学生の多くが、自分の名前をアルファベットで書きました。最近、名前をカタカナで書く学生が増えたと思っていましたが、ピンインで書く学生は見かけませんでした。聞いてみると、どうやら、日本への入国の際にも、区役所で外国人登録をしたときにも、漢字の名前は受け付けてもらえなかったようです。簡体字よりもアルファベットの方がコンピューターへの親和性は高いでしょうが、私たち日本人はWANGよりも王の方がわかりやすいです。学生たちにお願いして、漢字のなめを書いてもらいました。

明日はオリエンテーション、明後日は入学式。学生たちは、卒業するまで初めてKCPを訪れた日の寒さを覚えているでしょうか。

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じじいに手玉に取られて

1月7日(火)

日産のカルロス・ゴーン元会長が海外逃亡して1週間余りがたちました。日本脱出の方法が次第に明らかになってきました。

最初にこのニュースに接した時、入管は何をやっているんだという怒りがこみ上げてきました。留学生には厳しいことを言い続けているくせに、保釈中の容疑者をあっさり出国させてしまったのです。しかも、共犯者たちはわりとあっさり抜け穴を見つけられたと言います。入管とは「出」入国管理庁ですからね、入国のチェックだけでなく出国の管理も厳重に行ってくれなければ困ります。入管職員は全員10%減俸ですね。

それにしても、妻と一緒にお酒を飲んでいるゴーン元会長、ずいぶん年を取りましたね。経営不振の日産に乗り込んできてから20年ほどでしょうか。若さと目力を感じさせられた精悍な顔つきは影を潜め、こずるそうなじいさんがにやけていました。こういう姿に対して「晩節を汚す」という評価を下すのは、日本人の典型的な発想なのでしょうか。日産のお金を自分のものにしていただけでも十分名声が地に墜ちましたが、今回の不正出国で地中深く沈みこんだ感じです。

入管も同じです。荷物の箱がでかすぎるからX線検査をしないなんて、想像だにしませんでした。これじゃあ、犯罪者の高跳び天国じゃありませんか。まあ、要するに、日本のお役所共通の、弱きをくじき強きに屈するパターンですよ。出席率の悪い学生にもビザ更新を認めろとまでは言いませんが、杓子定規な法令解釈によって泣かされている留学生にも目を向けてもらいたいです。

今年はオリンピックイヤーで出入国が激しくなります。ゴーン元会長の例が再発しないように、入管さん、しっかりやってくださいね。

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28日を有効に

1月6日(月)

今回のお正月休みは、12月28日から始まりました。この“28日”というのが大きいのです。多くの博物館は29日から年末年始休館に入るからです。28日にどこを見学するか3つほどアイデアがあったのですが、私が選んだのは根尾谷地震断層観察館でした。

根尾谷断層は、1891年(明治24年)の濃尾地震の際にできました。というか、この断層が生じたエネルギーによってマグニチュード8.0の濃尾地震が引き起こされたというべきでしょう。すでに130年近くたっていますから、断層でできたがけには草が生い茂り、一部は崩されて県道が走っています。しかし、観察館に保存されている地下の地層は、6mの断層の存在を明確に示しています。さすが、「根尾谷断層を研究しない地震学者はもぐりだ」と言われるだけのことはあります。断層トレンチの前にしばらく立ち尽くしました。

…という書き方では、この感激は伝わらないでしょうね。日本語教師の方々なら、そうですねえ、て形が一発で完璧に入ってしまった学習者を教えた時のようなものだと言えば、多少はわかっていただけるでしょうか。“28日”を有効に使うことができたと思いました。

翌日は岐阜城へ。岐阜はよく通るんだけどもじっくり見たことのない町でした。今回は年中無休で営業している岐阜城を目指しました。岐阜城は金華山の頂上にあるので初日の出スポットなのです。

普通は麓からロープウェイで3分ほどですが、2019年最後の大汗をかこうということで、歩いて登りました。私が選んだ登山道は健脚者向けだけあって、険しい道が続き、岩場のようなところまでありました。駅から金華山麓までは厳寒装備でしたが、頂上に着いたときは半袖短パンになりたいくらいでした。

岐阜城の復元天守閣最上層からは、抜けるような青空の下、絶景が拝めました。屏風を立てたような伊吹山、神様がつまんで持ち上げたら本州ごと持ち上がってしまうんじゃないかというような木曽の御嶽山をはじめ、乗鞍岳、恵那山、北アルプス、中央アルプスの山々が見渡せました。もちろん、名古屋の高層ビル群なんか楽勝です。「今年1年のご褒美かな」と思いました。

さて、2020年も年末にこんな感激が味わえるように、仕事に精を出しましょう。

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にぎわう

12月26日(木)

学期休み中だというのに、学生の姿が途切れません。月曜日は期末テストの追試の学生が多かったですが、それ以後は、これから出願の学生が相談に来たり、年明けに入試の学生が面接練習に訪れたりしています。すでに進学が決まった学生の中には、年末年始を国で過ごすべく一時帰国している人もいます。天国と地獄と言っては言いすぎですが、今、職員室で頭をひねっている学生たちは、ここが踏ん張りどころです。

「後期」とか「2期」とか呼ばれる入試は、だいたいどこでも競争が激しいものです。この2、3年は、特にその傾向が強いです。そのため、合格ラインも必然的に上がります。そういう試験に挑まねばならないというプレッシャーに加え、落ちたら帰国という、いわば背水の陣だという緊張感も加わり、学生たちの表情はどこか引きつっています。こちらとしても、このように追い込まれる前に決めてほしかったのですが、現状は現状として向き合わなければなりません。

Xさんは日本の大学をなめていたと反省の弁を述べていました。何人もの教師から滑り止めを考えろと言われ続けていたのに、いわゆる有名大学を受け続けて落ち続け、この期に及んでようやくY大学に出願しました。年明けに行われるY大学の入試は、Xさんが夏から秋にかけて挑んだ大学と、難易度的には大差ないでしょう。でも、ろくな面接練習もせずに本番を迎えた今までの入試とは違い、次はがっちり準備をして臨むと言っていますから、期待していいかもしれません。

もうすぐ「新春」ですが、私たちの春は、春節も越えて、花芽が膨らむころまで待たなければなりません。

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早いもので

12月25日(水)

来週の水曜日は、もう来年です。早いなあと思います。早いなあと思うということは忙しかったということで、忙しかったということが充実していたとつながればいいのですが、そうならないところが今年の大きな反省点です。毎年同じですから、「今年の」というのはうそかもしれません。

相変わらず、授業をたくさんしました。通常授業では、レベル1は代講で1回かそこら入った程度ですが、レベル2と3はクラスにどっぷり入りました。レベル4、5、6は代講も含めて入った記憶がありませんが、7以上は先学期から今学期にかけてげっぷが出るほどやらせてもらいました。

受験講座・理科も、毎学期フル回転でした。でも、そのおかげで、新しい教材作りが思ったほど進まず、来年に積み残しとなってしまいました。こちらは通常クラスよりもずっと小規模で、学生をじっくり見ることを心がけました。心が通じ合った学生がいた一方で、表面的な付き合いで終わってしまった学生もいました。

養成講座はもともと少人数制をうたっていましたから、一人一人の受講生に合わせて理解度を深める工夫をしてきたつもりです。「つもり」が空回りしていたかもしれませんが。

授業の多さを言い訳に使っては負けですが、それ以外の面での学校に対する貢献があまりできなかったと反省しています。あれこれ手を出して食い散らかすばかりでは意味がありませんが、もう少し形を残したかったなあと思っています。

個人的には、今年は風邪を何回も引いたことに体力の衰えを感じました。食事も仕事時間も休みの過ごし方も、去年までと同じように生活してきたはずですが、風邪をひいたということは抵抗力が落ちたのでしょう。そういう意味で、寂しく感じた1年でした。

まあ、でも、無事に年末を迎えることができたのですから、いい1年だったのでしょう。

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ある帰国

12月24日(火)

Yさんが退学しました。先学期私のクラスだった学生で、出席率についてさんざん注意したのですが、結局出席率が向上することなく、帰国することになりました。

確かに、Yさんは病弱でした。風邪をひきやすいし、ひくと熱を出し、それも普通の人より高い熱を、そして、なかなか治りませんでした。でも、元気なときでも朝なかなか起きられず遅刻が目立ったのは、どこかに怠け心が巣食っていたからだと思います。

だから、このまま日本で勉強を続けるのは無理だから一刻も早く帰国して再出発した方がいいと私がYさんに言ったのは、先学期の期末テスト後でした。その時は「やめろ」「やめない」の言い合いになり、学校側はYさんを強制的にやめさせるだけの材料はなかったので、勉強の継続を認めました。

今学期に入って、10月は出席率100%でした。私の説教が効いてまじめに出席するようになったのなら、それに越したことはないと思いました。偶然出会った時、「最近、毎日出席してるんだってなあ」と声をかけたら、嬉しそうに少し照れながら「はい」と答えてくれました。担任の先生も、毎日授業に出ているから勉強がわかるようになり、非常に積極的だとほめていました。

しかし、11月に崩れ始め、12月は坂道を転げ落ちるがごとくだったそうです。風邪もその一因です。Yさんはもうすぐビザが切れますが、Yさんの出席率ではビザ更新はほとんど期待できず、帰国を決心するに至りました。私が3か月前にYさんに言った通りの展開となりました。

予想が当たってもうれしくはありません。“Yさんは日本の水に合わなかった”と言ってしまえばそれまでですが、私たちの磁力が足りなかったのかなあとも思います。Yさんが妙な挫折感を抱かぬよう祈るばかりです。

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