Category Archives: 学生

欠席理由

8月26日(木)

JLPTの団体申し込み者の成績が届き、データを見てみた時、あまりの欠席者の多さに愕然としました。しかし、よく調べてみると、海外にいる学生が、7月のJLPTの頃には入国して受験できるだろうと思って出願したのに、実際には入国できずに受験もできなかったという例が、欠席者の3/4を占めました。そういう学生を除き、日本にいたのに受験に行かなかった学生となると、その割合は、むしろ例年より低いくらいでした。

7月のJLPTの申し込みは3月から4月にかけてでしたから、その頃は6月半ばに入国し、7月4日に受験するというプランも現実味がありました。オリンピックもやることだし、選手が入国するなら留学生も入国できるだろうという楽観的見通しを否定はできませんでした。

受験できなかった学生にとっては、受験料が無駄になってしまったこともそうですが、この試験でN1かN2を取って来春進学するという計画が瓦解の危機に瀕していることの方が厳しいです。去年と同じように、秋に一瞬門戸が開き、その時に入国するという道があるのでしょうか。ここ数日、東京の新規感染者数は先週に比べて減っていますが、絶対数は相変わらずです。全国的には右肩上がりのところが多く、全く予断を許しません。

入国できないがゆえに受験できなかった学生の中に、私のクラスのHさんもいました。N1ですからたやすいことではありませんが、何でも吸収しようと意欲的なHさんなら手が届かなかったとも限りません。初級ですがオンライン授業で実力をグングン伸ばしていたMさんやWさんだって、N2を受けていたら結果が楽しみでした。

最大の問題は、日本にいたのに受験しなかった学生どもです。感染予防にかこつけたのではないかと疑いたくなる名前もちらほら。海外で切歯扼腕している学生たちに比べたら、ずっと恵まれているのに…。

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さんななめよん

8月25日(水)

我が社は3:1の割合で、パート社員が多い――これは中級の漢字の教科書に載っている例文です。3:15は読めても、3:1は読めないだろうと思い、「さんたいいち」と教えてあげました。ZOOMの画面は、全学生がメモを取っている様子を映し出していました。ここまで準備すれば、この文は誰でも読めるはずです。現に、私が指名したLさんはすらすら読んでくれました。

「じゃあ、Lさん、3:1の割合ということは、この会社はパートの社員がどのくらいいるんですか」と聞いてみました。75%という答えが返って来ればいいことにしていましたが、Lさんの答えは「さん、ななめ、よん」。教室のホワイトボードに大きく「3/4」と書いたら、Lさんは盛んにうなずいていました。

その「3/4」を指さして、「誰か、これ、読める人」と聞いても反応なし。「Wさん、あなたは理科系だから読めるでしょう」と、6月のEJUでも優秀な成績を収めたWさんを指名しました。しかし、「読めません」と一言。しょうがないので、「よんぶんのさん」と大きく板書しました。そして、「これは小学生でも読めます。大学や大学院に進学して“さんななめよん”なんて言ってたら恥ずかしいですよ。というか、話が通じません」などと脅している間に、こちらもみんなノートに書き写しているようでした。

中級ともなれば、けっこう小難しい表現も勉強し、それを作文などで応用する学生も出てきます。しかし、分数が読めなかったり、足の裏がわからなかったりというように、意外な落とし穴をかなり抱えています。これをお読みの日本人のみなさん、「さんななめよん」などと言っている外国人を見かけたら、優しく接してあげてください。学校の授業ではなかなかそこまで手が回らないのです。

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日本にいているうちに

8月24日(火)

中間テストの採点をしていたら、Wさんが「…日本にいているうちに…」という誤答をしているのを見つけました。「います」に「ています」をくっつけるとは妙に凝ったことをするなあと、逆に感心してしまいました。

その後数人の答案を採点し、Gさんの答案を採点していくと、なんと、「…日本にいているうちに…」という答えがあるではありませんか。Wさん、Gさんの前に何十人もの学生の答案を見てきましたが、「…日本にいているうちに…」と書かれた答案は1枚もありませんでした。もちろん、その後も現れませんでした。

なんとなくこの2人の答案はリズムが似ていると思って、まさかと思いつつも調べてみると、他の誤答も含めてほぼ同じでした。もしやと思って個人データを開いてみると、2人はルームメートでした。試験の最中は気付きませんでしたが、2人が相談したことは疑いようがありません。さらに、他の教科の答案でも、極めて疑わしい類似性が確認されました。

WさんもGさんも、できない学生ではありません。きちんと勉強すれば十分合格点は取れたはずです。しかし、ほんの出来心か、自室で受けられるという気楽さからか、あらぬところで協力体制を築いてしまったようです。こちらも試験時間中ZOOMの画面を通して監視していましたが、教室での試験に比べたら、目の届かぬ範囲が広すぎます。

この2人への対応も難しいです。現行犯じゃありませんし、オンライン説教じゃ迫力半減だし、かと言って何も手を打たないわけにもいきませんし、頭が痛いです。万が一、入学試験でこんな妙ちくりんなことをしたら、一生を棒に振りかねません。さて、どうしましょうか。

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特徴をつかむ

8月10日(火)

全面オンラインになり、1週間が過ぎました。学生たちのマスクの顔にいくらか慣れてきて、多少は顔の区別がつくようになったころにオンラインが始まりましたから、当初は、マスクを着けていない学生たちの顔がとても新鮮でした。マスクの顔から想像がつく顔もあれば、「えっ、あんた、こんな顔してたの?」って言いたくなるような顔もありました。学生たち同士はどうだったんでしょうね。

今学期は2つの同じレベルのクラスを受け持っています。オンライン授業になってから、どちらのクラスで何を教えたか、ごちゃごちゃになっています。作文と読解は教えるクラスが決まっていますから問題ないのですが、文法や漢字や聴解は両方のクラスで教えますから、混乱がはなはだしいです。対面授業の時は、マスクの顔は特徴がないとはいえ、この聴解はこちらのクラスでやったとか、文法でこの練習をしたのはあっちのクラスだとか、どうにか区分けができました。しかし、オンラインになって、学生の顔の特徴がよりはっきりしたにもかかわらず、わけが分からなくなってきているのです。

こうしてみると、実際に会うということのインパクトを改めて感じずにはいられません。オンラインで何でも仕事が進むようになっても、最後の決め手は対面だと言っている人が結構いるのもよくわかります。私たちは知らず知らずのうちに、何らかのオーラを発しているのでしょうか。

こういう状態がまだ当分は続きそうです。モニター画面の学生の顔を精一杯大きくして、クラスごとのカラーの違いを感じ取っていきましょう。

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目標

8月7日(土)

今週の作文の採点をしました。中級クラスの作文は、論理的な文章が書けるようになることが目標です。EJUの記述や入試の小論文を念頭に置いた目標設定です。私のクラスのみなさんは、ある程度そういうことが意識できるようです。どうしようもない学生もいましたが、大半の学生は論理が破綻することなく結論まで至っていました。

しかし、これだけで「よかったね」というわけにはいきません。中級の作文の本筋からはいくぶん外れますが、何人かの学生が書いていた「(進学するために)知識を覚える」という意味の表現です。

入試に通るためには、確かに知識が必要です。私だって、受験講座で「これはそのまま覚えてください」と学生に向かって言うこともあります。“元素記号Cは炭素である”というのは、知識と言えばまさにその通りです。

しかし、それを作文に堂々と書いてしまうのはどうなのでしょう。「知識を覚える」のは、コンピューターの仕事です。覚えるだけなら、AIよりも1世代か2世代古いコンピューターが得意としたことです。ですから、「知識を覚える」と書いた学生には、たとえ文章全体の評価は高かったとしても、「キミは20世紀のコンピューターと競い合いたいのかね」と言ってやりたいです。

出願書類の志望理由書や学習計画書にこれを書く学生が、毎年何人かいます。大学・大学院などの高等教育機関・研究機関は、知識を覚える場ではなく、発想力を鍛える場です。知識は果実ではなく、種か苗です。知識を学ぶために進学するのだとしたら、将来はAIの僕です。AIを使い倒す仕事をしたかったら、そこからなにがしかの発展がなければなりません。

今から知識を覚えることにとらわれているようでは、先が見えています。この作文を返すときには、そういう点にも触れておこうと思っています。夏の盛りが過ぎたら受験シーズンですからね。

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最大の問題は

8月5日(木)

9月になると、大学の指定校推薦の出願が始まります。学生が出願に必要な書類をそろえるのに必要な時間を考えると、今すぐ募集して、夏休み前ぐらいに校内面接をした上で、9月出願の大学に推薦する学生を決めなければなりません、そういうわけで、今週から指定校推薦の案内をしています。

Cさんが、S大学の指定校推薦に興味があると言ってきました。出席率やEJUの成績など、S大学が提示している推薦条件は満たしています。もちろん、S大学はCさんが勉強したいと思っていることが勉強できます。

このまま指定校推薦入学の校内審査に応募するかと思いきや、S大学の前にR大学を受けると言います。そして、R大学に受かったらそちらに進みたいとのこと。合否発表が10月下旬で、「否」だったらS大学の指定校推薦に応募するというのがCさんの本当の希望のようです。S大学は第2志望で、その大学がたまたま指定校推薦をしているので、一丁やってやるかというのが本音なのでしょう。

それも困ったものなのですが、さらに大きな問題があります。Cさんの日本語です。EJUの日本語みたいな4択問題なら点が取れるのですが、話したり書いたりとなると、発音や文法がボロボロで意味不明になります。上述のやり取りも、相手が私ですからどうにか通じたのであり、S大学やR大学の先生だったらCさんの考えは全く通じないに違いありません。昨日の作文は、その私ですらさじを投げてしまいました。「何を言っているかわかりません」と書いて、Fを付けました。

Cさんには、大学に入りたかったら話し方の特訓が絶対必要だと言っておきました。志望理由書は教師の添削で何とかできても、面接の受け答えはごまかしようがありません。Cさんはどんな結論を出すのでしょうか。

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やさしくない

8月4日(水)

オンライン授業だと、テストや例文や作文や宿題プリントなど、毎日何枚もの文書を学生に提出させます。志望理由書や小論文など、入試では手書きの書類や答案を要求するところが多いですから、学生たちに手書きを忘れさせないようにと、授業関連の提出物も手書きがほとんどです。ノートなどに手書きしたものを写真に撮り、それをメールで送らせるのです。

テストや宿題などを提出させたら、教師はそれをチェックしなければなりません。学生は自分の分だけで終わりですが、教師はクラスの人数分だけ目を通し、時には添削しなければなりません。紙ならばボールペンを走らせてどんどんチェックしたり採点したりできますが、写真で送られてきた答案などを採点したり直したりするとなると、確かに便利なアプリも出ていますが、大いに苦労させられます。老眼をしょぼつかせながら学生からの提出物に朱を入れるのは、かなりの重労働です。去年はそこまで技術が進歩していなかったので、デジタルなやり取りが大半で、こういう苦労はあまり感じていませんでした。

その重労働に拍車をかけるのが、学生が送ってくるファイルの名前です。スマホでノートの写真を撮って、それをそのまま送ってくる学生が大半です。すると、数字とアルファベットが組み合わせられた無機質ななまえのファイルが続々と届きます。若手の先生がシステムを組んでくれて、学生ごとの振り分けはできるようになっています。しかし、各学生のフォルダには同じようなファイル名がずらっと並びます。

オンラインの初日に、「作文0804」のように、中身がわかるファイル名を付けるように指導したのに、それを守っているのはほんの一握りの学生です。そういう学生は、概して優秀です。さらに、ファイルが細切れになっている例も目立ちます。1つのテストの答案を、ご丁寧に3つに分けて送ってきた学生もいます。3つ組であることがわかるようなファイル名ならまだしも、例の意味不明なファイル名ですから、見つけ出すだけでけっこうな労力が必要です。そういうのに限り、順番がばらばらだったり、ノートがあさっての方を向いていてそれを直すのにひと手間かかったりするのです。

こんなところにも学生の人間性が現れると言ったら言い過ぎかもしれません。でも、オンラインが始まってたった3日で、学生のやさしさのなさを痛感させられています。

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実力養成

8月3日(火)

先学期から化学の受験講座を受けてきた学生の授業が一通り終わりましたから、まとめの問題をしました。どのぐらいできるのだろうかと楽しみにしていましたが、授業のほとんどが私の解説になってしまいました。ZOOMの画面に映る顔を見ていると、初めて聞くかのようにうなずいている場面もありました。

やっぱり、演習をしないと知識の応用はできないものです。今回も、そういう意味も込めて、似た出題傾向の問題もたくさん揃えています。1つの事柄に対し、違った角度から出された問題に取り組むことにより、その事柄への理解も深まります。今まで見逃してきた気付きもあるでしょう。それを確実に取り込むことによって、真の実力をつけてもらいたいと考えています。

化学に限らず、問題は最後まで解ききることが、きちんと答えを出すことが肝心です。実力を伸ばすには、そういう地味な努力が必要です。この点をなかなか理解してくれない学生が多くて困ります。その点、うなずきすぎるくらいうなずいてくれる学生は、伸びしろがありそうです、その気持ちを受験の本番まで維持させること、安易な道に向かわせないようにすることも、私の仕事です。

とはいえ、東京の感染状況を見ていると、果たして入試がきちんと行われるのか、心配になってきます。昨シーズンは大学側も受験生側もうろたえていた面がありました。今シーズンは良くも悪くも慣れてきましたから、少しは落ち着きが見られると期待しています。想定を上回る状況となれば、何がどうなるかわかったものではありません。

何がどうなってもいいように、学生たちに自信を与えていきたいです。

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はい上がるために

8月2日(月)

ついに、今学期も、全面オンライン授業に、私の感覚では、転落してしまいました。毎日3千人じゃ、限界ですね。海外に大事なお子さんを送り出している親御さんの気持ちを考えると、無理押しはできません。

今の学生たちは、入学以来どこかでオンライン授業を経験しています。だから、オンライン授業のやり方そのものや雰囲気や長所・短所といったことはわかっていると思います。長所を生かすことはもちろんですが、いろいろな形のオンライン授業を受けてきたのですから、短所をいかに補うかもしっかり認識しておいてもらいたいところです。私たちもより良い授業をと研究工夫を重ねてはいますが、私たちの力だけでは完璧にはなりません。学生も補完すべきところは補うことで、自分の受けた授業をより価値のあるものとすることができるのです。

文法で、「コロナが流行して以来、~するようになりました」という例文を作らせました。「~マスクをするようになりました」「~毎日手を消毒するようになりました」「~家で食事するようになりました」「~家で映画を見るようになりました」など、学生の生活がにじみ出る例文が出てきました。“家で”の例文からは、ステイホームが徹底されていることがうかがえます。

私だったら、マスクと消毒は学生に言われちゃったから、「~朝、電車に乗った時、窓を開けるようになりました」が一番かな。冷暖房の季節でも、換気が優先です。それに、朝、私が窓を開けておけば、その電車が車庫に入るまでずっと開いているでしょうから、感染拡大防止にささやかに貢献しているつもりです。

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7月31日(土)

Fさんは努力家です。教室では一番前に席を取り、板書は漏らさずノートに撮っています。クラス全体に問いかけると、真っ先に答えてくれます。いつも正しい答えというわけではありませんが、課題に真剣に取り組んでいることがよくわかります。もちろん、宿題を忘れたことなどなく、予習復習をきちんとしていることは疑いありません。

しかし、そのFさんには弱点があります。それは濁点です。濁点の有無のせいで満点を逃した漢字テスト、丸がもらえなかった文法例文、そういった残念の残骸が多数あります。Fさん自身も気づいているに違いありませんが、なかなか直せないようです。

午前中、そのFさんの作文を読みました。今週の課題は創造的な文を書くということで、字数は400~500字でした。クラスの多くの学生が、400字に達しないか、400字になるや終わりにしてしまっているのに対し、Fさんの作品は原稿用紙3枚に及びました。それも、文章がだらだらと続いた挙句の3枚ではなく、創造性たっぷりの文章でした。そこは大いに評価できるのですが、文章が長くなるのに比例して、濁点のミスも増えているのはいただけません。

文意が不明になるような致命的な間違いはありませんが、日本語教師の悲しい性で、濁点の過不足があるたびに立ち止まってしまい、一読しただけではFさんの文章の良さが伝わってきませんでした。濁点を修正した作文を改めて読み直して、ようやくうなり声をあげるのです。

Fさんは、おそらく、日本語の音が正確につかめていないのでしょう。それゆえ、発音も清音と濁音の中間ぐらいになっているのではないかと思います。しかし、マスク越しで、しかも換気のため開け放った窓から外の音が入ってくるとなると、教師がその微妙な発音を確実に捕らえて注意し、言い直させるというのは、至難の業です。

来週からまたオンライン授業です。Fさんのような学生も力を付けていけるような授業を作りたいです。

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