Category Archives: 進学

にわか雨に降られて

9月11日(金)

密にならないうちに早めにお昼を食べに行こうと、職員室の窓から空を見上げると、いやな色の雲が広がっていました。念のために折り畳みを持って出かけました。

天ぷらをいただいて、食休みに昨日から電車の中でも読んでいる新選組の短編集を少し読んで店から出ると、ちょうど雨が降り出したところでした。アスファルトに当たった雨粒が跳ね上がるほど強い降りで、傘を持っていない人たちが雨宿り先を探して走り回っていました。折り畳みが無駄にならなかったのはいいのですが、もう少し小説を楽しんでいればよかったなあと思ったほどのにわか雨でした。学校まで5分かかるかかからないかでしたが、ズボンの裾はびっしょり濡れました。

雨は学校に着いて程なくやみました。30分も降っていませんでしたがけっこうな雨量だろうと思って気象庁のページを見ると、東京(千代田区)、練馬、府中、世田谷の新宿を取り囲む4地点のアメダスには降水が記録されていませんでした。雨雲の動きを見てみると、確かに新宿付近を強い雨雲が南から北へ通過していました。そこで、神奈川県の日吉、相模原中央、埼玉県のさいたま、越谷のアメダスの観測値も見ましたが、やはり降水量は0.0ミリでした。つまり、雨雲はアメダスの計測点を巧妙に避けて移動したため、私が遭遇したにわか雨は、気象庁のデータ上は、存在しなかったことになっているのです。

へーと思っていたら、TさんがK大学を受けるという噂が流れてきました。そんなそぶりは全然していなかったのに。毎年、こういう教師にとって寝耳に水の受験があります。受験日直前に面接練習をしてくれと言われて初めて気付き、すでにしょうもない志望理由書を出願書類として提出した後で、絶望的な気持ちで特訓するというパターンです。今回はどうにか事前にキャッチできましたが、中にはお昼の雨雲みたいに情報網をすり抜けて、落ちた時点で発覚というのもよくある話です。今年の入試は何があるかわかりませんから、こういう例はなくしたいです。

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難物

9月10日(木)

HさんはM大学のコミュニケーション関連の学部を目指しています。日本以外の外国でも暮らしtことがあり、異文化コミュニケーションに興味があるので、大学でもその方面の勉強をしたいと言っています。

ですから、「国を離れて外国で暮らした時、どんなところに異文化を感じましたか」と聞いてみました。すると、「食事と文化と生活方法に感じました」という答えが返ってきました。「もう少し具体的に言うと?」「A国の人は早起きでした。日本は通勤電車が混んでいます」という調子で、議論がかみ合いませんでした。こんな基本的なツッコミで焦点がぼやけた答えしかできないようでは、M大学に手が届きそうもありません。

異文化コミュニケーションという響きのよいカタカナ言葉にあこがれているのでしょう。あこがれも専門分野を選ぶきっかけにはなりますが、あこがれのままで熟成させることなく入試に臨んだら、合格の目はありません。Hさんは、これから出願までの間に、異文化コミュニケーションの何たるかを勉強し、大学で何を学ぶか自分の頭の中で組み立てなければなりません。

ロボットを作りたいというだけのCさんも、議論が深まらない学生です。どんなロボットかと聞いても要領を得ませんし、機械工学科で機械を勉強したいと訴えられても、聞き手は困ってしまいます。Cさんの頭の中には何かがあるのでしょうが、それがこちらには漠然としか伝わってきません。こちらも、徹底した脳内改革が必要です。

出願の山場に向かって、この手の学生が続々と現れてきそうです。繁忙期到来です。

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台風10号は去ったけど

9月7日(月)

台風10号は、大騒ぎをした割には大きな被害をもたらさずに九州の西の海上を通り過ぎていきました。いや、大騒ぎして避難したり建物の補強をしたり交通機関を止めたりダムの放流をしたりしたため、被害が抑えられたと考えるべきでしょう。それでも土砂崩れなどによって人的被害が発生しました。7月の豪雨は、大騒ぎする以前に洪水になってしまったため、多数の死傷者が出たのです。

事前に「危ない、危ない」と言って何らかの手を打ち続ければ深手を負わずに済むというのは、受験の世界でも同じです。毎年卒業式間際までどころか卒業式を過ぎてからも試験を受けまくる学生は、スタートが遅い学生か自分の実力を直視しない学生です。

Kさんは9月になったのに自分のしたいことがよくわからないと言います。漠然と理科系、その中で電気か機械かなあという程度です。非常に危ない状況です。いくつかの大学を見繕ってKさんに示すことにしました。半分強制的に考えさせないと、最後まで残ってしまうでしょう。

Sさんはすでに志望校を数校選んでいます。その選び方も、難易度を散らしていますから理にかなっています。ただ、大学によって微妙に志望理由を変えなければならないところに苦労しています。やりたいことは決まっていますが、それと完全に一致する大学学部学科はほとんどなく、やりたいことのある部分に焦点を合わせて志望理由を書くということをしていくわけです。でも、道筋は見えていますから、油断さえしなければ、年末ぐらいまでにはきっと収穫があるの8ではないかと見ています。

明日はCさんの進学相談を受けることになりました。CさんはSさんに近い部類ですから、出願校の組み合わせについての話になりそうです。これから、私のところには続々と台風が襲ってきそうです。データを整えて準備しておかなければ…。

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嵐の前の静けさ

9月5日(土)

進学指導用の資料を作るために、いくつかの大学のデータを調査・比較しました。個々の大学の学部や学科の構成は、外からもわかりやすいというか、目にする機会も多いですから、“うん、そうだね”という程度です。でも、何校かの学部や学科を並べると、改めて新しい学部が増えたなあと思いました。

私が受験生だったのは40年以上も昔ですから、その頃は工学部とか経済学部とかという古典的な学部学科名ばかりでした。その代わり、名前を聞けばどんな勉強をするかだいたい見当がつきました。しかし、最近は一筋縄ではいかない名前の学部学科が増えました。また、似たような学部名でも勉強する内容がだいぶ違うという例もあります。学生に進路を誤らせないようにするには、指導する側もしっかり勉強し、データをアップデートしておかなければなりません。

それから、学部卒業後の進路に考えさせられました。まず、文科系学部の大学院進学率の低さです。国立大学ですら1桁%にとどまります。文科系大学院生の大半が留学生だという話はよく聞きます。理科系も、よく調べてみると思っていたよりも低く、50%程度でした。日本は先進国の中でいちばん学歴の低い国だというのも事実かもしれません。

新しい名前の学部が増えたのは、学際的分野の研究が進んだからでしょう。文学とか農学とかという前世紀のくくりでは収まらないほどに研究範囲が広がったのです。でも、それなら、学部の4年間だけではその範囲を学びきることなんてできないんではないでしょうか。「広く浅く」では、大学は教育の責務を果たしたとは言えません。また、学ぶ側も真に価値のある教育を受けたことにはなりません。4年のうち1年ぐらいは就活に費やされるんですから、なおさらです。

東京は、台風10号の影響もなく、暑いですが穏やかな1日でした。大きな嵐が近づいているのにのうのうと暮らしているあたり、低学歴なのに気づかず世界と競争することになる日本のようです。

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次の一手

9月4日(金)

XさんはA大学の指定校推薦の校内審査に応募したのですが、残念ながら通りませんでした。推薦してもいいレベルでしたが、推薦枠が少なく、出席率でも成績でもXさんを上回る学生がいたため、落とさざるを得ませんでした。

通ったGさんには指定校推薦で進学することの重みを説き、決して楽な入試制度ではないことを言って聞かせました。Gさんは手堅い性格ですから、浮かれすぎて失敗することはないでしょう。これからは入試の面接の準備をしていきます。

Xさんに対しても、落として終わりという冷たい仕打ちはしません。すぐさま進学相談に乗りました。Xさんは去年の11月のEJUを受けていませんから、今、出願するとなると、EJU不要で行ける大学を選ばなければなりません。そういう大学はあまり多くありませんが、Xさんはその中からN大学を選び、出願準備を始めました。

指定校推薦の被推薦者に選ばれなかったことで、Xさんは焦りと不安を感じているようです。早く合格を決めたいと言います。N大学のほかにも11月のEJUの前に出願・受験できる大学を知りたいとのことでしたから、私も調べてみました。2校ほど、Xさんの勉強したいことが勉強できそうな大学が見つかりましたから、知らせてあげました。「早く動け」とは常々言ってきましたから、それを実践しているXさんの力になってあげたいです。

今年の入試はイレギュラーですから、どこでどんなどんでん返しがあるかわかりません。番狂わせもきっと起こるでしょう。でも、「強いやつが勝つ」を信じて、こういう時こそ本当の力をつける授業をしていきたいです。

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泣く前に

9月1日(火)

K先生の代講で、中級の大学進学クラスに入りました。大学進学を目指しているにしては勉強のしかたが甘いと、このクラスに入っている先生方から聞かされていました。授業をしてみると、予習をしていなかったり、していても通り一遍だったりで、確かに先生方のおっしゃる通りだと思いました。

どうしてこうなったかというと、他流試合が不足しているからだと思います。このレベルの学生は、例年なら、6月のEJUの結果にショックを受けて、尻に火が付いているはずです。しかし、今年はそれがなく、その代わりにいくつかの外部試験を受けるように勧めてきましたが、受験者数はそれほどでもありませんでした。その試験の結果が大学入試には使えないからでしょう。そうじゃなくて自分の力を知るためだと力説しても、学生たちの心にはなかなか響きません。唯一、校内実力テストがほぼ全学生の受けたテストですが、「校内」なので、その結果のインパクトは今一つ弱いようです。

授業中にちょっと突っ込んだ質問をするとすぐ答えに詰まるというのが気になりました。私の質問のしかたが、K先生をはじめとするこのクラスの先生方とは違うという面もあるでしょう。でも、漢字の語彙として出てきた「満潮」の対義語ぐらいは調べてきてほしかったなあ。

おそらく、このクラスの学生たちは、かなり高いレベルの大学を志望校としているに違いありません。このまま放置しておいたら、私大入試第一陣の結果が出るころには、いたるところで悲鳴が上がっていることでしょう。最近は言ったいろいろなクラスで同じようなことを感じています。学生たちにそうさえないよう、手立てを考えなければなりません。

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可能性を求めて

8月28日(金)

先月の大学・大学院の進学フェアに続き、専門学校の進学フェアが開かれました。今年は、4月以降、人の行き来に関しては実質的に鎖国状態ですから、新しい学生が入ってきていません。そのため、学生数も例年の半分ぐらいです。また、その在校生も多くが大学・大学院志望ですから、現時点において専門学校を第一志望とする学生は多くありません。

でも、毎年、秋から冬にかけて、学生たちは悩むのです。自分は本当に大学や大学院に進学したいのだろうかと。自分の本当にやりたいことは大学や大学院にあるのだろうかと。そして、考えに考え抜いた末に、専門学校に進路を変える学生が必ずいます。

Cさんもそんな学生でした。MARCHぐらいの経営学部か商学部を目指していましたが、夏の入り口ぐらいから悩み始めました。学校を休むことすらありました。写真が好きで、そちらの勉強をする夢を捨てきれなかったのです。そして、夏にあったD専門学校の写真コンテストに応募し、見事に入選しました。そこからCさんは、専門学校進学を本気で考え始め、親とも激論を交わし、最終的にD専門学校に進学しました。

今年はほとんどすべての行事が中止になってしまいましたから、Cさんと同じ道を歩むことは難しいです。しかし、学生たちに道は1本しかないと思い込まないでほしいです。いくつかの可能性を持っておいたほうが、明るい未来につながるのではないでしょうか。

進学フェアにいらっしゃったD専門学校の方が、Cさんは成績優秀で大いに活躍していると教えてくださいました。きっと充実した留学生活を送っているのでしょう。

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目標を見据えて

8月26日(水)

超級クラスの授業で、東大の学生は目標を明確にしてそれに向かっているという内容の生教材を読みました。毎日、何となく生活しているのではなく、具体的な数値目標を立ててそれを達成するよう努力を重ねていると書かれていました。

超級の学生たちに聞いてみると、ぼんやり生きているわけではありませんが、生教材に書かれていたほどの意識には達していないようでした。普通はそうでしょうね。社会人になれば数値目標だらけで頭が痛くなってしまいますが、学生でそれがきちんとできる人はまれでしょう。逆に言えば、そういうことができたから、他から抜きんでて、東大に入れたのでしょう。

“EJUの日本語で360点”など、ほどほどの期間の目標は立てやすいです。しかし、その目標に到達するために、毎日何をどう積み重ねていくかとなると、緻密な頭脳が要求されます。「1日ぐらいサボってもいいか」の繰り返しが、目標の未達をもたらします。目標の切り下げが度重なることが挫折です。

入学した時は、みんな国立とか早慶とかと言います。そう言った学生の中で、日々の目標を掲げ、一歩ずつ確実に前進し続けられる学生は、残念ながら、非常に少ないです。超級の学生たちは、その中でもよじ登り続けられた精鋭と言ってもいいでしょう。確かに今は東大の学生のレベルには及びませんが、背伸びすれば手の届く範囲にいると思います。だから、この記事に刺激されて、その背伸びをしてもらいたいのです。

クラスの中には東大を志望校としている学生もいます。その後押しになればと思っています。

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暑いけど、秋

8月25日(火)

夕方、GさんがN大学の出願書類を持って来ました。最近はコンピューターで書類を作成するのが主流ですが、それをプリントアウトさせて紙の形で郵送提出を求める大学も少なくありません。不思議だなあと思う反面、書類の書き方や扱い方で受験生の人となりのかけらでも知ろうという気持ちもわからないではありません。Gさんにしてはきれいな字で書かれた書類を見て、これならそのまま提出してもN大学の先生方に不快感を与えるものではないだろうと思い、すぐ出すようにと指示しました。

それからGさんは、T大学の志望理由書の下書きを見てくれと頼んできました。目を通すと、志望理由書の形にはなっていますが、インパクトがありません。最後の最後になって、やっと、Gさんの大学での勉強のキーワードともいえる言葉が出てきました。それが他の言葉に埋もれて、さっぱり見えなかったのです。

それに対して、Gさんがきっかけと称する子供の頃の昔話がやたらと長いのです。お父さんとの思い出話よりも、将来の夢を語らねばならないのに、Gさんの志望理由書は年寄りの回顧録のようです。T大学で何を勉強したいのか、どうもはっきりしません。

そういう点を指摘すると、「研究計画書みたいですね」とGさんは言いました。いや、そうなんです。志望理由書とは、こういう勉強がしたいからこの大学に入るという決意表明でもありますから、研究計画書の要素があって当然です。学習計画書という形でそれを提出させる大学もあるくらいですから、志望理由書が大学入学後4年間の計画表になったとしても、何らおかしいことはありません。

6月のEJUがない受験シーズンが本格化してきました。まだまだ暑いですが、受験の秋は始まっています。

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課題山積

8月24日(月)

新聞報道によると、留学ビザを持っている人たちの入国制限が、近い将来、緩和されるかもしれないとのことです。まずは国費留学生からとなるようですが、これが私費留学生にも及べば、日本語学校にとってはありがたい限りです。久しぶりに新入生がやってきそうな気配がわずかながら立ち始めました。

とはいえ、国が正式に発表した内容ではなく、憶測の範囲を出るものではありませんから、喜び過ぎは禁物です。それに、たとえ入国ができるようになったとしても、2週間の自宅待機が義務付けられるでしょうし、そもそも日本政府が「緩和」を発表したところで航空便がないかぎり入国もままなりません。今すぐに政府決定がなされたとしても、10月期の始業日に間に合うかは非常に疑問です。

それに、中途半端な時期に入国し日本語学校に入学すると、日本で思うように進学できないおそれも伴います。日本語学校に在籍できる期間は最長2年間ですが、大学など高等教育機関の入学時期が4月のままだと、来年1月に入学した留学生は再来年の4月にどこかに進学しなければなりません。本来だったら丸2年日本語を勉強して十分に日本語力を伸ばした上で入試に臨めるのに、その前に勝負しなければならないかもしれません。秋入学のテンションがぐっと下がってしまいましたが、今からでもどうにかならないものでしょうか。

とはいえ、これは日本で新規感染者が少なくなることが前提です。毎日1000人とかというレベルで推移していたら、海外から日本への渡航が禁止されるかもしれませんし、親御さんが大事なお子さんを送り出そうとは思わないでしょう。そう考えると、まだまだ道のりは遠そうです。

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