Category Archives: 進学

目標を見据えて

8月26日(水)

超級クラスの授業で、東大の学生は目標を明確にしてそれに向かっているという内容の生教材を読みました。毎日、何となく生活しているのではなく、具体的な数値目標を立ててそれを達成するよう努力を重ねていると書かれていました。

超級の学生たちに聞いてみると、ぼんやり生きているわけではありませんが、生教材に書かれていたほどの意識には達していないようでした。普通はそうでしょうね。社会人になれば数値目標だらけで頭が痛くなってしまいますが、学生でそれがきちんとできる人はまれでしょう。逆に言えば、そういうことができたから、他から抜きんでて、東大に入れたのでしょう。

“EJUの日本語で360点”など、ほどほどの期間の目標は立てやすいです。しかし、その目標に到達するために、毎日何をどう積み重ねていくかとなると、緻密な頭脳が要求されます。「1日ぐらいサボってもいいか」の繰り返しが、目標の未達をもたらします。目標の切り下げが度重なることが挫折です。

入学した時は、みんな国立とか早慶とかと言います。そう言った学生の中で、日々の目標を掲げ、一歩ずつ確実に前進し続けられる学生は、残念ながら、非常に少ないです。超級の学生たちは、その中でもよじ登り続けられた精鋭と言ってもいいでしょう。確かに今は東大の学生のレベルには及びませんが、背伸びすれば手の届く範囲にいると思います。だから、この記事に刺激されて、その背伸びをしてもらいたいのです。

クラスの中には東大を志望校としている学生もいます。その後押しになればと思っています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

暑いけど、秋

8月25日(火)

夕方、GさんがN大学の出願書類を持って来ました。最近はコンピューターで書類を作成するのが主流ですが、それをプリントアウトさせて紙の形で郵送提出を求める大学も少なくありません。不思議だなあと思う反面、書類の書き方や扱い方で受験生の人となりのかけらでも知ろうという気持ちもわからないではありません。Gさんにしてはきれいな字で書かれた書類を見て、これならそのまま提出してもN大学の先生方に不快感を与えるものではないだろうと思い、すぐ出すようにと指示しました。

それからGさんは、T大学の志望理由書の下書きを見てくれと頼んできました。目を通すと、志望理由書の形にはなっていますが、インパクトがありません。最後の最後になって、やっと、Gさんの大学での勉強のキーワードともいえる言葉が出てきました。それが他の言葉に埋もれて、さっぱり見えなかったのです。

それに対して、Gさんがきっかけと称する子供の頃の昔話がやたらと長いのです。お父さんとの思い出話よりも、将来の夢を語らねばならないのに、Gさんの志望理由書は年寄りの回顧録のようです。T大学で何を勉強したいのか、どうもはっきりしません。

そういう点を指摘すると、「研究計画書みたいですね」とGさんは言いました。いや、そうなんです。志望理由書とは、こういう勉強がしたいからこの大学に入るという決意表明でもありますから、研究計画書の要素があって当然です。学習計画書という形でそれを提出させる大学もあるくらいですから、志望理由書が大学入学後4年間の計画表になったとしても、何らおかしいことはありません。

6月のEJUがない受験シーズンが本格化してきました。まだまだ暑いですが、受験の秋は始まっています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

課題山積

8月24日(月)

新聞報道によると、留学ビザを持っている人たちの入国制限が、近い将来、緩和されるかもしれないとのことです。まずは国費留学生からとなるようですが、これが私費留学生にも及べば、日本語学校にとってはありがたい限りです。久しぶりに新入生がやってきそうな気配がわずかながら立ち始めました。

とはいえ、国が正式に発表した内容ではなく、憶測の範囲を出るものではありませんから、喜び過ぎは禁物です。それに、たとえ入国ができるようになったとしても、2週間の自宅待機が義務付けられるでしょうし、そもそも日本政府が「緩和」を発表したところで航空便がないかぎり入国もままなりません。今すぐに政府決定がなされたとしても、10月期の始業日に間に合うかは非常に疑問です。

それに、中途半端な時期に入国し日本語学校に入学すると、日本で思うように進学できないおそれも伴います。日本語学校に在籍できる期間は最長2年間ですが、大学など高等教育機関の入学時期が4月のままだと、来年1月に入学した留学生は再来年の4月にどこかに進学しなければなりません。本来だったら丸2年日本語を勉強して十分に日本語力を伸ばした上で入試に臨めるのに、その前に勝負しなければならないかもしれません。秋入学のテンションがぐっと下がってしまいましたが、今からでもどうにかならないものでしょうか。

とはいえ、これは日本で新規感染者が少なくなることが前提です。毎日1000人とかというレベルで推移していたら、海外から日本への渡航が禁止されるかもしれませんし、親御さんが大事なお子さんを送り出そうとは思わないでしょう。そう考えると、まだまだ道のりは遠そうです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

進学への道

8月17日(月)

午前中は、中級の学生に向けて進路指導のオンライン授業をしました。現在残っている学生たちは、ほぼ全員が進学希望で、なおかつ来年3月にはKCPを卒業しなければなりません。それまでに、絶対どこかの大学や大学院への進学を決めければなりません。いつまでも夢を見ているわけにはいかないのです。

というわけで、学生たちにとっては厳しい内容の話になりました。ちょっと前に行った実力テストの結果を示して、「超級レベルの学生とみなさんとの間にはこんなに大きな実力差があります。超級レベルの学生と同じ大学を受験して合格できると思いますか」と問いかけました。オンラインでしたから反応がはっきりとはつかめませんでしたが、ショックを受けた学生もいたのではないでしょうか。でも、ここを直視しないと、最終的に泣きを見るのは、学生自身です。

午後は、指定校推薦の学生を決める面接をしました。こちらは上のレベルの学生ばかりでしたから、わりとスムーズに進みました。それでも、認識が甘いところがあり、ちょっと突っ込むと答えられなくなる場面が、推薦希望学生全員に見られました。出願・入試までには少し時間がありますから、これから鍛えていかなければなりません。正確には、鍛える時間も見込んで、早めに学内面接を設定したのです。

それから、土曜日に添削したW大学過去問の答案をDさんに返しました。大筋では間違っておらず、そこそこの点は取れるでしょうが、合格に近づくにはもうひとひねり必要です。そのもうひとひねりを中心に、答案の書き方を指導しました。

夜になっても汗が噴き出る日が続いていますが、暑さになんか負けている暇などありません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

進路指導

8月12日(水)

現在中級の学生は、ほぼ全員、来年の3月にKCPを出なければなりません。日本語学校に在籍できるのは、最長で2年までですから、どうしても進学しなければならないのです。でも、去年の10月に入学した学生は、去年11月のEJUは出願できなかったし、今年6月のEJUは中止になったしで、自分の実力を公平に測ったことがありません。7月入学の学生も、「まだまだ」と思って去年の11月に出願しなかったり、受験しても玉砕だったりで、参考になるデータは、やはりありません。それゆえ、志望校を決める手掛かりがなく、右往左往するか動くに動けないか、いずれにしても宙ぶらりんの状況です。

志望校一つにしても、自分の実力がつかめていませんから、憧れが先行したり、知っている大学名を列挙しただけだったりという学生が少なくありません。どんな大学があるか知らないということも見逃せません。また、大学で勉強するとはどういうことなのかということすら、はっきりと見えていない気がします。

そんな学生たちに進学についての柱となる考え方を植え付けてほしいと、中級の先生方から言われています。そういう話をするのは必要だというか、遅いくらいですが、どんな話をすればいいかとなると、私もこういう状況を経験したことがありませんから、難しいものがあります。ここでぎゅっと押さえておかないと、年が明けてから苦労するのは教師の側もですからね。

だけど、来年の4月には大学が通常の授業ができるくらいに、日本の国自体が回復しているでしょうか。オンラインばっかりだったら、受かったけど帰国する何という学生も出てくるのではないでしょうか。それが学生自身のためになるなら、気持ちよく帰すのも、私たちの仕事だと思います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

90%の壁

8月7日(金)

上級クラスの授業で、最後にちょっと時間が余ったので、今週T大学の先生がいらっしゃったときに聞いた話をしました。T大学は、毎年コンスタントにKCPから学生が進学している大学です。今年もきっと何名かお世話になるでしょう。

T大学は出願書類として日本語学校の出席成績証明書が必要です。そこに記されている入学以来の出席率が90%を下回る場合は、入試の成績から減点するとのことでした。出席率100%でも加点することはないそうですから、T大学は出席率が80%台以下の学生は勉強する資格がないと考えているのです。逆の言い方をすると、まじめに勉強しようという意志のある学生なら、授業を1割以上も休むなんて考えられないということです。

最近、出席率を重視する大学が増えていますが、好ましい傾向だと思います。「自分のペースで勉強している」「枠にとらわれずに目標に向かっている」などと言えば聞こえはいいですが、実態は最低限のルールも守れないわがままな若造に過ぎません。自由奔放に創造力を発揮するのもいいですが、社会の構成員の1人だということを忘れてはいけません。

自分が身に付けた学問を通して社会に何らかの貢献をしようというのなら、周囲の人々から認められなければなりません。我が道を行きすぎると、高度な知識や技術を自分のものとし、すばらしい研究を行ったとしても、誰からも相手にされないでしょう。そうなってしまったら、幸せな人生とは言えないんじゃないでしょうか。まあ、それは大げさな想像ですが、欠席が学生たちの人生を狭めていくことは疑いのない事実です。

学生たちは神妙な顔つきで聞いていました。授業後、受付まで自分の出席率を確認しに来た学生がいたそうです。来週から遅刻欠席の多い学生の行状が改まるといいのですが…。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

打ちのめされる前に

8月6日(木)

DさんはW大学に出願し、入試は来月です。独自試験は小論文と面接です。その小論文の対策をしたいと、授業後、私のところに相談に来ました。対策と言っても、試験日まで1か月ほどとなったら、過去問に挑戦してもらうのが一番です。Dさんもあれこれ手を回して、去年の入試問題を手に入れました。それ1つだけだと不安なので、私を頼ろうとしたようです。

Dさんが言うには、出題された資料について答える問題は易しく、手ごたえがないそうです。これを聞いた時、危ないなと思いました。本当に易しい問題だとすると、W大学ほどのレベルなら、完全に正解することが合格の最低条件となるでしょう。筆答問題ですから、誤字脱字文法ミスがなく、要領よくポイントをまとめた答えが要求されます。文章を読んで内容が理解できたというだけでは、ここまでには至りません。授業中に返した作文がB評価でしたから、「200字以内で説明せよ」などという問題に的確に答えられるかと言ったら、大きな疑問符を付けざるを得ません。

W大学の試験時間と同じ時間で問題を解いて、その答えを持って来るという約束をしました。週末に解いて、来週持って来るのでしょう。おそらく、そこで頭の中身を文字化することの難しさを感じさせられるでしょう。私の手にかかったら、Dさんの答案用紙は血まみれになること、疑いなしです。完膚なきまでに叩きのめされて再び立ち上がる時間が、今ならあります。

KCPの学生には、伝統的に自信過剰が多いようです。世間を知らないから根拠のない万能感を抱き、そのまま対外試合に臨み、本番で初めて世の中の広さを知り、ショックを受けるというパターンを毎年繰り返しています。せっかく相談に来たのですから、Dさんにはその道を歩んでほしくはありません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

何がいい大学?

8月5日(水)

新型肺炎が広まったせいで影響を受けている大学生に、大学がどのような支援策を講じているかを扱った新聞記事をネタに、超級の学生に意見を聞きました。中にはこの4月に大学や大学院に進学していたかもしれない学生もいますから、わがことのように考えてくれました。

記事によると、多くの大学で何らかの支援金を支給しています。それ以外にもアイデアを絞って学生を経済的困窮から救おうという姿勢が感じられました。しかし、学費の返金には原則として応じていません。

KCPの学生は、オンライン授業だったらその分学費を下げてほしいというのが共通の意見でした。どのくらいと聞いてもはっきり答えられる学生はあまりいませんでしたが、オンライン授業よりも通学して講義を聞くことの方に価値を認めていることがわかりました。政府は大学にオンライン授業ばかりではいけないと言い始めました。これについては記事に書かれていませんでしたから、学生には聞きませんでした。感染するリスクも見積もりつつ、可能な限りキャンパスに通いたいというのが、学生たちの平均的な思いのようです。

経済的支援以外には、在宅でも研究が進められるように、大学で触れられるデータに個人的にアクセスできるようにしてほしいというものがありました。大学院進学を目指している学生の意見です。確かにその通りですが、セキュリティー面で実現は難しいでしょうね。

このクラスの学生は、全員が進学します。そもそも入学試験が例年通り行われるかどうか見通せない状況ですから、漠然とした不安がないとは言えません。そういう悪条件を乗り越えて進学した学生をしっかりサポートしてくれる大学・大学院に、学生を送り込みたいと思っています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

要約に苦戦

8月3日(月)

大学進学クラスで、文章の要約を取り上げました。ほんの数行の内容を要約する課題でしたが、みんな悪戦苦闘していました。学生たちは、本文から丸ごと抜き出して答えるのには慣れていますが、そこから不要な部分を切り捨て、問題が求めている内容を抽出するという作業ができないのです。“〇字で抜き出しなさい”という問題はどうにかできても、“〇字以内に要約しなさい”となると、手も足も出なくなります。

このクラスの学生が受験すると思われる大学は、独自試験に“〇字以内に要約しなさい”レベルの問題が出ることが十分予想されます。数行の文章の要約でアップアップだと、先が思いやられます。また、こういう力は大学に進学してからも必要となります。専門書を読んで、要するにどういうことなんだということを把握し、それを積み重ねて専門分野の勉強を深めるものです。

文章の要約にとどまらず、講義や講演を聞いてその要点をまとめたり、議論をするとき参加者の発言の主旨を理解したりするにも必要な技能・脳力です。本筋とそうではない部分を切り分けて、本筋だけを取り出し、それを理解したりそれに反論したりするというのが、学問を深める際の基本的な手法だと思います。

“要約しなさい”は、日本人だって好きな問題ではありません。それが抵抗なくできることを外国人留学生に求めるのは、少々気の毒かもしれません。でも、逆に、これができたら非常に力のある学生だと言えます。高度な要求だと百も承知していますが、私はこのクラスの学生に、そのレベルにまで達してもらいたいし、そうなるように力を尽くしたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

目を開く

7月31日(金)

7月が終わります。でも、学生の進学に向けての動きがあまり活発ではありません。EJUがなかったため、受験モードになる機会が失われ、本試験の壁に弾き飛ばされて自分のできなさ加減に気づくこともなく、みんなどことなくのんびりしています。TOEFLなど英語試験を受けた学生ですら、私の目からすると「キミは何年計画で大学に入るんだい」と言いたくなるくらい緊迫感がありません。

だから、尻に火をつけるべく教師側も動いています。先週の進学フェアも、昨日のH大学の説明会も、指定校推薦の大学名を公表したのも、その希望者受付を始めたのも、そういう意味合いを込めています。私も、授業をしたクラスでEJU中止の影響を解説したり、志望校の選び方の手ほどきをしたりしています。

今年はJASSOの進学フェアも中止になりましたから、学生が多くの大学を知る機会が奪われました。また、オープンキャンパスは中止か、開催されてもオンラインで、学生たちの動きが鈍いように見えます。というわけで、受験生なのに大学の名前を知りません。「早稲田に慶應にMARCH、あとは…???」というレベルの学生が少なくありません。これでは困りますから、各大学の詳しい内容はさておき、せめて名前だけでも覚えてもらおうと、東京近辺の大学紹介をしました。

ただ大学の名前だけ羅列したにでは学生の興味を引きませんから、KCPから進学した学生の声も交えました。また、その大学を卒業した学生がどんな仕事をしているかなども、可能な限り紹介しました。そうすると、学生たちの知らない大学が、意外に“いい大学”だったりするのです。学生の顔つきを見ていると、少しは学生の視野を広げられたかなと思います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ