働いた?

11月20日(金)

西立川駅の改札を出て昭和記念公園のほうへ歩いていくと、まだ9時前だというのに学生が何人か来ていました。遅刻欠席常連のWさんも、家からの距離はKCPよりもずっと遠いのに、なぜか食材と思しき荷物をたくさん携えて待っていました。そんなにふだんの授業って苦痛かなあ。

私は開園と同時に先発隊として園内に入り、バーベキューセットの設置やら各クラスに配る道具などのとりまとめやらをしました。今年は教育実習生や養成講座の受講生の方々がいたので、実際に学生が入場してくるまでにはすべての準備が終えられました。

入ってきたクラスはすぐに火熾しに取り掛かり、火が熾きたら料理を始めました。毎年おなじみの光景ですが、よく働く学生がいる一方で、全然働いているとは思えない学生もいます。働いている学生の代表格はBさんやSさん。Bさんは手際よく次から次へと料理を作り、そのどれもがうまいのです。Sさんはアルバイトの経験が生きているようで、これまた素人離れした手つきでクラスの20人前の食材を料理していきます。

働いていないほうの代表格はIさんで、授業中は積極的な学生なんですが、バーベキュー会場ではレジャーシートに座り込んだまま。Cさんも火のそばにはいますが、何かしている様子は全くうかがえません。2人とも、家で料理の手伝いなんか、したことがないんでしょうね。最近はこういう学生が増えたように思えます。

バーベキューの料理は、いろんなクラスの料理をちょっとずつ味見させてもらいました。風邪気味で鼻が詰まっていたので、それぞれの料理の本当のおいしさが味わえなかったのが残念でした。それでもBさんのはうまいと感じたのですから、相当なものなんですよ。

食べ終わったら、後片付け。後片付けといえば、ごみ処理。ごみの分別については、事前に各クラスに十分周知しておきました。しかし、昭和記念公園のごみの分別は並みの厳しさではありません。私もごみを受け付ける側に立って分別をチェックしました。ほとんどのクラスがやり直しでした。昭和記念公園の職員の方は遠慮がちに注意するのですが、私は、「どうしてビニールと箸と食べ残しが一緒に入ってるの。やりなおし!」っていう調子で、情け容赦なくビシバシ注意。学生と一緒にいらした先生方がちょっと気の毒でした。

その後はオリエンテーション。仮装した学生を見つけ、その絵を描くというものです。私と一緒にいたUさんは仮装を恥ずかしがって、学生が来ても下を向いてしまい、学生たちは絵が描きにくそうでした。写真で見ると、仮装した他の学生は堂々としていましたから、なおさら差がついてしまいました。まじめな学生ですから、こういうおふざけのイベントには向かなかったのかな。

曇りがちのお天気でしたが、雨に降られず無事に行事は終わりました。帰りの電車は、国立ぐらいで寝込んで、気が付いたら新宿駅でドアが閉まる寸前でした…。

採点できず

11月19日(木)

バーベキューの前日ですが、志望理由書が次から次へと押し寄せます。来週あたりに出願という大学が結構あり、明日から勤労感謝の日まで4日間はチェックができませんから、必然的にバーベキューなどお構いなしに集中するのです。

Zさんはもう何校も出願していますから、志望理由書も書き慣れています。その学校に合わせて書き換えることも抜かりなくやっています。こちらは語句の調整や文法ミスのチェックだけで、一部やや意味不明の箇所もありましたが、比較的楽です。

Sさんは、志望理由書が必要な大学への出願は初めてのようで、ほとんど志望理由書の体をなしていません。Sさんがその学問を志した理由ばかりで、志望校を選んだ理由はほんの1行か2行。全面的に書き直しです。「Sさん、2025年、10年後に何をしていますか」「いいデザインのビルを建てます」「いいデザインって、どんなデザイン?」「おもしろいデザイン」「そのデザインはSさんが考えますか」「いいえ、私はビルを建てるだけです」「じゃ、そのデザインは誰が考えますか」「デザインの勉強をした人が考えます」「ああ、デザインの専門家が考えたかこいいデザインのビルを、Sさんは地震の時大丈夫かとか、どこにエレベーターを作るかとか考えて、本当につくるんですね」「はい、そうです」「じゃ、そのために、大学で何を勉強したらいいですか」…という調子で、事情聴取しながら志望理由書に書けそうな材料を揃えていきますから、時間がかかります。そして、書き直しを連休中の宿題に。

Eさんも事情はSさんと同じです。こちらは大学の先生に向かって理論をとうとうと述べちゃってます。だから、志望理由と言えそうなことは、これまたほんの数行。Sさんと同じことを繰り返して、火曜日に再チェックすることに。

Yさんは800字の字数制限があるのに1000字も書いてしまいました。でも、削りどころは満載で、贅肉部分をばっさり切り落としたら、大幅に足りなくなってしまいました。ことばを補い、Yさんの考えを文章化し、どうにか800字の志望理由書っぽく大改造。

授業が終わったら昨日の中間テストの採点ができるかと思ったら、ほとんど進みませんでした。連休明けは、忙しくなりそうだな…。

風邪、腹痛

11月18日(水)

中間テスト・期末テストというと、不思議と風邪を引いたりおなかが痛くなったりする学生がいます。Oさん、Pさんなどは、今日も早々に学校に連絡を入れてきてお休み。先生たちは誰も彼らのことばを信じていませんが、試験当日の忙しい時に、アホなやつのたわごとには付き合っていられませんから、そのまま聞き流します。

今日、中間テストを受けなくても、追試は明日ですから、メリットってほとんどありません。テストから逃げ回っているようなやつが、今晩一夜漬けをしたところで成績が見違えるようによくなるわけがありません。しょせん、みんながテストを受けている時、スマホでもいじって暇をつぶしているのが関の山なんですから。

それにしても、受けないでは済ませられないことがわかってて、どうして1日ポッキリ受ける日を遅らせようとするのでしょう。嫌なことはとっとと済ませたほうが、精神衛生上もいいと思うんですけど。Oさんなんかは、平常テストも決められた試験日に受けることがまれで、中間テストや期末テストの直前にまとめて受ける羽目に陥ります。そうやって受けたテストは、試験日当日に受けた場合と比べて低い評価にしかならず、成績的にも大損なんです。そういう痛い目に何度もあっているのに、なおかつ逃げようとする思考回路がどうしても理解できません。

先憂後楽ということばがあります。本来は為政者の心得ですが、先に心配事や苦労を片付けると後から楽ができるというレベルにまでかみくだくと、私たちの生活にも当てはまることばになります。今日、気安くサボった学生たちの耳には、このことばがどのように響くでしょうか。

肉肉肉に負けそう

11月17日(火)

今週金曜日に課外授業のバーベキューが迫っていますが、明日が中間テストのため、多くのクラスで今日バーベキューの説明や料理の内容などを決めました。私のクラスもそのパターンでした。

このクラスは上級ですから、半分くらいの学生が去年のバーベキューの経験者です。経験者といっても、去年のこの学期は初級でしたから、わけがわからないうちに終わってしまったかもしれません。だから、同じ経験者でも、私の説明にそうだそうだとうなずく学生もいれば、初めて知ったかのような新鮮な顔をする学生もいました。

今回は炭への火のつけ方が動画で説明され、わかりやすかったんじゃないでしょうか。そんなこんなをしているうちに、次第にバーベキューの頭になったところで、メニューの話し合いに。毎回、どこのクラスでも、ここからが難しいのです。このクラスも、強力なリーダーがおらず、私が半分強引に意見を引き出すほかありませんでした。それでも、食材をあれこれ言わせ続けていくと、学生たちの頭の中に料理のイメージが浮かんできたようです。ただ、各学生のイメージがなかなか一致せず、意見がまとまったようなまとまらないような、中途半端な感じでした。

さらに、これまた毎回の課題ですが、食材をたくさん買おうとする圧力はかなりのもので、足りないと思うくらいがちょうどいいという、KCP全教師の経験則を語っても、「肉、肉、肉」という学生たちの声にかき消されてしまいました。「予算は全部使わなくてもいいんだから。食材を捨てるようなことは絶対にするな!」と5本ぐらい釘を刺しておきましたが、さて、効き目はあるでしょうか。

誰が何を買ってくるというところまで決めて、「買うのは中間テストが終わってからだよ」と最後にもう1本太い釘を打ち込みました。授業後に買い物に行って、食材を刻んで、バーベキューにうきうきしちゃって、とかってなっちゃったら、明日のテストが悲惨な結果になりかねませんからね。

金曜日の予報は、曇りないし晴れ。会場の国営昭和記念公園は、紅葉の盛りだそうです。

やっぱりわからない

11月16日(月)

日本時間の13日に発生したパリの同時多発テロは、ISの犯行ということで、フランスはISの本拠地を空爆したそうです。宗教上の考えがからんでくると、私なんかはどうも理解が追いつかなくなります。

日本もかつては“宗教戦争”と呼んでもいい国内戦がありました。島原の乱や信長対本願寺の戦い、古くは大化の改新だってそういう面が見られます。でも最近はそこまで激しい戦いはありません。オウム真理教のテロが成功していたら、日本の宗教戦戦争に新たな1ページが加わるところでしたが、幸いにもそこまでの傷痕を残すことなく鎮静化しています。

日本人は無宗教ではありませんが、敬虔な信者は少ないです。だから宗教の違いが元で深刻な争いが起こることもあまりありません。でも、それは同時に、こういう事件に対する理解が深まらない、いまひとつ自分のこととは思えず他人事どまりになってしまうということでもあります。私なんか、その典型でしょう。今回の新聞記事を読んでも、亡くなった方々への同情や哀悼の気持ちは湧いてきますが、この人たちが犠牲にならなければならなかった原因については、思考が及びません。

ISがフランスを狙った理由についてもあれこれ言われていますが、どうもよくわからないというのが、私の本音です。イスラム教やキリスト教そのものでなくても、仏教に帰依する心がもっと深ければ、それを通してこういった事件の本質に近づけるのではないかと思います。モスクで祈りをささげる人々を見ればその信仰心に美しさを覚えます。もう30年も昔になりますが、ヨーロッパで見た巨大な宗教画には、その絵を完成させようとしたエネルギーのすさまじさに心を打たれました。しかし、そういった感動を与えるものとその宗教の対立の激しさが、どうしても結びつきません。

宗教心が全体に希薄だから何も起きないことを幸せに思えばいいのでしょうか。最後の最後に心のよりどころがないことに寂しさを感じればいいのでしょうか。私は、仏像にも神殿にもステンドグラスにも素直に感動できるこの曖昧さが、とても好きです。

見られる

11月14日(土)

今週は、大学で日本語教育を学んでいる学生さんたちが実習に来ています。初級のクラスに入って、来週は教壇にも立つ予定ですが、日本語教育の現場全般を見るということで、私の超級クラスにも見学に来ました。まず、読解の授業を見、その後、新聞記事を読んで、グループに分かれてその内容について意見を交わすという授業に参加してもらいました。読解も会話も、初級との差が際立つ授業だろうと思い、見学してもらいました。

授業が終わってから感想を聞いてみると、まっ先に語彙が全然違うという声が挙がりました。そりゃそうですよね。授業や学生各自の勉強で日本語の文章に触れる分量が初級とは桁違いだし、こちらも意識して難しい言葉を入れていますから。後半の新聞記事を読んで会話する授業だって、そこに出てきた語句の説明はほとんどせず、意見を交し合えるくらいに内容が理解できているかを確かめるだけでした。でも、学生たちは、記事の言わんとしているところはちゃんと把握していました。また、私が語句の意味を聞くと素早くわかりやすい言葉で言い換えて答えていたことにも感心していました。これまた、日頃の訓練の賜物です。

それから、テキストを読ませた時にアクセントを間違えてもすぐに自分で気付いて言い直していたことがすごいという声も。毎日、重箱の隅をほじくり出すように注意してきましたからね、その成果が現れたってところでしょうか。学生たちも、日本人と同じようにしゃべれるようになりたいと思っていますから、こちらの注意を素直に受け止めてくれます。それが積もり積もってこういう評価になったのです。

授業の最後に、話し合った内容をグループごとに発表しました。どのグループも、私が決めた制限時間の1分前後でまとめていました。これもまた驚きの対象だったようです。同時に、クラスの学生+実習生の20名からの聴衆に対して物怖じせずに発表していたことにも感心していました。毎週、プレゼンテーションをしている成果が実っているのでしょう。

学生たちにとって、実習生という“お客さん”を迎えての授業は刺激的だったと思います。張り切っている姿がうかがえました。そして、私のようなしょっちゅう顔を合わせている人間ではなく、実習生の皆さんのこういう感想を聞いたら、自分の日本語により一層自信が出てくるんじゃないでしょうか。

鼻水鼻づまり

11月13日(金)

おととい、選択授業の「身近な科学」で風邪を取り上げ、風邪の予防法なんかを偉そうにしゃべったら、昨日からくしゃみが出て鼻水が垂れてなんとなく熱っぽくて、完全に風邪を引いてしまったようです。ゆうべは必要最低限の仕事だけして早めに帰宅したんですが、症状は改善されるどころかひどくなりました。身近な科学では、風邪を引いたら何より休息と訴えたのですが、私は授業だ面接練習だと、今日も仕事がびっちりでした。明日は会議もあるし、中間テストの問題も作らなければならないし、出てくるほかありません。

今回の風邪は、とにかく鼻水がひどいです。昨日は水っぽい鼻水がたれてきて始末に負えなかったのですが、今日は鼻づまりがいかんともしがたい状況です。鼻が詰まると思考能力が落ちてかないません。受験講座が特に辛いですね。理論をわかりやすく伝え、練習問題ぐらい解けるところまでもっていかなければなりません。そういう、頭の運動神経を要する部分が苦しいのです。しかも昨日早く帰っちゃって、準備が十分ではありませんでしたから。

それにしても、どうして風邪を引いてしまったのでしょう。このところ急に疲れがたまるような仕事をしたわけでも、精神的にきつくなったわけでも、寒い思いをしたわけでもありません。風を引いている人が周りにいなかったわけではありませんが、これまた今に始まったことではありません。一番恐ろしいのは、老化により体力が衰えたため、今までと同じ悪条件をもはや受け入れられなくなったということです。

来週の金曜日は課外授業で、バーベキューをしに立川の昭和記念公園まで行きます。それまでにはこの風邪を何とか片付けておかないと…。

スクランブル発進

11月12日(木)

午前中授業のあと、お昼から面接練習4連発…のはずが、風邪でお休みのK先生の代講をすることに。授業直後の1発目の面接練習を終えて机に戻ると、代講の用意がすっかりできあがっていて、配布物などが机に積み上げられていました。文法と漢字の教科書を持って教室へ。スクランブル発進です。

手元に教案などあるわけがなく、授業内容のメモと教科書を見比べ、学生の反応を確かめながら授業を進めていきます。「みんなの日本語」だったら、すばらしい授業はできなくても、合格点はもらえる授業ぐらいならどうにかする自信があります。もう少し正確に言うと、どうにかしてしまう度胸があります。突き詰めて言えば、初級の授業とは授業内容をいかにして学生に印象付けるかなのです。

私は、文法のポイントを説明することには自信があります。その得意な領域に持ち込むため、学生たちの頭を目的とする文法にどう結びつけるか、そこを必死に考えます。鉄板の導入法やドリル法を持っているわけではありませんから、その場の雰囲気をつかんで、自然な流れの中で気が付いたら新しい文法の勉強をしていたという形に持ち込もうと考えます。自分の全感覚を振り向けないと空気がつかめませんから、これは結構疲れます。同時にスリルも感じます。このスリルが味わいたくて初級の授業をやってるなんて言ったら、変態じみてますかね。

代講が終わったら、また面接練習。「家族は何人ですか」なんていう頭から、「TPPの関税撤廃が日本経済にどのような影響を与えるのか関心があります」なんてことを考える頭へと、すばやく切り替えなければなりません。初級の代講とは全然違う脳みそを働かせながら指導します。

気が付いたら、どたばたしているうちに日はとっぷり暮れていました。

テスト作り

11月11日(水)

来週の水曜日が中間テストなので、その試験範囲が発表されました。私が担当している超級レベルは、試験範囲といっても試験前日までやったところという、何の情報にもなっていない発表です。超級ですから、たとえ勉強していない問題が出されてもそれなりに解けなきゃだめですよ。

来週水曜が中間試験ということは、火曜日までに問題を作らなければならないということです。昨日から問題作りを始めたのですが、明日は授業後は面接練習がしこたま入っていて、明後日は受験講座で時間が取れず、土曜日は会議、月曜日は受験講座と、一体いつ作る暇があるんだろうかという感じです。範囲はいい加減でも、問題は気合を入れて作らねば、一生懸命勉強してくる学生たちに失礼です。

この時期は大学の出願もありますから、志望理由を見てあげなきゃいけない学生がたくさん出てきます。Cさんもその1人です。一生懸命書いてきたのはいいんですが、Cさん自身も途中で何を書いているのかわからなくなってしまったことが、文章の上にありありと表れています。カッコいいことを言おうとしているんですが、企画倒れ気味です。そういう文章を、本人に事情聴取しながら書き直すのですから、時間がかかることおびただしいです。

それから、Oさんの推薦状も書き上げました。Oさんは、いい意味で書くべきエピソードが豊富ですから、思ったほど時間がかかりませんでした。それでも小一時間はかかりました。

その他、Sさんの進学相談、AさんとJさんの出願書類チェック、ZさんとKさんの理科の勉強法相談、Lさんの面接練習、さらに、明日は急に実習生が私のクラスを見学することになり、そのために授業内容をちょいと変えることに。気合を入れて問題を作りたくても、気合を入れる時間すらありません。問題を作る時間がなかったから中間テストなしってなったら、学生は喜ぶでしょうけどね…。

ハンコ

11月10日(火)

2時半頃、代講をお願いしたクラスの学生が提出した例文のチェックを始めようとしたところ、「金原先生、学生が来ています」と声をかけられました。カウンターにはLさんが立っていました。Lさんは今月全然学校に顔を出さず、今日の授業も欠席。本人の携帯に電話をかけても留守電にすらならず、連絡が取れない状態が続いていました。そのLさんが姿を現したのです。

私がカウンターまで出て行くと、「先生、書類をください」と、出席成績証明書の申請用紙を担任である私に出し、ハンコをもらおうとします。学校を休んでいたことについては何も言わず、悪びれる様子もなく、いきなりこれです。カチンと来ましたね。「今月ずっと休んでいましたが、今まで何をしていたんですか」「うちで勉強していました」「あなたが勉強すべき場所はこの学校じゃないんですか」「でも7月のJLPTも合格したし、専門学校も決まったし、学校で勉強することはありません」「じゃあ、国へ帰ったらどうですか。あなたのビザはKCPで勉強するためのビザですから」「それはダメです」「どうしてですか」「卒業する前に帰国したら両親に申し訳ないですから」「両親に対して申し訳ないことをしてきたということですね」「はい。これから頑張ります」「どう頑張るんですか」「毎日学校へ来て、一生懸命勉強して…」「そんな言葉がすぐ信じられると思っているんですか」「…」「学校を好きなだけ休んでおいて、書類が必要だからハンコ押せって言うんですか。ずいぶん自分勝手だとは思いませんか」

…まだまだ続きましたが、思い出すだけでもおぞましいやり取りなので省略します。Lさんは教師を書類作成マシンとでも思っているのでしょうか。連絡もよこさず休み続けている学生の書類に素直にハンコを押せるほど、私は練れた人間ではありません。Lさんの申請書類は預かりました。Lさんが真人間に戻ったら、ハンコを押して返そうと思っています。