何に春を感じますか

2月20日(月)

“20日”は、いつもの月なら“中旬の最後の日”でしょうが、28日しかない2月に限っては“下旬の最初の日”としてもいいでしょう。そんなわけで、昨日も暖かかったことだし、週の初めのウォーミングアップとして、「春を感じるもの・こと」というテーマで、学生に話し合ってもらいました。

私が春を感じるのは、朝が早くなることです。先々週あたりから、私が学校に就く時間帯に、東の空がかすかに白むようになりました。今朝も、明るいとは言いかねますが、空に朝の気配が幾分か感じられました。3月になると道に捨てられている吸い殻がはっきりわかるようになり、そのうちヒートテック極暖がうっとうしくなります。

学生に答えはどうかというと、「暖かくなります」などという当たり前すぎる答えはともかくとして、コンビニやスタバなど、自分の行く店で春の限定商品が売り出されたことという意見が数人から出てきました。確かにそうですね。桜色っぽいパッケージの品物が増えるのはこの時期です。

周りに花粉症の人が現れるなんていうのもありました。ここ3年ばかりはマスクが目立たなくなりましたが、それ以前はマスクの人が多くなると春でしたね。

木の葉が緑になるという意見もありました。でも、これは正確に言うと、木の葉ではなく、新芽が芽吹くことを言いたいのでしょう。新芽がわずかに顔を出すことによって枯れ枝がわずかに緑色を帯びてくると、春を感じるものです。

多くの学生がうなずいていたのが、日の入りが遅くなることでした。学生が目を覚ますのは日の出のはるか後ですから、私のような春の感じ方は無理です。

明日の日の出は6時22分、日の入りは17時28分です。

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始動

2月18日(土)

この週末や来月に入ってから受験する学生がいる一方で、今週の月曜日から6月のEJUの出願が始まっています。2024年度の入試が動き始めました。

受験講座を受けている学生たちは意識高い系ですから、6月に向けて準備もしていますし、だからこそ、心配もしています。6月の成績を使って出願して、早々とどこかに合格しておけと発破をかけていますから。

去年の4月に入学したときは何が何でも東大に入る、東大以外は大学じゃないとまで言っていたPさんは、穏やかな表情でEJUの目標点を語っています。自分の実力を冷静に見極められるようになり、自分の実力の相場を知り、それを少しでも高めるにはどうしたらいいかと考えられるようになりました。大人になったというのか、人間的に丸くなったというのか、この1年で大きく変わりました。20歳前の1年は“長い”と感じさせられます。Pさん自身も自分の成長を感じていて、1年前の話をすると恥ずかしがります。

現在一番危ないのは、昨年10月に入学した初級の学生たちです。「6月はまだ日本語が下手ですから、EJUは受けません」と言っている学生が少なくないのですが、それが困るのです。たとえ低くてもEJUの点数がないと出願すらできない大学が結構あります。そういう大学の受験のチャンスを、自らの手で摘み取ってしまうわけですから。中には後期とか3期とか言って、11月の成績でも出願できる入試制度を設けている大学もあります。でも、そういう大学は早い入試ほど入りやすいのです。6月に受けたという実績が必要なのです。

しかし、これがなかなか伝わらないんですよね。毎年、6月を受けずに後悔する学生がいます。6月の受験をかたくなに拒否した学生に限って、「先生、どうしよう」ということになるのです。そんな学生は「自己責任」と突き放すのが今の日本のやり方なのでしょうが、結局世話を焼いてしまうんですよ、私たちは。

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突然の席替え

2月17日(金)

教室に入ると、いつも最前列の入り口近くに陣取っているFさんが、最後列の窓際の席にいるではありませんか。対角線の視点から終点に動いた形です。Fさんは昨日が入学試験でした。面白くない結果になってしまったのでしょうか。マスクの外に出ている眼だけでは、表情が十分に読み取れません。

授業を始める準備をしていると、Rさんが来ました。Rさんは、今まで毎日、今Fさんがいる席に座っていました。自分の指定席に向かって踏み出そうとしましたが、Fさんの姿を認め、窓際の反対側に向かいました。すると、いつもその席だったSさんが…という具合に、次々と玉突きが起こり、今までとはまるっきり違う席順となりました。雰囲気もガラッと変わりました。

入試がかかわっていなければ、授業の最初の緊張をほぐす話題としてFさんに席を変えた理由を聞くところですが、さすがにそれはできません。どことなくぎこちない感じで授業を始めました。学生たちもFさんがおとといまでとは正反対の位置にいることに気づいていますが、誰もそれに触れません。仲のいいWさんも、気づかぬふりをしているようでした。

でも、指名すれば普通に答えるし、わからないことは質問するし、Fさんは落ち込んでいるふうでも受かれているふうでもありませんでした。10:30の休憩時間になると、大半の学生がラウンジかコンビニへ行きました。教室に残ったFさんに、少しこわごわと、昨日の試験はどうだったかと聞きました。

「小論文は時間内に書き終わりませんでした。面接で小論文の内容について聞かれましたから、そこで詳しく話しました。ちょっと話が長くなりすぎたかもしれません。それ以外はうまく答えられたと思います」とのことでした。ショックに打ちひしがれているわけではないようで、少しホッとしました。「じゃあ、あとは合格を祈り続けるだけだね」と、明るく声を掛けました。そんなやり取りをしているうちに学生たちが戻ってきましたから、席を変えた理由は聞きそびれてしまいました。

Fさんの合格発表は来週の金曜日です。授業中に合格メールが届いてガッツポーズ…という図を思い描いています。

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油断大敵

2月16日(木)

年を取って血の巡りが悪くなったせいか、最近は手先が冷えていけません。胴体はヒートテックで守ることもできますが、手袋をしていては仕事になりません。私が出勤する朝の職員室は空気が冷えていますから、手指は熱を奪われる一方です。首筋に手を当てたり、お尻の下に手をはさんだりして手を温めます。日中も手先は冷たいままで、かじかむというほどではありませんが、動きがいくらか鈍いような気がします。

そこで、カップにお湯を入れて、そのカップを両手で包んで指先を温めています。給湯室の湯沸かしポットから熱湯を注いだばかりのカップはかなり熱いのですが、その熱さが気持ちいいんですね。指先から手のひらにかけてカップの熱を感じながら、キーボードをたたいたり、作文の添削をしたりしています。カップの中身がぬるま湯以下になったら、また入れ替えて熱さを楽しみます。

カイロでもいいのですが、両手でカップからの熱を受け止めると、手ばかりでなく体中が温まるような気がするのです。温かさは、カイロのほうが長持ちしますが、熱の伝わる面積は、カップを両手で握るようにして持つ方が広く、温まっていく実感が伴います。

午後、職員室で仕事をしているところを学生に呼び出されました。「卒業が近いので先生の写真を撮りたい」というので、モデルになりました。そのあとで、「選択授業の日本の古典で、和歌を教えてもらいました。私は“め”から始まる歌を作りました。『めったに見ない、片手でカップを持つ金原先生』という歌にしました」という報告をいただきました。私がカップを抱えるのは職員室の中だけですが、学生は見ているんですねえ。寒そうに背中を丸めながら大事そうにカップを両手で包む姿が、その学生にとっての“金原先生”なのでしょう。その姿を脳裏に刻み付けてKCPを卒業していくのでしょうか。もう少しシャキシャキしているところを印象に残したかったですね。

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たった3人?

2月15日(水)

朝、教室に入ったら、学生が3人しかいませんでした。その後、始業の9時までに駆け込みがいて、どうにか9人。出席を取り終わった直後ぐらいに3人来て、12人で授業を始めました。昨日の中間テストが終わって、気が抜けてしまったのでしょうか。

欠席者のうちKさんからは、夜中のうちにメールが入っていました。爪が割れてしまっていたくてたまらないので病院へ行くとのことでした。毎日両手の指を派手にデコっていましたから、爪が耐え切れなくなったのでしょう。10時半の休憩時間に職員室に戻ると、Gさんからもメールが来ていました。トイレに行きたくて途中下車したらスイカの残額が足りなくて新宿御苑前まで行けなくなったとのことですが、定期を買っていなかったのでしょうか。現金の持ち合わせはなかったのでしょうか。そもそも、改札の中にトイレはなかったのでしょうか。意味不明の欠席理由です。Tさんからは体調不良というメールが入っていましたが、送信日時が10:01になっていましたから、寝坊かもしれません。Yさんは受験日だといいます。そんな話、全然聞いていませんでしたが…。

どれもこれも、欠席理由としては弱いというか、ほんの少し注意すればどうにかなったはずだというか、割り切れないものがあります。受験だというYさんにしても、事前に断っておいてくれれば、私だって腹を立てずに済んだのに。GさんとTさんは、1月の出席率が悪かったので理由書を書いています。休まないようにする対策も書きましたが、それが実行されていません。

さらに悪いのは、何の連絡もよこさず、授業後に電話をかけても応答しなかったJさんとRさんです。2人ともまだまだ日本にいるつもりらしいですが、こんないい加減なことをしていたら、いられなくなってしまいます。出席率はKCP内部だけの数字じゃないんですよ。Gさん、Tさん、Jさん、Rさん、わかっていますか。

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苦すぎるチョコレート

2月14日(火)

世の中はバレンタインデーでしたが、KCPは中間テストでした。私が担当している上級クラスには漢字が弱い学生が多いですから、漢字を直接読んだり書いたりする問題は出さないことにしました。その代わり、漢語や漢字を使った慣用表現の意味を問う問題を出しました。例えば、「非常においしい」だったら「とてもおいしい」、「手を貸す」ときたら「手伝う」と答えるという具合です。上級ですから、もう少し難しくしました。こういう出題形式なら漢字が苦手でもどうにかしてくれるだろうと思いました。しかも、昨日の授業で、ダメ押しのつもりで、こういう問題を出すと、答え方まで説明しておきました。

午後、さっそく採点してみると、惨敗でした。部分点まであげたのに、大半の学生が半分以下の点数でした。これが足を引っ張り、赤点続出となってしまいました。出題者としては大失敗でした。

同時に、「漢字」という授業名にすると、学生は漢字しか見ないんだと痛感させられました。「語彙を増やす」というのはレベルの目標として挙げていたのですが、学生たちには伝わっていなかったんですね。意味を問うた語句は日常生活でも使われており、奇をてらったものではありません。学生たちが進学先で机を並べる日本人の学生はみんな知っていそうなものばかりです。

さて、明日からこの落とし前をつけなければなりません。教科書の新しいページに進むのではなく、今学期歩んできた道を振り返ることが先決のようです。文法テストも同様の傾向が見られますから。

学生から、特別苦いチョコレートを贈られた気分です。

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就職面接

2月13日(月)

KCPの卒業生のPさんは、現在ある団体の非常勤職員をしています。このたび、正職員への登用試験を受けることになり、その面接練習に付き合いました。Pさんは在学中からも、何事に対しても熱心で全力に取り組み、アルファベットの国出身ですが最上級クラスまで上り詰めました。Pさんがいることにより、そのクラスは非常に活気を帯びていました。

そんなPさんですから、就職先でも頭角を現すことは十分想像できました。周囲で働いている人たちからも、強い信頼感を得ているようです。それゆえ、こういうチャンスが巡ってくるのは当然のことであり、このチャンスを生かしてぜひワンランク上を目指してもらいたいと思っています。

大学入試の面接練習は数えきれないほどしてきましたが、就職の面接はとんと記憶にありません。以前の会社は、そういう面接をするほど偉くなる前に辞めてしまいましたから、各方面の面接に関するうわさからどんな質問がなされるのか想像してみました。私が面接官なら、私が経営者なら、こんなことを聞いてみたい、こんなことで評価したいという質問を、Pさんにぶつけてみました。

Pさんは、さすがに社会経験があるだけあって、大学受験の若造とはだいぶ違いました。落ち着いてもいましたし、何かを丸暗記というのではなく、自分の言葉で語ってもいました。私が指摘したのは、自分を売り込む力が弱いという、その一点でした。Pさんはいつの間にか日本人っぽく自己主張が穏やかになりすぎていました。

その点を指摘し、明日の面接に送り出しました。

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雪が降りました

2月10日(金)

「東京地方は大雪」と言われ、大雪警報まで出された割には、何事もなくという感じでした、新宿近辺は。ネットに出ている画像によると、練馬あたりでも真っ白ですね。O先生のご自宅のあたりは、雪だるまが作れそうなくらいです。羽田発着便に数十便の欠航が出ましたから、それなりに大雪だったのでしょう。

今朝は遅刻が多かったですね。私のクラスは、9時3分前の時点で学生が3人しかいませんでした。始業チャイムと同時に駆け込んできたのが数名で、そのあと堂々の遅刻が駆け込みと同数ぐらい。他のクラスも似たり寄ったりだったようです。電車の遅延証明を持ってきた学生はいませんでしたから、外の寒さに打ち震えて歩みが遅くなってしまったのでしょうか。私の出勤時間帯には3度程度あった気温が、学生たちが登校してきたころには0度台を上下していました。雪がちらつき始めるとともに、気温はガタッと下がったのです。

授業後に面接練習をする予定だったCさんは、寒さで体がおかしくなったと断って、帰ってしまいました。Cさんに限らず、学生たちはどうも虚弱体質でいけません。ラウンジでおしくらまんじゅうもどきをして体を温めているグループもありました。去年の今頃なら「密!」と言って解散命令例を出したことでしょう。でも、もうすぐマスク規制も緩和されるとのことです。大目に見てあげました。

あした京都で受験のTさんは、無事現地に着いたでしょうか。東海道新幹線は定刻で動いていたようです。あさって茨城遠征予定のLさんは、冬晴れの中の移動ですね。吉報をお待ちしております。

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壁からグラデーションへ

2月9日(木)

Mさんは今学期から理科系の受験講座を受けています。しかし、最近休みがちです。そんなMさんを、授業後に呼び出して、事情を聴きました。

一言でまとめてしまうと、受験講座の内容が難しいということでした。Mさんは国の高校で理科系の勉強をしてきましたが、受験講座では国で習ったことのない内容を扱っているので、ついていけないと言っていました。

数学のS先生に聞いてみると、国によって教育課程に違いがあるのに加えて、学校によっても、同じ学校でもクラスによって、どこまで教えるかばらつきがあるそうです。理科系の場合、日本で言う数Ⅲまでがっちり勉強してきた学生から、数Ⅱ・Bをお義理で勉強したにとどまる学生まで、かなり幅広く分布しているとおっしゃっていました。Mさんは日本の数Ⅰ・Aよりも多少深く勉強しただけなのではないかという見立てでした。

日本には、私が受験生だった頃よりも前から、“文転”という言葉があります。理科系進学を目指していたけれども、数学が伸びずに文科系へと進路変更する例は、今も昔も少なくないようです。学部学科の設定も受験方式も多様化したとはいえ、文科系と理科系の間の壁は、厳然と存在しています。留学生入試では、日本人の入試に比べて、その壁がいくらか厚く高いような気がします。Mさんの国ではどうなのでしょう。

Mさんが目指している分野は、確かに理科系の範疇ですが、がりがりの理科系ではありません。理科系と文科系の境界が壁ではなくグラデーションになっていたら、Mさんはゆとりのある留学ができるに違いありません。日本の大学がそこまで変わるには、まだまだ時間がかかりそうです。

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テスト問題作成

2月8日(水)

来週の火曜日が中間テストですから、そろそろ問題作りに頭を痛めねばなりません。頭を痛めて作ったテストでいい点を取ってくれれば、作ったかいも授業をしてきたかいもあるというものです。しかし、赤点続出となると、気落ちした上にその後処理もしなければならず、骨身にこたえます。

そこで、今回は、読解の問題を学生に作ってもらいました。「はい、作ってください」と声をかけただけでは作れるわけがありませんから、まず、問題作りのポイントを説明しました。

「T先生や私が読解の授業でみなさんにした質問を思い出してください」「指示詞が何を指すかは、よく使う手ですよ」「空欄に言葉を入れる問題は、前後を読めばわかる問題にしてください。知識を聞くクイズじゃありませんよ」「漢字の読み書きは、読解の問題じゃありません」「選択肢は、微妙すぎるのはやめてください」…

こちらの手の内を明かすようなことも入っていますが、このクラスの学生は多くが今学期までですから、まあ、いいでしょう。それに、学生に教えても使いこなせないだろうなという大技は、しまったままです。

問題作りのポイントがわかるということは、読解のポイントが見えてくるということでもあります。これを通して読解力が上がることも期待しています。また、問題を作るためには、テキストをじっくり読まなければなりませんから、内容の理解が深まるはずです。学生たちは声も出さずに真剣に取り組んでいました。優秀作品は、テスト問題に採用します。来週のテストは期待が持てそうです。

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