Category Archives: 学生

何がいい大学?

8月5日(水)

新型肺炎が広まったせいで影響を受けている大学生に、大学がどのような支援策を講じているかを扱った新聞記事をネタに、超級の学生に意見を聞きました。中にはこの4月に大学や大学院に進学していたかもしれない学生もいますから、わがことのように考えてくれました。

記事によると、多くの大学で何らかの支援金を支給しています。それ以外にもアイデアを絞って学生を経済的困窮から救おうという姿勢が感じられました。しかし、学費の返金には原則として応じていません。

KCPの学生は、オンライン授業だったらその分学費を下げてほしいというのが共通の意見でした。どのくらいと聞いてもはっきり答えられる学生はあまりいませんでしたが、オンライン授業よりも通学して講義を聞くことの方に価値を認めていることがわかりました。政府は大学にオンライン授業ばかりではいけないと言い始めました。これについては記事に書かれていませんでしたから、学生には聞きませんでした。感染するリスクも見積もりつつ、可能な限りキャンパスに通いたいというのが、学生たちの平均的な思いのようです。

経済的支援以外には、在宅でも研究が進められるように、大学で触れられるデータに個人的にアクセスできるようにしてほしいというものがありました。大学院進学を目指している学生の意見です。確かにその通りですが、セキュリティー面で実現は難しいでしょうね。

このクラスの学生は、全員が進学します。そもそも入学試験が例年通り行われるかどうか見通せない状況ですから、漠然とした不安がないとは言えません。そういう悪条件を乗り越えて進学した学生をしっかりサポートしてくれる大学・大学院に、学生を送り込みたいと思っています。

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愚痴は愚痴として

8月4日(火)

「K先生、お疲れ様です。授業、いかがでしたか」「学生があまり反応しないので、なんだかやりにくいですね」「それはマスクをしてるからですよ。それに、あんまりしゃべるなって指導してますから」「そうですよねえ。しゃべり過ぎたら何が起こるかわかりませんからね。それから、誰が発言したかわかりにくいですね」「自由に答えさせると誰が答えたかつかめませんから、私はどんどん指名してるんですよ、名簿を見ながらでも。そうすれば教師がコントロールできますから」「確かにそうですね。あと、マスクしてると反応も見えませんね。わかってるのか、わかってないのか、なんだかつかめなくて…」「ありますね、それは。しなくてもいい説明をしちゃったり、しなきゃいけない説明を飛ばしちゃったり…」「安全サイドに走ると話が延びちゃうんですよ。それに加えて、グループで話し合いもさせられないでしょ。これも辛いですね」「そうですよねえ。まあ、どういう授業をしても、わかるやつはすぐわかる、わからないやつはいつまでたってもわからないっていうのが真実じゃないんですか」

…と、まあ、午前の授業が終わった昼休みに、マスク越しの授業の愚痴を言い合いました。こういう情勢ですから、教師がしゃべりまくるという、養成講座などで絶対にしてはいけないと教わった授業をせざるを得ません。学生から話を引き出すのを必要最低限に抑える授業なんて、KCPではありえなかったんですけど。

それでも、対面授業には、学生のかすかな反応を瞬時に捕らえてそれに対応したり、カメラを通してはできない大きな説明ができたり、学生と学生が顔を合わせることによって生じる相乗効果が見られたりなど、捨てがたい長所があります。わざわざ日本という、学生にとっては異国まで足を運んできてもらっているのですから、その期待に応えられる授業をしていきたいです。

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要約に苦戦

8月3日(月)

大学進学クラスで、文章の要約を取り上げました。ほんの数行の内容を要約する課題でしたが、みんな悪戦苦闘していました。学生たちは、本文から丸ごと抜き出して答えるのには慣れていますが、そこから不要な部分を切り捨て、問題が求めている内容を抽出するという作業ができないのです。“〇字で抜き出しなさい”という問題はどうにかできても、“〇字以内に要約しなさい”となると、手も足も出なくなります。

このクラスの学生が受験すると思われる大学は、独自試験に“〇字以内に要約しなさい”レベルの問題が出ることが十分予想されます。数行の文章の要約でアップアップだと、先が思いやられます。また、こういう力は大学に進学してからも必要となります。専門書を読んで、要するにどういうことなんだということを把握し、それを積み重ねて専門分野の勉強を深めるものです。

文章の要約にとどまらず、講義や講演を聞いてその要点をまとめたり、議論をするとき参加者の発言の主旨を理解したりするにも必要な技能・脳力です。本筋とそうではない部分を切り分けて、本筋だけを取り出し、それを理解したりそれに反論したりするというのが、学問を深める際の基本的な手法だと思います。

“要約しなさい”は、日本人だって好きな問題ではありません。それが抵抗なくできることを外国人留学生に求めるのは、少々気の毒かもしれません。でも、逆に、これができたら非常に力のある学生だと言えます。高度な要求だと百も承知していますが、私はこのクラスの学生に、そのレベルにまで達してもらいたいし、そうなるように力を尽くしたいです。

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目を開く

7月31日(金)

7月が終わります。でも、学生の進学に向けての動きがあまり活発ではありません。EJUがなかったため、受験モードになる機会が失われ、本試験の壁に弾き飛ばされて自分のできなさ加減に気づくこともなく、みんなどことなくのんびりしています。TOEFLなど英語試験を受けた学生ですら、私の目からすると「キミは何年計画で大学に入るんだい」と言いたくなるくらい緊迫感がありません。

だから、尻に火をつけるべく教師側も動いています。先週の進学フェアも、昨日のH大学の説明会も、指定校推薦の大学名を公表したのも、その希望者受付を始めたのも、そういう意味合いを込めています。私も、授業をしたクラスでEJU中止の影響を解説したり、志望校の選び方の手ほどきをしたりしています。

今年はJASSOの進学フェアも中止になりましたから、学生が多くの大学を知る機会が奪われました。また、オープンキャンパスは中止か、開催されてもオンラインで、学生たちの動きが鈍いように見えます。というわけで、受験生なのに大学の名前を知りません。「早稲田に慶應にMARCH、あとは…???」というレベルの学生が少なくありません。これでは困りますから、各大学の詳しい内容はさておき、せめて名前だけでも覚えてもらおうと、東京近辺の大学紹介をしました。

ただ大学の名前だけ羅列したにでは学生の興味を引きませんから、KCPから進学した学生の声も交えました。また、その大学を卒業した学生がどんな仕事をしているかなども、可能な限り紹介しました。そうすると、学生たちの知らない大学が、意外に“いい大学”だったりするのです。学生の顔つきを見ていると、少しは学生の視野を広げられたかなと思います。

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気を抜くな

7月29日(水)

オンライン授業だと、Zoomの画面に学生の名前が並びますから、誰が出席しているかわかります。でも、授業の最初に名前を呼んで返事をしてもらって出席を確認します。つなぐだけつないで授業に参加しているふりをして、好き勝手なことをしているなどという不届き者が現れないようにするためです。顔も出させるし、次々と指名もして、授業時間内はこちらに集中してもらいます。オンライン授業が始まったばかりの頃は、授業中に指名してミュートを解除したらいびきが聞こえてきたなどという事例もありましたから、その辺は抜かりなくやっています。

もちろん、9割以上の学生は真面目に勉強しています。進学の意志があやふやな学生たちはほぼ帰国してしまい、今在籍している学生たちは、本気で進学しようと考えている、いわば精鋭たちです。ですから、オンラインであれ対面であれ、前向きな姿勢で課題に取り組み力を伸ばそうとしています。

水曜日は、オンライン授業の日。朝9時にFさんの名前を呼んで出席を取ると、眠そうな声で返事が。いかにも今起きたという雰囲気を漂わせていました。これはまずいと思い、すぐに指名すると、授業で使うことになっているプリントを用意していないと言います。やはり寝起きだったのです。その後何回か指名して、声がしゃきっとしてきたのが11時ごろ。ということは、9時からのオンライン授業にすっきりした頭で出席するには、7時に起きなければならないという計算になります。起きるべき時間は、通学する日と同じです。

だけど、授業終了間際に指名した時は、的外れな答えだったなあ。オンラインだと気合が入らないんでしょうか。世の在宅勤務のみなさんはどうなのでしょう。社会人は責任がありますから、ピシッとやってるはずですよね。

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フレンドリー

7月28日(火)

6月のEJUが中止になってから、毎日のように各大学の外国人留学生入試の動向を調べています。早稲田大学のように早々と方針を決めて我が道を歩む大学もあれば、募集要項の発表が何回も延期になる大学もあります。いろいろと駆け引きがあるのでしょう。でも、ホームページに「発表は7月上旬」と書いたきり、もうすぐ8月だというのに更新されないというのは、その大学のだらしなさを表しているように思います。だらしなくなくても、留学生を大切にしているようには思えません。

それ以上に、留学生入試情報になかなかたどり着けない大学が困ります。クリック2回ぐらいで出願要件を知ることができる大学はサイトの作り方が親切だと思います。サイトの字が小さくて、私の目には読みにくいというのは、許してあげましょう。受験生は老眼ではないのですから。しかし、サイト中をあちこち迷った末に、かなり深い階層に留学生入試の情報を発見した時は、冷遇されているなあと感じます。そうやってやっと掘り出した情報が去年の情報だったりしたら、がっくりよりもむかつきを覚えます。

私は、長年受験生のお世話をしていますから、こういうのを調べるのに慣れているつもりです。老眼であることを除けば、情報にアクセスするのに有利な条件を備えているはずです。そういう私がかなり苦労しないと見つけられない情報を、ごく当たり前の外国人留学生がたやすく手にすることができるとは思えません。そういう情報の出し方(隠し方?)している大学は、日本語学校の教師の支援を出願の前提にしているのでしょうか。

自分の手であれこれ調べてみて、大学を見る目が少し変わりました。

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横綱のお相手

7月22日(水)

先週の水曜日は日本語教師養成講座のオンライン講義でしたが、今週は最上級クラスのオンライン授業でした。メンバーの半分ぐらいは何となく知っていますが、その中には教えたのは初級以来という学生もいて、実質的には初顔合わせに近いクラスです。全員が大学院か大学への進学を希望しています。

しなければならない課題をすべて終えても時間が少しあったので、先週上から2番目のクラスでやった問題をこのクラスの学生たちに送って、解いてもらいました。先週のクラスもよくできるクラスでしたが、でも、間違いが少なくありませんでした。このクラスはどうだろうという興味も少しありました。さて、結果はどうでしょう。

ある程度時間をあげてから答え合わせをしてみると、ほとんどミスがありませんでした。オンラインだからこっそり何かで調べたということも考えられますが、にわかに調べたところで答えにたどり着けない問題も含めて正解ばかりでした。立派なものです。この最上級クラスが横綱だとしたら、2番目のクラスは大関か、下手をすると関脇ぐらいでしょう。それくらい、力の差が際立っていました。

また、ちゃんと予習して授業を受けるという勉強のスタイルが出来上がっています。そう感じたので、学生たちの予習が及んでいなさそうな点を衝いて質問してみました。根性のねじ曲がった私の質問には、さすがになかなか答えられませんでした。でも、来週からもこうして授業が楽しめるのかと思うと、胸が弾みます。

横綱のみなさんには、横綱相撲を続けて、志望校まで勝ち進んでもらいたいです。

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新しい課題

7月20日(月)

校内進学フェアが開催されました。去年までとは違って、今年はオンライン参加の大学が大半となりました。ですから、準備も去年までとは勝手が違い、何かと戸惑うことが多かったです。オンライン参加の大学の会場に充てた教室のパソコンでZoomを立ち上げ、先方が開催したミーティングに入るのですが、いつもこちらがミーティングの主催者となっている身には、なんだか不安な感覚でした。

さて、午前の授業が終わって各会場に学生が集まりだしました。大人気が、担当者がいらっしゃって対面で相談を受けてくださった大学でした。これを見る限り、学生って案外アナログ人間です。生まれて時からデジタル環境にあるはずなのに、オンラインを避けている感じすらしました。

オンラインの方が緊張するんでしょうかね。対面式の方が、顔色をはじめ何から何まで見透かされてしまって、学生には不利になりそうな気がするのですが、そうは感じないのでしょうか。日本人の大学生も、オンラインの就職面接というと通常の面接とは違うテクニックが必要なようで、また、異質な精神的緊張にも見舞われるということです。学生たちはそういうのを敬遠しているのでしょうか。

そんなわけで、フェアの最中の主たる仕事は、学生の尻をたたいたり背中を押したりして、オンライン相談をしているパソコンの前に座らせることでした。パソコンの前に学生があふれて交通整理をしなければならないかと思っていましたが、教室にいる学生3人ぐらいが、お互いに譲り合って、誰もパソコンの前に進もうとしないなどという場面がちょくちょく見られました。

私もオンラインというと腰が引けてしまう面がありますが、若い学生たちがそれでは困ります。これからの学生指導の課題が見つかった進学フェアでもありました。

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明るいニュース

7月18日(土)

新規感染者数が増えたとか、Go To キャンペーンから東京を除外するとか、そんな重苦しく、ある種きな臭いニュースの陰にすっかり隠れてしまいましたが、今週は藤井聡太七段が渡辺明三冠から棋聖位を奪ったというさわやかさを感じさせてくれるニュースもありました。史上最年少のタイトルホルダーとなりました。私のようなへぼな者は、飛車角に金銀まで落としてもらっても勝てないでしょう。

藤井新棋聖の談話で感心させられたのは、感染症拡大防止のため棋戦が中止されていた期間、AIを使って差し方の研究をしていたということです。終盤は強いけど、序盤はそれほどの鋭さがなく、序盤で差を付けられるとあっさり負けてしまうという弱点がありました。それを克服すべくAI相手に工夫を重ねていたと言います。その成果が、初戴冠です。

巣ごもりの間に差がつくとは、ビジネスでも勉強でも言われていました。藤井新棋聖はそれを地で行ったわけです。新棋聖より少し年上のKCPの学生たちはどうだったでしょう。巣ごもり明けを見越して何かをしていた学生は、ほとんどいなかったんじゃないかなあ。話すのが下手になっていたり、字を書くのが遅く汚くなっていたり、こちらからの話の理解力がガタ落ちだったり、部屋の中でのんびりしていただけという学生が少なくないような気がします。

確実に伸びた学生もいます。ピンチをチャンスに変える力を持った学生と言えます。どんな変化にも自分を見失うことなく、最善の手を打てます。こういう学生は、どこの大学でも欲しがりますよ。大学院に進んだら、研究の核になれます。

月曜日は、進学フェア。のんびりの学生の尻に火をつけ、伸びた学生をより一層伸ばし、学生たちを夢に近づける場にしたいです。

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話す力

7月17日(金)

A先生の代講で上級クラスに入りました。このクラスは大学受験の学生を集めたクラスですから、EJUを意識した授業内容になっています。読解や、その基礎となる語彙の勉強をしました。でも、私は可能な限り学生の話をさせようとしてみました。感染防止の観点から、ディスカッションの形はとれません。「どうしてその答えを選んだんですか」というように、単語ではなく文で答える質問を次々としていきました。

このクラスに限らず、オンライン授業の影響で、学生は口が重くなりがちです。必要最小限の単語で済まそうとする傾向が見られます。しかし、そういう答え方では入試の面接は突破できません。他の学生に差をつけるには、文で答えられるようになっていなければなりません。面接官に、この受験生とはコミュニケーションが取れたと思ってもらうには、こういうやり取りを重ねていくことが必要です。

学生たちは、ビビりながらもどうにかこうにか自分の考えを発表していました。日本語の間違いがないわけではありませんでしたが、日本語教師が相手でなくても誤解が生じるような間違い方ではありませんでした。まあ、大した長さの発話ではありませんから、いやしくも上級の学生なら当然と言えば当然です。

いつもの年ならこれから面接の受け答えを練習していくところですが、今年はちょっとやりにくいです。いや、そもそも、入試がきちんと行われるのでしょうか。前期のみならず、後期も全面的にオンライン授業をすることにした大学も出てきています。そういう大学も、入試だけは予定通り実施するのでしょうか。

そろそろ留学生入試の足音が聞こえてくる時期になりました。でも、入試の要項が発表されていない大学が目立ちます。何となく不安を感じます。

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