休みだけど

12月21日(月)

昼(といってもかなり夕方に近かったですが)に外に出ると、門松が据えられていました。なんだかわけのわからないうちに2020年が暮れようとしていますが、新しい年が近いんだなあと思いました。

明日は期末テストで、その後、学生たちは休みに突入します。その前に進学クラスの学生の気持ちを引き締めてほしいと頼まれました。そのクラスはまだ行き先が決まっていない学生がほとんどで、正月休み返上でどうにかしないと、卒業式が来てもどうにもなっていないかもしれません。

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」です。今楽しんでしまうと、後で苦しくなります。今は苦しくても、後で楽しい時が必ず来るものです。そういう思いを学生たちに訴えました。

盛んにうなずいている学生もいれば、線がつながっているとは思えないような顔つきの学生もいました。でも、ここで楽に走ってしまうと、卒業式には別の意味で涙を流さなければならなくなります。旧正月を祝う習慣の学生たちには、1月1日の正月返上はさほどでもないでしょう。だから、ここで精いっぱい踏ん張って、自分たちの正月を心から祝えるようにしてもらいたいです。その時期にも決まっていなかったら、もちろん、旧正月もへったくれもありません。日本人の受験生だって元日から勉強するのですから、留学生も負けてはいけません。

週末に届いたEJUの成績を渡しました。毎度のことながら、悲喜こもごもです。今シーズンはここにきて独自試験を中止する大学が出てきています。“悲”の学生をどうフォローしていくか、私たち教師も、“苦”がしばらく続きます。

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騒音

12月18日(金)

来週の火曜日が期末テストで、学生たちは翌日から年末年始の休みに入ります。学期休みや春の連休、夏休みなど、まとまった休みの直前には、休み中の生活の注意を全校一斉放送で流します。今までは事務職員が放送を担当してきましたが、今回は全員が出払っていて、暇そうにしていた私にお鉢が回ってきました。

年末年始休み直前は、今までは、一時帰国の注意をしてきました。しかし、今年は下手に一時帰国すると永久帰国になりかねません。学生たちもそれはよくわかっていますから、国内での過ごし方というか、うちから気安く出るなという話になってしまいました。

私は孤独を愛する人間ですから、出歩いたところで人込みには近寄らず、和気あいあいと会食することもありません。人気のない早朝に活動し、みなさんが盛り上がる夜の街には足を向けません。グルメじゃありませんから、コンビニ弁当やスーパーの見切り品でも十分ごちそうです。

でも、学生たちはそうではないでしょう。異郷で仲間と語らうことに喜びを感じ、また、それが息抜きや憂さ晴らしにもなります。精神衛生上は好ましいかもしれませんが、感染症対策上は最も避けなければならない行動様式です。そういう意味で、苦しい戦いがまだまだ続きそうです。

さて、私の放送は、声が響きすぎたそうです。隣のマンションから苦情が来そうだとも。先週コロナ対策の一斉放送には、聞き取りにくかったという意見がありました。ですから、マイクを、マスクに触れぬ程度に近づけ、声を張って話しました。それが効きすぎたようです。

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2つの志望理由

12月17日(木)

朝一番で、SさんのT大学の志望理由書がメールで届きました。読んでみると、先週あたり添削したU大学の志望理由書と内容がずいぶん違います。勉強したいことが全然違うのです。どの大学も全く同じ志望理由書というのも芸がありませんが、大学ごとにやりたいことがそれぞれ違うというのも困りものです。

どうやら、T大学とU大学の入りやすい学部学科を狙っているようなのです。こういうのを「嘘も方便」というのかどうかわかりませんが、なんだかデータに振り回されているような気がします。いや、データというほど客観的ではなく、噂を信じて右往左往しているというのが実情かもしれません。

受験は他の受験生との戦いです。だから、戦略的に動くことも必要です。国立大学の一斉試験日にどこを受けるかなどは、その選択が明暗を分けることだってあります。Ⅰ期とⅡ期の試験日程がある場合、Ⅰ期のほうが入りやすいことは広く知られています。こういう選択の場面でどちらを選ぶか戦略だと思います。

「受かりやすい」が第一の理由で受験校・学部・学科を決めるのは、戦略の範疇には入らないのではないでしょうか。そこに自分がなさすぎます。大学で何を学ぶかによって、その人の人生が決まることだってあります。「入れそう」だけで志望校を決めたら、一生悔いを残すことだってあるでしょう。

でも、今のSさんにこういう意見は響かないに違いありません。弱気の虫に取りつかれ、ごく狭い範囲しか見えなくなっています。焦りが前面に出ていて、冷静さが失われています。教師とはしては、一番指導が難しい場面です。T大学とU大学の志望理由が、Sさんの頭の中では1本筋が通っていることを祈りましょう。

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覚悟はよろしいか

12月16日(水)

進学コースの新入生に対して、来学期の受験講座のオリエンテーションをしました。今学期は新入生が来たおかげで、久しぶりに午後の教室がにぎやかになりました。来日し授業を受け始めた時期がばらばらだったため、今までは受験講座がありませんでしたが、来学期は早々に再開する予定です。そのためのオリエンテーションを行ったというわけです。

今学期まで受験講座を受けていた学生たちは、みんな卒業・進学しますから、来学期からの受験講座はメンバーが完全に新しくなります。先輩がいない状態で講座が始まります。新しい学生たちは、先輩の体験談を聞いたり、奮闘ぶりを間近に見たりするチャンスがないので、その点はちょっと気の毒です。

でも、何より気の毒なのは、新入生たちは時間がないことです。全員22年3月に卒業ですから、それまでに進学先を確保しなければなりません。今、レベル1の学生は、来年6月のEJUの時にせいぜいレベル3です。その日本語力で高得点を挙げるのは、至難の業です。それでも夏以降の入試に立ち向かうことが求めなれるのです。入試の際の面接では、日本語で面接官とコミュニケーションを取らなければなりません。

私が担当する理科を取りたいという学生も数名いました。1月から6月までのわずかな期間で実力を付けさせるにはどうしたらいいでしょう。私の目の前でオリエンテーションを聞いている学生たちの顔を見ながら、そんなことも考えていました。こちらも腹をくくりますが、学生たちにも相当な覚悟を求めることになりそうです。

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過不足

12月15日(火)

授業後、面接練習というか、面接の想定問答集のチェックをしました。

まずはAさん。Aさんについては、答えの内容はともかく、文法の間違いが多いという引き継ぎを受けています。Aさん自身もそういう指摘を受けて、「どうして本学を志望したのですか」などの質問への回答を考えて、文字にしてきました。確かに、引き継ぎのとおり、要点は押さえていますが、助詞が違ったり動詞の活用がおかしかったりしていました。

そういう点を指摘すると、パソコンの中の想定問答集を訂正しました。話すことに自信がないらしく、細かいところまで指示を求めてきました。それだけでなく、訂正したものを覚えようとしていました。丸暗記をすれば、その質問が来た時には完璧に答えられます。しかし、それ以外の質問をされたら、しどろもどろになることは火を見るよりも明らかです。

私は根性がねじ曲がっていますから、そういう受験生を目の前にしたら、想定外の質問ばかりしちゃうでしょうね。Aさんが受験する大学の面接官はどうなのでしょうか。

次はBさん。こちらは、話し出すと止まらなくなるので、どうでもいい話を押さえ込んで本筋に話を絞るために想定問答集を作りました。確かによくしゃべります。私が想定問答集を読んでいる間も、ずっとその答えにした事情などを解説してくれました。この調子だと、「どうして本学を志望したのですか」に対して3分でも5分でも語り続けかねません。「しゃべり過ぎはいけないってわかっているんですが、止まらなくなっちゃうんですよね」とBさん。面接官から「わかった、もういい」なんて言われて中断されたら、気を悪くするでしょうね。Aさん以上に指導が難しいです。

この2名、今週末から本番です。

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密、マスク

12月14日(月)

今年の漢字は「密」になりました。私もたぶんそうじゃないかなあと思っていました。この字の活躍ぶりを思えば当然ですね。「三密」も、最初の頃は「山蜜」などと、とんでもない変換がなされましたが、今では“さんみ”打ち込んだだけで候補に挙がってきます。

午後からCさんの面接練習がありました。教室に2人だけですから、全然密ではありません。しかし、マスクをしているため、Cさんの声がとても聞き取りにくかったです。Cさんの声は、もともと遠くまで響く質ではありません。声の大きさも、さほどではありません。それにマスクが加わったものですから、2メートルぐらいの距離でしたが、かろうじて話の内容が理解できる程度でした。面接官が私よりも年寄りで耳が遠かったら、聞こえないということになりかねません。そして、往々にして、そういう年寄りが合否決定の場で大きな力を持っていることが多いのです。

でも、Cさんの声が確実に聞き取れる距離となると、3人ぐらいの面接官Cさんが顔を突き合わせるような、まさに密そのものの状態になってしまいます。ですから、Cさんには、マスクの中で口を精一杯動かして、可能な限り声をこもらせないようにと指示しました。どんなに素晴らしいことを語っても、相手の耳に届かなければ何も言わないのと同じです。

Cさんは、対面ではなくオンライン面接なら、マスクをしなくてもいいですから、力が発揮できるのではないでしょうか。オンラインなら密の心配もありませんしね。そういえば、今年は集団面接って行われているんでしょうか。あれも、考えてみれば、けっこうな密ですよね。

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想定外に負けるな

12月12日(土)

受験講座もなく、学生が来ないはずの土曜日ですが、10時過ぎにスーツ姿のJさんが来ました。いつものラフなスタイルとは打って変わって、営業をかけに来たどこかの会社の人と言っても何ら不思議ではありません。Jさんは、N大学の面接試験が対面からオンラインに変更されたため、学校の教室を借りに来たのです。おとといの夕方、使用予定の教室でカメラテストのようなことをして、面接の会場としてふさわしいと認められ、本番を迎えたという次第です。

大学入試のオンライン面接をつぶさに観察したいのはやまやまですが、会場の教室に受験生本人以外の人がいることが知られたら、不正行為とみなされてしまうでしょう。また、教室の外から、耳をそばだて娜からのぞき込むなどというのも、お行儀もよくないし、Jさんに余計なプレッシャーをかけてしまうことにもなりかねません。ですから、私は1階の職員室でJさんの面接試験が終わるのをずっと待っていました。

30分ほど経った後、「先生、終わりました」とJさんが。緊張が解けたからでしょうか、すっきりした顔をしていました。「どうだった?」と聞くと、想定外の質問が2つあったとか。うなだれたり目がおどおどしたりしていませんから、少なくとも志望理由などの王道の質問にはきちんと答えられたのでしょう。想定外と言っていた質問も、内容を覚えていましたから、パニックになったとかということはなさそうです。果報は寝て待てということにしておきましょう。

来週も、月曜日から面接練習です。今年は大掃除の日まで、学生の受験指導が続いそうです。

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2年ぶりぐらいかな

12月11日(金)

久しぶりにレベル1の授業に入りました。待機期間明けの新入生がぽつりぽつりと来始め、レベル1のクラスを増やすにあたり、私も駆り出されたという次第です。

今学期の新入生は、日本の入国制限によってなかなか日本へ来られず、散々じらされた挙句にホテルに来日後2週間も監禁され、どうにかこうにかKCPの教室にたどり着いたという学生たちです。そのためなのか、勉強しようという意欲は今までの新入生よりも強いと感じました。途中の休憩時間には、今までの勉強で疑問に思っていた事柄を、一斉に質問してきた感がありました。日本語の勉強に飢えていたんだなあと思いました。

生の日本語が聞ける楽しみもあるのでしょうか。発音練習、リピート、コーラスもまじめにやっていました。でも、耳が遅れていること、口が回っていないことは覆うべくもなく、発音のやり直しや、私が学生の言葉が聞き取れずに聞き返す場面も少なくありませんでした。

何でも吸収しようとする、教師にとっていい学生たちではありますが、実力の絶対値は知れたものです。大学進学希望の学生たちは、来年の6月、まだ初級の段階でEJUを受けなければなりません、その成績を持ち点として、来年の今頃ぐらいまでの入試を戦うのです。なんともつらいものがあります。

他の日本語学校も似たりよったりだとすると、存外、日本語力の伸び代を高く評価してもらえて、今私が考えているよりも好ましい結果が得られるかもしれません。来週は、来学期の受験講座の説明会があります。この教室の学生たちも参加します。

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お手本になれたかな

12月10日(木)

日本語教師養成講座の受講生Mさんが、実習生として私のクラスに入りました。これから1週間、授業を見学し、時には参加し、最終日には授業をします。実習生は、養成講座の講義の一環として、今までに何回か授業を見ていますが、自分が授業をやることを前提に見るとなると、自ずとポイントが違ってきます。

Mさんは、授業前に、来週担当する授業の教案を提出しました。しかし、それは実際の授業を知らない教案で、教師に都合よく授業が進んでいく形になっています。そういう教案になるのはしかたがありません。神様みたいな学生ばかりだったらその通りに進められるでしょうが、実際に教室にいるのは煩悩だらけの学生です。その学生をどのように引っ張って目標地点まで連れていくか、それを学ぶのがこの実習です。

だから、私の役回りは、Mさんの教案の参考になるような授業をすることです。学生への目の配り方、指名のしかた、そんなことを見せていきました。私にしたって、常に理想的な授業をしているわけではありません。考えた通りに進まなかったり、想定外のことが起こったり、日々薄氷を踏む思いです。そういうのも含めて、全部見てもらって、Mさんの血肉にしてもらおうと思っています。

さて、私の授業を観察したMさんはどうだったでしょう。実習ノートを見る限り、今までの授業見学とは違う気付きがあったようです。それをどのようにご自身の教案に生かしていくかが、直近の課題です。明日はK先生の授業を見学することになっています。K先生は私とは違うスタイルの授業をなさるでしょうから、そこからもまた、得るものがあるに違いありません。多くのものを得て、成長していってもらいたいです。

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難題

12月9日(水)

午後から進学関係のお仕事が2件。まずはJさん。高校の時から有機化学が好きなので、大学でも有機化学を勉強したいといいます。でも、有機化学のどの分野を勉強すればいいですかという、何をいまさらという感じの困った相談です。大学院に進学して日本で就職したいそうですが、そういう外枠しか決まっていません。「先生のおすすめは何ですか」と聞かれましたが、居酒屋のメニューを決めるノリで将来を決めちゃいけません。

とはいえ、自分で考えろと突き放したら、Jさんは何もできないでしょう。ですから、有機化学の範囲で、研究対象としてこれから有望そうな分野をいくつか挙げました。そこから先は、自分の国のサイトでいいからよく調べて、勉強の方向性を決めるように指示しました。そうしてやっと、面接対策のスタートラインに立てるのです。

次はZさんの面接練習。出願した大学の面接試験がオンラインに変更されたので、zoomを使っての面接練習です。オンラインで、授業はもう何回もしましたが、面接練習は私も初めてです。やってみると、視線を合わせにくいので、やりにくかったです。対面だと、面接官の目を見て話せとか顔全体に視線を注げとか指導しますが、カメラ越しだと、本人の意図には無関係に、カメラの位置によっていかにも目をそらしたようになってしまいます。また、照明の当たり具合によって、暗い顔つきに映ってしまうこともあります。

これらは本質的なことではありませんが、面接官に与える印象はおろそかにできません。ボーダーライン上なら、そのわずかな差が天国と地獄の分かれ道となります。考慮しなければならないファクターが増えて受験生には気の毒ですが、嘆いているだけでは明るい未来は開けません。

対面の面接練習なら、気づきをメモして渡すこともありますが、オンラインはそういうわけにもいきません。Jさんには、メールでフィードバックしておきました。

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