新規感染者数と好奇心

4月23日(土)

東京の新規感染者は5387人で、先週の土曜日よりも1400人ほど減りました。これで12日連続、前の週の同じ曜日よりも少なくなっています。減ったとはいえ5000人以上の感染者を出しているのですから、感染予防に気を抜くわけにはいきません。

東京は順調に(?)新規感染者が減りつつあり、かろうじて第7波を防げたのかなあという雰囲気ですが、それどころではない地域も方々にあります。北でも南でも、西でも東でも、過去最高やそれに近い新規感染者が発生しています。東京みたいなちょっと前までひどすぎる数字を出していたところが大口で減らしていますから、全国の数字にしてしまうと目立ちません。しかし、増えている自治体の面積で見ると、日本は危機を脱したとは到底言えません。日本地図が真っ赤になるでしょう。

そんな中、来週は連休です。「宣言」とか「措置」とかのない連休は2019年来です。そのころほどではないにせよ、人出が回復する見込みだと報じられています。私も出かけますからあまり大きな声では言えませんが、連休明けが心配です。来日したばかりの学生が浮かれてあちこちはしゃぎ回らなければと思っています。

でも、ようやく憧れの日本にたどり着いたのに部屋に閉じ込められたら、学生としてはたまらないでしょうね。何より、若者は好奇心の塊です。外国の町を探検したくなる方が当たり前です。おととし、去年の学生たちは、それを押さえ込まれていたのですから、気の毒でした。はしゃぎ回らずに未知の扉を開けて、新鮮な驚きと感動を味わってもらいたいです。

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ま゛行

4月22日(金)

中級のH先生が頭を抱えていました。よくできるYさんが、「む」に「゛」を付けるといいます。確かに、テストの答案の文字に「む゛」がありました。どんな発音をするのでしょう。唇を引き結んで、のどに力を入れて振るわせて、母音を発するのでしょうか。Yさんに音を出してもらいたいです。

Yさん1人ならまだしも、数名の学生が「ま行」を濁らせて「ま゛」行を創出していました。この学生たちの受けてきた教育に何かあったのでしょうか。オンライン授業でも、手書きで例文を提出させてきましたし、テストだって手書きだったはずです。

考えられるのは、教師のチェックの甘さです。手書きとはいえ、例文などを書いたノートを写真に撮って、それを送らせていますから、提出物のチェックも画面上です。このチェックをすると、私が老眼だからかもしれませんが、目が非常に疲れます。酷使すると言ってもいいでしょう。ですから、細かいミスを見落としているおそれはあります。その見落とされたミスに「ま゛」行が含まれていて、いつの間にか学生に「ま゛」行が定着してしまったのかもしれません。

もう1つは、学生側のチェックの甘さです。上述のように、オンラインで提出されたものに対する添削はオンラインで行います。したがって、提出物が返却された時点で、学生の手元には、オンラインで添削された提出物と、その元となった、教師の朱が入っていないノートなどがあります。学生が添削された返却物に気が付かなかったら、間違ったままの例文などしか残らないのと同じです。でも、Yさんほどの学生が、返却物に目を通さないなんて、あるかなあ。

真の原因はよくわかりませんが、せっかく対面になったのですから、提出物は厳しくチェックして、禍根は断ちたいところです。今なら、まだ間に合います。

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発見?

4月20日(水)

今学期の新入生・Mさんは、今週から受験講座を受け始めました。ITを勉強して日本で就職したいと思っています。勇んで理系数学の授業を受けたのですが、微分の壁に跳ね返されました。授業中、話は聞いていましたが、手は動いていませんでした。Mさんにとっては、かなり高度な内容だったようです。

ですから、授業後、少し話をしました。国の高校で微分積分はあまり勉強してこなかったので、EJUレベルとはいえ、私の話はあまり理解できなかったそうです。でも、24年度の進学を目指していますから、今すぐ、何が何でも高得点がほしいとは思っていません。長期戦に臨む心構えで来ているようです。

そもそも、日本で就職というのが最終目標なら、大学進学が最善の道とは限りません。専門学校から就職のほうが、早く社会に出られます。また、ITという分野が今後どのように動くかも、注視しなければなりません。Mさんの意識にはAIというものが入っていないように感じられましたが、AI抜きのITというのは、もはやあり得ないでしょう。2年計画なら、その辺もじっくり考えて、より就職しやすい進路を見出すということだってできます。

話してみて、Mさんは好感が持てる学生でした。私の話を聞いての受け答えもしっかりしていましたから、理解力、コミュニケーション力は高いのかもしれません。中上級のひねくれた学生など、あっという間に追い越されてしまうのはないでしょうか。今は苦しいでしょうが、逸材かもしれません。

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ネットワークづくり

4月19日(火)

受験勉強も含めて学問は何でもそうだと思いますが、頭の中にネットワークができたら、その方面の勉強は飛躍的に進みます。知識と知識が、知識と経験が、様々な、時には意外なつながり方をして、面白さと探求心が尽きることなく湧き上がってきます。

Cさんの場合、本人の話を聞く限り、生物はその域に達しているようです。しかし、化学はそのだいぶ手前で止まってしまっていて、勉強の面白みを感じるまでに至りません。ですから、ついつい生物の勉強の方に傾いてしまい、化学はより一層遅れてしまうという悪循環に陥っています。

生物はあるインターネットのサイトがCさんのフィーリングにフィットし、それを見ることで知らず知らずのうちに勉強が進みます。化学はそういうサイトに巡り会えず、苦しい戦いに陥っています。今学期はKCPの受験講座を取っていますが、基礎部分の抜け落ちをどう補ったらいいかという相談を受けました。

本番までちょうど2か月ですから、少々乱暴な手を採ることにしました。Cさんは知識を頭に詰め込むことには自信があるようですから、元素名から始まって、ある程度の所まで暗記で突き進んでもらうことにしました。頭の中に放り込んだ知識の断片をネットワーク化する作業は、私もお手伝いします。

こういう勉強法は邪道だと思います。でも、大学に入ってから本当の学問をするための準備段階だと割り切って、知識の堆積を図ることにしました。今はつまらないでしょうが、これを乗り越えたら明るい天地が広がっています。1日でも早くそこに出て、今度はのびのびと勉強を楽しんでもらいたいです。

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卒業前に同級会?

4月18日(月)

午前クラスの授業が終わった時間に、Wさんが受付に姿を現しました。Wさんも去年のこの学期にレベル1で教えた学生です。その後順調に進級して、今学期はレベル6です。先週まで隔離期間でオンライン授業でしたが、今週から登校できるようになったのです。

オンラインの画面からは小柄な印象でしたが、実物のWさんはそれより一回り大きかったです。物理的に大きいことも確かですが、自分に自信を持っているのでしょうね。胸を張っている分、大きく見えるのかもしれません。Wさんには今週末の新規来日生のウェルカムパーティーで代表あいさつをお願いしています。私以降、レベル2・3・4の先生方も、Wさんの人柄と日本語力の伸び具合を評価しているからこそ、代表に推挙されたのです。

先週末のウェルカムパーティーで代表を務めたMさんも、1年前私のクラスでした。そして、演台に立ったMさんは、やはり大きく見えました。日本の空に向かってはばたく感じがしました。苦労してつかんだ留学のチャンスを絶対にものにしてみせようという意欲が感じられました。

こうしてみると、1年前のクラスは粒ぞろいだったと思います。2人のほかにも、Kさん、Cさん、Lさんなど、他の先生の信頼を勝ち得ている学生ばかりです。Tさんも独特のキャラクターで、すでに新KCPには欠かせない人材となっています。ご家庭の事情で勉強をあきらめざるを得なかったXさんも、この場にいればきっと多くの先生方に愛されたでしょう。

まだ国にいる学生がみんな来日したら、1年前のクラスの同級会を開きたいですね。

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急にダイエット

4月15日(金)

ちょっと席を外して戻ってくると、机の上に「Yさんが受験講座を受けたいと言っていますから、授業後本人から話を聞いてください」という、H先生からのメモが置いてありました。午後から受験講座がありますからあまり時間がありませんが、受験講座の説明ぐらいはできるでしょう。

12:15にYさんのクラスの授業が終わり、いつ来るかと思って待っていましたが、なかなか来ません。途中で呼び出されても続きがすぐできるような仕事をしながら1時近くまで待ちました。授業後の学生対応が終わって職員室に戻ってきたH先生に「Yさん、まだ来ないんですけど…」というと、H先生はすぐにYさんに電話をかけました。すると、Yさんは「用事があるので帰った」と言いました。

収まらないのがH先生です。「授業が終わったらすぐに金原先生の所へ聞きに行くようにって言ったら、『はい』って答えたんですよ」と憤っていました。Yさんは中級の学生ですから、用事があるのだったら、話を聞くのを月曜日にするくらいの交渉はできるはずです。Yさんの用事が急用だとしても、一言断りを入れてもよかったんじゃないかな。H先生の憤りの原因はそんなところでしょう。

何でも取りあえず予約して、気軽にキャンセルするというのが最近の風潮だそうです。時間が来たら自動的にキャンセルになるというシステムも珍しくありません。そういう方式に慣れていると、自分の言葉の重みが実感できないのかもしれません。

Yさんのおかげでダイエットができました。お昼抜きでしたから。

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寒かったです

4月14日(木)

寒い1日でしたね。日付が変わった直後に最高気温20.2度を記録してから気温は下がる一方で、午前10時以降はは11度台にとどまりました。昨日の日中に比べると、15度近く低いです。日中の気温を最高気温ととらえると、2月20日ごろと同じくらいです。しかし、夜中に記録した最高気温は、平年を1度上回ります。何か月か後で最高気温のデータだけ見ると、2022年4月14日はこの時期らしい暖かさだったということになってしまいます。

数字のデータが実態を表していないことは、よくあります。KCPで毎学期繰り返されるのは、JLPTのN1に合格しているのに、レベルテストで初級に判定された学生がクレームをつけてくることです。JLPTとKCPのレベルテストとでは、実力を測る物差しが違うというか、物差しの当て方が違うというか、日本語学習者をとらえる視点が違います。学習者の日本語力は球のようにどこから見ても同じ形をしていることはなく、どこか歪んでいるものです。その歪みは、とらえ方によって芸術品になったり未完成品になったりします。

N1合格とは、ある特定の角度から見た時には芸術品なのです。それは認めます。しかし、どこから見ても1級品というわけではなく、欠点があらわになる角度があることもまた事実です。KCPで未完成な箇所を手当てして初めて、上級とか超級とか呼ばれる実力者になるのです。日本語を使って学問を究めたり社会に貢献したりできる人物に成長するのです。

EJUにしたってそうです。受験のテクニックを駆使して高得点を挙げても、それを足場にしかるべき大学に進学しても、その学生の将来に資する学問が身に付くかどうかは別問題です。夜中に記録した気温をその日の最高気温だと称しても、その最高気温によってその日を記述することはできません。

天気予報によると、明日も寒々しい雨の日になりそうです。でも、明日は最高気温と最低気温で1日が語れそうです。

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新しい顔も加えて

4月13日(水)

室内にいても汗ばむ陽気でした。教室との行き来で外階段を使うと、スーツの上着が鬱陶しくなりました。最高気温26.4度の夏日ですから、当然ですね。

理科系の受験講座が始まりました。今学期は新しいメンバーが加わりました。先学期までのメンバーでも、Kさんはずっとオンラインでしたから、対面では新メンバーです。対面授業での初めての質問は「今学期はオンラインの学生はいないんですか」でした。Kさん自身も苦労が多かったんでしょうね。今学期初めての学生も、6月19日のEJUには申し込んでいますから、それまでは本番に向けての特別メニューでいきます。基礎部分は省略で、数学は微分積分を中心に進めていきます。

対面だと、問題をさせた時にどのくらい手が動いているか一目瞭然ですから、学生の理解度を見積もりやすいです。前半手が止まっていたPさん、後半はプリントの余白やノートにせかせかと計算式を書いていました。表情にも余裕が出てきて、どうやら理解が進んだようです。Gさんはコンスタントに手を動かしていました。高校卒業間もないですから、私の話が高校の授業にすぐつながったのでしょう。

一方、Yさんは欠席でした。先学期、いくつかの大学を受験しましたが、桜は咲きませんでした。日本語学校在籍期間1年延長の特例を使って4月以降も残ったものの、この調子では見通しは明るくなさそうです。去年のEJUの成績だって、胸を張れたものではありません。6月に気合を入れてすばらしい成績を取れば、早々に合格を決められるんですがね。そういうポジションにいることを自覚していないのでしょうか。

欠席者もいましたが、教室には外とは違った熱気がこもっていました。

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末端の戦い

4月12日(火)

今学期はぱらぱらと新入生や先学期までのオンライン学生が新たに学校へやって来ています。以前のような統一的なオリエンテーションができなかったからでしょうか、毎日事務の受付が混雑しています。ちょっと密かなと思える時間帯もあるほどです。

その中の何名かは、受験講座を受けたいと言っています。本当は昨日から始まっていますが、今すぐ受講を始めるなら傷は浅いです。十分挽回可能です。6月19日が今年第1回のEJUですから、それに間に合わそうという意識が強いのだと思います。

そういう学生が多いことは、学校としては好ましいことです。しかし、今までにどれだけの勉強をしてきたかわからないまま教えるのは、教師としては恐ろしいものがあります。数学や理科の場合、ゼロから始めたら、2か月ではEJUのレベルには届きません。受験したというアリバイは作れても、その成績を生かして各大学の独自試験に挑むというレベルには及びません。

だから、国でどのくらい勉強したか、勉強したことがどのくらい頭に残っているかを学生本人に聞いています。Gさんは去年のEJUを国で受けたと言います。成績を聞くと、数学も理科も平均点をいくらか上回るぐらいは取っています。それなら、直前対策タイプの授業でもついてこられるでしょう。数学は勉強したけれども、すっかり忘れてしまったと言っているJさんには、今学期は総合科目に注力してもらうことにしました。総合科目で箸か棒に引っ掛かりそうな点数が取れたら、11月に向けて数学の勉強を考えてもらうことにします。

2023年度入試は、日本語学校の在籍期間を延長した学生が少なからずいますから、上位校ほど厳しいことが予想されます。その戦いの末端が、KCPの事務の受付で行われているのです。

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信じます

4月11日(月)

受験講座が始まりました。私の初日は、文系の数学です。全員が今学期からの学生ですが、みんな6月のEJUを受けます。ですから、因数分解や展開からやっている時間はありません。学生たちに問題を解かせて弱点をあぶりだし、そこを集中的に講義するという形で間に合わせることにしました。強引なやり方ですが、ある程度の基礎はあると信じてこうすることにしました。

受講生にHさんがいました。Hさんは去年の4月以来オンラインで勉強を続け、ずっと来日できる日を待ち続けていました。私も2学期にわたって教えました。昨年末に入国できそうになったのですが、オミクロン株に対する水際対策でお流れとなり、今も国にいます。6月のEJUを日本で受験するということで申し込みましたが、日本へ来る日程はまだ確定していません。Hさんは淡々と授業を受けていましたが、内心はどうなのでしょう。

日本よりはるかに厳しいロックダウンをしている上海にしたって、感染者は増え続けています。結局、ウィルスの侵入を阻止する手立てなどないのでしょう。だから、感染拡大の初期から言われてきたように、ウィルスと共存するしかないのです。変異株が次々と発生し、それが続々と日本へ入り込むことを前提に、個人の生活も社会も組み立てていかねばなりません。

昨年末に「今年の漢字」を聞いた時、「待」と答えてみんなの涙を誘ったHさん。「待」に希望が伴っているでしょうか。日本政府が入国制限を強める気配は、今のところ感じられません。ほかの学生はともかく、Hさんだけは無事入国できるようにと切に願っています。

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