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明日が本番

1月19日(金)

今学期は、金曜日だけ午後に理科の受験講座がありません。のんびりできるかというと、受験期はそんなことなく、面接練習がしっかり入っています。1月も半ばを過ぎるとシーズン末ですから、受験生側は余裕がなくなり、面接練習というよりは、3月までにどこかに滑り込むための進学相談の様相を呈することもあります。

今まで独自の道を歩んできた学生がこちらを頼り出し、その独自の道のいい加減さが露呈するのもこの時期の特徴です。“私がやってきたことは間違いないよね”という確認のつもりで面接練習を受けたらボコボコにされて、一から出直しということもよくあります。自信を失わせては元も子もありませんから、持ち上げつつさりげなく方向転換させなければなりません。

「日本で高いの技術を学び…」といった、下手に聞こえる文法の間違いを直すにしても、そういう話し方の癖ががっちりこびり付いてしまっていたら、困難を極めます。KCP入学以来さんざん注意されてきたはずですが、右から左へ聞き流していたんでしょうね。直前になってようやく教師が目を三角にしていた意味がわかったんじゃないでしょうか。いや、この期に及んでも“私は大丈夫”と信じていて、こちらの指摘も聞き流すだけかもしれません。

答えの内容が空虚だと、人格を疑われかねません。文法的語彙的に変な言葉遣いをすると、誤解を与えることがあります。私は、誤解されるおそれがない間違いは指摘しません。ミスを気にしすぎて答えが縮こまってしまってはいけませんから。でも、答える人の個性が見えない答えは再考を促します。それが流暢な日本語だと、いかにも心がこもっていなさそうに聞こえます。たどたどしかったら、単なるアホと思われてもしかたがありません。

今週末が入試の面々は、明日以降どんな戦いをしてきてくれるでしょうか。

何でもしますよ

1月16日(火)

金曜日が出願締め切りのSさんの志望理由書の手直し、今週末に入試を控えたCさんの面接練習、上級クラスの卒業文集下書きの添削と、年度末ならではの忙しさが続いています。

Sさんの志望理由書は、内容が欲張りすぎていたので、ばっさり切り捨てて規定の字数に近づけました。同時に論点を絞って、Sさんの将来に対する考えを明確にしました。Sさんは私が切り捨てた部分に未練があるようでしたが、それを盛り込むと面接で墓穴を掘ることになりかねません。あきらめも肝心です。

Cさんは、早口でいけません。留学生のへたくそな日本語に毎日接している私ですら聞き取れないのですから、大学の先生が理解できるわけではありません。内容的にもありきたりで、評価に値する答えが少なく、これでは合格は危ういです。また、視線がすぐそれるので、面接官に好印象を与えることはありません。

卒業文集の下書きは、油断していましたねえ。すーっと読めるのもありましたが、YさんやPさんの原稿は何度も何度も読み返さないと内容が理解できませんでした。また、“てから”と“たから”を間違えるなど、初級の文法ミスも山ほどありました。卒業したら次の学期に再入学してほしいような文章が多く、疲れもひとしおです。

それに加えて、受験講座開始。初回はオリエンテーションをしましたから、そんなにハードではありませんでした。しかし、これから6月のEJUまで、ガンガン鍛えていかなければなりませんから、嵐の前の静けさみたいなものです。

さて、まだ添削が残っていますから…。

雪の中を

1月13日(土)

センター試験が行われました。留学生のセンター試験とも言えるEJUは2か月前に終わっており、すでに結果も出ています。EJUの行われる11月は、実際に入学する翌年4月の5か月前で早すぎると思うこともありますが、雪のため開始を遅らせた会場もあったなどというニュースを聞くと、日本に不慣れな留学生が受験する試験は、雪のないうちに行うのが妥当だとも思えてきます。

志願者数58万人余りのセンター試験に対し、EJUは全志願者数で20分の1、日本国内の受験者数では30分の1程度になります。学生数の比率もそんなものですから、留学生が優遇されているわけでも冷遇されているわけでもなさそうです。

しかし、センター試験は問題が公開され、正解も配点も示され、自己採点が可能です。しかし、EJUは問題も正解も配点も全てブラックボックスです。どういう過程を経て自分の点数が算出されたのか、受験生自身にもわかりません。こういう点は、留学生はずいぶん冷遇されていると思います。各大学の独自試験も、問題の公開がなされないところが多く、留学生を増やそうと国が旗を振っているわりには、末端は動いていない感じがします。

大学なり大学院なりで学問を修めてから就職しようとなると、さらにお寒い状況が待っています。改善されつつあるとはいえ、優秀な若者が夢を叶えられずに日本を離れる例が後を絶ちません。私が知っているのはKCPの卒業生という、ほんの一握りにもならないサンプルですが、その中でもそうですから、全留学生においてはどれほどの人材流出、教育の空回りになっていることでしょう。

国が望んでいるような高度人材を世界中から集めるには、優秀な若者に学問をする場所として選んでもらうには、実が伴っていないように思えてなりません。

疑い

12月25日(月)

「問題4はサービス問題ですから、そんなに厳しく採点しなくてもいいですよ」と、出題者のK先生から言われていたのは、学校に欠席を知らせるメールの文面を考える問題です。メールの文面については授業でも扱いましたし、これくらいなら常識で答えられちゃうだろうと思っていました。ところが、採点を始めると、学生たちの答えはとんでもないことになっていました。

「先生、おはよございます」とぬかしやがったのは、Sさん。以下、一切読まずに0点。超級の分際で「おはよございます」とは何事ですか。“う”を落としたのはケアレスミスだとは、絶対に言わせません。恥を知れ、恥を!

件名に「休みの請求」と書きくさったのはGさん。Gさんのぶっきらぼうな話し方そのものの件名です。私はGさんの担任ではありませんからGさんからメールをもらったことはありませんが、こんなメールをもらったら、Gさんがどんなに具合が悪くても、さらにひどくするような激烈な反撃メールを送らずにはいられないでしょう。

こういうのに比べれば、「休んでいただきますか」などはかわいいものです。優しく「卒業する前に初級をもう一度勉強しておきましょうね」と言ってあげられます。でも、こんなメールを外部に向かっては絶対に送らないでくださいね。間違いなく日本語力を疑われます。

相変わらず多いのが、名無しの権兵衛さんです。そりゃあ答案用紙の氏名欄を見れば誰が書いたかはすぐわかりますが、メールの文面を書けという問題なのですから、そこにも書かなきゃね。

K先生は“情けを掛けろ”とおっしゃいたかったのでしょうが、Sさん、Gさんを始め、情けの掛けようがない答案をたっぷり読ませていただきました。超級の皆さん、新年早々送られてくる成績通知メールの文法の成績に驚かないでくださいね。

ゆがんだ三分粥

12月21日

午前中のテストが終わった後、EJUの結果がほしいと、Kさんが私を訪ねてきました。EJUの成績通知書はKさんあての信書ですからそれはそのまま渡しますが、Kさんは今月のというか、今学期の出席率がひどいので、そちらについて話をしなければなりません。

今学期、Kさんは本当によく休みました。理由を聞いてもはかばかしい答えが返ってくることはなく、のらりくらりと追及をかわしていました。それで全てが済んでやりたいことがし放題と思っていたら大間違いです。Kさんの今の出席率では、たとえ進学できたとしてもビザが出ないおそれがあります。今までにそういう話もしてきましたが、軽く受け流していたようです。来学期、卒業式までの実質2か月間100%出席したとしても、出席率の危険水域を脱することはできません。事態がそこまで悪化しているのにKさん自身は全く気付いていません。

EJUの成績にしたって、封を開けたとたん顔をゆがめていましたから、思い通りの成績が取れなかったのでしょう。調べてみると、案の定、6月より下がっていました。あんなただれた生活をしていたんじゃ、退化こそすれ進化など望むべくもありません。行き先がまだ決まっていないKさん、果たしてどうなるのでしょう。

期末テストの日の夕方は、いつも、アメリカの大学のプログラムで勉強に来ている学生たちの修了式があります。修了生は、修了証書をもらったらスピーチをすることになっています。みんな、この1学期間、実に濃厚な留学生活を送ってきたことがよくわかりました。3か月と期限が切られているからこそ、オーバーフローしそうになりながらも、貪欲に何でも吸収しようとしてきたのでしょう。その拙い日本語を聞きながら、Kさんだったらどんなスピーチをするのだろうと考えてしまいました。三分粥みたいなうすーい留学生活を送っていたら、なんにも話せなくなっちゃいますよ。

最高点の陰で

12月20日(水)

11月のEJUの結果が届きました。喜ぶ学生もいれば肩を落とす学生もおり、また、結果を見るのが怖くてなかなか封を開けられない学生もいるという、毎度おなじみの風景が繰り返されました。

Nさんは読解も聴解・聴読解も記述も最高点でした。KCPで初級から勉強していますが、とても慎重に1段ずつステップを踏みしめながら上がってきました。習った文法の例文をいろいろな角度から作り、その文法が使える範囲を自分の手で確認するような、抜け落ちのない勉強をしてきました。不明点はどんどん教師に質問し、これまた実感をもって理解しているかのようです。だから、私はNさんが最高点を取ったことを不思議には思いませんでした。

Dさんも日本語各科目で最高点でした。読書感想文コンクールにも参加しています。読書量がかなりのものだということがうかがえる作品でした。基礎から1つ1つ積み上げてきたことがよくわかる勉強法を、上級の今も続けています。一足飛びに難しいことをやりたがる学生が多いですが、そういう学生はどこかに大きな穴が開いていて、ある程度以上になると伸び悩みます。その反対が、Dさんです。

Yさんは肩を落とした組です。しゃべれるし漢字の読み書きもできるし頭の回転も速いし、授業中のYさんを見ている限り、DさんやNさんに引けを取るとは思えないのですが、テストとなると力を発揮できないたちなのでしょうか。面接では好印象を与えるタイプだと思いますが、EJUで合否を決められてしまうと辛いものがあります。

何より最悪なのは、EJUの結果が届く日に休んだKさん、Hさん、Sさんです。もらった結果を見て早速進学相談に来た学生が何人もいたというのに、お前らは無断欠席して何をしとったんじゃ!!!

ラップ

11月28日(火)

上級の学生でも、教科書を読ませるととんでもなく下手くそなのがいます。漢字が読めないだけならまだしも、ひらがなも漢字も一字一字拾い読みする学生には、初級に戻れと言いたくなります。いや、初級の学生だってもう少し文の意味の切れ目を意識して読みますから、初級クラスに入っても平均以下になっちゃうんじゃないかな。

読解の時間にJさんを指名したら、途切れ途切れのラップみたいな読み方をされて、テキストがなかったら文意が全くわからなかったでしょう。あんな読み方では、Jさん自身も文章の意味がつかめているとは思えません。中間テストの成績を調べてみると、案の定不合格。入学以来1年半、順調に進級を重ねてきましたが、“暗記の日本語”でどうにかこうにかテストだけはクリアしてきたに過ぎないのかもしれません。大学院進学が決まっていますが、よくこんなので合格できたものだと感心してしまいます。

最近、発話や音読など、声を出すことを軽視している学生が目立ってきたと感じています。EJU、小論文、英語、理系の数学など、声を出さなくてもすむテストをどうにかこなせば合格できちゃう面があります。また、留学生(の家庭)が豊かになったせいか1人あたりの出願校が増え、どこの大学も受験生が多くなり、面接も決まりきったことを聞くだけで、定番の質問の答えを暗記しておけばぼろを出さずに済むことも多いようです。面接練習でがっちり訓練して臨んだSさんが、肩透かしを食らったようなことを言っていました。だから、声を出す練習よりもペーパーテストをそつなくこなすトレーニングを重ねたほうが効果的だと思ったとしても、不思議はありません。

Lさん、Kさん、Gさんなど、Jさんと同じにおいのする学生はいくらでもいます。1人1人はばかじゃありません。でも、コミュニケーションという観点からは、不安が一杯です。みんな、まだ行き先が決まっていません…。

話す力

11月20日(月)

EJU以降の受験講座の理科は、口頭試問の練習をしています。口頭試問は知識を持っているだけでは通用しません。その知識を聞き手である面接官に正確に伝えられて初めて点数になります。また、ちょっとひねった出題によって、応用力が試されることもあります。

この講座を受けている学生たちは、EJUではそこそこの成績が挙げられているはずです。もちろん、まだ正式な結果は出ていませんから断言はできませんが、それだけの実力は持っていると私は見ています。しかし、一部の大学は、受験のテクニックが通用してしまうEJUの成績だけで理科の実力を判定することはせず、科学的な発想ができ、論理的に推論でき、合理的な結論を導き出す力を、口頭試問によって見極めようとします。同時に、頭で考えたことを日本語で伝える力も見てしまおうと、一石二鳥か三鳥をもくろんでいます。

私が出題すると、学生たちは惜しいところまではいくのですが、なかなかこちらの思ったところまで到達してくれません。もう一歩、踏み込んでほしいところなのですが、二の矢が次げずに口ごもってしまうことが多かったです。学生たち自身も、きっともどかしく感じているのでしょうね。

EJUのような選択肢の問題は、大学の勉強にはなじみません。やはり論述問題です。また、最近は理科系学部でも授業での口頭発表が増えていると聞いています。その基礎が、こういった口頭試問にあると思います。日本人学生に比べて日本語にハンデがある留学生が、今からその面を鍛えておくことには意義があります。

今学期の終わりには、模擬口頭試問にも堪えられるくらいの実力を付けさせたいと思っています。

目の前の学生

11月15日(金)

教卓のまん前の席を指定されたGさんは、テストの前から落ち着きがありませんでした。隣の席のXさんのノートをのぞき込んだり国の言葉でなにやら質問したりしていました。直前の確認と言えば聞こえがいいですが、表情はあまり真剣には見えませんでした。

テストが始まっても、貧乏揺すりこそしませんでしたが、口をパクパクさせたり手をあっちこっち動かしたり、あげもらいか貸し借りか行き来かわかりませんが、語彙か文法か自分なりに確認しているようでした。周りの学生は試験問題に真剣に取り組んでいるので、そんなGさんの動作など眼中にないようでしたから、放置しておきました。

聴解の時間になると、できない学生の典型的パターンに陥りました。次の問題が始まっているのに、前の問題の答えをあれこれいじりまわすのです。消しゴムで消して書き直している間に、新しい問題はどんどん進みます。そうすると、その問題も聞き取れなくて、そのまた次の問題の時に答えを考えることになります。すると、そのまたまた次の問題が…というように、悪循環に陥ってしまいます。Gさんは自転車操業にもなっていないようでした。

多くの留学生を見ていると、中には勉強に不向きなのもいます。そういう学生は勉強以外の分野で活躍すれば幸せになれるでしょうが、日本語という外国語を勉強しているうちは、苦難の連続です。Gさんにもそんなにおいを感じ取りました。まだ初級のGさんは、卒業が再来年の3月です。それまでもつのかなあと、心配になりました。

中間テストが終わりました。あさっては水上バスの旅です。Gさんも、こちらは楽しんでくれるでしょうか。お台場で活躍してくれるでしょうか。

頭を鍛える

11月13日(月)

「昨日のEJUはどうでしたか」「…」。私のクラスの学生たちは、昨日のEJUについて何も語ってくれませんでした。私も学生時代は、学校の平常テストから入学試験まで、過ぎ去ったテストのことは一切忘れ、出来や感想を聞かれても「まあまあ」としか答えませんでした。答えが間違っていたことがわかってもどうすることもできず、ただ落ち込むだけですから。学生たちがそこまで考えて無言だったのかどうかはわかりませんが、今ここでEJUの反省をするより、各大学の独自試験の対策を考えたほうが前向きであり、現実的です。

さて、その独自試験対策ですが、理科系の受験講座では、筆答試験や口頭試問に備える授業を始めました。どちらにしても、自分の思考の軌跡を明確かつ論理的に述べることが重要です。数式の羅列や独りよがりの演説では通りません。でも、EJUのマークシート方式の訓練を続けてきた学生たちは、答えを見つけるテクニックには長けているかもしれませんが、導き出す力はあまり磨いていません。

それから、大学に進学したら、数式を追いかけながら先人の足跡をたどったり、目の前の現象を数式や法則に落とし込んだりというように、演繹的にも帰納的にも論理思考が必須となります。そういう頭脳の基礎を今のうちから築いておきたいのです。大学院に進んだら、未知の世界を自分の脳みそで切り開いていかなければなりません。それにたえうる頭へと鍛えていきたいのです。

これが、私が学生たちにできる最後のご奉公だと思っています。