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アイコンタクト

7月5日(木)

久しぶりに、新入生のプレースメントテストの監督をしました。誰も知った顔のいない、水を打ったように話し声どころか物音一つしない静かな教室に入っていくのは、冷たいプールに足を突っ込むようなピリッとした感覚があります。「おはようございます」と挨拶してみても、新入生は私以上に緊張していて、わずかに頭を下げる学生が2、3名いただけでした。

最初の科目が始まると、問題を見たとたんに早くも苦笑いを浮かべる学生がいました。まじめな顔で取り組んでいても、解答用紙を見ると右から左へ文字を写しているだけだったりしていることも、毎度のことです。全然わからなくて、制限時間が来るまで退屈そうにしている学生も数名いましたが、机に突っ伏して寝てしまわないあたりが、新入生らしいところでしょうか。良くも悪くもお互いの距離感がわかりませんから、安全サイドに走っているのでしょう。

学生が机の上から消しゴムなどの小物を落としてしまったとき、それを拾って机の上に載せてあげると、国籍性別年齢を問わず、みんなニコッとします。距離がちょっと縮まったかなと思いますが、試験中ということもあり、それ以上接近することはありません。

最後の科目は、問題用紙と解答用紙を提出したら帰ってもいいことになっています。これは学期中の中間テストや期末テストと同じですが、プレースメントテストでは大きく違うことがあります。

中間・期末テストでは、提出した学生は教室を出るとき、私のほうに顔を向けて「さようなら」とささやきかけるか、会釈するかするものですが、プレースメントテストではそれがありません。この違いが1学期間の教育の成果なのかなと思っています。

私の教室にいた学生たちも、9月の期末テストではさようならと目で挨拶して帰っていくんでしょうね。

明日ですよ

6月16日(土)

明日がEJU本番ですから、受験講座のEJU日本語も最終回。今学期は初回と最終回が私の担当でしたが、最終回にいたっても、遅刻してきたり試験中にトイレに出たり床に何かを落としたり、いまひとつピリッとしませんでした。床に落としたものを拾おうとしてもぞもぞ動いたら、カンニングを疑われてもしかたがありません。また、拾ってあげたとしても不正行為だと思われかねません。遅刻やトイレは論外です。

毎回、つまらぬところで引っかかって不本意な成績に終わる学生が出てきます。ケータイを鳴らしたとか、数学のコース2を選んだのにコース1の問題を解いて答えてしまったとか、成績が予想よりかなり低いからマークする場所を間違えたんじゃないかとか、情けないかぎりです。学生たちの国にも日本同様の厳しい受験競争があるのに、どうしてこうなっちゃうのでしょう。日本の大学受験をなめてるのだとしたら、もってのほかです。

6月のEJUで高得点を挙げて11月は受けずに大学の独自試験にじっくり備えるのが理想だと、初回に訴えました。LさんやXさんなど、そういうふうに戦って第一志望の大学に進学した例が最近目立っています。ことに今学期超級クラスにいる学生にはそうしてもらいたいですけれども、どうでしょうか。理系は、数学や理科の筆頭試験の練習を早く始めたいです。マークシートとは違う頭の使い方をしなければなりませんからね。

明日、学生たちが試験に取り組んでいるころ、私は歯医者の椅子の上です。学生たちの健闘を祈っている余裕もありません…。

逃げを打つ

5月31日(木)

先週末に外部で行われたEJUの模擬テストの成績を受験した学生たちに伝えました。このテストは、成績を見て一喜一憂するのではなく、知らない会場で知らない顔に囲まれてテストを受けるという、いわばアウェーの雰囲気に浸ること、40分で読解問題25問をきっちり解くこと、そういったことを実体験して、本番に備えることに意義があります。慣らし運転などという言葉は最近聞かなくなりましたが、まさにそれだと思います。

Lさんは読解の時間が足りなかったと言います。10分かかった問題もあったそうです。40分で25問ですから、どう考えても時間の掛けすぎです。これじゃいけないと軌道修正するための模擬テストですから、本番で同じ失敗を繰り返さなければ、模試を受験した甲斐があったというものです。

Hさんは読解の本文に引かれてしまい、問題を解くのを忘れてしまったと言っていました。残念なことですが、入試の問題文は楽しんではいけません。興味がそそられても、内容がおもしろくても、問題なのだと割り切る必要があります。Hさんも自分の失敗に気付いていますから、本番はどうにかしてくれるでしょう。

さて、申し込んだ学生の9割はきちんと受けましたが、残りの1割は当日欠席しました。その1割の学生を呼び出しました。欠席の理由は、寝坊だったり試験があることを忘れていたりと、緊張感のかけらも感じられませんでした。さらにひどいのは、召喚に応じなかった学生たちです。Jさんにいたっては、授業には出ていたのに逃げ帰ってしまったようです。自分の行動に対してあまりにも無責任です。この模擬テストはKCPが単独で行うのではなく、T専門学校のご好意により参加させていただいているのだということを、学生たちには繰り返し伝えました。それでもしょうもない理由で休んだり、その理由を述べることすらどうにか避けようとしたりするなど、言語道断です。

これらの学生の行動は、記録簿にしっかり明記しておきました。卒業するまで、いや、卒業後もずっと残ります。KCPは、永久に不滅ですから…。

みんな受けてきて

5月24日(木)

今週末、T専門学校が主催するEJUの模擬テストが行われます。受験希望者を募り、その名前をT専門学校に送り、受験番号をもらい、それを受験する学生に伝えるという作業をしてきました。今年も大勢の学生がこのテストに申し込んでいますが、数年前、実際に受験したのが半分くらいだったという事件がありました。

学校間の信頼関係の上に立ってテストに参加させてもらっているのですから、その信頼関係をぶち壊すような行為は非常に困ります。「受けてください」と言われて「それでは…」というのではなく、自ら「受けます」と申し出たにもかかわらず「やっぱりやーめた」と言いもせずに欠席してしまうのです。その神経が、私にはわかりません。

ケータイでいつでも連絡がつくようになってから約束が軽くなったという話を聞いたことがあります。とりあえずつばだけつけておいて、ちょっとでも都合が悪くなったり面倒くさくなったりしたらあっさりキャンセルというパターンです。キャンセルの連絡をしていたうちは今思えばまだよかったのですが、キャンセルし慣れてくるとその連絡も省略してしまい、約束の重みが失われていったのだそうです。

先日の運動会だって、選手に選ばれていたのに無断欠席して、周りに迷惑をかけた学生が1人2人ではありませんでした。中間テストの結果を見ながらの面接だって、自分で選んだ日時なのにすっぽかす学生が、クラスに必ずいます。自己中とかわがままとかという言葉で片付けてしまうのは危険だと思います。

ことばの重みを教えるのも、ことばを教える教師の役割だと思います。そのためには、自分自身が自分のことばに責任を持たなければなりません。

もどかしい

5月10日(木)

「じゃあ、5番の問題」。受験講座の物理で、EJUの過去問を練習問題として使い、学生たちにやらせました。3分ぐらい経ってから「できた?」と聞いてみましたが、反応が鈍いです。首を傾げたり下を向いて問題に取り組んでいる様子だったりで、自信をもって答えてくれる学生がいませんでした。

「みんな、問題よりも日本語を読むのが大変?」と聞いてみると、学生たちは元気なくうなずきました。このクラスは初級の学生たちが主力ですから、10行近くに及ぶ問題文を理解するのに苦労していたのです。今学期から受験講座を受け始め、でも6月に本番を迎えます。気持ちははやるものの、読み取るスピードはいっこうに速まりません。この落差にもどかしさを感じていることが手に取るようにわかります。

昨日の上級の学生たちはそんなことはなく、キーワードにアンダーラインを引いたり丸で囲んだりしてどんどん読み進んでいました。半年かそれ以上受験講座に出ていますから、知識の堆積もありますし、勘も働くようになってきました。多少失敗したとしても、大崩はしないでしょう。問題文の読解に悪戦苦闘していた初級の学生たちは、こういう学生たちと戦わなければならないのです。

日本語を読まなくても答えられる魔法のような方法があれば教えてあげたい気もします。でも、ドラえもんのおかげでいい思いをしたのび太君が結局はつけを払わされるように、日本語力をおろそかにしていたら、大学に入ってからかたきをとられることでしょう。やっぱり、学問に王道なしです。

これから花を咲かせます

4月24日(火)

選択授業で、EJUの記述対策のクラスを受け持ちました。クラスの学生に聞いてみると、1名を除いて今回が初めてのEJU受験とのことでした。中級の学生たちですから、去年の11月はまだ初級で、受けても高得点は取れなかったでしょう。今回のEJUで高得点が挙げられれば、彼らが思い描いている夢が具体的な形を帯びてきます。

まず、EJUの記述とはという話をしましたが、試験時間とか字数とかはみんな知っていました。採点は論理性に重きを置くというあたりからは、新しい情報だったようです。中級あたりだと文法を不安がる学生が多いのですが、読み手に誤解を与えるような、あるいは読み手の理解範囲外となるような間違いでなければ、論理性でカバーできます。議論に飛躍があったり、独り善がりすぎて読み手がついていけなかったりしたら、文法的にはミスがなくても、高い評価とはなりません。

それから、中級の学生は、書き言葉と話し言葉が曖昧になっていることが多いです。特にKCPは話せるようになることに力点を置いていますから、何かを日本語で考えるとき、話し言葉がまず思い浮かんでしまうこともよくあるようです。その辺も矯正していかねばなりません。

さらに、EJUが初めての学生には少々ハードルが高いかもしれませんが、ことばのレベルを上げろとも訴えました。かつて毎学期のように中級の作文を担当していたときは、“もっと、大丈夫、もらう、いい”など、NGワードを設けて、それを使ったら文句なしでマイナス5点とかということもしたことがあります。EJUだけだったらそこまで求められないでしょうが、その先にある小論文まで考えると、上述のような便利な言葉を安易に使わない癖をつけることも大切だと思います。

さて、書かせてみましたが、そんなことより何より、スピードが全然でした。30分で規定の字数に届かなかった学生がうようよ。鍛え甲斐があるというか、何というか…。

5分前の注意

4月23日(月)

はい、あと5分です。自動詞他動詞、助詞、小さい「っ」のあるなし、てんてん(゛)のあるなし、自分の答えをもう一度よく見てください。残念な間違え方をしている人がたくさんいます。

中級クラスの文法のテストがありました。本当はもっと具体的に注意したかったのですが、他のクラスとの公平さを考えると、これが精一杯でしょう。

試験監督中は、学生の答えをのぞき込むぐらいしか仕事がありませんから、教室内をうろつきながら学生がどんな間違いを犯しているか観察します。自分が教えたところを間違われると、教え方が悪かったのだろうかと思ってしまうこともあります。学生の顔を見て、こいつは私の話を聞いていなかったよなあと、学生の罪をなすりつけることもあります。学生のほうは、テストに出されて初めてその文法の重要性に気づくこともあるでしょう。

結局、終了5分前に注意を与えても、間違いに気が付くのは優秀な学生です。お前のために注意してるんだよっていう学生に限って、あきらめてしまっているのか、机に伏したままです。殊勝な顔をして見直しても、間違いに気づかぬままということが多いです。今朝も、私がみんなに見直してほしかった問題は、過半数が間違った答えのままでした。

採点してみると、その問題ができた学生は、だいたい成績上位者でした。不合格者はその問題を落としていました。すなわち、その問題は出来不出来の弁別機能がとても高い問題だったということです。決して難しい問題ではないのですが、中級の学生の急所を突く問題だったとも言えます。

テストを返すときに、どのようにフィードバックしましょうか…。

物も言えず

4月21日(土)

先学期は養成講座の授業が土曜日にあったので、受験講座のEJUの担当はお休みしました。ですから、去年の11月のEJU直前から5か月ぶりぐらいの受験講座EJUでした。

初回は、問題を解かせることもそうですが、去年のEJUの結果をかいつまんで解説しました。KCPの学生の平均は、全受験生の平均と比べると日本語学習暦で3か月分ぐらい、KCPのレベルで1つ分ぐらい上回っています。それは喜ばしいことなのですが、6月と11月の両方を受けた学生について言うと、11月に成績を落とす例が見られます。6月は日本語がよくて総合科目などが悪く、11月は総合科目は伸びたものの日本語が落ちてしまい、出願の蔡にどちらの成績を使ったらいいだろうかという相談が後を絶ちませんでした。

上級の学生だと日本語能力が飽和状態ですから、勉強の期間が長くなったからといって必ずしもEJUの成績もそれに比例して上がるとは限りません。6月に挙げた高得点を維持するだけでもかなりの努力を要します。今まではこの意識付けが足りなかったので、今年はうんと強調しました。教室がシーンとなってしまったところを見ると、学生たちはやはり甘く考えていたようです。

EJUの成績には相対評価的な面もありますから、自分の実力の伸びが周りよりも小さいと、スコアとしては下がってしまうことがあります。去年の11月に最高点を取ったYさんは6月を受けていません。そういう受験生がひゅうっと現れて、6月から点の上積みを図ろうとしていた受験生の足元をすくってしまうのです。足元をすくわれないようにするには、同じく11月最高点のKさんのように緻密に勉強していかなければなりません。そんなところも、追い追い学生たちに伝えていきます。

暑い

3月28日(水)

午前中、病院へ行くのに外を歩いたら、汗をかいてしまいました。スーツの上着が少しうるさく感じられました。交差点では日陰で信号待ちする人も。東京の最高気温22.9度は5月中旬並み。5月中旬といえば、クールビズが始まる時期ですよ。上着が邪魔くさいわけです。もちろん今年最高の気温でした。

午後は期末テストの採点。初級の漢字を担当しました。たけかんむりをくさかんむりにするくらいなら、漢字を書き慣れている間違え方ですが、鏡像文字を書いちゃうというと漢字の基礎ができていないのではないかと疑いたくなります。それを中国の学生が書いてしまうというのは、どういうことでしょう。簡体字の影響だとは思えません。スマホ操作ばかりで、手で字を書く習慣が失われているように思えます。

むしろ、アルファベットの国の学生が健闘していました。漢字は表意文字だという点を無視した間違え方はありましたが、絵のような漢字を書く(描く?)ことはありませんでした。きっと苦労はしているでしょうが、努力の甲斐はありました。漢字に対する感覚は磨かれています。

夕方はおととしの卒業生Cさんが、W大学大学院を出て外資系のコンサルタント会社に就職すると報告に来てくれました。かかわった先生方から就活について質問攻めにあいましたが、どの質問にもこちらの知りたいことをわかりやすく答えていました。コンサルタントには頭の回転のよさが必須だといっていましたが、それを感じさせる話しっぷりでした。

明日はさらにもっと気温が上がるとか。いよいよ腕まくりかな…。

漢字テストとお礼状

3月6日(火)

漢字のテストをしました。まあ、卒業生の成績の悪いこと。10点とか15点とか、勉強してこなかったとしか思えない答案が続出。平気でそんな答案を書く学生は、卒業認定試験も終わり、バス旅行へも行ってしまい、あとは金曜日の卒業式を待つだけという、今週の授業を消化試合としか認識していないのです。

勉強してこなくても80点ぐらい取れてしまう日本語力があるのなら消化試合でもいいかもしれません。でも、そういう学生の実力は、勉強してこなかったら限られた範囲の漢字の読み書きすら満足にできないのです。卒業式まで授業日は明日と明後日しかありませんが、それこそ1字でも多くの漢字を覚えていってもらいたいです。

そのくせ、文法の例文では“卒業したにしたって、勉強が終わったわけではない”など、殊勝なことを書いているのです。これは例文のための例文に過ぎず、本心はまるっきり別なところにあるのでしょうか。

もう少し上のクラスでは、お世話になって先生方へのお礼状を書かせました。ある特定の先生に向けてと思って教材を用意したのですが、多くの学生がKCPの先生全員に向けたお礼状を書いてくれました。雑な字で数行書いてお茶を濁す学生が出るのではないかと疑っていましたが、そんな学生はおらず、配った便箋の上から下までびっしり感謝の気持ちを込めてくれた学生が少なからずいました。

卒業する学生たちは、勉強と言われるとげっぷが出てしまいますが、感謝の気持ちはチャンスがあれば表したいと思っているのでしょう。卒業式後には先生たちと触れ合う時間も用意してありますから、そういう時間を是非活用して、思いを伝えてKCPを後にしてもらいたいです。