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力の差

3月18日(月)

授業後、WさんとCさんが会話テストを受けました。こちらから与えた話の骨格に肉付したものを発表します。もちろん、話の内容も見ますが、“会話”テストですから、台本棒読みのような話し方は減点です。

さて、この2人、Wさんは気持ちのこもった、イントネーションに起伏のある話し方をしました。週末にかなり練習したのだろうと容易に想像できました。それに対し、Cさんはスクリプトを暗記しただけで、見事な棒読みでした。その対比がおかしく、聞いていてちょっと笑ってしまいました。やっている本人たちは、棒読みのCさんにしろ真剣でしたから笑っては失礼なのですが、でも、コントを見ているような感じがするくらい、落差がありました。

Cさんはできない学生ではありません。先週の文法テストはWさんよりいい成績でした。でも、この会話テストは、15点差でWさんのほうが上だと判定しました。もし、入試の面接だったら、Cさんは自分の志望理由書か大学のホームページを丸暗記してきたと見られてもしかたがありません。Wさんは、自分の言葉で語っていると思われるに違いありません。同じことをしゃべったとしても、Wさんは合格、Cさんは不合格になるでしょう。

今シーズンの入試は、こういう最後の一息で落とされてしまった学生が多かったように感じています。EJUの成績や提出書類では甲乙つけがたくても、面接で“乙”をつけられて涙を呑んだ例が少なからずあったと見られます。こういう反省に基づいて、“話す”力というよりも、自分を“語る”力を伸ばしていきたいと思っています。

前向きに

2月19日(火)

午前の授業を終えて職員室に戻ると、Bさんが私を待っていました。先週末K大学を受け、その試験問題でわからないところを聞きに来たのです。その問題は、先週まで取り組んでいた記号で答える問題ばかりの過去問とは違って、「〇〇字程度で答えなさい」という記述問題がいくつもあり、かなり傾向が変わっていました。去年までの問題も留学生にとっては荷が重いと思っていましたが、今年のは記述が加わった分だけ、さらに難度が上がりました。

そういった問題を、教科書や参考書を見ながら、Bさんと議論しながら解くというのは、私にとっても大いに勉強になります。最近の学問の傾向もつかめますし、EJU対策の受験講座では見過ごしがちになる部分にも目を向けさせられます。筆記問題も制限字数にぴったり合うようにまとめるとなると、知識の整理をしなければなりません。

1時間ぐらいBさんに付き合ったでしょうか。午後の授業の先生方が教室に向かったら、午前のクラスで欠席した学生への連絡です。ところが、最近の学生は留守番電話の設定をしていませんから、一向につながりません。スマホはラインのための道具だといわんばかりです。現に音声通話を全然していない学生が少なからずいます。ここまで来たら、もはや電「話」じゃありませんね。こういう後ろ向きの仕事をすると、なんとなく落ち込みます。

午後の受験講座から帰ってくると、T先生が2人の学生を引き連れてきました。学校の前のホテルの駐車場の脇の喫煙所に無断で入り、タバコを吸っていた学生たちです。学校の喫煙所以外ではタバコを吸ってはいけないといわれていたのに、どうしてわざわざ他人の敷地まで行ってタバコを吸ったのかと聞くと、喫煙所は煙いからだと言います。お前がその原因を作ってるんだろうと突っ込みを入れましたが、初級の学生には通じなかったようで…。

こちらは住居不法侵入ですから、立派過ぎるくらいの犯罪です。2人のうち1人は未成年ですから、罪を2つ犯したことになります。警察に通報されたら、一発で手が後ろに回ります。こういう学生を説教することが校長の仕事だと言われれば実にその通りですが、これまたあまり前向きの仕事ではありません。

悪い学生がいなければ、毎日1時間は早く帰れるでしょうね。悪い学生にむしり取られている時間をいい学生に振り向けられれば、優秀な学生をもっともっと伸ばせるんでしょうけどね。

比例

2月18日(月)

中間テストがありました。午前中は卒業クラスの試験監督をしました。今学期は私が入っていないクラスですが、大半が以前受け持っていたり選択授業のクラスにいたり受験講座を受けていたりということで、何がしかの接触がある学生でした。そりゃあ、2年近くいたらどこかで引っ掛かりがあるものですよ。

そういう彼らが、KCPで最後の試験に呻吟しています。ある学生にはここが踏ん張りどころだと心の中で応援し、別の学生にはいい気味だと冷たく見ていました。申し訳ないけど、授業態度が悪かったりそもそも欠席が多かったりする学生は、あんまり応援したくありませんね。えこひいきするわけではありませんが、ひたむきに努力を重ねている学生は、そっとおしりを押してあげたくなります。

さて、夕方から、その学生たちの採点をしました。おしりを押したくなった学生は、手心を加えるまでもなく合格点を取り、応援したくない学生は多少甘めに付けたところで不合格でした。教師の好みに合うとか合わないとかという以前に、授業をまじめに聞いていない学生は点が取れないのです。きっちり授業に参加してきた学生は、それなり以上の成績を収めるものです。

テストの採点と並行して、バス旅行の準備が進められています。明日はしおりを配って行程の説明をします。日光江戸村の中でいつ何を見るかも決めていかなければなりません。教師は行き帰りのバスの中で何をするかも決めておかねばなりません。バス旅行が終わったらすぐに卒業式です。あれこれ行事が重なって忙しいのが、毎年のこの時期です。

答えにくい

1月24日(木)

K大学を受けるYさんの面接練習をしました。挑戦するのが薬学部ですから、留学生にとってはかなりの難関です。志望理由など、普通の面接の質問では足りないと思い、かなり厳しい答えにくい質問もしました。内角胸元をえぐるような球には、EJUで好成績を挙げたさすがのYさんも、答えに詰まっていました。

面接練習は、空振りを覚悟の上でするものです。本番の面接で予想より難しい質問が出てきたら対応できないでしょうが、練習で聞かれた、答えるのに困ってしまうような質問への回答を考えておけば、本番で途方に暮れることは少ないと思います。まあ、面接練習は予防注射みたいなものであり、いろいろなウィルスに対する免疫ができていれば、本番で感染症にかかる心配は減ります。

かなりボコボコにされたYさんは、練習が終わってもしばらくは震えが止まらなかったようです。どうにか立ち上がって退室の挨拶まではしましたが、フィードバックのために再び椅子に腰掛けたら、もう動けませんでした。K大学もここまで受験生を追い込むことはないでしょうから、これに耐えられるようになったら、明るい未来が見えてくるかもしれません。

その後、就職試験を控えたHさんの練習にも付き合いました。こちらは予め質問が知らされているのですが、その質問がとんでもないものばかりで、Hさんといっしょに答えを考えました。ですから、正確には練習というよりは相談です。Hさんの希望や今までの経験を踏まえて答えを作り上げるのですが、背伸びやうそは結局Hさん自身の首を絞めることになりますから、あくまでも正直ベースで回答を練り上げました。

夜、卒業生のYさんがひょっこり来ました。そういえば、Yさんも面接練習で泣きが入った口です。でも、大学で3年間鍛えられた今は、堂々としたものです。就活の最中だそうです。夏ぐらいまでには、内定の知らせを聞かせてくれるのでしょうか。

断髪式

1月23日(水)

1:30に受験講座開始のチャイムが鳴ると同時に、Sさんが化学の教室に入ってきました。思わず目が釘付けになってしまいました。昨日A大学の面接練習をした時には背中の真ん中へんまであった髪が、ばっさり切られていたんです。若干オタクっぽい感じだった顔つきが、耳をすっきり出して精悍になりました。Sさん自身もちょっぴり気になるのか、いつもより髪に手をやる頻度が多いように見受けられました。

Sさんの髪は長かったですが、きちんとまとめられていましたから、むさ苦しいとか無精ったらしいとか、不潔感が漂うようなことはありませんでした。でも、髪を切ったほうが、Sさんの人柄の良さがストレートに感じられます。おそらく、面接官に与える好感度も上がることでしょう。

「外見ではなく中身だ」とはよく言われますが、「人は見た目が9割」とか「100%」とかという本やテレビ番組もあります。そこまでいかなくても、外見の第一印象でその人の人間性まで推し測られてしまうというのが、現実の人間関係です。Sさんも、それは意識していたことでしょう。

私だって、新学期の初授業で受けた印象で、その学生の人となりを決め付けてしまうことがあります。そして、それを修正するには、意外と時間がかかるものなのです。わずか10分か15分の入試面接では、修正不能かもしれません。どんなにすばらしい志望理由や学習計画や将来設計を語ったとしても、昨日までのSさんだと眉につばをつけられてしまったかもしれません。

授業後、Sさんに話しを聞いたら、日本へ来て初めて髪を切ったのだそうです。そして、その髪を寄付したそうです。SさんがA大学に入学する頃には、Sさんの髪で作られたウィッグをかぶった人が、どこかの町を歩いているかもしれません。

10問10分

1月22日(火)

先学期、初級のときから受験講座に参加してきた学生たちが、今学期は中級になりました。私が受け持っている理科の場合、物理や化学や生物に関する知識が増えて実力がついたことも確かですが、それ以上に、問題を解くのにかかる時間が短くなったと感じています。

例えば生物。正誤問題ではけっこうな量の、引っ掛けもある要注意の文をいくつも読みこなさなければなりません。そのため、3か月前、勉強を始めたばかりのころは、10問解くのに30分ぐらいはかかっていました。しかし、今学期は、同じ10問を10分強ぐらいで解いてしまいます。先学期は図をヒントにして解く問題に優先的に取り組むよう指示を出しましたが、今学期は長い文章の問題でも向かっていきます。

全問とは言いませんが、きちんと正解にたどり着いています。1学期間の日本語の勉強によってもたらされた成果にほかなりません。こうした実例を目の当たりにすると、初級から中級にかけての伸び盛りの時期は、何でも吸収していくのだなあと、感心させられます。今学期の生物の学生たちに、特にそれを感じます。

でも、EJUの生物は生物が得意な学生ばかりが受けますから、毎回ハイレベルな戦いが繰り広げられます。物理や化学なら好成績と言える70点でも、生物ではごく当たり前の成績です。80点ぐらい取らないと、好成績とは言えません。残念ながら、今の生物の学生たちは、そこまでには至っていません。

10問を10分ちょっとで解いたことはほめましたが、同時に、君たちの目指す点数は80点だとも伝えました。6月の本番まで5か月ほどありますから、どんどん鍛えて、80点どころか90点、95点を狙わせたいです。

涙の向こうに

1月21日(月)

職員室の入口にRさんが立っているのが私の席から見えました。こっちを見ているような見ていないような微妙な視線だったので、急ぎの書類作成中だったこともあり、無視していました。A先生から「Rさんがほんのちょっとだけ用事だそうです」と呼ばれたので、Rさんのところへ。「先生、S大学に合格しました」という報告がありました。

S大学は、午前の授業中に、Yさんからはだめだったという結果を聞いていました。RさんとYさんを比べるとYさんのほうが日本語力がありますから、Rさんも落ちたのではないかと覚悟していました。それだけに、よくやったと思いました。

でも、別の見方をすると、RさんはS大学の試験直前、毎晩遅くまで面接練習をしていました。志望理由から将来計画まで、Rさんの専門を取り巻く現況も含めて、入念に想定問答を繰り返していました。A先生からもH先生からも私からもさんざんダメ出しを食らい続けましたが、それでもへこたれることなく練習を続け、受験に臨みました。

一方、Yさんは、どこかで面接練習をしていたのかもしれませんが、私は直接相手をしていません。頭の中でのシミュレーションだけで本番に臨んだとしたら、この結果は当然です。慢心があったのでしょうか。それを見逃していたとしたら、「面接練習しようか」なんて、一言声をかければよかったと心が痛みます。

やはり面接練習をせずに専門学校を受験したWさんも、落ちてしまいました。Wさんの性格から考えて、専門学校をなめていたわけではないでしょうが、どこかに油断があったに違いありません。半べそをかきながら面接練習を受け続けることには、立派に意味があるのです。

私立大学の定員厳格化の影響が各方面に及び、厳しい受験競争が繰り広げられています。Yさんはすぐに体勢を立て直さねばなりませんし、明日はZさんの面接練習が入っています。気合を入れて鍛えなければ…。

悩みます

1月17日(木)

年が明けると、主だった私立大学の留学生入学試験は終わり、続々と合否発表が行われます。そして、戦いの場は国公立大学に移っていきます。また、行き場の決まらない学生は、第2期、第3期の募集をしている大学への出願を考え始めます。

Aさんも結果待ちを何校か抱えていましたが、そのうちの1つがだめだったので、もしもの場合に備えて動き始めました。11月のEJUで思ったほどの点数が取れなかったので、国公立の出願戦略も立て直さなければなりません。そういうわけで、午後、Aさんの進路相談に乗りました。

国公立大学の留学生入試は大学ごとに自由に日程を設定してもよいのですが、日本人高校生の入試が行われる2月25日に一緒に実施されることが多いです。ですから、この日にどこの大学を受けるかが最大のポイントになります。それ以外の日に入試がある大学も組み合わせて、Aさんは3校ぐらい受けようと考えています。それをどういう組み合わせにするか、いっしょに考えました。

Aさんは「東京」にこだわりませんから、私が地方にも目を向けろと説得する手間が省けました。Aさんが出した条件に合う大学はどこかということを中心に話を進められました。いくつかの組み合わせパターンを示し、Aさん自身がネットなどで調べて最終決定することにしました。

夕方、去年の卒業生Mさんが来て、近況報告をしてくれました。日本人にとっても難関とされる資格試験に挑戦しましたが、それはさすがに失敗しました。でも、失敗を糧に挑戦を繰り返していけば、卒業までには受かるのではないでしょうか。1年生のMさんは、まだまだ伸び盛りですから。そうそう、髪もちょっと染めちゃってましたから、「恋人できたの?」なんてからかったら、あわてて否定していました。若干怪しいですね。

来年の今頃、AさんもMさんと同じように、うまくいったこともいかなかったこともにっこり笑って報告に来てくれるでしょうか。それは、今週末から始まる合格発表と、国公立出願戦略にかかっています。

緊張感

1月11日(金)

国立大学を狙う人たちはこれからが本番で、ピリピリした雰囲気を漂わせながら新学期の教室に入ってきた学生も少なくありませんでした。街を吹き渡る肌を刺す北風とともに、教室や図書室にこの空気が流れ出すと、私は真冬を感じます。

今年のKCPの冬将軍はMさんでしょうか。昨年末ぐらいから頭が入試でいっぱいになっていることが、手に取るようにわかります。ちょっと飛ばしすぎじゃないかなあ。本番までまだ少し時間があるのですから、1人で10人分の緊張オーラを振りまいていたら、試験日に面接官に向かって発すべきオーラが涸れてしまうじゃないですか。

その点、Sさんはのんきなものです。関西の大学を受験しがてら、3連休は国から来た家族と一緒に旅行だそうです。もちろん、受験した大学に受からなければただの記念受験になってしまいますから、受験までは遊びたい気持ちは抑えてもらわなければなりません。でも、これぐらいのお楽しみがあったほうが、試験勉強にも身が入るんじゃないかな。

どこも行き先が決まらないまま卒業の日が近づいてくるというのは、だんだん追い詰められていくようで、学生にとっては居心地の悪いことだと思います。日本語学校には最長2年までしかいられませんから、3月末までに進学先が決まらなかったら、帰国しなければなりません。そのため、日本人の受験生にはないプレッシャーがかかります。

新学期早々、そんな学生を集めて進学相談会を開きました。ほとんどの学生が最悪の場合に備えて何か考えていましたが、Hさんはそこまでの覚悟がなさそうでした。卒業後も漠然と日本で暮らすことしか考えていないHさんは、根拠のない「大丈夫です」を繰り返すばかりでした。その楽観主義を徹底的にたたきつぶし、どうにかこうにか最悪の想定をさせました。

これから、胃の痛くなる季節が続きます。

結果を気にしない人たち

12月28日(金)

毎学期繰り返されることなのですが、期末テストの結果を教えてくれと連絡してくるのは結果の心配などしなくてもいい学生ばかりで、早く結果を知って早く今学期の復習をしてもらいたい学生はいっこうに連絡をしてきません。成績を気にしてメールをよこしたGさん、Sさん、Rさんは、みんなすばらしい成績で進級が決まっています。しかし、Tさん、Nさん、Mさん、Pさんなどは、大いに成績を気にしなければならないのですが、どうしているんでしょうね。

普段から自分の成績を正視し、長所を伸ばし、弱点を補い、実力をつけることに意欲的な学生と、テストを返されたその時はびっくりしたりがっかりしたりするものの、勉強しなきゃと思うのはその一瞬だけという学生とに分かれているのです。前者はたとえ99点でも、そのマイナス1点をなくすためにはどうすればよいか考えるタイプで、後者は合格点さえ取れれば、残りのマイナス40点には目をつぶってしまう学生たちです。59点と60点の差にはこだわるけれども、60点以上はざっくり“いい点数”でしかありません。

もちろん、テストの点数にこだわりすぎるのはよくありませんが、テストで減点されたところは自分の勉強に何がしか不足のあった箇所ですから、それは謙虚に受け止めなければなりません。アニメの言葉が聞き取れればいいとか語学学習が趣味だとかというのなら話は別です。でも、進学や就職のために勉強しているのなら正確さが求められ、そのためにはミスを減らすという態度が必要です。

年が明けたら、Tさんたちも受験に取り組まねばなりません。他流試合を経て勉強の厳しさを味わうことになるのでしょう。挫折を経験して目が覚めた学生も大勢いましたから、来年に期待することにします。