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前日

6月15日(土)

明日は6月のEJU本番です。前日に問題を解いても点が上がるとは思えませんが、受験講座に最後まで、しかもこの強い雨の中、通ってきた学生たちは褒めてあげたいです。

KCPの学生の一番悪いところは、わりとあっさりあきらめるところです。今学期は最初と最後のEJU講座を受け持ちましたが、半分でしたね、残っていたのは。KCPの講座は生ぬるいから自分で厳しき鍛えるというのならやめるのも大歓迎ですが、そうとは思えないメンバーが抜けています。

ただ日本にいるだけでは、日本語の力はつきません。ことに、高等教育が受けられるレベルの日本語は、しかるべき積み重ねが必要です。また、教科書を読んだり問題を解いたりするだけでは、話すとか書くとか、情報発信系の技能は身に付きません。受験のテクニックだけでは、今、大学などが留学生にいちばん求めているコミュニケーション能力は身に付きません。

目の前のEJUでそれなりの点数を取るだけなら、短期集中ガリ勉(普通の勉強じゃありません。ガリ勉です)でもどうにかなるでしょう。11月のEJU直前のLさんなんかはそんな感じでした。そして、目標以上の高得点を挙げました。しかし、そこまででした。満を持して臨んだ志望校には受かりませんでした。おそらく面接で失敗したのでしょう。だから、長期的視野で自分の勉強をとらえ直してもらいたいのです。

私はそういうつもりで、通常の日本語授業も受験講座も行っています。KCPのテストにも入試にも出ないけれども、日本で暮らしていくのなら使えるようになっておくべき表現とか、大学に進学してから役に立つ考え方なども交えて教えています。超級なら、そういうことを念頭に置いて教材を作っています。

途中で脱落した学生たちは、目の前の日本語すら手にしていないかもしれません。大いに心配です。

試験結果

5月28日(火)

今までの学期なら中間テスト後の面接がたけなわの時期ですが、今学期は面接方式を変えようと考えていますから、まだ始まっていません。すると、学生たちは、中間テストの点数を気にし始めます。先週末あたりから、その問い合わせのメールが届くようになりました。

メールをもらえば、もちろん結果を教えます。場合によっては励ましの言葉を添えたりアドバイスを付け加えたりもします。メールで聞くにとどまらず、Gさんに至っては、職員室まで答案用紙を見に来て、間違えたところを直したり、どうしてもわからない問題を質問したりしていきました。Lさん、Yさんも、答案用紙を見て、あれこれつぶやいて帰りました。

今のところ、成績を聞いてきたのは、成績に余裕のある学生たちばかりです。Lさんなんかは全科目90点以上で、点数よりもどこをどのように間違えたかを知りたかったようです。成績を気にして、直ちに猛勉強をしてもらいたい学生たちは、誰一人聞いてきません。そういう学生たちは、成績を聞くのが怖いという面もあるでしょうが、概して成績に無頓着です。そのくせ、進級できなかったら大いに文句を言うのです。

つまり、経過は無視して、結果だけ見ようとするのです。努力の先に結果があるのに、努力という過程を省略して自分の望む結果を欲しがっています。Iさんなんかは、日本にいればどこかの大学に進学できる、潜り込めると思っているのではないでしょうか。確かに、数年前まではそういう傾向がないこともありませんでした。しかし、今はそんな甘っちょろいところはありません。

学生たちの卒業まで10か月ほどですが、早くも手を焼きそうな学生が浮かび上がってきました。

別解

5月23日(木)

あと1か月足らずで6月のEJU本番ですから、受験講座理科は過去問中心に進めています。EJUの試験時間である80分で問題を解いて、そのあと模範解答を配り、解説をします。去年から受験講座を受けている学生たちにとっては、80分で2科目の問題を解くのはさほど難しいことではないようです。

Sさんも去年からの学生の1人です。私の模範解答を見て、「先生、この解き方のほうが簡単だと思います」と指摘するようになりました。Sさんの解き方も思いついたけれども、それを学生に説明するために使う模範解答に書き表すのが難しくてあきらめたこともあります。日本語の文章ばかりの答案になるより数式が並んでいるほうが、学生にとってはわかりやすいだろうと思ったからです。でも、Sさんの説明を聞いているうちに、うまくすれば学生にもよくわかる解答が作れるかなと思うようになりました。また、Sさんの説明の方がビジュアルに訴えるので、学生にはわかりやすいだろうと思えてくることもあります。

そういうSさんの説明を聞いていると、実力がついたなあと思います。理科の問題に対する勘が働くようにもなり、理科的な発想が身に付いてきたとも思います。この勘とか発想法とかという漠然としたものが、研究者やエンジニアの頭脳へと成長していくのです。EJUにとどまらず、筆記試験や口頭試問にもたえられる力がついてきたんじゃないでしょうか。今年の入試は期待してもいいかもしれません。

私たち教師は、学生に追い越されるためにいるようなものです。EさんやTさんやYさんやKさんなども、1日も早くSさんと同じように鋭い指摘ができるようになってもらいたいです。

どうしたんですか

5月21日(火)

留学生が日本で進学するのに一番必要な力は、一昔前までは学力でした。しかし、現在はコミュニケーション能力が強く求められています。自分の気持ちや考えを相手に伝え、相手の気持ちや考えをくみ取る力こそ、留学でより多くの成果を得るのになくてはならないものなのです。

ですから、KCPでもコミュニケーション能力を養うために、初級のうちからあれこれ手を尽くしています。その1つが、会話テストです。課題を与え、ペアでそれに取り組みます。習った文法や単語を使っているかもさることながら、自然な会話になっているかどうか、きれいな発音かどうか、きちんとまとまりのある会話になっているかどうかも重要な評価ポイントです。

Fさんは習った文法を使おうとしている点も問題解決能力も評価できますが、いかんせん発音が不明瞭で、街なかの日本人に通じるかどうか、大いに疑問です。志望校の面接が始まる前にどうにかしなければなりません。

Lさんは初級の文法がすぐに出てきません。このままだと中級に上がってほしくないですね。

SさんやKさんは日本語を話し慣れている感じがします。Sさんは趣味の世界で日本人と話すチャンスがあるようです。Kさんはアルバイトの成果のようです。

そのSさんやKさんですらうまく使いこなせなかった文法があります。それは“んです”です。先学期習っているはずなのに、まだ使うべきところで使えません。“んです”に関しては、上級の学生だってかなり怪しいですから、初級の学生に多くを求めてはいけないのかもしれません。でも、“んです”を鍛えれば他の学生よりも自然な日本語になり、受験の面接の際に差別化が図れるかもしれません。

さて、一番問題なのは、欠席してこの会話テストを受けなかった学生です。Hさんにはぜひ受けてもらいたかったです。受けて、自分の会話力がいかに未熟か思い知ってもらいたかったのですが、今朝3時過ぎに欠席メールが届いていました。ズル休みだと断定したわけではありませんが、メールを読む限り学校へ来ようと思えば来られる程度の「体調不良」です。一度痛い目に遭わなければ尻に火がつかないのかな…。

採点泣き笑い

5月20日(月)

テストが終わると、教師は採点です。中間テスト当日、作文を3人分読んで頭が痛くなり、週末は何もせず、今朝は新規まき直しで読解の採点に取り組みました。

こちらは、問題が易しかったのか、温情をかけるまでもなく、どの学生も合格点を取っていました。文章の内容が理解できていないというよりは、理解した内容を表現するところでつまずいて、失点につながったという学生がほとんどでした。新入生のSさんなどがその典型です。

「よくやった」と言ってやりたいところですが、欠席がちの学生まで合格点が取れているので、そいつらが休んでもどうにかなると変な自信を持つようにならないか心配です。休んだら進級できないんだぞと痛い目に遭わせなければならないのです。こちらはSさんとは逆に、答えるコツを身に付けてしまっているので、勉強不足でもどうにかなっているのかもしれません。

私の採点担当は初級ですが、上級のEさんは、中間テストの直前に、上級の読解はテキストが難しくて、時間をかけて勉強しないと点数が取れないとこぼしていました。上級は、読解に限らずどの科目も、日本人と伍して勉強したり(アルバイトではない)仕事をしたりする際に困らないだけの日本語力をつけることを目標としています。Eさんだって、来年の今頃は、日本語で大学の講義を聞き、日本語の専門書を読み、日本語でプレゼンテーションし、日本語でレポートを書かなければならないのです。たかだかKCPの上級の読解テキストが難しいなどと嘆いている暇はありません。

採点したテストは、明日もう一度見てみます。採点ミスがないかどうかはもちろんのこと、採点基準がぶれていないか、減点幅が妥当かも見直します。そして、成績表に記入します。その時点で、学生の運命が決まるのです。

静かに退室

5月17日(金)

いろいろな意見があるでしょうが、最近の学生は行儀がよくなったと思います。

中間テスト、期末テストのときは、最後の試験科目は答案用紙を提出したら帰ってもいいことになっています。毎日、授業後は椅子を机の上に載せて帰るルールになっていますから、中間・期末の日もそうします。

数年前までは、クラスの他の学生がまだ試験問題に取り組んでいるのに、ガラガラガッシャーンと大きな音を立てて椅子を載せ、ドアも自然に閉まるに任せてバッターンという音をさせていました。しかし、近ごろの学生は、音を出さないように椅子を両手で持って静かに載せるようになりました。教師がそうするように厳しく指導した形跡はないのですが、どのクラスに試験監督に入っても、例外なく椅子を丁寧に載せるようになりました。

先日、外階段を降りるとき、何気なく校庭を見下ろしていたら、テーブルの周りの椅子を動かして6、7人で談笑していたグループが、椅子をもとの位置にきちんと戻してから帰って行くのが見えました。時間的に見て中級か上級の学生と思われますが、心の中で「えらい!」と叫んでいました。昔の学生だったら、1つのテーブルに7つぐらいの椅子をほったらかしにして帰ってしまったでしょう。

でも、机の中に鼻をかんだティッシュを突っ込んだままにして帰ってしまう学生は後を絶ちません。教室内は飲食禁止だと口を酸っぱくして注意しても、こっそりお菓子やパンを食べている学生がいることは明らかです。もう一歩だなあと思います。教師が目を光らせていなくても、陰日向なく周りを考えた行動ができるように持っていければいいですね。

指導料?

5月15日(水)

朝、仕事をしていると、よく学生から欠席連絡のメールが入ります。今朝は、まず、Lさんから。大学の卒業式のために一時帰国していました。日本に戻ってくる飛行機が遅れたようで、1時過ぎに成田から送信しています。「もう1日休ませてください」というのもやむを得ないところでしょう。

次はFさん。じんましんが出たそうです。昨日は元気そうだったんですがね。あさっての中間テストが大事ですから、早く病院へ行ってもらうことにします。

それからGさん。漠然と体調不良としか書いてありません。昨日も休み、授業後こちらからかけた電話にも出ませんでした。まさか中間テストの勉強のために休んでいるのではないでしょうが、ちょっと怪しいにおいがします。

この3人には、ちゃんと読んでいるぞと知らせる意味も含めて、返信メールを送りました。Gさんには出席率に関する注意も書き添えました。

授業後、これまでの文法テストが不合格だった学生3名に再試を受けさせました。私は午後も授業がありましたから、明日、私のクラスを担当なさるH先生(午前中は他のレベルの授業でした)のお手まで煩わせることになりました。再試はテストを返して終わりではなく、間違えたところをわかるまで教えます。だから、手間がかかるのです。

昨日のクラスにも、テストがあった日に欠席した学生に追試を受けさせたり、不合格者に再試を通して指導したりしました。このように、欠席者、不合格者は、休まず授業に参加して合格点を取る学生に比べて手がかかります。欠席が続いたり成績が一向によくならなかったりしたら、さらに強力な指導をします。出席率や試験の成績に反比例した授業料を取りたいくらいです。

明日、Gさんは来るでしょうか。来たら、特別授業料をたっぷり取って、欠席に対する指導をし、あさっての中間試験に備えさせなければなりません。

食らいつく

5月9日(木)

受験講座の理科は、EJUの過去問に取り組んでいます。先月まではその日の授業で取り上げた事項に関する問題だけでしたが、今月からはフルセットの問題に挑戦してもらっています。

これまでとは違って範囲が広いので、どこで勉強した知識を使えば答えられるかわからない、どのように推論していけば結論に至るか見えないなどというのが、学生の本音ではないかと思います。しかし、ここで意気消沈しては、高得点は望めません。問題文を読んだら解答への道筋が見えてくるくらいにならないと、勝ち目はありません。

平均2分ぐらいで1問を解かなければならないEJUの試験方式に疑問を感じないわけではありませんが、現実問題として、それに対処できないと大学進学できないのですから、学生を鍛えていくほかありません。学生の方も、茫然自失としているのではなく、残りの1か月でどうにかするんだという気構えで挑戦を続けてほしいです。

Yさんは必死に食らいついてきている学生です。“?”という顔つきをすることもありますが、私の解説に耳を傾け、自分の手を動かし、その“?”を解消しようとしています。Jさんも自分のペースで理解を深めようとしています。Jさんが目を回していると、頭の整理がつくまで少し間をおいてあげることもあります。

Cさんはちょっと厳しいかな。フルセットになったとたん、戦意喪失みたいなオーラを出しています。6月は練習なんていう気持ちで受けたら、秋までの出願校には入れません。先手必勝という流れがどんどん強まっていますから、どうにか気持ちを奮い立たせてもらいたいところです。

半年差

4月9日(火)

今学期はEJUが控えているため、始業2日目から受験講座が始まりました。私の火曜日は、生物。2クラスあり、1つは今学期の新入生、もう1つは去年の10月期から勉強している学生のクラスです。今学期の新入生といっても上級に入っていますから、去年の10月期からの学生より日本語レベルは上です。

新入生クラスの学生たちは、国で生物を勉強してきたと言います。ある程度自信を持っているようでもありました。しかし、国の言葉ではなく日本語で生物を勉強するとなると、動植物の名前をはじめ、見慣れぬ言葉だらけです。細胞の構造という生物の基本の基本についての話でしたが、大変な重荷だったようです。日本へ来て半月もたたないうちから、自分たちにとっては外国語である日本語でかなり高度な話を聞いて理解しなければならなかったのですから、授業後にいかにも疲れたという表情になったのもやむを得ないところでしょう。同時に、「とても勉強になりました」と言ってくれたので、相当な刺激にもなったのでしょう。

10月期からの学生たちは、先月までにEJUの生物の範囲を一通り勉強したので、今学期は過去問に挑み続けます。40分時間を与えて解かせたら、みんな35分ほどでできてしまいました。答え合わせをしても、こちらは余裕が感じられました。正解以外の選択肢の解説にも強い関心を示していました。学生たちの生物をとらえる目が広がってきていることを感じました。

半年前、この学生たちが初級で生物の勉強を始めた時は、日本語の問題文が全然理解できず、困り顔しかできませんでした。それを思うと、長足の進歩です。新入生クラスの学生たちも、早くここまで到達してもらいたいです。

力の差

3月18日(月)

授業後、WさんとCさんが会話テストを受けました。こちらから与えた話の骨格に肉付したものを発表します。もちろん、話の内容も見ますが、“会話”テストですから、台本棒読みのような話し方は減点です。

さて、この2人、Wさんは気持ちのこもった、イントネーションに起伏のある話し方をしました。週末にかなり練習したのだろうと容易に想像できました。それに対し、Cさんはスクリプトを暗記しただけで、見事な棒読みでした。その対比がおかしく、聞いていてちょっと笑ってしまいました。やっている本人たちは、棒読みのCさんにしろ真剣でしたから笑っては失礼なのですが、でも、コントを見ているような感じがするくらい、落差がありました。

Cさんはできない学生ではありません。先週の文法テストはWさんよりいい成績でした。でも、この会話テストは、15点差でWさんのほうが上だと判定しました。もし、入試の面接だったら、Cさんは自分の志望理由書か大学のホームページを丸暗記してきたと見られてもしかたがありません。Wさんは、自分の言葉で語っていると思われるに違いありません。同じことをしゃべったとしても、Wさんは合格、Cさんは不合格になるでしょう。

今シーズンの入試は、こういう最後の一息で落とされてしまった学生が多かったように感じています。EJUの成績や提出書類では甲乙つけがたくても、面接で“乙”をつけられて涙を呑んだ例が少なからずあったと見られます。こういう反省に基づいて、“話す”力というよりも、自分を“語る”力を伸ばしていきたいと思っています。