Category Archives: 試験

義理堅い?

6月4日(金)

午前の授業が終わった直後、Aさんが受付へ来ました。明日、校外で行われるEJUの模擬テストに申し込んだけど、それをキャンセルしたいと言います。理由は、同じ日に英語の試験を受けるからです。

模擬試験の申し込みは、5月の末、つい先週のことです。自分のスケジュールをよく見て、キャンセルすることのないようにと、各クラスの先生が口を酸っぱくして注意しました。それにもかかわらず、受験番号と受験案内を配ったとたんにキャンセルです。

確かに、英語の試験とEJUの模擬試験を比べたら、英語の試験の方がAさんにとってはるかに重要です。でも、英語の試験の申し込みは、先週ということはないでしょう。模擬試験を申し込むときには、英語の試験の日程は決まっていたはずです。スケジュール管理がいい加減だという非難は免れません。

“近頃の若者”は、何でも気軽にスマホで唾を付けておいて、土壇場で何のためらいもなく切り捨ててしまうそうです。キャンセルボタンをタップするだけ、あるいはそれすらせずに済ませてしまいます。きちんと断りを入れてきたAさんは義理堅いくらいです。だけど、一度交わした約束は、そう簡単に取りやめたり取り消したりするべきではないと思います。

この模擬試験は、学校同士の付き合いの上に成り立っています。たとえKCPから連絡したにせよ、当日欠席者があまりに多かったら、信用問題にかかわりかねません。自分の軽率な申し込みとキャンセルが、自分の思いが及ばないところにも影響を与えるかもしれないということはわかってもらいたいです。

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自信過剰

6月2日(水)

初級クラスで月曜日にした漢字テストの答案を改めてじっくり見直しました。明日返却ですから、採点チェックも兼ねて、各学生がどこを間違えたか、クラス全体でどんな傾向があるかを見ました。

Mさんは、文法などはよくできる学生で、発言も多いです。しかし、字はとても雑で、学期の最初のひらがな・カタカナを覚えるところでは大変苦労しました。私も他の先生方も、Mさんの字を徹底的に直しました。その甲斐あってか、今回の漢字テストでは時間をかけて丁寧に書いたことがわかる字でした。この努力は、何らかの形で評価したいです。

JさんとFさんは順当に100点。しかも字がきれいですから、言うことはありません。授業中いちばん積極的なOさんの100点もなるほどというところですが、いつもあまりパッとしないXさんやBさんも100点というのは、失礼ながら、ちょっと意外でした。漢字は自信を持っているのかな。逆に、漢字が苦手そうなのが、HさんとWさんです。何らかの手当をしなければならないかもしれません。

答え方が雑で減点が重なったのが、Lさん、Gさん、Sさんです。送り仮名を書かなかったり、楷書で書かずにXになったり、点画が微妙に違っていたりなどしていました。結果的に空欄が多かったHさんやWさんとあまり変わらない成績になってしまいました。このテスト結果を返されても、本人たちは、この間違いは大した問題ではないと思うでしょう。でも、大した問題なのです。こういういい加減な字を書き続けると、進学の際に困ります。願書や志望理由書など、入試以前の段階で身動きが取れなくなることも考えられます。

こうなると、漢字に自信を持っていない学生の方が、慎重に事を進めるでしょうから、かえって有利かもしれません。不穏な芽は、初級のうちに摘んでおきたいです。

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フィードバックの奥

5月31日(月)

授業の前に、Lさんに中間テストのフィードバックをしました。Lさんは中間テストの文法が不合格でした。このままでは進級できないおそれがあります。それは避けなければなりません。

Lさんの答案をよく見てみると、致命的な間違いはありません。文法がまるっきり理解できていないというわけではありません。しかし、点数をあげることはできません。突き詰めて言えば、問題をよく読んでいないのです。だから、こちらの要求する答えとは全然違う答えを書いて、×を積み重ねています。

×のところの答えを言わせてみると、ほとんど全部言えました。出題の意図をきちんと把握して答えていたら、余裕で合格点を取っていたでしょう。でも、不合格点は不合格点です。それを消し去ることはできません。

授業の最初に、漢字テストをしました。授業後、真っ先にLさんの答案を採点しました。75点でした。字が雑で減点されたのが15点もありました。読み問題で長音かそうでないかで1問間違えていました。正確に覚えるということが苦手なのかもしれません。

Lさんは決してできない学生ではありませんが、テストで点が取れる学生でもありません。KCPの中では、私たち教師が学生をじっくり見ていますから、救いの手を差し伸べることもできます。しかし、入学試験はそういうわけにはいきません。問題をよく読まずに答えたら、マークシートの問題は全体に点が取れません。最後がいい加減だったら、筆答問題でも点が取れません。そういう意味で、笑って済ませられる問題ではありません。

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実力がある

5月26日(水)

Sさんは、レベル1の学生ですが、自分ではレベル2ぐらいの実力があると思っています。だから、レベル1の授業は気合が入らないと言います。こういう学生は、概して自分のできないことには目をつぶっています。できることのみを主張して、自分はこんなにできるのだからレベル1じゃないとかと訴えます。

Sさんもそのたぐいで、EJUの練習問題の読解は80%ぐらい解けると言います。聴解はそれよりも難しく感じていると言っていました。たとえ読解80%が本当だとしても、聴解が難しいということは、正解率40%ぐらいでしょうか。ということは、全体の正解率は60%程度、EJUの点数でいうと240点ぐらいでしょうか。“80%”が背伸びした正解率だとすると、実際には200点をやっと超える程度かもしれません。レベル1としては悪くはありませんが、この成績ではSさんが思い描いているであろうと考えられる、いわゆる“いい大学”には遠く及びません。

Sさんが提出した宿題やテストを見ると、Sさんが聴解が弱いと言ったのは事実です。文が正確に聞き取れておらず、だから受け答えがまるっきり方向違いです。また、筆記にしても、問題をよく読まずに答えている節が見られ、これまた質問に対する答えになっていません(もし、問題をきちんと読んでこの答えなら、救いようがありません)。また、文法的には合っていても、必要最低限の答えで、できる学生の答えに比べると見劣りがします。

そういうことを、具体例を挙げて指摘し、今なすべきことを示したら、今すぐ上のレベルのクラスに入りたいとは言わなくなりました。その後の授業でも、真面目に課題に取り組んでいたようですから、思ったより見込みがありそうです。これが長続きすれば、11月のEJUまでにはしかるべき成績が取れる実力が付くかもしれません。

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お互いに緊張

5月18日(火)

中間テストがありました。レベル1のクラスの試験監督は何度もしたことがありますが、オンラインの試験監督となると初めてです。自分のクラスの学生たちですから、パソコン上には見慣れた顔が並んでいます。しかし、平常テストとは違って、みんないくらか緊張気味でした。こちらも、その緊張がうつってしまい、心拍数が上がった状態で問題を送信しました。

学生たちは問題を受け取ると、すぐに解きにかかります。すると、学生たちの目がすべて私の方を向くのです。学生たちは私を見ているのではなく、各自のパソコンのモニターを見ているのですが、パソコン内蔵のカメラを通すと、さも私を見つめているように見えるのです。学生たちを見張っていなければならないのですが、束になって突き刺さってくる視線に耐えきれず、しばらく目をそらしてしまいました。

トラブルがないことを祈っていましたが、途中でWiFiが不調になった学生が1名。そうなんですよね。オンラインはこれがあるんです。KCPの中間テストぐらいならどうにでもしてあげられますが、もっとずっと大事なテストだったらどうなるのでしょう。幸い、機転が利く学生でしたから、被害は最小限に抑えられました。

試験の終了時刻は、いつもの授業より少し早かったですが、「答えを送ってください。送りましたか。じゃあ、終わりましょう。さようなら」とあいさつすると、学生たちはみんな脱兎のごとくzoomから消え去りました。やっぱり、かなりのプレッシャーだったんでしょうね。今晩はゆっくり寝てください…としたいところですが、しっかり宿題を出してしまいました。

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EJUで横綱相撲

5月7日(金)

EJUまで1か月半ほど、受験講座理科では過去問を使った模擬テストをしました。始める前にマークシート方式の解答用紙の書き方から説明しました。みんな、今回が初めてのEJUですから、こちらにとっては常識でも、学生たちには新発見なのです。数年前に、この説明を怠ったために、理科2科目のうち1科目が白紙扱いにされてしまった学生がいました。そういう悲劇を繰り返さないために、最初にがっちりしつけるのです。

2科目を80分で解くには、わからない問題を考え続けるわけにはいきません。解ける問題を確実に正解に結び付け、点数を増やしていくことをまず考えるべきです。また、1番から順番に解いていく必要はありません。おしまいの方に易しい問題や得意分野の問題があったら、それを得点化しておいた方がよい結果につながることもあるでしょう。

実際にやってみると、思ったより難しかったようです。80分をフルに使っても解けなかったり計算が終わらなかったりしていました。あれほど注意したのに全然違うところにマークした学生もいました。これで、時間配分も実感できたでしょうし、ミスも今のうちにしておけば本番で同じことはしないでしょう。そのための模擬テストです。

理科で満点を目指すOさんは、6問間違えたとか。満点を取るには、点数を増やす努力だけではいけません。ミスを減らす、なくすという発想も必要です。勘違いとか度忘れとか、そういうことも許されません。どんな攻められ方をされてもすべて受けて立ち、最後には勝つという、横綱相撲みたいな取り組みが求められます。容易なことではありません。そういうことを指摘すると、そこまでの覚悟はしていなかったようです。これまた、あと1か月余りで鍛え直さねばなりません。

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捲土重来期待

4月19日(月)

今学期、私が受け持っているクラスは、入国できずに国で勉強している学生たちのオンラインクラスです。ですから、テストもオンラインです。

オンラインのテストは、紙のテストと違って、コンピューターが自動採点してくれます。選択問題の採点は手間がほとんどゼロになりました。しかし、筆答問題はそうはいきません。

初級クラスでは、音と表記を一致させるため、漢字を使わせません。例えば、「何の」と漢字で書いてしまうと、その学生がちゃんと「なんの」と読んでいるかどうかわかりません。「なあの」「なの」などと発音していても、漢字表記だと、それが表面化しません。

紙の試験用紙に手書きだと、学生側も意識しますから、すべてかな書きします。しかし、オンラインだとキーボード入力ですから、そこまで注意が回らないことがよくあります。また、ついうっかり漢字変換してしまったり、コンピューターが気を利かせすぎて自動的に漢字表記になってしまったりなどするため、たとえ注意しても、漢字の答えが多くなってしまいます。

Mさんは、授業中活発に答えるし、反応もいいし、きっと成績もいいだろうと思っていましたが、漢字に引っかかって、大きく沈んでしまいました。XさんやBさんもそのタイプだと思います。提出時刻を見ると、みんな制限時間を大きく余して出しているんですね。「漢字は×」という注意書きも読まず、答案を見返すこともなく提出ボタンをクリックしてしまったのでしょう。

なんだか注意力テストになってしまったようですが、Mさんをはじめ、今回悪かったできうる組の学生たちは、次回のテストではきっと軌道修正してくるでしょう。それ以後が本当の実力が現れるテストでしょう。

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こちらの課題

3月23日(火)

レベル1の会話の期末タスクを担当しました。習った文法と語彙を駆使して、こちらから与えたキーワードをもとに自分たちで考えた場面で、会話を構成していくのです。会話を作り上げるだけなら、グループのメンバーに構成力のある学生がいれば何とかなります。しかし、それをみんなの前で披露するとなると、実際に話す力も要求されます。毎学期、頭でっかちの学生は、このタスクで落ちていきます。

今学期は先週までずっとオンライン授業でしたから、発話の訓練がどれだけできたか心配でした。もちろん、可能な限り口頭練習をしてきました。でも、目の前に教師がいませんから、学生にしてみれば、指名されたとき以外口を開けずに授業を終えることだってできました。そういう環境がどの程度影響を及ぼしているか、おっかなびっくりでタスクに臨みました。

学生たちは大健闘でした。ストーリーもきちんと作れていたし、発音もアクセントもイントネーションも、普通の日本人にも通じるレベルでした。文法も、日本語教師的には指摘したくなる点が多々ありましたが、街の日本人からは「日本語の勉強を始めたばかりなのに、上手ですね」と言ってもらえそうなレベルにはなっていました。採点は日本語教師の目でしましたから、発音は満点の学生が何人かいましたが、文法は満点をつけることはできませんでした。

こうしてみると、オンライン授業でも、発音は思った以上にどうにかなるようです。しかし、発話時の文法の正確性を追求するのは、なかなか難しいようです。これは学生の課題というより、教える側の改善すべき点です。来学期の授業に生かしていきたいです。

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大辛

3月19日(金)

久しぶりに漢字の書き取りテストの採点をしました。オンラインですから、学生が書いた答案用紙そのものを採点するわけにはいきません。学生に答えをノートに書き取らせ、それを写真に撮って送ってもらい、その写真をチェックするという、若干もどかしいやり方をしました。

写真は送られてきたのですが、写真の向きがまちまちで、1名だけですが逆さまなのもあり、採点するのに一苦労しました。う~ん、学生たちはそこまで気を使ってくれないのかな。

点数はそんなに悪くありませんでした。最低でも合格点の60点は超えていましたから。でも、学生自身が思ったよりは悪いのではないかと思います。一画一画がはっきりしない達筆すぎる字は×にしました。画と画のつながりが教科書と違っているのも×にしました。そういったあたりで減点された学生が多かったです。几帳面な楷書の字を書いたアメリカ人の学生が満点でした。中国の学生は、ちょっと悔しいでしょうね。

このクラスは一番下のレベルですから、基本に忠実ということを重視します。また、出願時に提出することが多い志望理由書は、手書きがほとんどです。それには流麗な文字は歓迎されません。下手でもいいですから、楷書で丁寧に書くことが求められます。達筆すぎて減点された学生たちは、半年もすれば志望理由書を書くことになるでしょう。だから、今から訓練なのです。

写真で答案を送ってもらうこの方式、1つだけいいことがありました。それは、学生が書いた文字を自由に拡大できることです。生の答案だと、老眼の私には読めない字もあります。そういう字も、パソコンの画面上なら拡大し放題です。だから、調子に乗って、ガンガン×を付けてしまったところもありますが…。学生のみなさん、辛い採点になってしまい、申し訳ありませんでした。

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待てない

3月12日(金)

だいぶ時間がかかってしまいましたが、昨年11月のEJU・理科の模範解答をどうにか作り終えました。単に解くだけならすき間の時間にできますが、受験講座で使うつもりで解説まで書くとなると、ある程度まとまった時間が欲しいところです。学生が見るだけではありません。何か月か後で私自身がそれを読んで授業をするのですから、そこまで考えて模範解答を作っておく必要があるのです。

物理と化学と生物で50問余りを解きましたが、1問だけ問題集についている正解が納得できません。問題を読み返しても選択肢を再チェックしても、問題集の正解表の答えが正解だとは思えませんでした。日を改めて解き直してみても、やっぱり正解表の答えにはなりません。私が持っている教科書や参考書をひっくり返しても、結果は同じです。その問題を忘れたころに、もう一度やってみるつもりです。

私は博物館や名所旧跡などで、掲げられている説明や解説をわりとじっくり読みます。すると、明らかな間違いが意外と多いのです。誤字脱字もありますが、人名地名などの固有名詞が間違っていたり、年号が変だったり、前後の解説板で内容が矛盾していたり、などというのによく出くわします。そういう時は、もう二度と来ることがないかもしれないからと、係の方に伝えます。時には私の勘違い記憶違いだったりすることもありますが、ほとんどは「ご指摘ありがとうございました」となります。

今回もそのたぐいかなと思います。でも、だいぶ前に、最初は正解表が間違っていると思ったのですが、しばらく経ってから解き直してみると、巧妙なひっかけ問題だったということがありました。だから、もう少し待ちます。

私は待てるからいいですが、実際に受験した学生たちは待てません。偉いなあと思います。

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