Category Archives: 試験

忙しい朝

9月25日(土)

Yさんは、今週行った受験講座の説明会に、都合が悪くて参加できませんでした。「土曜日の9時から」と約束したので、9時にZOOMを立ち上げて待っていました。9時5分になっても10分になってもYさんは姿を現しませんでした。そんなこともあろうかとお仕事を持って行ったので、それをしながらずっと待っていました。

10時からZさんとの約束がありますから、9時40分ごろ、ついにあきらめました。そのZさん、何を勘違いしたのか、9時から私がZOOMを開くのを待っていたそうです。こんなことならZさんを先にすればよかったなあと思いましたが、後の祭りです。

Zさんは文法の再試験です。こちらも、平日は都合が悪いとかで、土曜日になりました。まず、どこがどうして悪いのか教えてくれというので、なぜZさんの答えでは間違っているのか説明しました。Zさんの質問のレベルがお寒い感じなのが気になりましたが、再試の問題を送ってやらせました。本来の試験時間を若干オーバーしましたが、そこは大目に見ることにしました。再試は落とすための試験ではありませんから。

今、結果を知りたいというので、また、期末テストまで間がありませんから、すぐに採点しました。1回目よりは点が伸びましたが、合格点には2点足りませんでした。試験時間に目をつぶってやったのですから、この2点は負けるわけにはいきません。考える時間を長く与えたのに所定の点数が取れなかったのですから、情けのかけようがありません。

それでもZさん、「同じ言葉を使ってはいけない」という条件を見落としていたとか、こういう意味だと勘違いしていたとか、言い訳をしてきました。ばっさり切り捨てました。挙句の果てに、「先生、もう1つ再試があります」といって、別の不合格のテストの解説を求め、月曜日と火曜日は忙しいからすぐに再試をさせてくれと訴えてきました。間違えたところを自分でもう一度教科書やノートを見て十分理解した上で受けてこそ、再試の意義があるのです。Zさんのやり方じゃあ、記憶力テストみたいなものです。

やらせてみました。制限時間で提出させようとすると、最後の確認をしたいと言って、すぐには出しませんでした。すぐに採点してくれと言ってきたので、「Zさんだけのためにどれだけ時間を使ったと思ってるんですか」と言ったら、「はい、わかりました」と引き下がりました。

その後、Zさんのテストの採点をしました。合格点は取れていましたが、怪しい答えがいくつかありました。Yさんからは、お詫びのメールが届いていました。

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初対戦

9月17日(金)

画面には、いつになく緊張した表情のGさんが映っていました。10月早々に面接試験を控えているので、その面接練習をしました。Gさんはこれが初めての面接練習で、入試の面接とはどういうものかということも知りません。本番は対面ですが、手始めはオンラインで。

「簡単でけっこうですから、自己紹介をしてください」というと、名前と出身地だけという、本当に簡単極まる答えが返ってきました。自分を印象付ける言葉を、ほんの一言でいいですから、付け加えてほしいところです。

Gさんが予想していると思われる順番とは違う順番、違う言葉で質問すると、もうあたふたしてしまいます。その様子が、画面越しに手に取るようにわかりました。私のような根性にねじ曲がった面接官は、そういう受験生を見ると、ちょっといじめてやりたくなります。Gさんの答えの矛盾点を衝いて、窮地に追い込んでしまいました。

そういう影響があったせいでしょうか、Gさんは致命的なミスを犯してしまいました。大学でヒューマノイドロボットについて勉強したいというので、どんなヒューマノイドを作りたいか聞きました。すると、危険な場所で作業するヒューマノイドだと言います。さらに、なぜそういうヒューマノイドを作りたいのかと聞くと、「危険な場所で事故が起きて人間が死んだら、命は1つですから大変なことです。しかし、ロボットは事故で壊れても大丈夫です。代わりがいますから」。前半はともかく、後半は1発アウトでしょう。ロボとの使い捨て、ましてやヒューマノイドが壊れても“大丈夫”という発想は、大学の先生には受け入れがたいでしょう。

Gさんは本番までもう1回か2回面接練習をするチャンスがありますから、これから鍛えていこうと思います。暑い頃に出願した学生たちの勝負の時期が近づいてきました。

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見返す

9月9日(金)

「先生、私、去年の11月のEJUで日本語335点だったんですが、どの辺の大学に入れますか」「うーん、偏差値でいうと65ぐらいだから、A大学あたりかな、Zさんの勉強したい学部がある大学だと」「そうですか。実は、去年、B大学を受けたんですよ。不合格でした」「335でB大学なら十分行けるはずだけど…」「面接で志望理由書に書いたこととちょっと違うことを言ったからだと思うんです」「ああ、それはしょうがないかも。提出書類と面接の答えが違ったら、落とされても文句は言えないな」「ちょっとでも違ったらだめですか」「違ってたら面接官が『志望理由書にはこう書いてありますよ』とかって指摘するところもあれば、何も言わずに×を付けるところもあるね。B大学は違ってたらダメっていう大学だったのかもしれないね」「だから、私、今年はA大学か国立に受かって、『お前たち、こんな優秀な学生を落としたんだぞ』ってB大学に言いたいです」「ああ、そういうときは『見返してやる』って言うんだよ」「はい、B大学を見返してやりたいです」

受験講座の授業が終わった後、雑談をしていたら、こんな話になりました。少々穏やかでない話ですが、Zさんの意気込みは大したものです。「捲土重来」なんて言葉も教えてあげればよかったかなあ。まあ、動機はどうであれ、Zさんは勉強に燃えています。予習もしてきます。質問も活発にします。受験講座の担当教師としては、非常に張り合いのある学生です。何とかZさんのリベンジに手を貸してあげたいです。

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理系の時事問題

9月6日(月)

KCPの先生方もだいぶワクチン接種が進みました。でも、大半の先生が何らかの副反応に見舞われています。出勤しても早退したり、週末に寝込んだり、あるいは先月の夏休みを半分ぐらい棒に振ったりなど、大変な思いをしているようです。

副反応が出るということは、免疫機能がしっかり働いているということです。若い人ほど副反応が強く出るというのも、体にとって異物であるワクチンに対して生体防御反応が活発に行われたということで、若さの証明なのです。2回目の接種後に強い副反応が出るというのは、免疫の二次応答と呼ばれるものです。全然出ないとなると、むしろ免疫細胞がきちんと働いているのかと心配すべきかもしれません。

現在接種されているワクチンは、mRNAワクチンという種類で、ウィルスの表面に存在する特徴的な物質をつくるmRNAを体内に送り込むというものです。ワクチン中のmRNAは体内で細胞の中に入り込み、細胞内でそのウィルスの表面に存在する物質をつくります。しかし、それは私たちの体に最初からあったものではありませんから、免疫細胞は異物と判定し、排除にかかります。このとき、こういう異物を退治したという記憶が残ります。この記憶のおかげで、次に同じ異物が侵入してきたら直ちにそれを攻撃できるのです。

この副反応の出方とか、mRNAワクチンの作用機序とかは、生物の教科書に書かれている免疫の働きの応用です。ですから、今シーズンの入試の口頭試問なんかに出るんじゃないかと思っています。昨シーズンはPCRのしくみが聞かれたとかという噂も耳にしています。

時事問題は、小論文や社会科学系の学部学科に限りません。

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悲喜こもごも

8月28日(土)

私のクラスのBさんは、7月のJLPTの結果がオンラインで見られると知るや、すぐに聞いてきました。KCPで団体申し込みをした学生の合否結果と成績は、学校に届くのです。

調べてみると、N2に合格でした。すばらしい成績とは言いかねますが、各科目満遍なく点を取って、合格点を上回っていました。Bさんは、多少おっちょこちょいのところがありますが、オンライン授業でもいい加減なことはせず、宿題も確実に出し、着実に進歩しています。KCP入学以来ずっとこういう勉強を積み重ねてきたとしたら、それが実を結んでの合格です。

Bさんから私に言えば結果を教えてもらえると聞いたのか、Jさんからも結果が知りたいというメールが届きました。調べてみると、同じN2が不合格でした。総得点は合格基準を上回っていますが、科目ごとの合格に必要な最低点に届かなかった科目があったため、不合格となったのです。Jさんも、いくらか軽いところはありますが、コミュニケーションは問題なく取れます。対面授業の頃は、日本語力がない学生の代弁すらしてくれました。どこで失敗したのかよく見極めて、12月には合格してほしいところです。

成績一覧表をよく見てみると、N1もN2も、受かっている人はそれなりの人が多いです。そりゃ無理だよねっていう学生は、だいたい落ちています。KCPのJLPT受験者数なんて、特に今年は、たかが知れています。でも、合格者も不合格者も“やっぱり”感満載だとしたら、JLPTは妥当な評価になっているということです。

オンラインが続き、自室にこもることが多いとなると、勉強のペースも乱れがちです。そこを引き締めていかないと、JLPTも大学も大学院も、合格には結びつきません。

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欠席理由

8月26日(木)

JLPTの団体申し込み者の成績が届き、データを見てみた時、あまりの欠席者の多さに愕然としました。しかし、よく調べてみると、海外にいる学生が、7月のJLPTの頃には入国して受験できるだろうと思って出願したのに、実際には入国できずに受験もできなかったという例が、欠席者の3/4を占めました。そういう学生を除き、日本にいたのに受験に行かなかった学生となると、その割合は、むしろ例年より低いくらいでした。

7月のJLPTの申し込みは3月から4月にかけてでしたから、その頃は6月半ばに入国し、7月4日に受験するというプランも現実味がありました。オリンピックもやることだし、選手が入国するなら留学生も入国できるだろうという楽観的見通しを否定はできませんでした。

受験できなかった学生にとっては、受験料が無駄になってしまったこともそうですが、この試験でN1かN2を取って来春進学するという計画が瓦解の危機に瀕していることの方が厳しいです。去年と同じように、秋に一瞬門戸が開き、その時に入国するという道があるのでしょうか。ここ数日、東京の新規感染者数は先週に比べて減っていますが、絶対数は相変わらずです。全国的には右肩上がりのところが多く、全く予断を許しません。

入国できないがゆえに受験できなかった学生の中に、私のクラスのHさんもいました。N1ですからたやすいことではありませんが、何でも吸収しようと意欲的なHさんなら手が届かなかったとも限りません。初級ですがオンライン授業で実力をグングン伸ばしていたMさんやWさんだって、N2を受けていたら結果が楽しみでした。

最大の問題は、日本にいたのに受験しなかった学生どもです。感染予防にかこつけたのではないかと疑いたくなる名前もちらほら。海外で切歯扼腕している学生たちに比べたら、ずっと恵まれているのに…。

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日本にいているうちに

8月24日(火)

中間テストの採点をしていたら、Wさんが「…日本にいているうちに…」という誤答をしているのを見つけました。「います」に「ています」をくっつけるとは妙に凝ったことをするなあと、逆に感心してしまいました。

その後数人の答案を採点し、Gさんの答案を採点していくと、なんと、「…日本にいているうちに…」という答えがあるではありませんか。Wさん、Gさんの前に何十人もの学生の答案を見てきましたが、「…日本にいているうちに…」と書かれた答案は1枚もありませんでした。もちろん、その後も現れませんでした。

なんとなくこの2人の答案はリズムが似ていると思って、まさかと思いつつも調べてみると、他の誤答も含めてほぼ同じでした。もしやと思って個人データを開いてみると、2人はルームメートでした。試験の最中は気付きませんでしたが、2人が相談したことは疑いようがありません。さらに、他の教科の答案でも、極めて疑わしい類似性が確認されました。

WさんもGさんも、できない学生ではありません。きちんと勉強すれば十分合格点は取れたはずです。しかし、ほんの出来心か、自室で受けられるという気楽さからか、あらぬところで協力体制を築いてしまったようです。こちらも試験時間中ZOOMの画面を通して監視していましたが、教室での試験に比べたら、目の届かぬ範囲が広すぎます。

この2人への対応も難しいです。現行犯じゃありませんし、オンライン説教じゃ迫力半減だし、かと言って何も手を打たないわけにもいきませんし、頭が痛いです。万が一、入学試験でこんな妙ちくりんなことをしたら、一生を棒に振りかねません。さて、どうしましょうか。

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地図と作文

8月13日(金)

スマホの地図は、街を歩くときに便利です。自分の現在地がわかるとともに、目的地に向かってきちんと進んでいるかどうかもわかります。何となく右へ曲がってしまったけど、これはちょっとまずいぞなどという判断もすぐにつきます。私も重宝させてもらっています。

しかし、街の全体像をつかむとなると、紙の地図の方が勝っていると思います。確かに、指先だけで地図の拡大縮小ができますが、画面の小ささはいかんともしがたいものがあります。街と街の位置関係となると、やっぱり紙の地図でしょう。暇な時に眺めて楽しむとなったら、完全に紙の地図です。といっても、地図を眺めて暇をつぶす人はあまりいないでしょうが。

さて、中間テスト。全面オンライン授業ですから、テストも当然オンラインです。オンライン特有のトラブルもいくつかありましたが、致命傷にはならずに済みました。

そして、採点です。私は作文の授業を担当していますから、作文の採点をします。学生が家で書いた原稿用紙を写真に撮り、それをメールで送ってもらいます。教師はそれをタブレットで開いて原稿用紙に直接朱を入れます。朱を入れる操作は難しくはありません。誤字脱字、語彙や文法を直すのには、タブレットは向いています。しかし、文章全体の構成の良し悪しを判断して直すとなると、タブレットはやりにくいです。

私が老眼だからかもしれませんが、タブレットに原稿用紙1枚を映し出すと、字が読めないのです。読める程度に拡大すると、段落単位の読み取りがしにくいのです。私が担当している中級は、構成を意識して書くように指導しています。それなのに構成に手を加えられなかったら、指導の効果が半減です。

明日から夏休みです。5月の連休に続いて、どこへも行かない1週間が待っています。でも、テストの採点はしませんよ。

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実力養成

8月3日(火)

先学期から化学の受験講座を受けてきた学生の授業が一通り終わりましたから、まとめの問題をしました。どのぐらいできるのだろうかと楽しみにしていましたが、授業のほとんどが私の解説になってしまいました。ZOOMの画面に映る顔を見ていると、初めて聞くかのようにうなずいている場面もありました。

やっぱり、演習をしないと知識の応用はできないものです。今回も、そういう意味も込めて、似た出題傾向の問題もたくさん揃えています。1つの事柄に対し、違った角度から出された問題に取り組むことにより、その事柄への理解も深まります。今まで見逃してきた気付きもあるでしょう。それを確実に取り込むことによって、真の実力をつけてもらいたいと考えています。

化学に限らず、問題は最後まで解ききることが、きちんと答えを出すことが肝心です。実力を伸ばすには、そういう地味な努力が必要です。この点をなかなか理解してくれない学生が多くて困ります。その点、うなずきすぎるくらいうなずいてくれる学生は、伸びしろがありそうです、その気持ちを受験の本番まで維持させること、安易な道に向かわせないようにすることも、私の仕事です。

とはいえ、東京の感染状況を見ていると、果たして入試がきちんと行われるのか、心配になってきます。昨シーズンは大学側も受験生側もうろたえていた面がありました。今シーズンは良くも悪くも慣れてきましたから、少しは落ち着きが見られると期待しています。想定を上回る状況となれば、何がどうなるかわかったものではありません。

何がどうなってもいいように、学生たちに自信を与えていきたいです。

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油断? 堕落?

7月28日(水)

私のクラスでは、今学期2回目の漢字テストがありました。中級レベルの漢字テストは、単なる読み書き問題だけではありません。語彙的要素も含んだ問題も出されます。初回のテストではその問題に戸惑った学生もいたようです。今回はそういう学生もどういう勉強をして試験に臨めばいいかわかったようです。

しかし、全体的に見ると成績が下がった学生が多かったです。実力差が出やすい語彙の問題だけではなく、点数の稼ぎどころであるはずの読み書きの問題で減点を重ねる学生が目に付きました。なあんだ、初級と変わらないじゃないかという気持ちが兆しているのかもしれません。悪い意味でこのレベルに慣れてしまった様子がうかがえます。緊張感が緩んでいるのだとしたら、中間テストもだんだん近づいてきていますから、引き締めてかからなければなりません。

昨日の私のクラスは、おととい出された宿題の提出率が非常に悪かったです。「宿題を出してください」と言うと、みんな、一瞬ばつの悪そうな表情を見せて下を向いてしまいました。こういうのを見ると、安直だなあと思います。2つのクラスは別のクラスですが、学生の発想には似通ったものを感じます。楽な方法に流れようとするんですよね。

そんな中、2回の漢字テストどちらも満点近い点数を取ったOさん、みんなが忘れてきた宿題をきちんと提出したKさん、前回は語彙問題で沈んだけれども今回はそこで好成績を挙げたGさん、こういった学生には期待が持てます。まあ、普段からしっかりしていますから、当然ではありますが。

来週は文法テストがあります。さて、どうなるでしょう。

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