Category Archives: 試験

厳しく見つめる

5月11日(月)

Tさんは、受験講座理科でやっている模擬テストで毎回満点に近い成績を挙げています。国で理科の基礎をきちんと身に付けてきたのだと思います。また、理科に対するセンスもかなりのものだと思います。EJU日本語の模試でも高得点を取っていますから、本番で大いに期待が持てます。

NさんもGさんも、理系的な勘が働くようで、そういう意味では期待が持てます。でも、みんな私の目の前で問題を解いているのではありません。計算問題でこっそり電卓を使っていたとしても、私にはわかりません。先学期の受験講座で私が配ったプリントなど、参考資料を見ながらというのもありえますが、わりと早く解答用紙を提出してくることからすると、その可能性は低いと思います。

そうはいっても、あまり期待を持ち過ぎないようにしています。今まで、期待をかけた学生に何回裏切られたことでしょうか。本番独特の雰囲気にのまれてしまうこともあるのでしょう。でも、一番危険なのは詰めの甘さです。最後まで答えを出すことなく、「ここまでやればあとは単純な計算だからもういいや」と思ってしまったり、「単なるケアレスミスだから本当は〇だよ」と安易に考えてしまったりすると、本番で痛い目に遭いかねません。

3人とも、早々と提出するのですが、どこかで何か落とすことがたまに見られます。知識とかテクニックとかなら十二分に持ち合わせていますが、それを正確に発揮し、正しい答えにたどり着き、得点に結びつけるところで抜かりがあると、残念な結果になってしまいます。そういう指導が、思い通りにできないもどかしさが、遠隔授業にはあります。

全国的に新規感染数が減りつつありますから、日本国内ではEJUは実施されるでしょう。最後の2、3回かもしれませんが、通常授業に戻ったらそんなところを厳しく注意していくつもりです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

教室を使わせてください

4月30日(木)

KCPはオンライン授業を続けていますが、TOEFLも受験者を会場に集めて試験を行う方式をやめて、受験生の自宅で受験ができうるようにしています。しかし、どんな場所でも受験できるのではなく、受験環境にある一定の基準を設けています。そりゃそうですよね。カンニングし放題だったら試験の意味がありませんから。

お昼過ぎ、CさんがTOEFLを受けに学校へ来ました。Cさんも自宅で受験しようとしたのですが、TOEFLの基準を満たしていないため、学校の教室を借りて受験することにしたのです。誰もいない学校の教室なら、TOEFLから文句を言われず(まあ、なんたって試験を受けさせるのが学校の仕事ですからね)、それにwifiも使えます。また、学校はGさんのうちから歩いて数分ですから、こういうご時世でも許してもらえそうな範囲であり、しかも使い慣れた場所ですから余計なプレッシャーもかかりません。だから、受験に絶好の場所なのです。実は、上述のTOEFLの話は、Cさんから聞いたものでした。

どんなふうに試験を受けるのか見てみたい気もしましたが、それじゃあCさんはたまったもんじゃありませんから、設定にだけ付き合って職員室に引き上げました。きっと遺憾なく力を発揮してくれたことでしょう。

EJUは、先ほどサイトを確認しましたが、予定通り6月21日に実施すると言っています。6月のEJUは、おそらく日本でいちばん早い大学入試でしょう。諸々の事情で6月の第3日曜日となっているのでしょうが、今年はそれが非常な重荷になっています。近日中に発表される緊急事態宣言の今後によっては、9月入学への動きも含めて、留学生と私たちに多大な影響を及ぼすかもしれません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

さび落とし

4月22日(水)

外出を減らす、通勤者を減らすという意味もあり、非常勤の先生方にいらしていただくわけにいかず、今学期は私が数学の受験講座を担当することになりました。新校舎になってから初めてのような気がするんですが、記憶がはっきりしません。要するに、それぐらい昔のことです。

引き受けたものの、数学の頭を作るのに苦労しました。コンピューターの中のプリントに見覚えはありますが、神経回路は断絶し、脳はさび付き、勘が働きません。手を付けていないEJUの問題に取り組みましたが、やっぱりすらすらとは解けません。1回分の終わりのほうになって、やっといくらか調子が出てきました。

JASSOはまだ、6月のEJUは予定通り実施という方針を変更していませんから、こちらもそのつもりで学生たちを鍛えていかなければなりません。そのためには、私自身の頭を鍛え直す必要があるわけです。理科をやってても、数学の問題を解くのとは別の頭を使いますから、数学の力を維持することにはあまりつながりません。

EJUの数学は結構計算力を要求されますから、学生たちにはそういう訓練もさせたいです。とかくKCPの学生は、問題の答えを見てわかった気になりがちです。それでは本番で点数が取れません。過去のデータが、それを如実に語っています。最後の詰めをおろそかにしがちなのです。

学生たちのほうも、しばらくブランクがありましたから、課題の出来具合なんかを見ると、数学的な脳になっていないようです。来週までに体制を立て直し、あと2か月でどうにかしていきます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

10校も

2月27日(木)

お掃除のHさんのお孫さんは、10校に受かったそうです。第一志望はM大学だったそうですが、そこを含めて多くの大学に連戦連勝でした。定員厳格化の中、超勝ち組と言っていいでしょう。

お孫さんが何を勉強しようと思っているのか、どんな大学の選び方をしたのか、その辺のことは全然わかりませんが、ぜひともお話を聞いてみたいです。日本人と外国人留学生とでは、入試方法をはじめ条件が違います。それでも、どこかに何か秘訣のようなものがあるような気がします。

今シーズンのKCPの学生たちは、あと一歩が踏み込めず敗れ去った例が目立ったように思います。逆に、ほんのちょっとのアドバイスが功を奏して合格に結び付いた学生もいました。落ちた学生と受かった学生と、私の目には甲乙つけがたく映っても、面接官の目は私とは違う視点視座、別の座標軸価値観から学生を評価し、甲乙をつけているのです。この視点視座座標軸価値観を知ることができれば、百戦危うからずになるんですがね。

Yさんが、N大学に進学することにしたと報告してきてくれました。N大学は今までにも多くの学生が挑戦していますが、なかなか合格させてくれませんでした。Kさんも受かりましたが、YさんやKさんのような向上心も向学心も強い受験生を合格させたということは、N大学は受験生を非常によく見ているという気がします。資質のある学生を、そのレベルにまで引っ張り上げなければならないとなると、こちらとしては荷が重いです。

昨日はSさんがM大学の大学院に合格したと報告してくれました。面接練習で、何回も一番弱い点をぐりぐり突っ込んだ甲斐がありました。同じように面接練習でいじめ倒したWさんが受かってくれれば言うことなしなんですが、果たしてどうでしょう。結果は、来週です。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

 

何を書いたのかな

2月26日(水)

今学期の超級クラスは読解が選択授業です。小説、論説文、エッセイと分かれて授業をしてきました。明日の卒業認定試験を前に、その読解の認定試験をしました。

私が試験監督をしたのは、エッセイのクラス。今学期は、「“その”が指すのは何ですか」みたいな授業ではなく、文章全体を大づかみにして、筆者独自の視点や主張を読み取るということをしてきました。テストも、当然そういう問題にしました。選択式ではなく、筆答式の問題ばかりにしました。学生たちにとってはきつい問題かもしれないと思いながらも、こういうことをやってきたのだから、その力がどれだけついたのかを測る問題にしようと、初志貫徹しました。

試験問題を配ると、学生たちは一瞬顔を引きつらせましたが、すぐに問題に取り掛かり、黙々と答えを書いていました。解答欄を広めに作ったつもりでしたが、解答欄に書ききれず余白に続きを書く学生が何名もいました。もちろん、ただ本文を引き写しただけでは長い解答でも意味はありません。本文を自分なりに咀嚼できているかどうかを、採点基準にしようと思っています。

時間前に提出したSさんやCさんの答えを見ると、ちょっと期待外れの面もあれば、よくやったとほめてやりたくなる答えもありました。それ以外の学生も、あきらめて端から机に突っ伏してしまうことはありませんでした。少なくとも、最後の問題まできちんと解いていました。

このテストでは、授業で配ったテキストは持ち込んでもいいことにしました。そこにどんなメモが書かれていたとしても、それはその学生が授業を真面目に聞いていた証であり、そのメモが多い学生が有利になるのなら、理にかなっています。Wさんのテキストは特に書き込みが多いようでしたから、うならされる答えが書かれているのではないかと期待しています。

テストが終わって解答用紙を集めると、かなりのボリュームを読まなければならないことがわかってきました。卒業認定がかかっていますから、悠長に構えているわけにもいきません。

明日は文法と文字語彙の試験です。こちらもある期待寄せて問題を作っていますから、採点が楽しみです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

集中力

2月13日(木)

私が通勤に利用している日比谷線は、先週から駅の発車メロディーが新しくなりました。今までのに比べてよく響く感じがします。乗客に発車を伝えるという意味では改善なのでしょうが、電車の中で本を読んでいる身にとっては、若干耳障りです。それが鳴ると、そこで集中が途切れてしまうのです。読書に没頭していないから発車メロディーごときで気が散ってしまうのだと言えないこともありません。でも、気になるものは気になります。以前は気が付いたらもう降りる駅だったということがよくありましたが、今は各駅停車ならぬ各駅覚醒です。

車内でスマホをいじっている人はどうなんだろうと思います。イヤホンをしている人は、発車メロディーなど聞こえないか、聞こえたとしても気になるレベルではないのでしょう。じゃあ、普通に画面に集中している人はどうなんでしょう。ゲームのほうが読書より引っ張り込まれやすいのかな。

たまに教室に早く入ると、本気でタブレットの画面をたたいている学生を見かけることがあります。タタンタンタンタタタタタンと小気味よくリズムを刻んでいる学生の表情を除くと、思いのほか目がつり上がっていて、思わず息をのんでしまうこともあります。そんな学生なら、日比谷線の発車メロディーなどで気が緩むことは絶対にないでしょうね。その集中力を勉強に向けてくれればと思いますが、そういう学生に限って、授業が始まりタブレットをしまうと同時に意気消沈してしまうんですね。

ゲーム軍団の学生たちは、入試では集中力を発揮したようで、合格が決まっています…。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

この勢いで

2月12日(水)

教職員の朝礼が始まる直前、Oさんがロビーから私を呼びました。またややこしい願い事を持ってきたのかと、内心不安を抱えながら職員室の外で話を聞くと、「先生、Y大学に合格しました」と、合格通知を見せてくれました。「それで、先生、もう受験しませんから、受験で休むと言っていた卒業式、出ます。それから、バス旅行も入試で行けないと言いましたが、行けるようになりました。お金、いつ払えばいいですか」と、うれしい予定変更。

このOさん、ちょうど1週間前、別の大学に推薦してくれと言ってきました。でもY大学の結果が出ていないので推薦できないと断りました。推薦していたら、Y大学の合格は捨てなければなりませんでしたが、実際にはそうはしなかったでしょう。そうすると、たとえ私がその大学にどんなに平身低頭しても、その大学との間の信頼関係にひびが入ってしまったことは疑いありません。

噂によると、JさんもK大学の大学院に受かったとのことです。試験の直前に、国でしてきた研究内容の発表練習に何回か付き合いました。そこでのアドバイスが効いたかどうかはわかりませんが、Jさんは落ちたら帰国も考えていたようですから、これまた心の底から「おめでとう」と言ってあげたいです。

Jさんは、授業後に私を探しに職員室まで何回も足を運んできたそうですが、水曜日の午後は受験講座が目いっぱい詰まっているため、会えずじまいでした。明日、じっくりと合格の喜びを聞きましょう。

その受験講座から戻ってくると、Hさんからメールが来ていました。明日、午前中にS大学の筆記試験を受け、午後から面接練習をすると言っていました。おととい、そういう約束をしましたから、こちらは予定通りに進んでいるようです。授業中も引き締まった顔つきをしていましたから、気力は充実していると思います。

受験シーズンも追い込みです。明日はHさんのほか、Pさんの面接練習が待ち受けています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

ハードメニュー

2月7日(金)

Jさんは理系大学への進学を目指す初級の学生です。国でかなりがっちり理科の勉強をしてきたようで、受験講座の時にしてくる質問のレベルが高いです。唯一最大の欠点が、漢字に弱いことです。日本語で書かれている授業用プリントを見てもちんぷんかんぷんです。でも、それをスマホの翻訳システムに通すと、「あーあ」と声を上げてすぐに理解します。そして、国で勉強したことを確認するかのような質問をするというわけです。

おそらく、国の高校でも優秀な生徒だったのだろうと思います。飲み込みも早く、応用力もある実力派だったのではないかと想像しています。有望な学生ではありますが、漢字をどうにかしない限り、優秀さは陰に隠れたままになりそうです。未完の大器では、受験の世界では勝者になれません。

だから、Jさんには特別メニューを与えることにしました。普通の初級の学生のように基礎の部分から授業をしていっても物足りなく感じるでしょうから、問題をやらせながらJさんの弱点を補っていくことにしました。現時点では、EJU1回分の問題のうちJさんの日本語力で解けるのは3問ぐらいです。読めない漢字を読んであげると半分ぐらい解けるようになり、キーワードになりそうな単語を辞書で調べると、かなりのところまで行けます。

6月の本番までに日本語だけで問題文が理解できるようになれば、どこに出しても恥ずかしくないほどの高得点も望めるでしょう。そこまで引っ張り上げてやりたいと思っています。私は覚悟を決めていますが、Jさん、ついてきてくれるかな。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

推薦一丁

2月5日(水)

「先生、B大学に推薦してください」「えっ、Oさん、Y大学に出したよねえ」「はい。10日が発表ですが、たぶんダメですから…」「でも、受かったらY大学に行くんだよねえ」「はい…」「それじゃあ推薦できないな」「でも、B大学の締め切りが13日必着なんです」「だけど、推薦というのは受かったら必ずその大学に行くということだから、ほかの大学に行く可能性が残っている時点ではできないな」「じゃあ、10日にダメだってわかったらすぐ申し込みますから、推薦してください」「私1人で推薦する人を決めるんじゃないんだ。ほかの先生といっしょに面接して、その先生もいいとおっしゃったら推薦することになる。それに、推薦してもらいたい学生は、申込用紙に志望理由を書くことになっているんだけど、それはすぐかける?」「ええっ、そんなに面倒くさいんですか」「当り前じゃないか。4年間その大学で真剣に勉強していける人を見極めるんだから、それぐらいのことはしますよ」

Oさんは浮足立っています。お決まりのように高いところを狙い続けて滑り続けているうちに、あとひと月ほどで卒業式となり、不安が高まっているのです。秋口にB大学を進めあときには見向きもしなかったのに、今はわらをもつかむ心境なのでしょう。でも、Oさんのような考えなら、ちょっと推薦するわけにはいきません。

Oさん同様、後がなくなりつつある時期に来て、焦りが頂点に達している学生が何名かいます。「塾で勉強していますから大丈夫です」と豪語していた学生が尾羽打ち枯らした姿で相談に来たり、2月になってやっと自己流の面接の受け方が通用しないと気が付いた学生が基礎からやり直し始めたりなど、これから一体どうなるのでしょうか。どうにかするのが私たちの仕事ですが…。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

説明力

1月31日(金)

今学期の受験講座生物は、EJUを離れて記述問題やグラフなど図で示す問題に挑戦しています。文章や口頭で説明する力をつけてもらうことを目的としています。2021年4月入学を目指す中級の学生にとっては、現時点では荷が重い問題ですが、今から鍛えていけば各大学の独自試験や口頭試問の際に効果を発揮するはずです。また、選択肢がありませんから、正確に覚えておかないと正解にはつながりません。知識をあやふやな形ではなく、きちんと身に付けることも狙っています。

今のところ、学生たちは頭の中の知識を日本語化するところで壁に当たっています。国の言葉で知っている専門用語を日本語でどういうかわからないといった段階です。例えば、「光合成」という概念を国の言葉では持っていますが、その概念と日本語の「光合成」が結び付かないのです。

図示問題では、図やグラフが描けても、なぜそういう図やグラフになるかについては、頭が空回りしてしまいます。専門用語を知っていれば一言で表現できる事柄を、三角形の二辺どころか四角形の三辺を回ってくるような説明をしています。考えをうまく言葉にできないもどかしさを十二分に味わっていることと思います。

「〇字以内で答えよ」系の問題は、日本語レベルが中級ということもあり、まだまだ上手にまとめることはできません。答えの解説が、文法の授業になってしまうこともあります。これから先、上級へと進級していくにつれて、だんだん書けるようになっていくだろうと期待できます。

学生たちは歯を食いしばってついてきています。学生たちの希望に沿えるように伸ばしていきたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ