Category Archives: 学生

テスト結果

1月24日(火)

受験講座理科の新規受講生がじわじわと加わってきたので、授業を先学期からの継続生にばかり合わせるわけにもいかなくなってきました。そこで、受講生全員にテストをしました。新しい学生だって、国の高校で理科を勉強してきています。忘れている部分はあったにしても、まるっきり何もわからないとは考えられません。継続生だって、今まで勉強したことをすべて身に付けているとは思えません。これから先、どこを重点的に教えていけばいいか、それを知るためのテストです。

手っ取り早いので、EJUの化学の過去問を拝借しました。私が作った模範解答もありますから、試験後に解説するにしても容易に対応できます。授業では、化学は1セット(20問)30分以内に解けと言っています。しかし、今回はEJUの問題に向かうのが初めての学生もいますから、EJU本番の理科の試験時間・80分の半分、40分を与えました。

継続生は、先学期のうちに化学の範囲の半分ほどを勉強していますから、40分では時間が余るかなと思いました。しかし、余りませんでした。新規の学生は、何もわからずあっさりギブアップしてしまうのではないかと心配していました。しかし、杞憂でした。

授業後、学生たちの答えをチェックしてみると、新しい学生はまぐれ当たりとしか思えないような点の取り方でした。継続生は、それよりはましでしたが、年末に教えたところの問題は、ほぼ全滅でした。新規受講生に対して、思ったより差が付きませんでした。私の教え方がまずかったのでしょうか。

どうやら、継続生も1から出直しのようです。レベルが合ってよかったとも言えますが、どんぐりの背比べでは困るんですよね…。

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人口減少

1月23日(月)

先週発表された、中国の人口が減少に転じたというニュースの新聞記事をもとに、読解兼日本事情的な授業をしました。中国の学生が多いクラスなので、日本での報道ではうかがい知れない実情がわかるのではないかと期待もしていました。

このニュースについて解説している動画も見せました。学生たちは思ったより真剣に見ていて、意見や感想を述べてくれました。こういう報道は多少センセーショナルな方向に傾きがちなのですが、学生たちの話を聞くと、必ずしもそうではないようです。結婚にお金がかかりすぎるなどというあたりには、盛んにうなずいていました。

中国以外の学生も含めて、将来子供を持つことについて聞いてみると、子供をたくさん作りたいという声は聞こえてきませんでした。子育てにはお金がかかることは承知しており、子育てのために自分の生活レベルを切り下げるのは嫌なようです。

では、少子高齢化にはどのように対処すればいいかと、グループで考えてもらいました。中には、打つ手なしという結論に至ったグループもありました。大半のグループは経済的な支援を挙げていました。これなら各国がすでに何らかの形で取り組んでいます。しかし、華々しい成果は現れていません。

学生たちは、自分の国ではごく平均的な若者でしょう。とすると、学生たちの国々も日本も、人口減少、少子高齢化に歯止めがかかりそうもありません。そういった中での留学というのは、自分の価値を高めるためなのでしょうか、自己実現を考えているのでしょうか。学生たちは、50年後の世界をどう描いているのでしょうか。

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安全運転

1月20日(金)

Sさんはこれから何校か受験します。去年のうちに滑り止めのつもりで受けたT大学に落ちてショックを受けていましたが、ようやく立ち直ってきました。どうにか春までに行き先を決めて、3月にKCPを出ようと考えています。授業後、そのSさんの面接練習をしましt。

一度落ちているからでしょうか、答えがすべて安全運転でした。当たり障りのない答えで、内面を面接官役の私に見せることはありませんでした。Sさんでなくても誰でも答えられるものばかりで、Sさんの特徴が全く感じられませんでした。これでは面接官の印象に残らず、落ちること請け合いです。

SさんはT大学に落ちたあたりから、メンタル面が崩れてきました。不安で眠れないとか、だから遅刻欠席が多いとか、授業中も受験勉強が気になって問題集をやってしまうとか、入学したばかりの頃の、やる気にあふれたはつらつさが消えてしまいました。外見も、いかにも寝起きといった風情で登校してきます。

また、Sさんは結構滑らかにしゃべれてしまいますから、安全運転の答えがなおのこと形式的に聞こえてしまいます。面接という火の粉を振り払っているだけという感じを、面接官に与えてしまうような気がします。滑らかすぎて余計なことも言っていました。

以上のようなことをフィードバックしたかったのですが、Sさんのメンタルを考えると、とても伝えられませんでした。ですから、自分を売り込むことに力を入れてほしいとだけアドバイスしました。試験日まで時間がありますから、まだ面接練習のチャンスはあります。少しずつレベルアップしていきましょう。

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例文の間違い

1月19日(木)

他の学校のことはよくわかりませんが、KCPは授業中に割とよく例文を書かせます。授業時間が足りなくなってしまったら、宿題とすることもあります。「学生に習った文法や語彙、表現を使うチャンスを与える」などと言ったら恩着せがましいですが、教わった言葉は使ってみないと定着しないものです。また、教師側としては、自分の教え方の反省材料にもなります。

「水と学生は低きに就く」とは、孟子の言葉をもじった格言(?)で、私も学生の頃よく先生に言われました。どうやらKCPの学生もこれのようです。提出された例文の中に似たようなものが何人かから出てくることがあります。私が目を離したすきに、習ったばかりの文法表現や語彙をスマホで検索して、見つかった例文を書き写すか名詞をちょこっと替えて書いているのでしょう。だから、濁点が抜けていたり、スマホのフォントっぽい漢字が書かれていたり、いじって個性を出そうとしたのが裏目に出て変な例文になったりすることがよくあります。

MさんとNさんとLさんが、よく似た例文を出してきました。「机の上にゴミやら教科書やらがごちゃごちゃ置いている」といった文です。「机の上はゴミやら教科書やらが散らかっている」ぐらいでしょうかね、自然な表現にすると。日本人が作った例文ではないと思います。“ごちゃごちゃ置いている”なんて、初級か中級の学習者の犯しやすい間違いです。ということは、3人の母語で書かれたサイトでこの例文を見つけたのでしょう。つまり、全く日本語の勉強になっていないというわけです。

さて、こいつらをどうやっていじめてやろうかな。

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30秒前精神?

1月18日(水)

今学期私が持っているクラスの学生たちは、みんなスリルを味わうのが好きなようです。8:55ぐらいに教室に行っても誰もいないということすらありました。私はタブレットの接続具合を確認したり、授業で使う資料を画面に出す準備をしたりしたいので、授業が始まる5分前ぐらいには教室に入るようにしています。その時に誰もいないとか、いても1人とか2人とかというと、学生が来るんだろうかと心配になってきます。

でも、毎日、8時59分30秒あたりから、学生が怒涛のごとく押し寄せます。そして、始業のチャイムが鳴り、出席を取っている最中にもなだれ込み、出席簿上遅刻扱いにならずに済む学生がほとんどです。出席を取り終わった時点で遅刻・欠席の学生は、せいぜい2人ぐらいとなります。

綱渡り常習者のLさんは、丸ノ内線沿線に住んでいます。最寄駅8:41発の電車に乗れば教室に9時ちょうどに着くと計算しています。しかし、うちを出るのがほんのちょっと遅れ、その電車を逃すと次の電車は8:44発となり、教室着が9:03で、惜しくも遅刻です。8:41発に乗れても、その電車が微妙に遅れればアウトです。どうしてもう1本前の電車に乗らないのかと聞いても、Lさんは頭をかくばかりです。

他の学生も似たり寄ったりでしょう。時間の観念がないわけではなく、むしろありすぎるからこそ、9時ピッタリに滑り込むのです。じゃあ時間の無駄遣いをしていないのかと言ったら、間違ってもそんなことはありません。せめて、その時間の観念を5分早めてもらいたいです。

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どこへ行きたい?

1月17日(火)

今学期は上級の選択授業も担当します。私がやるのは、留学生目線の日本の観光ガイドを作ろうというプロジェクトです。日本の観光ガイドを作るには、まず、日本を知らなければならないということで、初回は日本の紹介をしました。

日本は島国ですが、これをお読みの皆さんはいくつぐらいの島があると思いますか。学生に聞いたら、30とか50とか、よほど思い切った学生で200などという答えでした。島の定義のしかたにもよりますが、間違ってもそんな少数ではありません。だいたい7000だと言ったら、全員が驚いていました。30なんて、佐渡島、淡路島など、有名な島だけでもそれぐらいになっちゃいますよ。

次は地方の名前、都道府県名です。地方の名前は、中部地方と中国地方で考え込んでいる学生が目立ちました。都道府県名は、関東地方と京都大阪あたりはできましたが、それ以外は北海道沖縄を除いて出来が悪かったですね。

都道府県名が全部出そろったところで、行ったことがある都道府県を聞いてみました。南関東と京都大阪奈良が多く、それに北海道が続く感じでした。他は1人か2人でした。遠出を控えろと言われ続けてきましたからしかたない面はありますが、学生の行動範囲はあまり広くありません。がっかりだったのは、行ったことがある県として埼玉を挙げた学生が約半数だったことです。先学期、川越であんなに盛り上がったのに…。あの日は、ちょっと遠いところまで行ったけど、そこが埼玉県だったとは思わなかったというところでしょう。

最後に、行ってみたい都道府県を挙げてもらいました。すると、沖縄北海道が票を伸ばしました。近畿地方も人気がありましたが、兵庫県はパッとしませんでした。どうやら、神戸と兵庫県が結びつかなかったようです。中国四国九州中部東北も、ごく少数の学生が支持しただけでした。

要するに、知らないから行きたいとも思わないのです。「進学先として地方の大学も考えろ」と指導しますが、地方がどんなところか知らなかったら、学問する場として選ぶはずがありません。この辺を是正していくのも、この授業の役目だと思って、今学期取り組んでいきます。

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85%

1月16日(月)

午後、F専門学校の留学生担当の方が学生募集の説明にいらっしゃいました。KCPからも毎年のように進学している学校ですから、どこの学科が定員になったという情報以外、取り立てて新しい話はありませんでした。募集を打ち切った学科も「ぜひ学生を送ってください」と言われた学科も、恐らくそうだろうなという感じでした。年が明けても定員になっていない学科は、学生募集にテコ入れしないと3月までに定員を埋められないかもしれません。今週はこのF専門学校のほかに、もう1校来校予定があります。

「出席率の基準はどの辺でしょうか」と聞いてみると、「出願資格は“80%以上“となっていますが、今は90%以上が常識でしょうね。85%でも印象は悪いですね」という答えが返ってきました。F専門学校は学生募集にテコ入れを始めたようですが、出席率に関しては妥協するつもりがないようです。出席率85%だったら、面接で休んだ理由を聞くとも言っていました。

こちらも、そうやすやすと妥協してほしくはありません。留学ビザは勉強するためのビザですから、出席率80%=欠席率20%では留学ビザで日本にいる意味がありません。出席率80%とは、平日5日のうち1日休んでいるということです。つまり、週休3日です。仕事なら段取りを上手につければそれも可能でしょうが、語学の勉強で週休3日はいただけません。

夕方、週休3日でアルバイトに精を出している学生が叱られていました。この学生も日本で進学するつもりのようですが、受け入れ先がこんなことを考えているなんて、気づいていないでしょうね。

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二十歳を祝う会

1月13日(金)

授業が終わったら、本当は何人かの学生を捕まえたかったのですが、それをほったらかして6階へ。12時半から「二十歳を祝う会」が開かれました。

「成人式」というと、成人年齢が18歳に下がったので18歳が対象となりますが、やっぱり子供と大人の区切りは二十歳かなあ。18歳で成人になった人がまだ少ないからでしょうか、日本の多くの地域で「二十歳を祝う会」的な催しが行われています。

二十歳の学生と比べると、私はその3倍の期間を生きています。会場にいる学生が生まれたころ、私はすでに2つ目の仕事として日本語教師を選び、KCPで教えていました。でも、この仕事が選べたのは、その前の20年間があったからこそだと思っています。最初の仕事は化学会社の研究員・エンジニアでしたから、日本語教師とは縁もゆかりもありませんでした。ただ、文法について考えるのは好きで、また、暇さえあれば本を読んでいましたから、自然に語彙も増えました。司馬遼太郎をはじめ、多くの作家から珠玉の言葉を学びました。それがこの仕事に生きていることは、疑う余地がありません。

ですから、二十歳の学生にも、興味の幅を広げて自分を鍛え続けてほしいと思っています。私は、今の私を思い描きながら二十代、三十代…と生きてきたわけではありませんが、若い時にまいた種を、今、刈り取っています。私は、残念ながら、日本の国の外で学ぶ機会はありませんでしたが、学生たちはそのスタートラインに立っています。この留学生活を充実させれば、年を取ってからあでやかな人生が送れます。

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通訳の効果

1月12日(木)

学校になついている学生は、教師が手伝ってほしいと声をかけると、喜んで手を貸してくれます。声をかけずとも、荷物をたくさん抱えていると、「持ちましょうか」と言ってくれる学生が少なくありません。「持ちましょうか」さえ未習の初級の学生は、アイコンタクトで申し出てくれます。

このところ感染拡大防止のため活発ではありませんが、学校行事のスタッフも人気があります。こちらの指示が伝わることが前提ですから上級の学生に限られますが、いつも期待以上の働きをしてくれて、本当に助かっています。必ず機転の利く学生が何名か出てきて、その学生を中心に仕事が回るのです。

そんな教師のお手伝いの中で、学生の評価が一番高いのは通訳です。たまたま職員室の前を通りがかった学生を捕まえて初級の学生への通訳を頼んでも、まず間違いなく引き受けてくれます。だいぶ前のことですが、レベル2の学生にレベル1の学生への通訳をしてもらったことがあります。こちらはレベル2の学生にもわかるような日本語を話しているのですが、それを自国語に訳している学生の表情は、自信に満ち溢れていました。また、レベル1の学生の質問や意見を、つたないながらも、私にわかる日本語にしてくれました。「どうもありがとう」とお礼を言うと、「うれしいです」と返ってきました。“お役に立てて”とまでは言えないあたりが、レベル2なのですが…。

今学期の木曜日のクラスには、Mさんがいます。Mさんは先日の入学式で通訳をしてくれました。授業中、クラス全体に多少難しいことを聞いても、真っ先に答えてくれました。できる学生がもっとできるようになった感じです。学校行事の通訳は、教職員、学生の目が集まりますから、花形中の花形です。それをやり遂げたことで、自信が確かなものになったのではないでしょうか。

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どの科目を取りますか

1月11日(水)

Cさんは今学期から受験講座を受ける学生です。どの講座を取るか決めてもらうため、授業後に説明をしました。

「Cさんは大学で何を勉強しようと思っていますか」。これは文系か理系か確認する質問であると同時に、日本語力チェックもしています。これがわからないようだと、受験講座についていくのは厳しいかもしれません。Cさんは難なく「文学か経済を勉強しようと思っています」と答えました。

「文学か経済…。ずいぶん離れていますねえ。文科系の人は、総合科目は絶対取ってください」「はい、わかりました。経済を勉強するときに数学が必要ですが、受験講座の数学は何を勉強しますか」と聞かれたので、EJUの数学コース1の範囲である数学Ⅰと数学Aの教科書を見せました。2次関数のあたりでCさんの顔が青ざめてきました。志望校を聞くと、A大学、M大学、N大学の名が挙がりました。いずれも国立大学ではありませんから、少なくとも文学部ならEJUの数学が要求されることはないでしょう。

Cさんは自分が置かれている状況もよく理解しているし、きちんと理解できるまで質問も繰り返すし、話の内容も筋が通っているし、このまま順調に伸びてくれれば上述の志望校も夢ではありません。何より、こちらの言ったことをきちんと聞き取っているところが心強いです。でも、数学をあきらめてしまったのは、理系人間としては寂しいですね。

数学は、図形の問題が解けたり順列組み合わせの計算ができたりするのが到達目標ではありません。図形の問題や順列組み合わせの計算に使う論理性こそ、その根本です。それは、文学の研究にも必要とされます。

数学嫌いを生まない教育をしている国って、あるのでしょうか。

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