Category Archives: 学生

1年延ばしたら

3月2日(水)

入管が認めた日本語学校への在籍期間特別延長措置を利用する学生の申請書が回ってきます。学生本人がもう1年KCPで勉強したいと言っても、本当に勉強するかどうか疑わしい場合は、入管が「うん」とは言いません。例えば今までの出席率の低い学生です。そういう学生をはじくために、学校側でもチェックを入れているというわけです。

現在KCPに在籍している学生は、受けた授業の半分以上がオンラインかもしれません。孤独に耐えながら、周囲の雑音やよからぬ誘惑に心を乱されながら、パソコンに向かっているのでしょう。そういう悪条件をものともせずに実力をつけ、志望校に合格した学生もいます。その一方で、そういう環境に流され埋没していった学生もいます。期間延長を申し出ている学生たちが全員埋没組だとは思いません。しかし、教師のコントロールが弱いのをいいことに、気ままに暮らしてどこにも行けなくなっている学生もいます。

Yさんは、どこまで本気で勉強したかなあと思えてしまう学生です。もう1年を希望していますが、よほど奮起しない限り、1年後も状況は変わっていないでしょう。1人ではろくに勉強できないことが証明されたのですから、進んで教師のコントロール下に入るべきです。受験講座だって自然消滅を繰り返しています。入管に認めてもらえなくても文句の言えない出席率をどこまで深刻に考えているでしょうか。

Gさんは、出席率は問題ありませんが、自己中をどうにかしないと、人間関係でつまずくかもしれません。オンラインが多かったためにさほど目立ちませんでしたが、対面中心になったらクラスメートととの間に摩擦が生じるのではないかと心配しています。1年以上悪い意味でのびのびと暮らしてきましたから、今さら矯正が利くのでしょうか。

新規来日者を受け入れる準備も進めています。そういう学生たちが、YさんやGさんたちに、上向きかつ前向きの刺激を与えてくれればと期待しています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

無視

3月1日(火)

Oさんは4月から大学進学が決まっています。入学した時に言っていた東大ではありませんが、国立大学の合否発表がこれからあります。その大学の募集要項をちょっと見てみたら、Oさんが狙っている学科は、EJUの成績は合否判定に関係ないことがわかりました。出願資格として基準点を示していますが、合否は日本人受験生と同一試験の学力検査と面接によって決定するとのことです。

この大学のこの学科の先生方は、EJUは選抜試験としてたのむにあたらないと考えているのでしょうか。自分たちが作った問題で、自分たちの理想の教育を受けるに適した学生を選ぼうとしているのでしょうか。EJUの問題を見ていると、その気持ちもわかりますね。マークシートの数学や理科の問題で、未知の課題に挑む力がわかるのかと言えば、非常に大きな疑問符を付けざるを得ません。今年は留学生の受験生数は大きく減ったでしょうから、なおさら自分たちの目と耳と手でこれはという金の卵を選びたくなったのではないかとも思います。

他の国立大学でも、EJUはほんに形だけと言わんばかりの配点のところも何校かあります。また、留学生全体の合否データを見ると、EJUの成績はあまり関係なさそうな大学学部学科も容易に見つけ出せます。さらに、日本人の受験生と同じく共通テストを受けて大学の個別試験を受ける留学生も増えているようです。EJUの求心力、信頼度が低下しているような気がしてなりません。

今年はEJUが実施され始めてちょうど20年です。制度疲労が起きてもおかしくない時間が経っています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

小さな窓を通して

2月25日(金)

午前中、T先生と話していたら、学生との意思疎通の話になりました。「どこですか」と聞いているのに言葉の意味を答えたり、「それで」と「それに」と「そして」があやふやだったり、上級でも助詞がボロボロだったりなどということをぼやき合いました。

一つには、オンライン授業における学生の集中力は、やっぱり、対面授業には及ばないということがあるでしょう。W大学の学生のように、複数の授業を一度に聞く学生はいませんが、別のことをしながら授業を聞いている学生は結構いる感じがします。別のことをするまでに至らなくても、ボーっとしている時間は、対面よりも長いでしょう。私が学生だとしても、90分間パソコンの画面と音声に集中し続けるのは、教室で授業に集中するより難しいと思います。意識が飛んだ瞬間に指名されたら、的外れなことを言ってしまうかもしれません。

教師は、自分がしゃべり続けなくても、授業を仕切るのは自分だという意識が強いですから、90分ぐらいどうにかなってしまいます。画面に現れる小さな顔から学生の様子を推し量らねばと思い続けると、対面授業より緊張度は高まっているかもしれません。指名してから答えが返ってくるまでの微妙な間も、意思疎通の敵です。WiFiの加減によっては、さらに状況が悪化します。

教師も自宅から授業を送信すれば、多少はおおらかな気持ちになれるのでしょうかねえ。でも、3月で卒業する学生の大半が、卒業式ぐらいは対面でしたいと言っているそうです。学生も、間に何も介在しないリアルなコミュニケーションを通して語学をものにしたいと思っていると信じたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

覚える

2月24日(木)

入試問題を解くのは知識か知恵かと聞かれたら、どうお答えになりますか。

知識の範囲をどこまでにするかにもよりますが、知識がゼロではないでしょう。最近はマークシートの問題でも工夫が加えられてきて、知識の有無だけを問うような問題は少なくなりました。知恵を意識しすぎると、今年の大学入学共通テストのように、全受験生が団栗の背比べになってしまって、テストの用をなさなくなることもあります。

知恵といったって、その基礎をなす部分は、知識と無縁ではないでしょう。知恵は知識を組み合わせたところに生ずるものでもあります。そこには創造力や想像力も関与します。単に知識を堆積させただけでは、知恵は湧き上がってきません。知識と知識を結ぶネットワークを張り巡らすことが肝要です。

Dさんは真面目な学生です。6月のEJUに向けての勉強をしています。私もDさんの力になってあげたいと思っています。しかし、Dさんから来る質問に、「これは覚えなければなりませんか」という意味のものがあることに引っ掛かっています。暗記かそれに類する覚え方では、知識の有無を競う問題にしか答えられません。そうじゃなくて、知識を組み合わせるとかひとひねりしてから使うとか、応用力を問う出題にも対応できるようになってこそ、高得点に結びつくのです。それは同時に、進学してからの勉強にもつながります。

Dさんにそういうところまで見えているのか、気がかりです。知識は布石みたいなところもあり、入試には不要でも、将来、何かの拍子に、それがあることですべてがつながり、理解や興味が深まることだってあるのです。

昨日のうちに届いていたDさんからのメールを読みながら、そんなことを考えました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

20220222

2月22日(火)

22年2月22日は、スーパー猫の日だそうです。にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんだからだと言っていますが、200年後にはにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんとなりますから、ハイパー猫の日とでもなるのでしょうか。

この日に合わせて、静岡県の川根小山(かわねこやま)駅は臨時に川猫山駅に改称し、特別な記念切符を発売したとか。このほかにも、全国いたるところで“記念行事”が行われたようです。こういうダジャレができるのも、それを喜んで受け入れてしまうのも、日本文化であり、日本人です。

西暦年月日の数字合わせで思い出すのは、1999年11月19日です。ご覧のように、年月日のすべての数字が奇数です。この次にこのような並びになるのは、3111年1月1日で、1000年以上も先のことです。当時通っていた会話教室で、もちろん英語でこれを熱弁したのですが、先生にはこの意義が伝わりませんでした。貴重な1日だったんですけどね。

お昼から帰ってくると、書類を取りにでも来たのでしょうか、ちょうど学校から出てきたPさんとLさんとすれ違いました。「こんにちは」とあいさつしてくれました。Lさんは進学先が決まり、Pさんは3月で帰国の予定です。先月あたりまでずいぶん悩んでいたPさんでしたが、もう吹っ切れたみたいです。明るい顔つきをしていました。

3月10日の卒業式までは2週間ちょっと。その日は水戸の日であり、佐渡の日であり、砂糖の日だそうです。にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんも含めて、2人ともこういう言葉遊びが理解できるまでになったかな。ここでニヤッとして上級なんですよ。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

遅きに…

2月18日(金)

やっと開国に一歩踏み出しました。水際対策を少し緩めるという発表がありました。しかし、1日5000人で、しかも航空券を取った順だという話も聞こえてきます。どうせまっ先にビジネスで、留学生よりも技能実習生のほうが早いんじゃないかな。その留学生も、大学・大学院が優先でしょう。日本語学校の学生が入国してくるのは、まだまだ先のようです。文科相が、留学生の入国手続きを簡素化すると言ってくれているのが、せめてもの慰めです。

今回の入国規制緩和も、岸田さんオリジナルの判断というよりは、各方面からつつかれて重い腰を上げたという感じがします。海外からの不満も、かなり強く背中を押す結果となったのではないでしょうか。何かしかるべき戦略があって開国に進んだのではなく、雰囲気に流されてちょっかいを出してみたというのが実情のような気がします。だから、この逆コースにも容易に進みうるのです。

留学生は、今すぐ日本にとって役に立つ存在ではありません。将来に向けての先行投資です。種をまいておくという発想で、留学生をかわいがってもらいたいです。留学生自身同様、周囲の日本人学生への影響も考慮の余地があります。交換留学生として海外へ向かう学生はもちろんのこと、ネットを通してしか外国人を知らない日本人学生にどれほどの刺激を与えてくれるでしょう。

それにしても、ここまで待てずにKCPを去っていったKさん、Rさん、Pさんたちはこのニュースを聞いているのでしょうか。もう一度こちらを振り向いてはくれないでしょうね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

リストを見ながら

2月17日(木)

学生は、大学や大学院、専門学校などに合格すると、担任の先生に報告します。こちらも、入学させた学生がどうなったか役所に報告することになっていますから、そういうルールにしています。中には、隠密行動で受験してこっそり受かっている学生もいますが、最後まで秘密を隠し通した学生はごくわずかなはずです。

学生が学校へ来ていると、自分のクラスではない学生からも、「先生、○○大学に合格しました」などと、直接報告を受けることがあります。廊下や階段、ロビー、ラウンジ、そんなところでばったり会ったついでに、そんなふうに声を掛けられることも少なくありません。

ところが今は全面オンラインですから、生身の学生に会うということがめったにありません。そのため、毎年恒例のうれしいお知らせに接することもほとんどありません。職員室で先生方の会話に聞き耳を立てて、学生の進学状況を把握しているというありさまです。

入管の特例で、2020年入学生に関しては在留期間の延長が認められています。この特例を利用するか否かの調査結果での一覧表に、各学生の合否状況が載っています。今年はこれを頼りにするほかないようです。

それを見ていると、今年は面接で落とされるのではと心配していた学生がわりと受かっているような気がします。頭脳明晰で話すのだけが苦手なWさんがあちこち受かっているのはともかくとして、コミュニケーション能力がゼロに近いCさんまで名の通ったところに合格しています。進学先で授業にもついていけないし、友だちもできないしなどということになったら、学生にとっても大学にとっても不幸です。

入学時に大言壮語していたZさんは、竜頭蛇尾の状態です。特例を利用しないみたいですが、あと1か月半ほどで大逆転があるのでしょうか。Tさんがもう1年と言っているのは、モラトリアムかな。その気になればCさん以上に合格を重ねてもおかしくないのに。

明日は早くも中間テスト。受験シーズンの終わりが近づいてきています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

奨学金がもらえない

2月15日(火)

まだ試験を受けている学生がいる一方で、すでに合格を決めた学生もいます。そんな学生たちを対象に、JASSOが奨学金受給者の募集をしています。何名かが応募しましたが、応募者全員が奨学金をもらえるわけではありません。まず、EJUで決められた科目を受けているか、そして、出席率もそうですが、KCPでの成績も基準を上回っていなければなりません。

調べてみると、Yさんだけが基準に届きませんでした。Yさんは先々学期受け持ちました。悪い学生ではないのですが、でも、それ以上でもありません。授業に集中していないのか、指名するととんちんかんな答えをすることが時たまありました。どうやら、自分はできると思っていたようです。学校の勉強なんか、試験の直前にまとめてやれば合格点ぐらいは取れる――と思っていた節も感じられました。

ところが、実際はそうではなく、平常テストでは不合格点も取ったし、作文も日本語教師だからどうにか読み取れるという程度だったし、結局はお情け進級組の1人でした。それでも志望校に合格したのは立派ですが、合格した後、ねじが緩みまくっているという報告を、先学期の担当の先生から聞いています。

JASSOの成績基準はそんなに厳しくはありませんが、それにすら引っ掛からなかったという点に心配が募ります。今学期はオンライン授業のため全然顔を見ていませんが、ちゃんと勉強しているのでしょうか。緩みっぱなしだと、「進学はしたけれど…」ということにもなりかねません。

もう間もなく、奨学金は受けられないという通知がYさんの元に届くでしょう。これを単にお金の問題ではなく、進学後にどれだけ実のある勉強ができるかという問題に置き換えて考えてもらいたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

次の段階

2月9日(水)

昨日面接をしたSさんが、指定校推薦の手続きをしに学校へ来ました。私はT大学に進学する意志の最終確認と、仮にも学校が推薦するのですから、それにふさわしい学生であり続けることなどをはじめとする、その他もろもろの注意事項の伝達をしました。Sさんは緊張気味に耳を傾けていました。

ここ何年か、指定校推薦で進学を決めた学生が、合格後にそれにふさわしくない行動に走る例が出ています。この制度は単なるすべり止めや他大学に落ちた場合の保険などではありません。また、ある特定の学生個人を利するために存在しているのでもありません。大学側が学生確保を図り、こちらがそれに乗っかっているわけでもありません。真に勉強する意志と能力のある学生を、その意志と能力を受け止めてくれる大学に送り込むための精度です。大学とKCPとの間の信頼関係に基づいて成り立っているのです。

この信頼関係にひびを入れるような振る舞いをしないようにと何本も釘を刺しておくというのが、指定校推薦における私の役どころです。指定校推薦の誓約書に書かれていることをすべて守ってくれたら、全教職員が心から応援したくなること疑いありません。いや、周囲の学生だって、“SさんにはT大学でいい勉強をしてほしい”と思うことでしょう。

指定校推薦の出願書類などを受け取り、作成方法の説明を受け、Sさんは帰って行きました。出願を済ませたら、今度はT大学での入試面接の練習も始めなければなりません。Sさんの思いがT大学の先生方に伝わるように、先生方の心をつかめるように、指導していきます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

久しぶりの面接

2月8日(火)

Sさんは、先学期と先々学期、私のクラスでした。若干頭の固いところはありますが、真面目な学生です。字が汚いのが最大の欠点で、Sさんの例文やテストの解答用紙や作文を読むのに苦労させられたものです。

そのSさんが、T大学の指定校推薦に応募しました。昨年秋からいくつかの大学を受験しましたが、EJUの点数や英語の成績など、何かどこかで引っかかり続けて、どれもうまくいきませんでした。そして、志望学部が合うT大学の指定校推薦に応募するに至ったのです。その推薦者決定の面接を、授業が終わった午後に行いました。

授業はオンラインなのに、指定校推薦の面接のためだけに学校まで出て来いというわけにもいかず、オンラインでの面接になりました。ZOOMに入ってきたSさんは、スーツ姿でした。人は見かけで判断してはいけないと言うものの、やっぱり印象はよくなっちゃいますよね。この指定校推薦にかける意気込みは感じられました。

T大学の志望理由など、お決まりの質問への回答は難なくこなしました。しかし、ちょっとひねった質問をすると、言葉が滑らかでなくなります。ただ、こちらの問いかけに真摯に答えようとしていることは十分に伝わってきました。コミュニケーションは取れていますが、やはり話す練習は必要です。この辺がオンライン授業の課題ですね。

結論として、SさんをT大学に推薦することにしました。夏ごろのSさんにとって、T大学は第1志望でも第2志望でもなかったに違いありません。しかし、今、Sさんは、T大学の中で、自分で道を切り開こうとしています。この気持ちさえあれば、今までに受験した大学に劣らぬ、Sさんの人生において価値のある学問ができることでしょう。

面接が終わった後、さえわたった青空を見上げながらお昼を食べに出かけました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ