Category Archives: 進学

徹夜で

3月10日(水)

卒業生のKさんが大物ぶりを遺憾なく発揮しています。昨日は、大阪での試験前日だというのに、日中は面接練習に学校へ来ていました。その面接練習も仕上げではなく、ボコボコに直されるレベルでした。そして、すぐに新幹線で大阪まで行っておけときつく命じ、本人も「はい」と応じていたのに、夜7時に担任のO先生が電話をかけた時にまだ家でご飯を食べていました。

その後、O先生が電話をかけてもメールを送っても反応がなく、今朝になっても今どこで何をしているのか、全くつかめない状態でした。ようやく昼過ぎに連絡が付きました。なんと、今朝の新幹線で大阪へ行ったとか。O先生は朝まで寝ないでいたのだろうと推察しています。朝一番ののぞみは博多行きですから、よくぞ新大阪で目を覚まし、降りたものです。

試験は無事終わったようですが、Kさんは大阪で遊んで帰ると言っています。試験前日泊ではなく、試験後に泊まるというのですから、なかなかの心臓です。しかも、数日前に受けた入試の結果が自宅に届いているはずなのに、それを気にも留めずに遊ぼうとしているのです。行き先がまだ決まっていない者の行いとは思えません。

周りの教師が焦っているわりには、当の本人は至って淡白という例が、今シーズンはいつになく多かったように感じます。他人ごとであるかのように構えている学生が目立ちました。客観視とか冷静とかいうのとは違って、情熱が伝わってこないのです。泥臭くあがき続けた学生が曲がりなりにも受かっているのに対して、このタイプの学生は最後に来て大いに苦しんでいます。

明日は進学授業があります。これを強く訴えようと思います。

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まだ来ている

3月9日(火)

卒業式の翌日は学校の中がガタッと寂しくなるものですが、今年は大きく変わることがありません。強いて言えば、午前クラスが減った分だけ、9時を過ぎても職員室に残る先生が多い点でしょうか。寂しさが薄まるという点では、オンライン授業も捨てたものではありません(?)。

変化がないことでありがたくないことは、先週と同じようなメンバーが進学相談に来ていることです。卒業式が終わったのにまだ進学先が決まっていない学生が、昨日まで担任だった先生に世話を焼いてもらっています。覚悟を決めてこの時期まで残っているのならともかく、右往左往しているうちに3月も半ばを迎えようかという学生もいます。そういう学生に限って、教師よりのん気に構えているんですよね。

私は、ようやくまとまった時間が取れましたから、昨年11月に実施されたEJUの理科の問題を解きました。解説を付けるのが目的ですから、答えを出したら終わりではありません。答えに関連する事柄も書き加えて、受験講座用の資料にします。ですから、作るのに時間がかかります。模範解答は8割方仕上がりましたが、新しい傾向の問題に関しては、受験講座のパワーポイントにも反映させていきます。そちらの手直しもしていきます。

こうして作った資料は、今、受験講座・理科を取っている学生にも使っていきます。学生たちは、6月のEJUの出願はもう済ませましたから、来学期早々にも、模擬テストとしてやってもらいましょう。

22年度入試向けの進学フェアの準備も始めています。卒業式後の方が、出席率がいいなどという学生を生まないためにも、万全の進路指導をしていかなければなりません。

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楽勝

3月4日(木)

Gさんは午後から入試です。でも、KCPからの書類も提出していなければ受験料すら払い込んでいません。出願書類や受験料などは、すべて受験後に持って行けばいいそうです。入試と言っても形だけで、受ければ合格だと言われたとか。卒業式まであと4日となるに至ってもどこにも受かってないGさんにとっては、これほどおいしい話はないでしょう。

もちろん、この学校はまともな学生選抜などしていないでしょう。頭数を揃えるのが第一義であり、教育は二の次以下に違いありません。私もこの学校のことは知っていましたが、学生には一切教えませんでした。しかし、Gさんはどこからかこの学校の情報を得て、試験当日、欠席しなければなりませんから、やむを得ず学校に伝えたのでしょう。

多くの学校は、まともな学校です。“レベルが低い学校”という烙印を押されていても、なにがしかの選抜はするものです。日本で勉強を続けるにはビザが必要な留学生に対して、とりあえず身一つで試験を受けに来てくれなどというところは、怪しいことこの上もありません。日本に居続けたい学生側と、どうにか学生を確保したい学校側と、両者の利害が一致した結果が、こういう試験なのです。

これだけでも十二分に驚くに値するのに、Kさんに至っては、今朝、Gさんからこの学校の話を聞いて、その場で受験を決めて、無断で授業を休み、受けに行ってしまいました。昨日まで、来週締切の大学の出願準備をしていると言っていましたが、もう面倒くさくなってしまったのでしょう。この学校に受かったら、予定していた大学は絶対に出願しないに決まっています。つい昨日までKさんの進路指導に当たってきた多くの先生方の努力は、はかなくなってしまったわけです。

日本語学校生がさらに少なくなる2022年度入試は、こういう入学試験方式(?)が横行するのでしょうか。

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どうなるのかな

3月3日(水)

7日が緊急事態宣言の期限ですが、ここへ来て雲行きがぐっと怪しくなりました。菅さんの力をもってしても、首都圏の知事が一致団結したら、解除はおぼつかないでしょう。実際、新規感染者数は下げ止まりどころか若干増える気配さえ見せています。世界的には増勢に転じたという報道もあります。

となると、4月期の新入生がどうなるか、非常に気懸かりです。予定通りに緊急事態宣言が解除されても、留学ビザの外国人がスムーズに入国できるか懸念されるのに、解除されなかったら絶望的でしょう。そうなると、去年同様に入学が後ろ倒しになり、日本語学習の期間がどんどん短くなり、…という一本道にはまり込みかねません。

EJUの出願が始まっていますが、今年は予定通り実施されるのでしょうか。11月の試験は、一部の会場が中止のやむなきに至りました。EJUのページによると、フィリピン会場がすでに中止になっています。まさかとは思いますが、東京都内の会場が中止に追い込まれたら、大混乱に陥ります。

こういう仕事をしていると、留学生が思い通りに進学できるかどうかに関心が集中してしまいます。努力を続けた学生が報われる形で、感染拡大防止の諸施策が遂行され、効果を上げることを切に願っています。政策の優先順位としては低いでしょうがね。

こちらとしては、なかなか家から出られない学生たちが精神的に参ってしまわないように、ということも考えておかねばなりません。いや、もう、動いています。「オンライン」を言い訳にしない教育を始めています。

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動きが鈍いと

3月2日(火)

つい先日合格を決めたXさんが、入学許可証を持って来ました。学校から入管への報告に必要ですから、進学する学生には入学許可証を持って来てもらい、学校でコピーを取っています。

ところが、そのXさんを見つけたY先生が「Xさん、何してんの! 授業中でしょう」と一喝。本来なら自分の部屋でオンライン授業を受けていなければならない時間に、学校へ来てしまったのです。担任教師としては怒らなければなりません。怒られたXさんは、シュンとなって帰りました。

その後、T先生と、担当している学生たちの進学先決定状況を確認しました。学期初めに比べれば未定者はかなり減りましたが、残っている学生はかなりのつわものたちです。そして、T先生の分析によれば、このつわものたち、動きが鈍いのです。教師からアドバイスをもらっても、動き始めるまでに時間がかかり、チャンスを逸してきた形跡があります。

さらに言ってしまうと、優先順位がつけられないという面もあります。Xさんがその典型でしょう。志望校から入学許可証が届いたら、うれしくなって、後先考えずに学校へ来てしまったに違いありません。Xさんに限らず、計画性がない学生、すぐに取り掛からなければならないことが見えない学生が、いつまでたっても進学先が決まらないという図式が見えてきました。

それに対し、NさんやGさんなどは、日本語力的には疑問符が付いていましたが、夏ぐらいから騒ぎ出して、周囲の教師も巻き込んで、昨年秋には合格を決めてしまいました。Aさん、Fさん、Wさんあたりも、合格が決まったのは年が明けてからでしたが、計画的に動いていましたから、思いを遂げることができました。

毎年、多かれ少なかれ、そういう傾向がありましたが、今年は特に顕著なような気がします。これを、卒業式後に残る学生の指導につなげていきます。

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行方不明

3月1日(月)

朝、学校へ来てパソコンを立ち上げると、Cさんからメールが来ていました。専門学校に出願するので推薦書がほしいと言います。Cさんの出席率を調べてみると、入学からは90%を超えていますが、ビザ更新後はKCPの推薦基準を大きく下回る数字でしかありません。今学期、私が担当したオンライン授業の時も、出席を取ると返事をしますが、授業中に指名しても答えが返ってきたためしがありません。そういう時は、文句なしで欠席にします。そういうのがたまりにたまって、ひどい出席率になったのです。

午前中、そのCさんのクラスの授業でした。朝一番に出席を取った時は返事がありました。その20分ぐらい後で教科書を読んでもらおうと指名したら、返事がありません。2度呼びかけましたが反応がありませんでしたから、授業に参加していないものとみなして、欠席にしました。休憩時間を挟み、後半の授業が始まる時に出席をとるとまた返事がありましたが、その後また行方不明に。授業の開始から終了まで、パソコンのカメラがオンになったことはありません。授業の最後にCさんに呼び掛け、授業後、出願しようと思っている専門学校の書類を全部持って学校へ来るようにと言いました。

約束の時間に現れたCさんは、悪びれたところもなく、推薦書はもらえないのかと聞きます。専門学校の書類を見ると、推薦書は必須ではありません。あると学費を減免してもらえるというものでした。出席率の話をし、KCPとしては推薦書を出せないと伝え、推薦書がなくても出願はできると伝えました。すると、Cさんは、わりとあっさり推薦書はあきらめました。

そもそも、推薦書を頼んだ相手の教師が担当する授業に返事だけして参加しないという根性がどうかしています。30分ほどCさんと話しましたが、出席率が下がったことに対する反省などは全くありませんでした。何でもオンライン授業のせいにしたくありませんが、入学してからオンライン授業が多かったCさんはKCPに対する愛着が薄いのでしょう。また、教師の目がないとなると好き勝手なことができると思い込んでいるに違いありません。

オリンピックとの兼ね合いもあり、8日に緊急事態宣言が解除されるという観測がもっぱらです。Cさんが日本でまじめに勉強するには、対面授業が欠かせないような気がします。4月か普通の学びができることを祈らずにはいられません。

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来年こそは

2月25日(木)

入試に受かった学生は、学力が高いこともさることながら、その志望校についてよく調べています。調べるとこを通してその学校が好きになり、より一層合格を引き寄せたのではないでしょうか。また、自分の到達目標がより明確になった面もあるでしょう。この大学でこういう勉強をすればこういう自分になれる――そんな将来像が多少なりとも見えてきたのだと思います。

逆に、落ちた学生は、多少学力があってもそういう面で訴えるものがなかったのだと思います。単に憧れだけで受験したり、大学名にひかれて出願したり、周囲に踊らされてしまったり、細かく分析すれば受けたきっかけはいろいろでしょう。でも、いずれにせよ、そこに確固たる自分がありません。そんな学生たちが、今、断末魔の苦しみを味わっています。入試行脚が卒業式以降も続きそうな学生も、1人や2人ではありません。

そうなってもらっては困るので、来年進学予定の学生たちへの進学授業で、大学で何を学ぶか、志望校をどうやって決めるかについて話しました。初級の学生には荷が勝っていると承知の上で、志望校選びの王道を語りました。通訳が入ったとはいえ、学生たちは初めて耳にする考え方に戸惑ったことでしょう。

初回は、それでもいいです。3月にもう3回この進学授業がありますから、じっくりと学生たちを洗脳していきます。EJUの成績や学校の名前だけで受験校を選ぶようなことだけはやめさせたいです。次回は、今シーズンさんざん学生に悩まされた書類についてかな。

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これから勝負

2月16日(火)

Tさんは3月卒業予定ですが、まだ進路が決まっていません。オンライン授業では積極的に発言するのですが、進路のことになると、なぜか動きが鈍いのです。高望みを続けてあちこち落ちましたが、滑り止め校に関しては手を打っていませんでした。ですから、2月の半ば過ぎになって持ち駒がなくなりました。

今から出願・受験できるところもありますが、Tさんの満足するレベルの大学ではありません。そこでTさんが見つけ出してきたのが、TさんもあこがれているM大学の科目履修生でした。怪しいと思って調べてみると、やはり、ビザは出ませんでした。他大学の正規生が、M大学の講義を聞きたいときに利用する制度でした。

次に就職という話を持って来ました。でも、高卒で来日したTさんは、就労ビザはもらえません。「アルバイトの店長が…」などと言っていますが、それは店長が法律を知らないだけです。可能性があるとすれば、いわゆる社長ビザです。日本で起業すると言っても、元手が必要ですから、おいそれとできる話ではありません。

あらゆる外堀が埋められて、ようやく、大学進学コースがある専門学校に進むという決断をしました。今週末に開かれる進学相談会の案内メールや、最近専門学校から私のところへ直接来た学生募集メールを転送しました。幸い、出席率はそんなに悪くはありませんから、出願書類で門前払いということはないでしょう。

ここから先は、まず、Tさんが主体性を持って動かなければ意味がありません。はっきり言って、1学期分動きが遅いですね。先学期か先々学期に言われたことを、身にしみて感じているのではないでしょうか。最近、根拠のない自信を持っている学生が多いような気がします。

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WiFi不調

2月15日(月)

いつもは真面目なCさんが、オンライン授業で怪しい動きをしていました。WiFiの調子が悪いと言って抜けること2回。何も言わずにいつの間にか消えている学生に比べればはるかに良心的ですが、いままでWiFiがどうにかなって一時的にせよ授業から出ることはありませんでしたから、どうしたんだろうと思いたくもなります。

ところが、2回目に抜けてまた戻ってきてからは、今までになく積極的になりました。私が指名した学生が答えに詰まっているとチャットで反応するし、Cさんを指名すると妙に意気込んで答えます。本当にWiFiが不調だったのかもしれません。そう思いながら授業を終えました。

授業後、学生からの質問に答え、要指導の学生を残して注意を与え、職員室に戻ってきました。メールをチェックするとCさんからメールが届いていました。H大学に合格したと、Webの画面が貼りつけてありました。どうやら、授業を抜けて合格発表を見ていたようです。

授業が終わってから確認しろと言いたいところですが、教師の目が直接届かない自室で授業を受けるとなると、合格発表を観たい気持ちを抑えるのは不可能でしょう。対面授業でも教師の目を盗んでスマホで発表を見て喜んだり落ち込んだりする学生が毎年いましたから。

Cさんは、唯一の受験機会だった11月のEJUで失敗しました。信じられないような低得点でした。今シーズンの大学進学は無理だと思って、専門学校をキープした上でH大学に挑戦しました。面接練習にも熱が入っていましたが、EJUの失敗を挽回できるか、本人も私も確信が持てませんでした。

それだけに、授業終了後まで合格発表を待てなかったのでしょう。うれしさもひとしおだと思います。H大学からの入学手続きの書類が学校に届きました。明日は雨が上がりますから、授業が終わったら取りに来るんじゃないでしょうか。そうしたら、「おめでとう」と言ってあげましょう。

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春の気配

2月13日(土)

私が春を感じるのは、出勤した時に、学校の前の道から見える東の空がわずかに明るくなり始めるころです。今週の初めぐらいから、東の空の色が頭上の空の色よりわずかに薄くなり始めました。空がオレンジ色に染まるよりはるかに手前で、まだ白黒の世界です。ビルのすき間(谷間にも満たない狭さです)が白んだかなという程度に過ぎません。それでも、なんだか心が浮き立ちます。

職員室で受験講座の資料作りに励んでいると、O先生が「咲きました。いい香りですよ」と、梅の小枝を持って来てくれました。7階のお茶室の庭に咲いていたそうです。オンライン授業が続き、茶道部も活動ができません。久しぶりにお茶室に足を運んだO先生が、白梅のほころんでいるのを見つけたというわけです。梅の小枝は、O先生が一輪挿しに生けて、受付に飾ってくださいました。

お昼過ぎにZさんが来ました。去年の新入生ですが、W大学の大学院に受かったので、今学期いっぱいで退学します。その手続きを聞きに来たのかと思ったら、T大学の大学院も受けているけれども、そっちも合格したらどちらに進学した方がいいかという相談も受けました。「日本人だったら90%以上T大学だろうね」と答えると、退学手続きはT大学の発表の後まで待つということになりました。表情からすると自信ありげでしたから、期待してもいいかもしれません。

私がZさんの相談を受けている隣で、Kさんが志望理由書を書いていました。来週早々出願ですから、担任のO先生のチェックを受けてすぐに清書しているという次第です。O先生の顔をのぞき込むと、梅を生けていた時とは打って変わって、渋い表情をしていました。KCP全体の春は、もう少し先のようです。

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