Monthly Archives: 3月 2018

暑い

3月28日(水)

午前中、病院へ行くのに外を歩いたら、汗をかいてしまいました。スーツの上着が少しうるさく感じられました。交差点では日陰で信号待ちする人も。東京の最高気温22.9度は5月中旬並み。5月中旬といえば、クールビズが始まる時期ですよ。上着が邪魔くさいわけです。もちろん今年最高の気温でした。

午後は期末テストの採点。初級の漢字を担当しました。たけかんむりをくさかんむりにするくらいなら、漢字を書き慣れている間違え方ですが、鏡像文字を書いちゃうというと漢字の基礎ができていないのではないかと疑いたくなります。それを中国の学生が書いてしまうというのは、どういうことでしょう。簡体字の影響だとは思えません。スマホ操作ばかりで、手で字を書く習慣が失われているように思えます。

むしろ、アルファベットの国の学生が健闘していました。漢字は表意文字だという点を無視した間違え方はありましたが、絵のような漢字を書く(描く?)ことはありませんでした。きっと苦労はしているでしょうが、努力の甲斐はありました。漢字に対する感覚は磨かれています。

夕方はおととしの卒業生Cさんが、W大学大学院を出て外資系のコンサルタント会社に就職すると報告に来てくれました。かかわった先生方から就活について質問攻めにあいましたが、どの質問にもこちらの知りたいことをわかりやすく答えていました。コンサルタントには頭の回転のよさが必須だといっていましたが、それを感じさせる話しっぷりでした。

明日はさらにもっと気温が上がるとか。いよいよ腕まくりかな…。

校庭で勉強

3月27日(火)

午前中、期末テストの試験監督をしながらふと外を見ると、校庭のテーブルで勉強している午後のクラスの学生が何人かいました。桜が満開でお花見真っ盛りなのですから、外で勉強するのもさぞかし気持ちがいいことでしょう。新学期になったら、校庭で語らう学生たちの姿が目立ってくるに違いありません。

期末テストの日は別れの日でもあります。大きな別れは卒業式で済ませていますが、アメリカの大学のプログラムで来ている学生の中には、期末テストを受けたその足で空港直行、そのまま帰国という学生もいます。慌しく修了証書をもらって、時間を気にしながら成田へ向かいました。

多少のリップサービスはあるでしょうが、アメリカのプログラムの学生はみんなまた日本へ来たいと言います。漢字や文法の勉強は大変だったけど、日本での生活は最高におもしろかったと満足げな表情で感想を述べてくれます。私はこうした経験を持った学生たちに、親日家とまでは言わないまでも、知日家になってほしいと思っています。ありのままの日本の姿を見て、それを世界に向けて発信してもらいたいです。日本人の売り込み下手なところを補ってくれたらと思っています。

私たちの仕事は日本語を教えるだけだとは思っていません。日本語を通して日本人のメンタリティーやそれを形作っている背景などにも踏み込んでいるつもりです。上級だけではなく、初級や中級でもそれぞれのレベルに応じて単なる日本文化ではない「日本」を教えています。

校庭のテーブルで勉強していた学生たちは、勉強の成果があったのでしょうか。今、採点なさっている先生のどなたかがこの学生たちの答案を見ていることでしょう。

早くも

3月26日(月)

先週、桜の満開宣言が出た東京ですが、私の観測ポイント・地下鉄四ッ谷駅は、私が通過する時は夜が完全に明け切っておらず、花を楽しむことができませんでした。しかし、今朝はほのかに桜色が目を楽しませてくれるくらいの明るさになっていました。今朝の東京の日の出は5:37、私がいつも乗っている地下鉄の四ツ谷発は5:36、まさに朝一番の桜を拝んだことになります。

お昼に外に出たら、御苑の駅付近にあたりをきょろきょろしている人が大勢いました。駅から出てきた人みんなが御苑へ行きそうな感じすらしました。朝お掃除に来てくださるHさんによると、昨日の御苑は芝生が敷物で埋め尽くされるほどの人ごみだったそうです。大木戸門から入ろうとする人が新宿門近くまで並んでいたとか。

今週は暖かい日が続くという予報が出ていますから、もうすぐ花吹雪で、今週末には葉桜でしょうね。そう考えると、ウィークデーの日中にもかかわらずこの人出というのもうなずけます。平年は開花が3月26日で、満開が4月3日ですから、今年はかなり気の早いお花見シーズンです。冬の寒さが厳しく、3月になってから暖かくなると、このように桜がハイペースで咲くそうです。

どうやら今年は期末テストの採点などをしているうちに、桜が終わってしまいそうです。花園小学校の桜も、急いで見ておかないと散ってしまいます。明日は期末テストですから、午前の試験監督が終わったら、お弁当か何かを買って、花を愛でながらお昼ご飯としましょうか。

先生こそ例文作り

3月24日(土)

養成講座の初級文法の最終回は、例文の作り方を取り上げます。日本語教師を目指す人たちは、とかく文法を言葉で説明しようとします。しかし、特に初級クラスでは、言葉による説明はあまり効果がありません。だって初級ですよ。言葉がわからないから初級にいるのであり、その人たちに言葉で文法や単語の意味を説明しようったって、土台無理な話です。言葉によらずに説明するには、例文が最も有効なのです。

でも、漫然と作っていては、説明力のある例文は生まれません。寸鉄人を刺すような例文を作るにはどうしたらいいかということになるのです。はっきり言って、私の話を聞いたからといってすぐにそういう例文が作れるようにはなりません。文法や単語の意味の構成要素を抽出し、それを際立たせるような例文を考え出します。これができるようになるには、残念ながら訓練を積むしかありません。作り慣れてくれば、文法や単語の意味の特徴が見えてきて、それを組み合わせた例文も、「う~ん」とかうなっているうちに作れるようになります。

また、例文はドリルの基本材料にもなります。単に機械的に言葉を入れ換えていくだけでは、練習する側も流れ作業になってしまい、覚えてほしいことが定着しません。学生の印象に残るドリルのキューは、例文作りから得られるものです。私は授業で遅刻した学生や前日欠席した学生をよくいじります。そういう学生をネタに文法導入するのにも、例文作りの訓練が生きてきます。

受講生の皆さんはどう感じてくれたでしょう。これからも講義やら実習やらが続きますが、例文作りの練習も忘れないでもらいたいです。将来確実に役に立ちますから。

お久しぶり

3月23日(金)

代講で初級クラスに入りました。今学期の受け持ちクラスはみな上級でしたし、先学期も中級以上でしたから、半年ぶりです。不思議なもので、初級の教室に入ると、上級クラスの省エネモードとは違って、挨拶から大きな声が出るのです。文法の説明も、理屈をこねくり回す気はまったく起こらず、練習して体で覚えてもらいたくなってくるのです。学生が変な答えを出すと、あなたの言ったことはこういうことだよとアクションで示して、その不自然さに気づいてもらいます。それがすらっと出て来てしまうんですねえ、初級の教室だと。

単語の意味ならともかく、文法を言葉で説明してわかってもらうのは、初級では厳しいです。私はもっぱら印象付けることに徹します。そのためにアクションで示したり、その日の教室に即した例文を考え出したりします。もちろん、口頭練習がその最たるものです。代講に入ったらクラスの雰囲気を読んで、おとなしそうなクラスだったらこちらが引っ張って何とか盛り上げますし、ほうっておいてもしゃべるクラスだったらそのパワーを最大限利用します。

初級のクラスのいいところ、おもしろいとこと、やりがいのあるところは、手ごたえが感じられることです。上級だとクラスの作り方をちょっと間違えると、のれんに腕押しの毎日になってしまいますが、初級はこちらがその気で立ち向かえば必ず何かはね返ってくるものです。はね返ってくるときは、印象付けがうまくいったときです。毎日初級だとパワーを吸い取られて体がもたないでしょうが、たまになら授業が楽しめます。

さて、このクラスの学生たちも、今年の後半には私のテリトリーに上がってくるかもしれません。そのときの成長ぶりを見るのが楽しみです。

雪に思う

3月22日(木)

それにしても、昨日は寒かったですね。雪もちらつくほどでしたから。でも、夕方の予報では「明日は19度」とか言っていましたから、コートはうるさくなるだろうと思い、今朝、スーツ姿でマンションの外へ。思わずブルッと震えてしまいました。その後も天気の回復が遅れ、結局、最高気温は14.5℃。平年並みでした。

そんな気温でも、アラスカ出身のBさんには暖かく感じるらしく、半袖のTシャツでした。1月の雪の日も、薄手のジャケットを羽織るだけで済ませたとか。国の家のそばにはクマが出現するらしく、クマの写真をたくさん撮ったとも言っていました。そのBさん、日本で一番驚いたのが朝のラッシュだそうです。2m近い身長のBさんにとっては、つり革をぶら下げるバーが邪魔くさく、天井が頭上すぐそばまで迫って気になるとか。

テキサス出身のAさんは、東京で生まれて初めての雪体験。ホームステイの家が駅から20分ぐらい歩くので、あの雪の日はかなり難渋しましたが、それもまた楽しい思い出になったようです。寒いのは大嫌いだけど雪は大好きという、わがまま極まりない好みを述べていました。日本留学で、思いも寄らぬ得がたい経験をしたようです。こちらは、Bさんとは違って、厚手のコートを着込んで厳重装備でした。

期末テストが近いこの時期、初級の学生の会話テストを担当することがあります。世間話をしながら会話力を見るのですが、その過程でこんなおもしろい話が聞けます。それが楽しみで、テストを引き受けている面もあるんですがね。

仮面浪人

3月20日(火)

Gさんは昨年から数校の大学に挑戦してきましたが、どこからもお声がかかりませんでした。そのGさんに、昼休みに呼び出されたので、4月以降の受験講座をどうするのかという相談だと思って、カウンターまで出向きました。

「先生、今までいろいろな大学に不合格でしたが、S大学に合格しました」と言うではありませんか。私はS大学も到底無理だと思っていましたから、一瞬何の話なのかわかりませんでした。「へえ?」と聞き返して、もう一度同じことを言ってもらい、ようやく線がつながりました。

それだけなら「おめでとう、よくやったね」で終わりでしたが、次の言葉を聞いてさらにまた困惑に陥りました。「先生、S大学に入って今年もEJUを受けて、来年もっといい大学に入ります」。Gさんが私を呼んだのはこの話がしたかったからだったのです。

大胆というか、身の程知らずというか、世間をなめてかかっているというか、今度こそ本当に言葉を失いました。Gさんの言う“いい大学”とは今年落とされた大学です。Gさんの日本語力からすると、次も勝ち目のある戦いになるとは限りません。

KCPで受験勉強を続けるのではなく、形の上だけでもS大学に進学するということは、大学生の身分は確保しておき、来年ダメだったらそのままS大学生として勉強を続けるつもりなのでしょう。そんな中途半端な環境に身を置くと、虻蜂取らずに終わりかねません。受験には失敗するわ、S大学では留年するわで、1年が無駄になってしまいます。そうなるおそれが強いように思えてなりませんでした。

だから、Gさんの考えは否定して、S大学で4年勉強し、大学院で今Gさんが考えているところに入ればいいとアドバイスしました。でも、Gさんは晴れやかな顔にはなりませんでした。どうやら背中を押してもらいたくて私に相談したようです。今の自分は世を忍ぶ仮の姿だなどと思っているうちは、どこに進学しても有意義な留学生活は送れないでしょう。

大学は勉強を教えてもらうばかりの場所ではありません。オーダーメードの学びの場を築いてこそ、真に有意義な大学生活が送れるのです。

退学処分

3月19日(月)

おとといの桜の開花宣言に誘われたわけではないでしょうが、昼休みにおととしの卒業生のLさんが来ました。J大学法学部の、4月から3年生です。卒業に必要な単位は今年中に取れる見込みで、卒業を1年早めることもできるとか。大学院進学も視野に入れて勉強していくそうです。

Lさんはずっと法律の勉強をしようと思っていて、面接練習のときには志望理由や将来の夢を明確に語っていました。厳しい質問をしても、こちらが納得できる答えを返してきました。ペーパーテストが多少悪くても受かるという手応えを感じていましたが、まさにその通りになりました。

しかし、Lさんの周りには何となく法学部に入ってしまった学生がいるようです。そういう学生は授業についていけず、大学が定めた最低限の基準単位すら取れずに退学させられてしまいます。きっと、偏差値だけで志望校志望学部を決めたのでしょう。

日本人学生だったら、退学になっても、多少肩身は狭いでしょうが、日本から追い出されることはありません。しかし外国人留学生はそういうわけにはいきません。退学=帰国です。それを人生の試練として素直に受け入れられる人は少ないと思います。

私たちは学生の口から出てくる希望を第一に進路指導していきます。しかし、もう一歩踏み込んで、学生の適性を見極め、時には進路の変更を迫ることも必要です。名より実を取るように指導することもあります。Lさんの話を聞いて、進学競争が激しくなればなお一層のこと、学生の将来を考えた指導が必要だと思っています。

知らないだけ

3月16日(金)

卒業生を送り出して時間に多少は余裕ができ、また、学期末も近づいてきましたから、来学期の受験講座の登録を受け付けています。どの科目を取るかのほかに、志望校を書いてもらいます。今週は初級の学生が中心ですが、みんな大きなことを言っていますね。東大というのは、自分でも身の程知らずだと思うからでしょうか、あまりいません。しかし、それ以外の有名大学は続々と出てきます。

ひとつには、そういう大学しか知らないということがあります。東大のほかは早慶とせいぜいMARCHぐらいしか知らないというのが、新入生の平均値です。先週卒業した学生たちも、大して変わるところはありませんでした。

去年の4月期のMさんは、東大しか知らない学生でした。難関であることはわかっていましたから、まじめな性格であるだけに、大変なプレッシャーを感じていました。悲壮感がほとばしり出ていて、見ているだけで胸が締め付けられそうになりました。しかし、Mさんの勉強したいことは、K大学でも東大に負けないくらいいい勉強ができます。ですから、K大学について自分でも調べてみるように言いました。

Mさんは、いろいろな資料を読み込んでK大学を深く知れば知るほどK大学に行きたくなり、ついにはK大学を第一志望にし、見事に合格しました。東大に比べたらK大学は有名ではありません。国でK大学を知っている人はほとんどいないでしょう。でも、自分の留学の目的はK大学で叶えられるとわかったら、Mさんには迷いはありませんでした。来月から充実した大学生活を送ることになるでしょう。

私たちの役目は、Mさんをたくさん生み出すことです。

鋭い追及

3月15日(木)

おとといに続いて最上級クラスに入りました。成り行きで学生が日ごろ感じている日本語の疑問に答えることになりました。

Q1:「すごい」は形容詞なのに、「すごいおいしい」などと周りの日本人が言っていますが、これは正しい日本語ですか。文法的には「すごくおいしい」と言わなければならないと思います。

はい、まさにその通りです。形容詞が別の形容詞や動詞を修飾する時は「~く」の形にしなければなりません。しかし、「すごい」は直後の形容詞や動詞の程度がはなはだしいことを表すことが多く、「とても」のような副詞に近いはたらきをしています。副詞は活用しませんから、「すごい」も変化させずにそのまま使っているのではないでしょうか。

Q2:「食べれる」「見れる」などら抜き言葉は正しい日本語ですか。日本人はみんな使っていますが、タレントがテレビで使うと字幕では「食べられる」「見られる」と直されています。

大半の日本人が使っているのですから、ら抜き言葉はもはや正しい日本語の一部と言ってもいいかもしれません。しかし、日本語教育は保守的ですから、もうしばらく教科書上ではら抜き言葉は正しくないとされるでしょう。

Q3:食べ物のレポーターは、どうして何を食べても「おいしい」としか言わないのですか。

単にそれ以外の言葉を知らないからでしょう。せめて「塩味が利いていておいしい」とかって、どういうところがおいしいか言ってほしいものです。

Q4:若い人たちは何でも「やばい」と表現しますが、なんだかバカっぽく感じます。

私もそう感じます。最近、何でも「大丈夫」で片付けようとする風潮も見えますが、これもよくない傾向だと思います。皆さんには物事を正確に詳しく表現できるだけの語彙力をつけてもらいたいです。

…さすが最上級、実によく観察しています。こういう目で見つめられたら、KCPの先生もちょっと危ういんじゃないかなあ。日本人の皆さん、留学生に尊敬されるような美しく高尚な日本語を使ってください。