グラフは嫌い?

8月5日(火)

選択授業の小論文は、中間テストをしました。今学期の前半はグラフを読んで小論文を書くということを目指してきましたが、先週の小論文は書けている学生が少なかったですから、中間テストは別の題材にしました。

書けていない原因として、まず、全体的にグラフが読めていないという点が挙げられます。2つのグラフを組み合わせて何か情報を得るということをしてもらいたかったのですが、その域に達している学生は少なかったです。個人作業にせず、数人で話し合わせてから書かせればよかったのかもしれません。三人寄れば文殊の知恵といいますから、額を集めて議論すると、面白い見方ができたのではないかとも思っています。

このまま中間テストでもグラフにこだわったら赤点続出になりかねないと思い、普通の問題に差し替えました。そう宣言した時、表情が明るくなった学生が3人ぐらいいました。グラフって、そんなに嫌なのでしょうか。大学や大学院に進学したら、文献を読むたびにグラフにぶち当たります。そのグラフから筆者の言わんとするところを読み取り、自分の研究に役立てていくということの連続です。その準備段階として、こういう企画を立てたのですが、すべってしまったようです。

来週の火曜日は選択授業以外の各科目の中間テスト、その次の週は夏休みですから、その間に態勢を立て直して夏休み明けの選択授業を迎えたいです。そして、期末テストでは、何とかグラフを読み取って書く小論文を出題したいものです。

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就活戦線

8月4日(月)

Aさんは日本での就職を目指しています。国でも働いていたことがあり、その時の経験も生かして、ITの営業職を第1志望としています。大学院は英語で通しましたから、語学的にも即戦力と言えるでしょう。しかし、現時点ではまだ行けそうな手ごたえは得られていません。

Aさんが言うには、自分の日本語力がその主因だという分析です。聴解力に自信がないので、毎日1時間ぐらいポッドキャストで耳の訓練をしています。その訓練の成果が少しずつ出始めていると言っていました。しかし、それだけでは足りないとAさんは思っています。

そこで、BJTの勉強をしてみてはと勧めてみました。BJTとは、Business Japanese proficiency Testのことであり、なぜか漢字能力検定協会が主催しています。試験結果によって、J5からJ1+まで、受験生のビジネス日本語能力が6レベルに判定されます。

これを受験して、例えばJ1などと判定されていれば、就職試験で多少は有利になるでしょう。しかし、BJTの勉強を通して、仕事で使う日本語や、日本における仕事の進め方なども知ることができます。これは、JLPTの勉強などでは身に付けられません。そういった力、日本社会の常識も自分のものとしたうえで会社とコンタクトを取っていけば、今までよりは有利に話を進められるのではないでしょうか。

KCPから直接就職した卒業生も、日本の会社特有の仕事の進め方が壁になっているようです。そのため、優秀な日本語能力を有していても、なかなか独り立ちできないこともあるようです。

Aさんは努力家ですから、こちらのヒントをきっと有効に活用してくれるでしょう。いい話が聞けるまで、もう少し待ってみることにします。

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東京は降ったけど

8月2日(土)

東京地方は台風のおかげで、昨日から今朝にかけて26.5ミリの雨が降りました。しかし、北陸や東北の日本海側の米どころは、極端な少雨に見舞われています。先月の降水が平年の8%などというところもあります。今年も秋以降に米不足が発生するかもしれません。旱に不作なしとは言うものの、穀倉地帯全体に慈雨が降らないとなれば、他地域が豊作でも追いつくものではありません。秋以降が気がかりです。

去年の米価高騰は、流通の目詰まりが原因だという説がありました。しかし、詳細に検証していくと、目詰まりはどこにも起きていなかったそうです。単に市場に出回るコメの量が少なかった、足りなかっただけだそうです。そうなると、今年はすでに備蓄米を放出していますから、去年以上にコメが足りなくなるおそれがあります。おにぎりが高級料理になる日も近いかもしれません。猫まんまを猫に食べさせるなんてもってのほかなどということにもなりかねません。

私はパンでも麺でも何でも食べますが、白いご飯を口に入れ、いつまでも噛み続けていると、だんだん甘くなってくる感覚は、白飯ならではのものでしょう。それが味わえなくなるというのは、寂しい限りです。あまりお行儀よくありませんが、1食に1回はやっていますから。

日本はコメだけはたくさんあると信じていたのですが、米蔵の床は案外脆弱だったようです。石破さん、この問題をうまくさばいたら、あなたは吉宗に匹敵する為政者ということになるんですよ。参院選での汚名を雪ぐためにも、ぜひともどうにかしてください。

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張り出し

8月1日(金)

指定校推薦の一覧表が張り出されました。老眼の目には厳しい大きさの字でびっしり書き込まれた表が、各階の掲示板にかなりのスペースを使って掲示されました。早い大学は9月上旬に出願締切ですから、我こそはと思う学生には今から準備を始めてもらう必要があります。そういう大学に推薦する学生は夏休み前に決定して、夏休み中に書類をそろえ、夏休み明けにすぐ出願というスケジュールでいきたいところです。

でも、多くの学生はその手前であきらめざるを得なくなります。出席率の規定があるからです。学校としては、いい学生だからこそ推薦するのであり、いい学生の条件の1つに出席率があるのはごく自然な流れです。絵に描いたような“後悔先に立たず”の学生が毎年出るのですが、今年も私の見えないところでほぞをかんでいる学生がきっといることでしょう。

しかし、本当の困り者は、指定校推薦入試で合格してから出席率が落ちる学生です。単に気が緩むのか、受かってしまえば入学まで遊び放題だと勘違いするのか、崩れてしまう学生がたまにいます。励ましたり脅したりして多少なりとも回復すれば、学生にとっても学校にとってもハッピーエンドです。しかし、崩れっぱなしとなると、指定校推薦は学校対学校の話ですから、学校も連帯責任を取らなければなりません。最悪の場合、恥を忍んで指定校推薦入試合格取り消しを申し出ることまで考えなければなりません。

それだけではなく、入学してからもいい学生であり続けてもらわねばなりません。KCPという旗指物を背負って4年間の大学生活を送るようなものです。その期待とプレッシャーに耐えられそうな学生を選ぶことが、私たちに求められるというわけです。そうです。選ぶ方も、プレッシャーがかかるのです。

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目標を作る

7月31日(木)

授業後に、上級クラスの面接3連発。今学期は、EJUの結果も出たので、卒業後の進路に関する面接を前倒しして行うことにしました。

MさんとWさんは大学院進学。2人ともすらすらと志望校、研究科、専攻の名前をすらすらと書きました。だから安心できるというわけではありませんが、目標が定まっているということは、指導もしやすいということです。出願に向けての準備も、着々と進めているようです。

Pさんは大学進学。6月のEJU日本語で300点は取れると思っていたのに、それに遠く及ばない成績でした。どうしていいかわからず、夜も眠れません。「11月に頑張ります」と言いますが、11月の結果が使えないところがたくさんありますから、それじゃ手遅れです。11月の結果が出るまで、すなわち年内は何もしないというのでは、行ける大学がなくなってしまいます。

Pさんの場合、将来の計画がはっきりしていない点が最大の問題です。日本でちょっと働いて国へ帰るというのでは、学部や学科の選びようがありません。絶対こうなりたいというものがないと、志望理由書も書けなければ、面接で突っ込まれても答えられません。10年以上昔の話になると思いますが、成績優秀だったのにどこにも受からなかったKさんが、やはり無目標でした。

手を変え品を変え、6月の成績で勝負できそうなところに出願することが大切だと説得しまくって、手が届きそうな2校について詳しく調べてみるというところまでこぎつけました。しかし、教師はここで安心してはいけません。Pさんの気が変わらぬように、常に常に見張って尻を叩き続けなければなりません。

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上手な日本語

7月30日(水)

レベル1のクラスで、勉強したばかりの課の表現を使って文を書いてくる宿題を集め、チェックしました。そもそも宿題をやって来なかった2名は論外として、やってきた学生の文をよく読んでみると、これまたあれこれ問題が出てきました。

日本語を勉強し始めて1か月弱ですから、表現が拙いのは許せます。自分の言いたいことをきちんと文字化できずもどかしい思いをしていることでしょう。これは、勉強が進んで使える表現が増えていけば、少しずつ解消していきます。問題は、表現のレパートリーがあまり多くないにもかかわらず、助詞の間違いがはびこり始めていることです。「を」と「に」、「に」と「で」がすでに怪しくなっている学生が1人2人ではありません。中間テストの前に復習したほうがいいかもしれません。

更にまずいのは、翻訳ソフト丸写しと思われる文です。既習表現か未習表現かなど全くお構いなしに、規定の行数まで翻訳ソフトが作り出した文を書き写しているのです。漢字にはふりがなをつけろと指示していますが、それも全く無視です。その学生に音読しろと命じても、絶対に音読できないでしょう。意味すら覚えていないに違いありません。

一昔前までは、既習文法を組み合わせてどうにか思いの丈を伝えようという努力が行間から感じられましたが、最近はそういう作品が減ってきました。お手軽に宿題をこなすことに目が行ってしまっているような気がします。それで満足なら、わざわざ苦労して日本で勉強する必要などないじゃありませんか。100万円単位のお金と、年単位の時間を投じていることを忘れてもらっちゃ困ります。

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やめたいです

7月29日(火)

今学期の日本語プラスが始まって3週間目に入り、そろそろ脱落者がはっきりしてきました。いつの間にかクラスに来なくなる学生、きちんと届を出して辞めていく学生、調子いいことを言いつつ結局消えてしまう学生、いろいろな脱落のしかたがあります。

SさんとHさんは、きちんと届を出しました。授業内容が国で勉強したことと同じで易しいからという理由でした。国で勉強したことと同じことを勉強するというのは、その通りです。EJUの試験範囲は日本の高校の学習内容に合わせており、日本の高校と学生の国の高校と、勉強内容に大きな違いはありません。だから、日本語プラスの授業内容は国で勉強したことと同じだというのは、妥当な指摘です。

日本語プラスは、学生に勉強のペースを与えるという側面もあります。EJUまで自分できちんと勉強できるのであれば、日本語プラスを受けなくてもいいでしょう。でも、そういう学生は少ないんですよね。SさんとHさんがきちんと勉強できる学生かどうかわかりませんが、少し心配です。

それから、11月のEJUは受けないので、今すぐ勉強する必要はないという意味のことを言っているのも、気になるところです。27年4月の進学を考えているようですが、それには26年6月のEJUで好成績を残さなければなりません。そうでないと、志望校選びに苦労することになります。進学まであと1年半以上あることは確かですが、実は勝負が決まるまで1年足らずしかないのです。

そういうことをどんなに訴えても、学生にはなかなか伝わらないものです。

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グラフは苦手?

7月28日(月)

先週の授業で書かせた小論文を読み返していますが、どうもよろしくありません。グラフを見てそこから言えること、感じたこと、意見を書いてもらいましたが、グラフから読み取れることと意見とがごちゃごちゃになっている人が多かったです。そのグラフの読み取りも表面的なものが多く、大学の採点官をうならせるには至らなさそうな小論文が大半でした。また、学生たちはやりつけないことをやらされたので、文法や語彙の選択にまで注意が回らなかったようです。その前の週の小論文と比べると、誤用が目立ちました。

私は理系人間なので、グラフが出てくると喜び勇んで隅から隅までつっつき回します。小論文の試験だったら、グラフをねちこち見ているうちに時間がどんどん経ってしまい、結局何も書けなかったということになりかねません。学生たちは、私とはだいぶ違って、グラフをどう見たらいいのかよくわからなかった面もあるようです。

でも、それじゃ困るんですねえ。進学したら、文献を読んでそこに載っているデータから何かを探り当てるという作業を繰り返し、自分の論を打ち立て、それを検証していくということの繰り返しです。グラフを見て小論文を書くというのは、その前半部分のミニチュア版です。ここでつまずいているようだと、違うタイプの小論文試験で合格したとしても、進学後に苦しみそうです。進学後に日本語で困ることのないような実力をつけさせて学生を送り出すというのが、私たちの使命です。それに照らし合わせると、ここはもう一つ厳しくいかねばならないようです。

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成長を実感

7月25日(金)

「昨日のコトバデーはどうでしたか」と、出席を取って、開口一番に聞きました。いろいろよかったということだったのですが、「去年、レベル2で聞いた時、アフレコの言葉が全然わかりませんでしたが、昨日は同じアニメのアフレコが全部わかりました」とWさんが答えると、うなずいている学生が数名いました。

そうだろうなと思います。アフレコの日本語は、スピードも速いし、話し言葉だし、レベル2の学生にとっては難しいというのはよくわかります。自分たちのアフレコのセリフは、何回も聞いて何回も練習しましたから、当然わかります。しかし、他のクラスのセリフはコトバデーの会場で初めて聞きますから、聞き取れないほうが普通です。

でも、上級ともなれば、初めて聞くセリフでも、アニメの映像をヒントにすればかなりつかめるに違いありません。Wさんはじめ、うなずいた学生たちは、こういう形で自分の日本語力が伸びたことを実感できたのでしょう。

中級以上の学生が、自分の日本語力の伸びを実感できるチャンスは、案外少ないものです。その少ないチャンスの1つとしてコトバデーを活用してもらえれば、主催者側としてはうれしい限りです。

私は、昨日のコトバデーを見て、KCPにはこんなにも芸達者が大勢いたのかと感心しました。KCPの応援歌をロックにしたRさん、日本語の歌を見事に歌い上げたSさん、Tさん、Uさん、得意の楽器演奏を披露したVさん、Wさん、1人アフレコのXさん、Yさん、…。演劇部や琴クラブの面々は言うまでもありません。スピーチを芸と言ってはいけませんが、4人のみなさんのスピーチは立派でした。そして、司会のお二人の日本語がこなれていたこと。さすが、最上級クラスです。

昨日レベル2でコトバデーに参加したみなさんは、来年何をどう感じるでしょう。

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発表

7月23日(水)

学校の中は明日のコトバデーの準備で右往左往していますが、私には午前中に発表になった6月のEJUの結果を取りまとめるという仕事が入ってきました。現時点では学校経由の団体申し込みのデータしかありませんが、コトバデーが終わった翌日の金曜日からは、個人で申し込んだ学生のデータも本格的に集めます。

さて、その団体申し込みの学生の成績ですが、日本語の第1位がCさんでした。Cさんはこの3月に卒業した学生で、現在I大学に通っています。残念ながら東京から離れざるを得ませんでしたが、東京の生活が忘れられず、捲土重来を期して26年度入試に挑みます。

私はCさんに、4年間雑音の入らない環境でみっちり勉強して、大学院で東京の大学を狙えと言って送り出しました。しかし、I大学を包み込む清澄なる空気に耐えられず、濁り切った東京の水を求めて、動き始めているのです。私は、I大学に入れたのなら、EJUで高得点を取るための受験勉強なんか、時間の無駄だと思うんですが…。

最上級クラスの面々は、その次ぐらいに位置しています。でも、言わせてもらうと、ちょっと物足りないです。学生たちの志望校を考えると、Cさん並みかそれ以上の成績が必要です。H先生の所には、さっそく難しい相談が舞い込んできました。明日の準備をしながら、学生の話に耳を傾けていらっしゃいました。

現在中級かそれ以下の学生の進路相談にも乗らなければなりません。こちらは持ち点がそれほどでもありませんから、より一層厳しい話になるでしょう。

何だか、明日のコトバデーが、束の間の息抜きに思えてきました。・

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