久々のご対面

5月12日(木)

ちょっと事情があって、昨日から昔作った教材を見返しています。20年余り前に私がKCPに入ったばかりのころに作ったものもありました。これがアルバムなんかだと仕事を忘れて写真に見入ってしまいかねませんが、授業で学生に配ったプリントやテストなどだと、そこまでには至りません。中には、これは本当に私が作ったんだろうかと思う“作品”もありました。一緒に担当した先生方との共同作用もありましたから、その際にお作りになった先生から送られてきたものかもしれません。よく工夫して作ってあるなあと思えるテストもあれば、今すぐ手を入れて改訂版を出したくなるような教材もありました。20年前の自分をほめてやりたくなったり、顔から火が出そうになったり、忙しかったです。

読解のテキストや文法の例文などを見ると、時代を感じさせられます。サッカーのワールドカップが日本で開催されるとかというのがネタになっていたり、日本が世界第2位の経済大国だったり、フィルムのカメラがかろうじて生き残っていたり、今、これを使ったら学生はどんな顔をするだろうというのがけっこうありました。でも、中級や上級では、習った日本語を使って現在の日本や世界を語り論じることができて初めて意味を成すのです。教材は使い捨てが理想です。ミラーさんはスピーチコンテストで優勝してうれしかったに違いありません――などという文で満足していてはいけません。

いちばん懐かしさを誘われたのは、当時の学生の志望理由書です。そういう夢を抱いて進学した学生も、とっくの昔にその大学を卒業し、日本か自分の国か、はたまたどこか別の国かで、しかるべき地位を築いていることでしょう。その元学生に自分の書いた志望理由書を送ったら、どんな顔をして読んで、どんな気持ちになるんでしょうね。

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引き締める

5月11日(水)

東京の新規感染者数が増えています。といっても、先週は連休の最中でしたから、検査を受けた人が異常に少なかったのでしょう。その反動で、休み明けから新規感染者数が前の週を上回り続けているのだと思います。来週になっても前の週(=今週)よりも多くの新規感染者が現れ続けたとなると、またもや感染拡大の方向に動き始めたと見るべきなのではないでしょうか。

学校の近くの郵便局が、11時半から1時までお休みになってしまいました。感染者や濃厚接触者が増えて、お昼の時間帯の交代要員が確保できないようです。郵便局に用事がある場合は、ちょっと離れたところ(といっても、歩く距離が数十メートルから数百メートルになるくらいですが)にある別の郵便局へ行けばすみますから、仕事や生活に差し支えることはありません。でも、こういう身近なところで感染拡大の影響が出てきたとなると、先週は休みだったからなどとのんびり構えてもいられません。

私が見る限り、最近来日した学生も含めて、学生たちから動揺は感じられません。自分の部屋より学校の方が、国より日本の方が、楽しいようです。細々とではありますが、ラウンジや校庭で談笑する学生の姿が見られます。季節が進むと、進学で苦しむ顔が出てきます。だからこそ、こういう状況が少しでも長続きするように、引き締めるべきところはピシッとやらなければなりません。

卒業生はどうしているんでしょうね。それぞれの進学先で勉学を楽しんでいるんでしょうか。それぞれの学校がそれぞれのピシッとで、勉強の環境を整えているのだと思います。

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早いですね

5月10日(火)

各クラスで中間テストの範囲が発表されました。来週の火曜日・17日は中間テストです。始業日以降も毎日のように新たに来日した学生が登校してきました。そういう学生たちの面倒を見ているうちに、学期の半分が過ぎようとしています。気が付いたら、レベル1の教室から「あります」とか「います」とかの声が聞こえてきました。教科書のその辺まで進めば、多少はまとまったことが話せるようになります。もう、学期も半ばなんだなあと感じさせられています。

今までオンライン授業を受けてきた学生たちも、日本へ来て学校に通い、教室で大勢のクラスメートと顔を合わせて授業を受けるとなると、勝手が違うようです。オンラインでは元気だった学生がおとなしくなってしまったという報告も聞いています。日本での生活や教室での授業に慣れていけば、また元気に発言するようになるのでしょう。後半戦に期待しています。

去年から日本にいる学生たちは、その多くが受験リベンジ組です。入管の特例を活用してKCPの在籍期間を1年延長して、自分の目指していた大学・大学院に改めて挑戦します。今度こそは成功するぞ、失敗は許されないぞという意識が強く、早め早めに動こうとしています。この気持ちを忘れないでいてほしいです。もちろん、気持ちだけでは合格しませんから、実のある努力を続けることが肝心です。

気になる情報もあります。Cさんが燃え尽きてしまったのではないかという声もあります。志望校に落ちた3月の時点では気持ちを切り替えて前に進もうとしていましたが、今学期に入ってから失速気味だと言います。早くも中だるみじゃ困るんですけどね。

中間テストが終わると、EJUまで1か月です。

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過ぎたるは

5月9日(月)

マイナンバーカードの手続きができるというので、昨日、家の近くの会場まで足を運びました。だいぶ前に番号をもらってからほったらかしにしてありました。マイナポイントとか保険証の代わりになるとか、よくわからないこともありますから、ついでに聞いて来ようと思いました。

会場の区民センターみたいなところは行ったことがありますから、すぐわかりました。案内に従ってそこの会議室に入ろうとすると、「マイナンバーカードのご申請のお手続きにいらっしゃられたのでしょうか」と声を掛けられました。うなずくと、「まず、お写真をお撮りします。こちらの椅子にお掛けになられてください。お荷物はそちらのかごに入れられて、マスクは取られてください」と指示されました。言われた通りにすると、「では、こちらの赤い点をご覧になられていただけますか」と新たな指示が。

写真の次は、書類作成。「こちらとこちらにご記入されてください。お写真の裏側にお名前と生年月日を書かれてください。そうしたら、お写真をお貼りになられてください。こちらののりを使われて大丈夫です。はい、では、こちらの封筒に入れられて、こちらにご住所とお名前を書かれてください」「はい、ありがとうございました。お帰りの際にポストにお出しになられてください。1か月ぐらいしましたら、区役所からご連絡がありますから、取りに行かれてください」

なあんだ、その場でもらえるのかと思ったら違うんだ。世の中、そんなに甘くないよね。写真代が浮いただけでも、よしとしなければ。

いかにもアルバイトという感じの若者が世話をしてくれましたが、言葉遣いには辟易しました。私のようなはるかに年上の人を相手にするのですから、失礼のないように丁寧に話さなければという気持ちは伝わりました。でも、居心地は悪かったですね。この人にマイナポイントとか聞いても絶対にわからないだろうと思い、あきらめました。

会場出口に立っていた案内の人に、「ここから一番近いポストはどこですか」と聞いたら、「少々お待ちください」と言って誰かに聞きに行ったきり、5分ぐらい戻ってきませんでした。会場でポストに投函と言っているんだから、ポストの位置ぐらい調べておけよ。

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はじめまして

5月7日(土)

朝から仕事をしていて目が疲れてきたので、ちょっと息抜きにロビーに出たら、「すみません。M先生はいますか」と、話し掛けられました。年格好からすると学生なのですが、あまり見かけない顔です。私もすべての学生の顔と名前を知っているわけではありませんし、つい最近入国したばかりの学生なのかもしれません。また、ちょうどJLPTやEJUのための受験講座が始まる時間帯でしたから、その関係の用事なのかなと思い、M先生を呼びました。

しかし、M先生もその学生(?)の顔に見覚えがない様子でした。「お名前は?」とM先生が聞くと、「Hです」と答えるではありませんか。M先生も私もびっくりしました。この稿にも何回か登場している、教師のだれもが1日も早く教室で会いたいと願っていた、あのHさんが目の前に立っているのです!!

2人同時に思わず「えーっ」と声を出し、M先生が「ねえ、Hさん、ちょっとマスク、取ってみて」と促すと、Hさんはマスクを外しました。その口元は、オンラインの画面で見慣れたHさんのものです。でも、何か違います。そう、メガネをかけていなかったのです。髪型もオンラインの時とは違っていました。でも、声は確かにHさんです。

Hさんは、これから行われるウェルカムミーティングで代表あいさつをします。その練習をしに、早めに学校へ来たのでした。「やっとここまで来たねえ」と声を掛けると、少し笑みをこぼしながら軽くうなずきました。

Hさんのあいさつは立派なものでした。去年の漢字が「待」だったHさん、今年は飛躍の年にしてくださいね。大いに期「待」していますよ。

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いい大学とは

5月6日(金)

午前中、F大学の留学生担当の方がいらっしゃいました。この大学は、卒業するまでそれぞれの学生がどんな学生生活を送っているか知らせてくれます。送り込んだ学生を一人一人きちんと見てくれているんだろうなと思います。こういう大学は、安心して学生に薦められます。

それと、F大学は進学した学生が、異口同音にいい大学だと言っています。これは大きいです。大学の教職員があれこれ言うよりも、そこで学ぶ学生の一言の方が重みがあります。レストランや観光地などと同列に並べてはいけないかもしれませんが、その場に身を置いた人からの口コミは無視できません。まして、顔も人となりもよくわかる卒業生の言葉は、単なるうわさとは信頼度が桁違いです。

そういう点では、H大学も“いい大学”です。東京から見ると僻遠の地と言ってもいい所にありますが、進学した学生は充実した学生生活を送り、卒業後もH大学での勉強や経験や人脈を生かして、各方面で活躍しています。H大学に入ると決まった時には都落ちという風情を醸し出している学生もいましたが、次に顔を合わせたときは生き生きとしていました。学生のほうも、自分の大学生活を誇らしく思っていますから、私たちに知らせたくてたまらないのです。

留学生の場合、便りがないのは元気な証拠とはなりません。せっかく進学した大学や大学院をやめて帰国している例もまれではありません。そういう情報が、だいぶ経ってから元同級生などを経由して伝わってくると、その学生の顔を思い出してはどんな進路指導をすればよかったのだろうかと、心が少し重くなります。

F大学は、この春入学の留学生は少なかったようです。すると、来年春はチャンスかな…。

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思いを語る

5月2日(月)

JASSOの奨学金受給者として推薦する学生を決める面接をしました。学生の自己推薦を受け付ける形で募集し、出席率や成績などで一次選考し、そして面接です。

まずは初級の学生が2人。どちらも勉学の意欲があり、日本の大学・大学院に進学しようと一生懸命なのはわかりましたが、残念ながらそこまででした。自分の気持ちや考えを一方的に訴えることはできても、それに関連する質問をすると、その質問の意図がつかめず、話がかみ合わなくなりがちでした。私がジェスチャーを交えてかなりかみ砕いて質問内容を説明すると、ようやくそれっぽい答えが返ってきました。これじゃあちょっとね。

次は中級の学生たち。粒ぞろいだなと思っていたのですが、総じて期待外れでした。面接室に入った時から緊張している雰囲気でしたから、私が見つめるとそれがなお一層高じるのではないかと、あえて目をそらしたくらいです。その甲斐もなく、初級の学生よりいくらかいいかなという程度で終わってしまいました。

満を持して登場したのが上級のXさん。文法や語彙の間違いがないとは言えませんが、自分の意見を堂々と開陳していました。もともと積極的な性格だということもありますが、去年1年間、私も含めたKCPの教師からさんざんたたかれ鍛えられた経験がものを言っているのです。

初級・中級の学生たちは日本へ来たばかりと言ってもいいくらいですから、教師に囲まれて大学・大学院の志望理由や将来設計を聞かれたらビビる方が普通でしょう。そういう意味ではちょっと気の毒ですが、これからこういう場を次々と迎えるのですよ。ガンガン鍛えていきましょう。

3連休の後、6日(金)に、面接第2陣があります。

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数字の陰に

4月28日(木)

この3月に卒業した学生たちの進学データをまとめました。卒業生の絶対数が大きく減っていますから、前年度やその前の年度と数量的な比較をしてもあまり意味がありません。むしろ、各卒業生の戦績と戦跡を見た方が今後のためになるデータが得られそうです。

Cさんは、3月になってからやっとの思いでF大学の大学院に合格し、そこに進学しました。KCP入学当初は、志望校として超一流大学ばかりを挙げていました。しかし、そのためにきちんと準備を始めたかというと、大学名を唱えるだけで何もしませんでした。教師の忠告も無視し、面倒くさいことや嫌なことは後回しにし続けてきました。出願し、入試が近づくと急に不安になってきて、押っ取り刀で面接練習などの準備を始めました。しかし、オンライン授業なのをいいことにろくに日本語を使ってこなかったので急に上達するはずがなく、O大学やJ大学など、志望校としていたところに次々と落ちました。慌てて出願先を探し、また落ちて、を繰り返しているうちに年が明けました。それでも行き先が決まらず、藁をもつかむ思いでF大学にすがったのです。Cさんの受験校を並べると、大学院のランキングそのものになります。

Wさんは一流大学に合格しなかったら帰国すると言っていました。こちらは教師の目が届かないところでも努力を続けました。もともと口数が多くなかったのですが、受験の直前になって日本語力も大きく伸びて、ノーベル賞受賞者を輩出している、どこから見ても超一流校に合格しました。

Qさんは、最初はパッとしませんでした。滑り止めのつもりで受けた大学に落ちて、自信を失いかけたこともあります。同じクラスのYさんが合格を連発するのと対照的でした。しかし、努力を重ねているうちに、年末が近づくにつれて調子が上がってきて、合格できるようになりました。そして、CさんがF大学大学院に、最初に言っていたのとはまるっきり違う研究分野で合格したころ、Qさんは一番入りたいと思っていた最難関の国立大学に合格しました。

進路指導をする側にも反省事項は多々あります。それを踏まえて、Cさんみたいな学生にも喜びを味わわせてあげたいです。

進学して東京を離れたQさんから、ビザ更新についての問い合わせの電話がありました。

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連休前なのに

4月27日(水)

M先生は、出勤するなり、仕事をしていた私に、「先生、Hさん、明日出発するんですよ。待機期間が終わるのが来月の6日か7日で、そうしたら学校へ来るんですよ」と声をかけてきました。Hさんは、去年の4月からオンラインでずっと勉強を続け、昨年末、来日できそうになったとたん再度の鎖国でそれが流れ、そして、ようやく、もう間もなく、KCPに姿を現します。

Hさんはまじめな努力家で、毎日の授業に全力で取り組んできました。だから、所属したどのクラスの先生も、高く評価しています。私も、クラスに入ってHさんに教えるのが楽しみでした。これはHさんに質問してみようなんて、Hさんを中心に授業を組み立てることもよくありました。

先月から留学生の入国が再開されましたが、いつまで待ってもHさんの順番が来ませんでした。Hさんにこそまっ先に入国して学校へ来てもらいたかったのに、Hさんの渡航日程はなかなか決まりませんでした。オンラインでやる気があるのかないのかわからないような学生が、お前なんか日本で勉強する意味があるのかと言いたくなるような輩に限って、さっさと入国してきたんですよね。

そのHさん、今学期は数学の受験講座を受けています。午後、数学の問題が届いていませんなんていうメールがHさんから来ました。おとといの講座で宿題を出したつもりだったのですが、メールに添付されていなかったのです。日本行きの準備で忙しいので今週は期日までに提出できないと添えられていました。こういう、勉強を第一に考える姿勢が、教師の心をくすぐるんですね。

5月7日に行われる歓迎イベントで、Hさんに会えそうです。終わるのが楽しみな連休なんて、初めてです。

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よく降りますね

4月26日(火)

また雨が降っています。傘を持って来なかった学生の方が多いみたいですが、歩いて帰って行きます。さほど強い雨でもなく、気温も20度を上回っているので、御苑の駅か富久町ぐらいまでなら、ぬれても風邪をひくことはないでしょう。いや、今の学生たちはやっとの思いで入国していますから、東京で降られる雨もまた、感激の一要素かもしれません。梅雨時になったらさすがにうんざりするでしょうけどね。

それにしても、この4月はよく雨が降ります。3月までは平年よりも若干少なめでしたが、4月はすでに平年よりも50ミリほど多い降水量です。連休中もパッとしない天気の予報が出ていますから、もう少し上積みがなされそうです。学生たちは梅雨の前に雨に飽きちゃうかな。

この雨で、昨日せっかく校庭の上空に飾り付けられたこいのぼりが引っ込んでしまいました。本物の鯉なら水は大歓迎でしょうが、布製の鯉はそんなことは言っていられません。しかも古いですから、大いにいたわってあげなければなりません。あさってはお天気が回復しそうですから、また青空に泳ぐ雄姿が見られることでしょう。3連休は再度引っ込めて、端午の節句の行事を予定している5月2日は、どうやら日差しが望めそうですから、またご登場願いましょう。

端午の節句が終わったら、今学期はアートウィークが待っています。鯉の滝登りほど苦労してKCPまで来てくれた学生たちに、精一杯日本を味わい、学校で勉強することを楽しんでもらいたいと思っています。

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