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暖かい芝生の上で

3月10日(木)

本当に久しぶりに学生がおおぜい学校へ来たと思ったら、それは卒業式でした。授業は今もオンラインですが、新規患者数も減りつつあるので、卒業式ぐらいは対面でやろうということになりました。今学期が始まった早々ぐらいから準備に取り掛かり、この学校で勉強したんだという思い出を築けるようにと知恵を絞ってきました。

今年の卒業生は、在学期間の半分はオンラインだったと思います。オンラインじゃなくても変則的な授業時間でしたから、校舎内で学生同士が顔を合わせるというチャンスに乏しかったです。ですから、クラスメート以外の友人を作る機会に恵まれませんでした。そうそう、クラブ活動もできなかったしね。

式の後、時間のある卒業生を連れて、御苑へ行きました。もちろん、全卒業生が固まってではなく、1クラスずつぐらいに分かれてです。どうやら、どのクラスも、式に出席した学生はほぼ全員が早めのお花見に行ったようです。

御苑に入ると、同じクラスなのに旧交を温め合う感じの学生たちも結構いました。五分咲きか七分咲きぐらいになっているカンザクラをバックに、記念写真を撮り合っていました。マスク越しの会話も弾んでいたようです。学生たちは、やっぱり群れたかったんですよね。画面ではにこにこしているようでも、孤独だったんだなあと感じさせられました。

クラスごとに動いていたはずが、いつの間にかいくつくかのクラスがまとまってしまいました。ここでも、懐かしがっている顔つきの学生が何人もいました。対面授業に強硬に異論を唱えていたKさんまでが、友達と肩を寄せ合い記念写真に収まっていました。

私たち教師がオンライン授業の腕をどんなに磨いても、ZOOMに勝るシステムが提供されても、学生同士の会いたい、仲間と肩を組みたい、手をつなぎたい、おしゃべりしたい、ライバルを間近で意識したいといった欲求が消えることはないでしょう。どうすればこれに応えることができるか、それが私たちの使命だと、学生たちの楽しそうな様子を見ていて感じました。

御苑の芝生はまだ枯れていましたが、掌を載せてみたらとても暖かでした。

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喜んでいい?

3月9日(水)

ジェンダー格差が放置され、賃金が伸びず貧困層が増えつつあり、相変わらず自然災害が多く、イノベーションの機運が薄く、外国人への差別が厳然としてあり、しかも入国が非常に難しいとあっては、留学先として敬遠されて当然です。

政府もそういう点にようやく気付き始めたのか、来日できない外国人留学生の入国を積極的に推し進めると発表しました。5月くらいまでに在留資格認定証明書のある留学生がほとんど入国できる見込みだとしています。官房長官の発言ですから、いい加減なものではないでしょう。

先月あたりから鎖国に対する外圧が強まり、それに受動的に対応したという感じは否めません。しかし、外国人留学生の受け入れを優先的に進めるとは、心強い限りです。真に勉強したい人たちが来てくれれば、私たちとしては喜んでお迎えします。KCPに限らず、留学生を受け入れてきた学校は、どこも手ぐすね引いて待っています。お世話をしたくてうずうずしている教職員が、全国に大勢いるはずです。

そのお世話をしたい人たちも、変化が求められていると思います。留学先としての魅力が2019年以前のレベルに戻るかといえば、私たちが旧態依然だったら悲観的な予測しかできません。ミソをつけたというか信頼を失ったというか、留学生本人や、そのご家族をはじめ留学生に関わる方々の日本を見る目が厳しくなっていることは疑う余地がありません。それを跳ね返すだけの力を、こちら側は養っていけねば明るい未来は見えてきません。

もし、15万人いるとされている未来日の留学生のうち少なからぬ人たちが権利を放棄したとしたら、日本語学校ではなく日本国の未来が危ういということです。

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2つのリスト

3月8日(火)

在校生の進路決定状況がだいたいまとまってきました。まだ抜け落ちがあるとは思いますが、大きな傾向はつかめます。

まず、学生の絶対数が昨年やそれ以前に比べてガクンと減っていますから、合格者の延べ人数も減っています。しかし、第1志望と思われるところに合格し進学することになっている学生の割合は、下がっているとは思えません。多くの学生が出願校を絞ったようにも思えます。その証拠に、関西を中心とする遠征組が減っています。

また、日本語学校の在籍期間の1年延長が認められている影響もあるように思われます。何が何でもこの3月中に行き先を決めなければという原動力が弱くなっているために、無理して受験をしなかったという面もあるようです。そのツケがこの夏・秋以降の受験に回って来なければいいのですが…。

もうすぐ来日する予定の学生のリストも届いていますから、見てみました。その中には現在オンライン授業を受けている学生も含まれています。去年の4月期にレベル1で教えたCさんやMさんやKさんたちの名前も見えます。生身のCさん、Mさん、Kさんたちに会って、上手になった日本語を聞いてみたいものです。先学期レベル5で教えたYさんやLさんの名前もあります。受験講座に欠かさず出ているDさんもしっかりリストに載っています。

次のシーズンには、こういう優秀な学生たちも受験戦線に参戦します。だから、日本にいて今シーズン進学しなかった学生たちは油断ができないのです。その辺のこと、どこまで理解しているのかな。延長した在籍期間を有意義に活用して、目標に到達してもらいたいと願っています。

4月の新入生も含めて、新たな競争が始まります。みんなを上昇気流に乗せたいです。

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意見を聴く

3月7日(月)

「去年の卒業生のKさんがT大学に受かったって」と、M先生が報告してくれました。去年、Kさんはいくつもの大学を受けましたが、結局どこにも合格せず、専門学校で浪人生活を送ることになりました。そのKさんが、卒業時の担任だったM先生にメールで合格を知らせてくれたのです。

Kさんの場合、情報過多で失敗した面がありました。あちこちから情報が来るのですが、どれが意味のある情報で、どれを信じたらいいのか、自分では全く判断できませんでした。そのため、はたで見ていると手当たり次第に受けているようにも、その情報や周囲の人々に振り回されているようにも見えました。

どうやら、今シーズンも、たくさん受験した中で受かったのがT大学だけだったようです。Kさんは、いろいろな人に謙虚に意見を求めるのはいいのですが、最後に進路を決めるのは自分だという認識が甘いのではないかと思います。去年も、M先生や私がすすめた大学を受けると決めた翌日に、違う大学を受けると前言を翻したこともありました。今シーズンもそういうことを繰り返し、どうにか滑り込めたのがT大学だったのでしょう。

入管の特例措置であからさまに目立ってはいませんが、今年もあっちへふらふら、こっちへふらふらという学生がいました。本人はいいとこ取りしているつもりなのでしょうが、実はその逆である場合がほとんどです。情報を持ちすぎて頭でっかちになっていたCさんに対して、半強制的に受験校を絞らせたら、記念受験的な1校を除いて、狙ったところはみんな受かりました。

海外でオンライン授業を受けている学生、4月の新入生の入国準備が進みつつあります。この学生たちにも気を強く持って進路指導をしていきます。

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一足お先に

3月5日(土)

先週の初めぐらいからでしょうか、朝出勤して御苑の駅からの道をこちらへ曲がると、空の下の方がかすかにオレンジに染まるようになりました。その染まり具合が、日々少しずつ大きくなってきています。もう、空がどれぐらい雲に覆われているかわかるほどになりました。朝が早まるのを毎日実感できる今ぐらいが、1年で一番楽しみです。逆に、朝がだんだん暗くなっていくのを感じさせられる10月下旬あたりは、寂しさが募ります。

もう少し経つと、丸ノ内線が外界に顔を出す四ツ谷で朝を感じるようになり、程なく桜がちらほら咲き始めます。東京の予想開花日は22日だとか。そんなニュースを耳にしたので、この前の日曜日、うちの近くのお花見の名所の桜の枝を、ちょっと背伸びをしてじっくり観察してみました。確かに花芽はついていますが、近くで見ても木肌色でしかありませんでした。気が早すぎたかな。明日、また見てみましょう。

今シーズンは大雪のニュースがよく耳に入ってきます。北海道や北陸、山陰などは交通機関がマヒし、日常生活に影響も出ています。東京も何回か雪に見舞われましたが、新千歳空港から身動きができなくなるほどの雪に比べたら、小雪にもならないでしょう。その北海道も、平年ならば今月下旬には、少なくとも都市部は、積雪が消えます。

東京は春一番が吹いたそうです。最高気温は17.9度、4月上旬並みでした。メートル単位の雪が積もっている地方のみなさんには申し訳ありませんが、東の空だけではなく、肌でも春を感じさせてもらいました。

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最後まで気を抜かず

3月4日(金)

Tさんは先学期受け持った学生です。今年の4月に進学しようとあちこち受けていましたが、全て落ちたら入管の特例を利用して、もう1年KCPで勉強しようと考えていました。在籍期間延長の申請書もぬかりなく提出していました。出席率も学業に対する態度も全く問題ありませんから、延長は認められました。

そのTさん、ここまで来て志望校の1つに合格しました。Tさんが努力している姿を目にしていた者として、喜ばしい限りです。Tさんは合格がわかったらすぐに、延長申請の取り下げ手続きをしました。延長申請をした後で合格が決まった学生はTさんだけではありませんが、申請取り下げを自ら訴えてくる学生は多くありません。こちらが情報をつかみ、本人に取り下げを確認するというパターンが大半です。

日本語学校は日本留学のゲートウェイと言われていますから、それぐらいのお世話はします。在留資格上で進学先の留学生になるためにはKCPの側でも手続きが必要ですから、そこでチェックすることも可能です。しかし、そういうなし崩し的な変更はしてほしくないですね。KCPを出たら、そんなことは許されない場合の方が多いのではないでしょうか。そこをきちんと始末してから出ていこうとしているあたりは、さすがTさんです。

その上、Tさんは卒業式以降も3月いっぱいKCPに通って日本語を勉強したいと言います。3月31日までは法律的にKCPの学生ですから、もちろんその権利はあります。自分の日本語力を少しでも上げておきたい、日本語に対する不安を多少なりとも解消したいという気持ちです。そういう学生は、毎年ごくわずかですがいます。しかし、多くが挫折します。一緒に勉強してきた友達が教室から、学校からいなくなるからです。でも、Tさんなら最後までやり通すような気がします。私が受け持った時も意志が強かったですから。

Tさん、あなたならきっと、日本で実り多い勉強ができますよ。自信を持って進んでください。

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孤立を眺める

3月3日(木)

今朝の天声人語に、国連総会におけるロシアの孤立ぶりは、満州国建国時の国際連盟における日本の孤立ぶりに通じるものがあるということが書かれていました。松岡洋右のように国連を脱退してしまうことはないでしょうが、ロシアが窮鼠猫を嚙むような行動に出ないとも限りません。

現在のところ、KCPにはロシアからの学生はいません。もしいたら、どう対処すればいいでしょうね。今まで、これほどまでの事例ではありませんでしたが、紛争を引き起こしている当事国の学生がいたことはあります。ほとんど、国の政治家よりも冷静な判断をしていましたね。本音の本心はどうだったか、今となっては知る術もありませんが、国を離れると自国を相対化し、客観視できるようになるのでしょう。

だから、現校舎ができたばかりの頃教えたロシア人のAさんが今KCPにいたら、「プーチン、いい加減にしろよ」なんて言っていたんじゃないかと思います。こういうふうに、上から与えられた考えに染まることなく、独自の観点から物事が判断できるようになるのも、留学の意義の1つです。また、それが、大人になるということでもあります。

じゃあ、留学すればだれでもそういう視座が持てるのかと言ったら、決してそんなことはありません。同郷者のコミュニティーに守られて、外界との接触は極力避けるという態度だったら、「プーチン、頑張れ」と声高に訴えているかもしれません。

1日の入国者が7000人になるそうです。その一方で東京の「まん延」は延長されました。入国しにくい現状は簡単には打破できないでしょうが、列をなして待ち焦がれている日本留学予備軍のみなさんが1日、いや、半日でも早く入国できるよう、KCPは学校を挙げて動いてます。

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1年延ばしたら

3月2日(水)

入管が認めた日本語学校への在籍期間特別延長措置を利用する学生の申請書が回ってきます。学生本人がもう1年KCPで勉強したいと言っても、本当に勉強するかどうか疑わしい場合は、入管が「うん」とは言いません。例えば今までの出席率の低い学生です。そういう学生をはじくために、学校側でもチェックを入れているというわけです。

現在KCPに在籍している学生は、受けた授業の半分以上がオンラインかもしれません。孤独に耐えながら、周囲の雑音やよからぬ誘惑に心を乱されながら、パソコンに向かっているのでしょう。そういう悪条件をものともせずに実力をつけ、志望校に合格した学生もいます。その一方で、そういう環境に流され埋没していった学生もいます。期間延長を申し出ている学生たちが全員埋没組だとは思いません。しかし、教師のコントロールが弱いのをいいことに、気ままに暮らしてどこにも行けなくなっている学生もいます。

Yさんは、どこまで本気で勉強したかなあと思えてしまう学生です。もう1年を希望していますが、よほど奮起しない限り、1年後も状況は変わっていないでしょう。1人ではろくに勉強できないことが証明されたのですから、進んで教師のコントロール下に入るべきです。受験講座だって自然消滅を繰り返しています。入管に認めてもらえなくても文句の言えない出席率をどこまで深刻に考えているでしょうか。

Gさんは、出席率は問題ありませんが、自己中をどうにかしないと、人間関係でつまずくかもしれません。オンラインが多かったためにさほど目立ちませんでしたが、対面中心になったらクラスメートととの間に摩擦が生じるのではないかと心配しています。1年以上悪い意味でのびのびと暮らしてきましたから、今さら矯正が利くのでしょうか。

新規来日者を受け入れる準備も進めています。そういう学生たちが、YさんやGさんたちに、上向きかつ前向きの刺激を与えてくれればと期待しています。

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無視

3月1日(火)

Oさんは4月から大学進学が決まっています。入学した時に言っていた東大ではありませんが、国立大学の合否発表がこれからあります。その大学の募集要項をちょっと見てみたら、Oさんが狙っている学科は、EJUの成績は合否判定に関係ないことがわかりました。出願資格として基準点を示していますが、合否は日本人受験生と同一試験の学力検査と面接によって決定するとのことです。

この大学のこの学科の先生方は、EJUは選抜試験としてたのむにあたらないと考えているのでしょうか。自分たちが作った問題で、自分たちの理想の教育を受けるに適した学生を選ぼうとしているのでしょうか。EJUの問題を見ていると、その気持ちもわかりますね。マークシートの数学や理科の問題で、未知の課題に挑む力がわかるのかと言えば、非常に大きな疑問符を付けざるを得ません。今年は留学生の受験生数は大きく減ったでしょうから、なおさら自分たちの目と耳と手でこれはという金の卵を選びたくなったのではないかとも思います。

他の国立大学でも、EJUはほんに形だけと言わんばかりの配点のところも何校かあります。また、留学生全体の合否データを見ると、EJUの成績はあまり関係なさそうな大学学部学科も容易に見つけ出せます。さらに、日本人の受験生と同じく共通テストを受けて大学の個別試験を受ける留学生も増えているようです。EJUの求心力、信頼度が低下しているような気がしてなりません。

今年はEJUが実施され始めてちょうど20年です。制度疲労が起きてもおかしくない時間が経っています。

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なんとなく不調

2月28日(月)

昨日、3回目のワクチンを打ってもらいました。1回目と2回目は去年の夏の暑い盛りでしたから、半袖シャツで行って袖をひょいとまくり上げるだけで準備完了でした。しかし、昨日は、2月としては暖かかったとはいえ、長袖のシャツでしたから、肩を出すのも一苦労でした。接種は、去年の夏同様、あっという間に終わり、15分の安静時間を読書で過ごし、特に何ともなかったので、そのまま帰ってきました。それでも一応副反応を気にかけて、ゆうべは早々に床に就きました。

今朝も別段何ともなく、いつもと同じように出勤しました。仕事に取り掛かりましたが、どうも手先が冷えていけません。お湯を入れたカップを手で包みながらキーボードを打ちました。お昼ごろから、何となく体がぞくぞくし始めました。悪寒というほどではありませんでしたが、何となく落ち着きません。ネットで調べてみると、接種30時間後ぐらいが副反応のピークだそうです。まさにピークに向かっているところです。

ワクチンを打ってもらった箇所は、痛くはありませんが、かゆいです。腕が上がらないとか動かしにくいとかはありませんが、かゆみのせいで意識がそれてしまいます。夏だったら間違いなくポリポリかいていることでしょう。それに、熱っぽいまではいきませんが、背中が痛いです。

どうやら、頭脳労働は明日にしろということのようです。確かに、養成講座の資料を作り直していますが、うまい例文が浮かんできません。演習問題のアイデアも枯渇状態です。これをアップしたら、潔く帰ることにしましょう。

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