Category Archives: 試験

実力がある

5月26日(水)

Sさんは、レベル1の学生ですが、自分ではレベル2ぐらいの実力があると思っています。だから、レベル1の授業は気合が入らないと言います。こういう学生は、概して自分のできないことには目をつぶっています。できることのみを主張して、自分はこんなにできるのだからレベル1じゃないとかと訴えます。

Sさんもそのたぐいで、EJUの練習問題の読解は80%ぐらい解けると言います。聴解はそれよりも難しく感じていると言っていました。たとえ読解80%が本当だとしても、聴解が難しいということは、正解率40%ぐらいでしょうか。ということは、全体の正解率は60%程度、EJUの点数でいうと240点ぐらいでしょうか。“80%”が背伸びした正解率だとすると、実際には200点をやっと超える程度かもしれません。レベル1としては悪くはありませんが、この成績ではSさんが思い描いているであろうと考えられる、いわゆる“いい大学”には遠く及びません。

Sさんが提出した宿題やテストを見ると、Sさんが聴解が弱いと言ったのは事実です。文が正確に聞き取れておらず、だから受け答えがまるっきり方向違いです。また、筆記にしても、問題をよく読まずに答えている節が見られ、これまた質問に対する答えになっていません(もし、問題をきちんと読んでこの答えなら、救いようがありません)。また、文法的には合っていても、必要最低限の答えで、できる学生の答えに比べると見劣りがします。

そういうことを、具体例を挙げて指摘し、今なすべきことを示したら、今すぐ上のレベルのクラスに入りたいとは言わなくなりました。その後の授業でも、真面目に課題に取り組んでいたようですから、思ったより見込みがありそうです。これが長続きすれば、11月のEJUまでにはしかるべき成績が取れる実力が付くかもしれません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

お互いに緊張

5月18日(火)

中間テストがありました。レベル1のクラスの試験監督は何度もしたことがありますが、オンラインの試験監督となると初めてです。自分のクラスの学生たちですから、パソコン上には見慣れた顔が並んでいます。しかし、平常テストとは違って、みんないくらか緊張気味でした。こちらも、その緊張がうつってしまい、心拍数が上がった状態で問題を送信しました。

学生たちは問題を受け取ると、すぐに解きにかかります。すると、学生たちの目がすべて私の方を向くのです。学生たちは私を見ているのではなく、各自のパソコンのモニターを見ているのですが、パソコン内蔵のカメラを通すと、さも私を見つめているように見えるのです。学生たちを見張っていなければならないのですが、束になって突き刺さってくる視線に耐えきれず、しばらく目をそらしてしまいました。

トラブルがないことを祈っていましたが、途中でWiFiが不調になった学生が1名。そうなんですよね。オンラインはこれがあるんです。KCPの中間テストぐらいならどうにでもしてあげられますが、もっとずっと大事なテストだったらどうなるのでしょう。幸い、機転が利く学生でしたから、被害は最小限に抑えられました。

試験の終了時刻は、いつもの授業より少し早かったですが、「答えを送ってください。送りましたか。じゃあ、終わりましょう。さようなら」とあいさつすると、学生たちはみんな脱兎のごとくzoomから消え去りました。やっぱり、かなりのプレッシャーだったんでしょうね。今晩はゆっくり寝てください…としたいところですが、しっかり宿題を出してしまいました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

EJUで横綱相撲

5月7日(金)

EJUまで1か月半ほど、受験講座理科では過去問を使った模擬テストをしました。始める前にマークシート方式の解答用紙の書き方から説明しました。みんな、今回が初めてのEJUですから、こちらにとっては常識でも、学生たちには新発見なのです。数年前に、この説明を怠ったために、理科2科目のうち1科目が白紙扱いにされてしまった学生がいました。そういう悲劇を繰り返さないために、最初にがっちりしつけるのです。

2科目を80分で解くには、わからない問題を考え続けるわけにはいきません。解ける問題を確実に正解に結び付け、点数を増やしていくことをまず考えるべきです。また、1番から順番に解いていく必要はありません。おしまいの方に易しい問題や得意分野の問題があったら、それを得点化しておいた方がよい結果につながることもあるでしょう。

実際にやってみると、思ったより難しかったようです。80分をフルに使っても解けなかったり計算が終わらなかったりしていました。あれほど注意したのに全然違うところにマークした学生もいました。これで、時間配分も実感できたでしょうし、ミスも今のうちにしておけば本番で同じことはしないでしょう。そのための模擬テストです。

理科で満点を目指すOさんは、6問間違えたとか。満点を取るには、点数を増やす努力だけではいけません。ミスを減らす、なくすという発想も必要です。勘違いとか度忘れとか、そういうことも許されません。どんな攻められ方をされてもすべて受けて立ち、最後には勝つという、横綱相撲みたいな取り組みが求められます。容易なことではありません。そういうことを指摘すると、そこまでの覚悟はしていなかったようです。これまた、あと1か月余りで鍛え直さねばなりません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

捲土重来期待

4月19日(月)

今学期、私が受け持っているクラスは、入国できずに国で勉強している学生たちのオンラインクラスです。ですから、テストもオンラインです。

オンラインのテストは、紙のテストと違って、コンピューターが自動採点してくれます。選択問題の採点は手間がほとんどゼロになりました。しかし、筆答問題はそうはいきません。

初級クラスでは、音と表記を一致させるため、漢字を使わせません。例えば、「何の」と漢字で書いてしまうと、その学生がちゃんと「なんの」と読んでいるかどうかわかりません。「なあの」「なの」などと発音していても、漢字表記だと、それが表面化しません。

紙の試験用紙に手書きだと、学生側も意識しますから、すべてかな書きします。しかし、オンラインだとキーボード入力ですから、そこまで注意が回らないことがよくあります。また、ついうっかり漢字変換してしまったり、コンピューターが気を利かせすぎて自動的に漢字表記になってしまったりなどするため、たとえ注意しても、漢字の答えが多くなってしまいます。

Mさんは、授業中活発に答えるし、反応もいいし、きっと成績もいいだろうと思っていましたが、漢字に引っかかって、大きく沈んでしまいました。XさんやBさんもそのタイプだと思います。提出時刻を見ると、みんな制限時間を大きく余して出しているんですね。「漢字は×」という注意書きも読まず、答案を見返すこともなく提出ボタンをクリックしてしまったのでしょう。

なんだか注意力テストになってしまったようですが、Mさんをはじめ、今回悪かったできうる組の学生たちは、次回のテストではきっと軌道修正してくるでしょう。それ以後が本当の実力が現れるテストでしょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

こちらの課題

3月23日(火)

レベル1の会話の期末タスクを担当しました。習った文法と語彙を駆使して、こちらから与えたキーワードをもとに自分たちで考えた場面で、会話を構成していくのです。会話を作り上げるだけなら、グループのメンバーに構成力のある学生がいれば何とかなります。しかし、それをみんなの前で披露するとなると、実際に話す力も要求されます。毎学期、頭でっかちの学生は、このタスクで落ちていきます。

今学期は先週までずっとオンライン授業でしたから、発話の訓練がどれだけできたか心配でした。もちろん、可能な限り口頭練習をしてきました。でも、目の前に教師がいませんから、学生にしてみれば、指名されたとき以外口を開けずに授業を終えることだってできました。そういう環境がどの程度影響を及ぼしているか、おっかなびっくりでタスクに臨みました。

学生たちは大健闘でした。ストーリーもきちんと作れていたし、発音もアクセントもイントネーションも、普通の日本人にも通じるレベルでした。文法も、日本語教師的には指摘したくなる点が多々ありましたが、街の日本人からは「日本語の勉強を始めたばかりなのに、上手ですね」と言ってもらえそうなレベルにはなっていました。採点は日本語教師の目でしましたから、発音は満点の学生が何人かいましたが、文法は満点をつけることはできませんでした。

こうしてみると、オンライン授業でも、発音は思った以上にどうにかなるようです。しかし、発話時の文法の正確性を追求するのは、なかなか難しいようです。これは学生の課題というより、教える側の改善すべき点です。来学期の授業に生かしていきたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

大辛

3月19日(金)

久しぶりに漢字の書き取りテストの採点をしました。オンラインですから、学生が書いた答案用紙そのものを採点するわけにはいきません。学生に答えをノートに書き取らせ、それを写真に撮って送ってもらい、その写真をチェックするという、若干もどかしいやり方をしました。

写真は送られてきたのですが、写真の向きがまちまちで、1名だけですが逆さまなのもあり、採点するのに一苦労しました。う~ん、学生たちはそこまで気を使ってくれないのかな。

点数はそんなに悪くありませんでした。最低でも合格点の60点は超えていましたから。でも、学生自身が思ったよりは悪いのではないかと思います。一画一画がはっきりしない達筆すぎる字は×にしました。画と画のつながりが教科書と違っているのも×にしました。そういったあたりで減点された学生が多かったです。几帳面な楷書の字を書いたアメリカ人の学生が満点でした。中国の学生は、ちょっと悔しいでしょうね。

このクラスは一番下のレベルですから、基本に忠実ということを重視します。また、出願時に提出することが多い志望理由書は、手書きがほとんどです。それには流麗な文字は歓迎されません。下手でもいいですから、楷書で丁寧に書くことが求められます。達筆すぎて減点された学生たちは、半年もすれば志望理由書を書くことになるでしょう。だから、今から訓練なのです。

写真で答案を送ってもらうこの方式、1つだけいいことがありました。それは、学生が書いた文字を自由に拡大できることです。生の答案だと、老眼の私には読めない字もあります。そういう字も、パソコンの画面上なら拡大し放題です。だから、調子に乗って、ガンガン×を付けてしまったところもありますが…。学生のみなさん、辛い採点になってしまい、申し訳ありませんでした。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

待てない

3月12日(金)

だいぶ時間がかかってしまいましたが、昨年11月のEJU・理科の模範解答をどうにか作り終えました。単に解くだけならすき間の時間にできますが、受験講座で使うつもりで解説まで書くとなると、ある程度まとまった時間が欲しいところです。学生が見るだけではありません。何か月か後で私自身がそれを読んで授業をするのですから、そこまで考えて模範解答を作っておく必要があるのです。

物理と化学と生物で50問余りを解きましたが、1問だけ問題集についている正解が納得できません。問題を読み返しても選択肢を再チェックしても、問題集の正解表の答えが正解だとは思えませんでした。日を改めて解き直してみても、やっぱり正解表の答えにはなりません。私が持っている教科書や参考書をひっくり返しても、結果は同じです。その問題を忘れたころに、もう一度やってみるつもりです。

私は博物館や名所旧跡などで、掲げられている説明や解説をわりとじっくり読みます。すると、明らかな間違いが意外と多いのです。誤字脱字もありますが、人名地名などの固有名詞が間違っていたり、年号が変だったり、前後の解説板で内容が矛盾していたり、などというのによく出くわします。そういう時は、もう二度と来ることがないかもしれないからと、係の方に伝えます。時には私の勘違い記憶違いだったりすることもありますが、ほとんどは「ご指摘ありがとうございました」となります。

今回もそのたぐいかなと思います。でも、だいぶ前に、最初は正解表が間違っていると思ったのですが、しばらく経ってから解き直してみると、巧妙なひっかけ問題だったということがありました。だから、もう少し待ちます。

私は待てるからいいですが、実際に受験した学生たちは待てません。偉いなあと思います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

徹夜で

3月10日(水)

卒業生のKさんが大物ぶりを遺憾なく発揮しています。昨日は、大阪での試験前日だというのに、日中は面接練習に学校へ来ていました。その面接練習も仕上げではなく、ボコボコに直されるレベルでした。そして、すぐに新幹線で大阪まで行っておけときつく命じ、本人も「はい」と応じていたのに、夜7時に担任のO先生が電話をかけた時にまだ家でご飯を食べていました。

その後、O先生が電話をかけてもメールを送っても反応がなく、今朝になっても今どこで何をしているのか、全くつかめない状態でした。ようやく昼過ぎに連絡が付きました。なんと、今朝の新幹線で大阪へ行ったとか。O先生は朝まで寝ないでいたのだろうと推察しています。朝一番ののぞみは博多行きですから、よくぞ新大阪で目を覚まし、降りたものです。

試験は無事終わったようですが、Kさんは大阪で遊んで帰ると言っています。試験前日泊ではなく、試験後に泊まるというのですから、なかなかの心臓です。しかも、数日前に受けた入試の結果が自宅に届いているはずなのに、それを気にも留めずに遊ぼうとしているのです。行き先がまだ決まっていない者の行いとは思えません。

周りの教師が焦っているわりには、当の本人は至って淡白という例が、今シーズンはいつになく多かったように感じます。他人ごとであるかのように構えている学生が目立ちました。客観視とか冷静とかいうのとは違って、情熱が伝わってこないのです。泥臭くあがき続けた学生が曲がりなりにも受かっているのに対して、このタイプの学生は最後に来て大いに苦しんでいます。

明日は進学授業があります。これを強く訴えようと思います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

ボーダーラインなし

2月27日(土)

昨日の卒業認定試験を採点しました。私のクラスは両極端でした。できる学生とできない学生の差が激しく、余裕で合格か箸にも棒にもかからないかのどちらかでした。ボーダーライン上の学生にどこまで温情をかければいいだろうかと思っていましたが、悩むまでもなく判定できました。

やっぱり、授業中の態度が反映されていますね。オンラインなのをいいことに、接続だけして何をしているかわからないような学生は軒並み不合格でした。顔を出さず、指名しても反応しないのですから、授業を受けているとは見なせません。そういう学生が不合格になったのですから、真っ当なテストだったと言うことはできます。

1月期は、進路が決まった学生の気持ちをいかにして学校に引き付けるかが、毎年問題になります。学生も登校すればなんだかんだと言いながらも授業に参加せざるを得ず、だからなにがしか得るものもあります。しかし、オンラインの場合、いわばタガが外れた状態になり、学校から気持ちが離れた学生は際限なく落ちていきます。わずかな時間で縁が切れると踏んでいる学生には、北風も太陽も意味を成しません。

そういう学生の心もつかむコンテンツが提供できなかったという点においては、我々教師が非力だったこともあります。研究の余地も大いにあります。だけど、授業に参加しない学生ほど、私たちから見れば、日本語力に不安があるんですよね。昨日の試験に例文を作る問題がありましたが、それがほとんど白紙で大学や大学院の授業についていけるんですかと問いたいです。謙虚になってもらいたいです。

卒業認定試験も終わってしまったとなると、謙虚じゃない学生の目には、学校は消化試合にもならない授業をしていると映ることでしょう。それなら、こちらにも意地がありますから、一ひねりしてやりましょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

今年初

2月26日(金)

今学期初めて、大勢の学生が登校しました。卒業認定試験を学校で行ったのです。卒業認定試験はKCPとしては一番重みのある試験ですから、“何でも持ち込み可”になりかねないオンラインのテストではなく、学生たちにご足労願ったのです。やはり、きちんとした試験でそれぞれの学生を卒業に値するかどうか判断するのが、学生に対する礼儀でもあると思います。入管提出用の書類を書いてもらうという面もありましたがね。

私は別件があったので試験監督に入りませんでしたから、教室のにぎわいを直接感じることはできませんでした。しかし、午後のクラスの教室に向かうとき、試験を終えた学生たちとすれ違いました。「先生、こんにちは」という声を久しぶりに耳にしました。マスクで顔の半分が覆われていますから誰が誰やらわかりませんでしたが、校舎にあふれる活気のかけらを味わえました。

実は、昨日の夜、T先生やA先生が1階のエレベーターの向かい側にひな人形を飾ってくださいました。ひな祭り当日の3月3日はオンライン授業で学生は登校しませんから、卒業生がみんな登校する卒業認定試験の日に合わせて桃の節句と春の訪れを感じてもらおうという趣向です。朝は試験前ですから目を向ける余裕もなかったようですが、試験終了後はスマホを向ける学生もいました。

次にこの学生たちが学校へ来るのは、卒業式の日です。密にならないように、いつもの年とは違う形で式を行いますが、精一杯心を込めて、卒業生を送り出す準備をしていきます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ