Category Archives: 試験

暗闇

11月14日(木)

今朝の新聞によると、10日(日)に行われたEJUの大阪会場で、試験問題の冊数が足りなくて試験が中止されたそうです。その人たちの試験は、23日(土)に行われるとのことです。EJUの実施機関・日本学生支援機構は、印刷所に発注する際に数を間違えたと言っていますが、間抜けた話だと思います。

機構は、23日の試験を受ける受験生の交通費や宿泊費を出すと言っていますが、そういう問題じゃありません。まず、それまで緊張を保ち続けるのは、受験生にとってとても辛いことです。特に、来年4月に進学するつもりで勉強してきた、高得点を狙っている受験生はたまったものじゃないでしょう。海外から大阪まで受験に来て、むなしく帰国した受験生もいるとのことです。そういった受験生は、10日と同じコンディションで23日の試験を受けられるでしょうか。まさか、準備期間が2週間伸びたから有利なはずだなどと考えていないでしょうね、機構さん。

それから、23日が大学独自試験日だったらどうするんですか。その大学への進学をあきらめろとでも言うのでしょうか。EJUを捨てて、今までの努力をどぶに捨てろということでしょうか。

そもそも、こうした不祥事を3日も隠してきたというのは、どういう根性なのでしょう。私は別ルートで11日にこの事実を知りましたが、その後一向に公になる気配学、不思議に思っていました。そして、昨日、責任者の記者会見もせず、HPに事務的なお知らせを載せただけで済ませてしまったのです。そのお知らせも、14日19時現在、見られません。闇の葬ろうという姿勢が見え見えです。これが共通テストだったら上層部は切腹物です。試験のやり直しと交通費支払いでお茶を濁されてしまうなんて、やっぱり留学生は日本の大学において添え物にすぎないんですね。

 

 

 

 

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不明確な日本語

11月13日(水)

10日にEJUが終わり、今週から受験講座の授業時間数が少し減ったかと思ったら、面接練習がバンバン入ってきました。午前の授業が終わり、お昼を食べる間もあらばこそ、Sさんの面接練習でした。

Sさんは、進学後に勉強しようと思っていることも将来就きたい仕事も明確なのですが、日本語が不明確です。単語レベルで日本語を重ねていくので、助詞や、動詞・形容詞の活用がいい加減です。普通、パンフレットやネットに書いてあることを丸暗記したら、そこの部分だけは間違えないものなのですが、Sさんの場合、誤用の海の中に立派な単語が浮かんでいるような状態です。

「あなたが言いたいことはこのように言います」と、模範解答を口移しで教えても、「じゃあ、もう1回」とやり直すと、数分も経っていないのに、さっきよりちょっとましかなというレベルに落ちてしまいます。ここまで単語以外の部分に無頓着でいられるのも珍しいです。

でも、上級クラスに在籍しているということは、中間テストや期末テストでは合格点を取っているということです。それはすなわち、読んだり書いたりする時には、完璧とはいえないまでも、正しい文法が意識できるのです。どうして話す時は文法が壊滅してしまうのでしょう。私にはわかりません。いや、話の内容の高さと、その話を聞いた時の下手さ加減がこれほど開いている学生は、前代未聞に近いんじゃないかな。

日本人の英会話って、ネイティブが聞いたらきっとSさんの日本語みたいなのでしょう。日本人の英語力は世界で53位、「低い」にランク付けされているそうです。だとしたら…。

 

 

 

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試験問題作成

11月9日(土)

今学期は上級のレベルを1つ担当していますから、久しぶりにテストづくりに励みました。気が付けば、来週の金曜日が中間テストです。

朝一番から読解の問題作成に取り組みました。とはいえ、読解の授業は1コマもしていないので、担当なさっている先生方からの情報をヒントに、どの部分を問うか決めていきました。まじめに授業を受けている学生、試験前にきちんと復習した学生が点を取れる問題にしたいですから、授業中の学生の反応やどこに力点を置いて授業をしたかなどを参考にして、作問します。

学校内の試験は、実力テストという側面と、まじめ度テストという側面があると思います。上級の読解はまじめ度テストの側面が若干強く、初級の文法テストは実力測定の面が色濃いでしょう。初級は、基礎が抜け落ちたまま進級することのないように、中間テストや期末テストでチェックしなければなりません。上級は、お腹が痛いとか言ってずるけたり授業中内職したりしている学生どもに天誅を下さなければなりません。

お昼を少し回ったころ、どうにか読解の問題を作り終えました。模範解答も作りましたから、来週の水曜日ぐらいまで寝かせて、もう一度問題を見てみます。問題が適切かどうか、模範解答が妥当かどうか、客観的に見直します。最終的な微調整を加えて、仕上げるつもりです。

昼ご飯を食べたら眠くなってしまい、漢字語彙の問題は約30点分しかできませんでした。でも、問題の構想はだいたいできましたから、来週早々にも作り上げます。文法はまだ手付かずですが、全体の進捗率は40%ぐらいでしょうから、順調と言っていいんじゃないのかな。最難関の読解がほぼ完成というのが大きいです。

明日はEJU。来週からは、私が担当する受験講座・理科の時間数が減りますから、テスト問題作りぐらいどうにかなるでしょう。

 

 

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受験のプレッシャーに打ち勝とう!

11月8日(金)

GさんはあさってEJUを受けます。6月のEJUで失敗していることもあり、なんとしても高得点を取りたいと思っています。高い目標を持つことは好ましいのですが、それが焦りにつながっている面があります。

受験講座で模擬テストをすると、いつも時間切れになってしまいます。Gさんの話によると、計算問題になると早く答えを出さなければと思うあまり、計算ミスを犯してしまうそうです。そうやって出した答えが選択肢にあるとそれをマークしてしまい、減点されてしまいます。ないと計算が間違っていると気づきますが、時間が気になって落ち着いて再計算できません。結局答えにたどり着けず、この場合も誤答となってしまいます。

また、親からのプレッシャーが半端じゃありません。親の期待に応えねばと常に思っているため、EJUのような大きな試験の前には眠れなくなるそうです。また、国で有名大学に進学した友人の話を聞くと、自分もそれに劣らぬところに進学せねばと、これまたプレッシャーになってしまいます。KCPでのクラスメートの合格の知らせに接するたびに、自分もそのぐらいの大学にと思ってしまうのです。

どうやら、Gさんは“自分は自分、人は人”と思えないたちのようです。試験会場の、まったく知らない受験生の一挙一動にも心を波立たせてしまうほどです。早々に解答を終えた受験生がいると“できるやつ”と思ってしまい、じっと考えている受験生が目に入ると賢そうに見えてしまうのです。私だったら、前者は解くのをあきらめたアホ、後者は解き方がひらめかない鈍い奴と思うでしょう。

もう、私には、Gさんの健闘を祈る以外、何もできません。

 

 

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改革になる?

11月2日(土)

文部科学省が、来年度から実施する予定だった大学入試への英語の民間試験の導入を延期しました。はたで見ていて当然だろうなと思いました。もし、英語の民間試験利用がそのまま進められていたら、大勢の日本人高校生が受験するため、留学生のTOEFLなどの受験が今までよりずっと難しくなったかもしれません。これにどのように対処すべきか考え始めていましたが、こちらもしばらく考えなくてもよさそうです。

でも、同時に、留学生入試においてはすでに同じようなことが行われているのになあとも思いました。

導入延期の理由=導入反対意見の1つに、複数の英語試験を公平に評価できるのかというものがあります。留学生入試は、ずっと前からTOEFL、TOEIC、IELTSなどどれでもいいからスコアを提出しろという大学がたくさんあります。これらの大学は、果たして今まで英語試験のスコアを公平に評価していたのでしょうか。それとも、単に足切りに使っていただけなのでしょうか。他の評価が同等だったら英語試験で合否を決めるという発想だったのでしょうか。

住んでいる地域により受験しやすかったりしにくかったりするというのは、日本語学校の大部分が大都市に偏在していますから、留学生入試にはあまり当てはまらないでしょう。それでも、大都市以外の日本語学校の学生は、こうしたテストを受けるために遠征していたと思われます。また、母国から直接受験する場合、その学生がそういった試験を受けやすいかどうかなんて、考慮していなかったでしょうね。留学生の身の丈なんか、考慮の外に違いありません。

留学生入試を受ける留学生の数は、大学入学共通テストを受ける日本人高校生の数よりはるかに少ないです。また、それこそ日本語力が不十分なこともあり、不満の声も上げにくいでしょう。だから、多少の無理や不公平は押し通してしまえという考えだったとしたら、大学や文部科学省は、留学生に来てほしいとか言いながら、ずいぶんとひどい仕打ちをしていたものです。

KCPの学生たちとともに鍛えあう存在になる日本人高校生が余計なことで頭をなませる必要のない制度を作り上げてほしいと思っています。

 

 

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悲しいトイレ

10月31日(木)

授業中、Kさんが「先生、トイレ」と言って教室から出ていきました。その手にスマホが握られていることを見逃しませんでした。でも、出ていったきり5分経っても10分経っても戻ってきませんでした。20分近く経ってようやく戻ってきたKさんは、憮然とした表情でした。ああ、やっぱりと思いました。

Kさんは先日受けたT大学の合格発表を見ていたのです。そして、落ちました。おそらく、滑り止めのつもりで受けたのでしょう。でも、滑り止めにはなりませんでした。本命校のS大学は落ちてもしようがないと思っていたかもしれませんが、T大学に落ちたのは、ショックだったに違いありません。M先生は、涙目で国に電話をかけているKさんを目撃しています。今から出願できる大学を探さねばなりません。

しかし、Kさんは6月のEJUを受けていないか、受けたけど結果をこちらに報告していないかで、私の手元にはデータがありません。受験講座も受けていませんから、EJUの科目がどのくらいできそうなのかも、手ごたえとしてわかりません。ですから、指導が非常に難しいというのが本音です。今回の受験も、面接練習すら受けずに本番でしたから、自己流の受け答えでしくじった可能性もあります。

受験講座から戻ると、T大学から、今回受験したKCPの学生の合否結果と、留学生入試全体の結果概要が送られてきていました。それによると、Kさんの受けた学科の倍率は3.3倍でした。T大学全体の平均倍率をだいぶ上回っていました。他にも落ちた学生がいましたが、みんな結構高い競争率のところを受けていました。

今年の留学生入試戦線も、相当な厳しさが伴うようです。

三者三様

10月30日(水)

今学期の受験講座・理科は、EJUが近いので、EJUと同じ形式で過去問を解かせています。つまり、80分で2科目を解き、答えをマークシートに記すという方式です。これをやると、学生の隠れた面が見えてきます。

Lさんは、こっそりスマホに手を伸ばし、電卓として使っていました。これは問題外ですね。本番だったら不正行為ですし、そもそも数値計算ですぐ電卓に頼ろうとするところが理系にあるまじき発想です。

EJUレベルの数値計算は、電卓など使わなくても答えを出せなければなりません。EJUは選択式ですから、せいぜい上2桁まで出せば正解が選べます。それなら概算で十分なのです。そんな概算も暗算でできなかったら、理系の勉強や研究はできないでしょう。概略どのくらいの数字になるのか、その数字は妥当な線なのか、大きいのか、小さいのか、そういうことがぱっと判断できるかどうかが、理系でやっていけるかどうかの分かれ目だと思います。AIがどうのこうのという以前の、研究者・技術者としてのセンスの問題です。

Sさんは、制限時間のだいぶ手前で問題を解き終わってしまいました。そして、机に突っ伏したりボーっとしていたりしていて、挙句の果てに文法か何かの宿題を始めました。80分経った後に解答を配り自己採点させるのですが、Sさんは5問間違えたとか8問ダメだったとか言います。満点に程遠い成績なら、どうして最後まで粘って1問でも多く正解を勝ち取ろうとしないのでしょう。こんなことを繰り返しているようじゃ、好成績は望めません。

Nさんは、Sさんとは逆に、最後の最後まで粘ります。でも、正解とその解説を読んで納得することが多いようです。どうやら、問題文の読み取りが不十分なようです。問題の意味を噛んで含めるように説明してもらってやっと、自分の理解が違っていたことに気づくのです。こちらは日本語力がついてくれば解消されるかもしれません。

いずれにせよ、EJU前は来週が最終回です。本番でこの模擬試験方式の効果を発揮してくれることを祈るばかりです。

対照的な2人

10月28日(月)

午前中の選択授業が終わると、私のクラスにいたUさんが、「先生、T大学に合格しました」と報告してくれました。授業中こっそりスマホで合格発表を見ていたのかもしれませんが、まあ、それは大目に見てあげましょう。

そんな会話をしていたら、同じT大学を受けたKさんがわざわざ私の教室まで来て、合格の報告をしてくれました。UさんもKさんも指定校推薦入試ですから、合格は当然と言えば当然ですが、面接できっちり推薦入学の模範生としての覚悟を示してくれたのでしょう。

夕方、H先生から「KさんがT大学に受かったそうですよ」と声をかけられました。KさんはH先生のところへも報告に行ったようです。「ところで、Uさんはどうなったか知っていますか」とH先生に聞かれました。「Uさんも受かりましたよ。先生には何も言ってこなかったんですか」「ええ、何にも」「困ったやつだなあ。散々お世話になったのに。逆さづりにでもしてやりましょうか」「本当にそうしてやりたいですよ」

UさんもKさんも、先学期はH先生が受け持っていました。指定校推薦で受けると決まってから、2人ともH先生に毎日のように面接練習をしてもらっていました。ですから、私なんかよりも、まず、いの一番に、H先生に合格の報告とお礼をしなければならないのです。Kさんはそれをしたようですが、Uさんは職員室でH先生を待つこともなく、帰ってしまったようです。

挨拶をしなかったからといって差別をするほど、H先生は心が狭くはありません。しかし、心証は悪いでしょうね。そういう不義理に慣れてしまうと、絶対に義理を欠いてはいけない場面でやらかしてしまうことも想像に難くありません。Uさんには、明日にでも、H先生のところへ行かせましょう。

ついつい

10月21日(月)

今学期は8日(火)が始業日で、14日(月)は体育の日でお休みでしたから、月曜日は3週目にしてようやく初授業でした。私は最上級クラス担当で、半分ぐらいが先学期のこのクラスの学生で、残りの半分のそのまた半分ぐらいがどこかで教えたことのある学生でした。

前半がクラス授業で、後半は選択授業でした。私のクラスはEJU記述です。といっても、EJU記述ができるのは今週と来週だけです。再来週・11月4日は文化の日の振り替え休日、EJU本番が10日(日)ですから、その翌日の11日(月)は、十日の菊です(何じゃこら)。

私のこの授業を受ける学生は、1回はEJUを受けている学生たちですから、こまごました話は抜きに、記述で満点を取るポイントをかいつまんで話しました。そして、練習問題に取り組んでもらいました。

問題をモニターに映し出し、さあ始めましょうとなったのですが、Cさんの手がひょろひょろっとスマホに伸びました。そして、操作しはじめるではありませんか。すぐさま注意しました。その数分後、Wさんもスマホをいじり始めたので、これまた即座にやめさせました。

確かに、事前にスマホを使うなとは言いませんでした。でも、そんなの常識以前ではありませんか。EJUまで2回しかないことは学生に告げ、だから今まで以上に本気で臨まなければならないのに、このざまです。論理性が第一で、漢字をひらがなで書いても減点にはならないと言いましたが、心配なのでしょうか。Cさん、Wさんの文章は、漢字よりも論理性を心配すべき内容でした。

本番ではスマホをかばんの中にしまわせるでしょうが、なんだか心配になってきました。こっそり机の中かポケットに入れておいて、いつもの癖でうっかり手を伸ばしてしまったりしたら、一発アウトですからね。

「話せる」とは

10月17日(木)

受験講座終了後、TさんとLさんの面接練習をしました。2人とも、先週も面接練習をしましたが、台風の影響で試験が延期になり、今週末に面接試験を控えています。ですから、実質的にこれが最後の練習です。

TさんもLさんも、しゃべりすぎです。面接官からの質問にあれもこれも何でも話そうとして、自分でも言わんとするところがわからなくなり、自滅していました。「どうして〇〇学部で勉強したいんですか」という質問に、放っておくと3分も演説しちゃうんです。Tさんなんか生い立ちから話が始まり、志望理由にたどり着くころには、こちらはメモを取る気もなくしていました。これでは、肝心のことが面接官に伝わりません。Lさんも例として挙げた事柄を事細かに説明し始め、そちらに熱中してしまい、「あなたがやりたいことは人まねですか」となってしまいました。

日本人だって、原稿なしで3分間理路整然と話すことは難しいです。ましてや、日本語が外国語の留学生たちが3分間も話し続けたら、本筋が見えなくなることぐらい、想像に難くありません。教師が書いた原稿を丸暗記すれば、“3分間理路整然”も可能かもしれません。でも、入試の面接でそれをやったら、一発アウトでしょう。

また、3分もしゃべっていれば、ねじれ文が続出し、文法や語彙の間違いも増え、日本語力もかえって低く評価されてしまうかもしれません。。コミュニケーションは双方向的なものなのに、一方的に話し続けれたらコミュニケーション能力や協調性も怪しまれかねません。

ですから、2人には、「最長30秒」と指示しました。そうなると、生い立ちも例もばっさりカットです。2人とも不満そうでしたが、30秒の答えは結論が明確になり、論旨が伝わってきました。この勢いで、合格をつかみ取ってもらいたいです。