Category Archives: 学生

ディベート第一歩

5月16日(火)

私のクラスでディベートに挑戦しました。上級の入口のクラスですから、本格的なディベートにはならないだろうと思っていましたが、私の想像よりはよくできました。敢闘賞はあげていいと思います。

自分の意見の主張は、まあまあできていました。チームで相談して内容をまとめますから、当然と言えば当然でしょう。テーマも、「中間・期末テストを廃止することに賛成/反対」という、昨日受けたばかりの中間テストがかかわっていましたから、自分事としてとらえられたのではないかと思います。でも、チームで話し合って決めた主張をそのままぼそっと言っただけというのは、いただけませんでした。

相手チームの主張に対する質問・反論は、各チームのエース級が登場してきましたから、結構厳しい意見も出てきました。ただし、エース級の学生だからこそできたという面は見逃せません。自分の担当ではないと思っていた学生の中には、ボーッとして相手の主張を聞いていたやつもいました。また、その反論に対する反論、質問への解答が貧弱だった点が残念でした。

要するに、相手の話をよく聞いたうえで、それに対応して自分が何か発言するというところがまだまだなのです。話すことはできても、相手の意見をしっかりと受け止める聞き方ができていません。これが、このクラスの学生の課題だということが非常に明瞭になりました。確かに、上級だからこのくらいの日本語は通じるだろうと思って話しても、うなずく割にはさっぱりわかっていないということがよくあります。

来週も、また挑戦してみます。どうやったら、「聴く」ことができるようになるか、私にとっても大きな課題です。

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久しぶりのご対面

5月15日(月)

中間テストの試験監督のクラスには、先学期受け持っていた学生が何名かいました。1つ下のレベルから、順調にというか年功序列式にというか、まあ、とりあえず進級した(させた)学生と、もう1つ下のレベルから飛び級的に進級した学生が在籍しています。正直に言うと、飛び級組の学生の方がよくできます。先学期のクラスでの様子で言うと、勉強に対する意欲が違いました。

さて、テストが始まると、やっぱり飛び級組のほうがスラスラと問題を解きます。とりあえず組は、頭を抱えて動かなくなってしまったり、さっさとあきらめて提出したりと、採点するまでもなく、担任のK先生の頭痛の種となることは明らかです。飛び級組は、スラスラ解くばかりではなく、じっくり考えるべきところは時間をたっぷりかけて、結局試験時間いっぱいまで粘っていました。これも意欲の違いでしょう。

このクラス、自分が送り込んだのが“???”な学生たちでしたから、果たしてクラスが成り立っているか心配でした。でも、試験監督としてクラスに入ってみると、飛び級組のほかに奨学金面接で好印象だった学生や、新入生のオリエンテーションで光っていた学生や、よくできると噂の学生もちらほらいて、教え甲斐のありそうなクラスだなと感じました。となると、“???”な学生たちはどうなのでしょう。

担当しているK先生やA先生に聞くと、案の定、クラスのお荷物になっているようです。この学生たちは、進学するつもりはあるのですが、それが学習意欲に結びついていません。適当に勉強していればどうにかなるだろうという考えがあるようです。そんな考えじゃ進学できないと先学期さんざん言って聞かせたのですが、新年度になったら時間に余裕ができたと思っちゃったのでしょうかね。1月期にまた受け持つのは、いやですよ。

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熱心差

5月12日(金)

中級クラスのTさんは、クラスで中ぐらいの成績の学生です。ちょっと油断するとすぐ赤点になってしまいます。Tさん自身もそれがわかっていますから、毎日必死に勉強しています。あらゆるチャンスを利用して力を伸ばそうと、授業中に書く例文にも、毎日の宿題にも全力を傾けています。だから、Tさんの例文や、宿題などの提出物を読むのは、私の秘かな楽しみです。

Yさんは、先学期話をする機会があったときには、K大学に入りたいと言っていました。滑らかとは言えませんでしたが自分の気持ちをきちんと話していましたから、4月に私のクラスの名簿にYさんの名前を見つけた時には、いっしょにK大学を目指そうと、期待と希望を抱いていました。しかし、その期待と希望はあっという間にしぼんでしまいました。授業中のやる気のなさが半端じゃありません。テストも毎回不合格だし、不合格だとわかっても挽回しようという様子が全く見られません。提出物を見ても、実に省エネ答案です。提出しろと言われたから、とりあえず何か書いて出しておこうという気持ちがくっきり浮かび上がっています。

Tさんの提出物は、こちらも本気で添削します。中くらいの学生ですから、クラスみんなの役に立つ“いい間違い方”もよくしてくれます。それは授業で取り上げて、こういうことを言いたいときはこういう表現をするんだよと、全学生に参考にしてもらいます。そんな時、ちらっとTさんの顔に視線を向けると、私の板書を必死書き写しつつも、心なしか誇らしげな表情をしています。Yさんのおざなりの答えには、議論できるような間違いなどあろうはずがありません。

週明けは中間テストです。Tさんは自習室で苦手の漢字の書き取りを練習し、ノートや返却された宿題などを見ながら文法の復習もしていました。Yさんは何をしていたんでしょうかね。

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原子の世界

5月11日(木)

物理の時間は原子物理を扱いました。ニュートン力学が通用しない世界だという点でわかりにくいことは確かですが、EJUでは毎回1問、やさしい問題が出されます。単純に式に数値を代入すれば答えが出てくる問題や、ある公式さえ知っていれば簡単に答えが見つかる問題などが多いです。力学や電磁気学に比べれば点が取りやすいです。ただ、最後の問題ですから、1番から順に問題を解いていくと、原子物理の問題のころには時間がなくなっているかもしれません。それゆえ、問題は易しくても、時間切れで問題を解くに至らなかったという例が多いようです。もったいない話ですね。

だから、一通り話が終わった後、過去問からピックアップした原子物理の問題集を渡しました。これをやってみて問題の易しさが実体験できれば、EJU本番で最後の問題を最初にするくらいの知恵を回してくれるのではないかと期待しています。解ける問題を解かなかったなんて、点数をどぶに捨てるようなものです。

そういう指導をしつつ、どこか何か間違っていると感じています。どうせ1問なんだからと、説明を端折りました。式の誘導をすると面白いのにと思いつつ、結論だけ示して「これ、覚えといて」とやってしまいました。また、この分野はノーベル賞の宝庫ですから、その方面に話を広げても手に汗握る展開になるのに…。でも、学生たちは目前に迫る6月のEJUに照準を合わせていますから、こちらもそのつもりで授業を進めなければなりません。与太話は、来学期に回しましょう。

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授業後

5月10日(水)

文法テストがありました。昨日もありましたから、2日連続です。昨日のテストが難しかったからでしょうか、朝、教室に入ると、みんな教科書を開き、自分が書いて先生に添削してもらった例文ノートを見ていました。いつものようにおしゃべりしている学生はいませんでした。張り詰めた空気を吸い込むと、肺に針が刺さるような感じすらしました。

授業を急ぎ気味に進めて20分ほどの時間を作り、昨日のテストを返却し、ざっと解説を加え、間違いを直す時間を与えました。学生からの質問に答えたり、学生が間違いを正しく直せたかどうかチェックしたりしていたら、あっという間に終業のチャイムが鳴りました。いつもならここでさっさと職員室に戻ってしまうのですが、成績優秀なごく一部の学生が帰っただけで、大半の学生が残っている教室を後にすることはできません。

学生たちは教科書を読まなくなったなあと思いました。「どうしてこれはダメなんですか」と学生に聞かれた文は、すべて似たような例文が教科書に載っていたり、教科書に“こういうことはしてはいけない”と注意書きがしてあったりしていました。その部分を示すと、学生たちは「そんなルールいつできたんだよ」と言わんばかりのびっくりした顔を見せました。それの繰り返しでした。

学生たちは、授業中に練習して、これで身に付いたと思うと、安心し過ぎて油断してしまい、かえっていけないみたいです。練習が中途半端だったんでしょうかね。来週の月曜日が中間テストですから、軌道修正の最終チャンスです。こちらも気合を込めて指導しなければなりません。

職員室に戻ったら1時過ぎ。1時半からは次のお仕事が待ち構えていました。

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ちょっとした隙に

5月9日(火)

会話の授業で、連休中にどんなことをしたか聞きました。本栖湖へ行ったとか、かつてのホストマザーを訪ねたとかという学生は滑らかな日本語で私の問に答えてくれました。一方、ずっと勉強していたとか、ゲームばかりしていたとかという学生は、たどたどしい日本語に戻っていました。大遅刻で入室したEさんに至っては、遅刻の理由を聞くと、「アラームが起きませんでした」と意味不明の回答をしてくれました。Eさんも連休中は引きこもり状態だったそうです。たった1週間足らずですが、日本語から離れてしまうと、こうもできなくなるものかと驚かされました。

それでも、“友達から連休中の様子を聞き出す”という課題を与えて、強引に会話の授業を進めました。最初は調子が出なかった学生も、スマホの写真を見せたり見せてもらったりしながら、自分の連休を語ったり友達の話にツッコミを入れたりするほど復活してきました。日本を離れていたTさんも、連休の思い出話で友達を笑わせたり感心させたりしていました。

その一方で、Yさんのグループは黙り込んでしまいました。あまりに話が弾まないので、私が話の接ぎ穂を拾い出して学生に渡すのですが、教室をぐるっと回ってまた来ると、またみんなでスマホをいじっています。Yさんは国にいる恋人と毎日長電話、Sさんはひたすら勉強、Cさんはアルバイトでしたが使う日本語は限られていた、という調子で、日本語でコミュニケーションをとる生活は送っていませんでした。

毎日学校に通って直接日本語に触れることで保たれていたバランスが、この連休で日本語じゃない側に大きく傾いてしまったようです。“日本語学校の存在価値を改めて感じた”などとのん気なことは言っていられません。すぐにどうにかしないと、このクラスの学生は悲惨な運命に襲われるでしょう。

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かぶととこいのぼり

5月2日(火)

毎年のことですが、5月5日は祝日なので、連休直前の5月2日に端午の節句の行事をします。今年の特色は、教室で兜を折ったことです。端午の節句のリーダーが兜の折り方のpptを用意してくれましたが、やはり実演するに限ると思い、今朝は出勤して最初の仕事として、兜の折り方を復習しました。

兜なんて、何十年も折っていませんから、果たしてうまく折れるだろうかと心配していました。しかし、折ってみると指先が自然に動きました。自転車に乗るのと同じで、体が覚えているものなんですね。少し自信を持って授業に臨みました。

さて、本番です。学生に折り紙を配って、実演を始めました。その直前の授業までやる気があまり感じられなかったJさんやYさんも、pptと私の実演とを見比べながら、けっこう本気になって折っているではありませんか。学生たちにとって難しかったのは、兜の前立てを折り出すところでした。三角をきっちり半分に折ってしまって、前立てが目立たなくなってしまった学生が何名かいました。先っぽが外に出るように折るんだよと、目の前で折って見せて、学生にやらせました。どうにか、全員兜らしく折れました。

6階の講堂には、毎年のごとく、5月人形が飾り付けられていました。教師の役目は、その人形の解説です。弁慶がいましたから、弁慶の泣き所なんていうのまで教えちゃいました。学生たちと同年代の日本の若者は、そんな言葉は使わないかもしれませんが…。

最後は、校庭に飾られたこいのぼりを見上げました。ビルに囲まれて、いかにも池の中の鯉という感じですが、首を直角に曲げれば青空を泳ぐ鯉に見えないこともありません。

今年は柏餅なしでしたが、学生の心に何か残せたでしょうか。

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秩父は初夏

4月28日(金)

西武池袋駅の特急ホームに入線したラビューは、黄色のシートも印象的でしたが、それ以上に窓のカーテンの大きさに度肝を抜かされました。一般住宅のベランダの出入り口に掛かっているカーテンを一回り小さくしたくらいで、とても電車の窓の日よけとは思えない大きさでした。

天気が良かっただけに、大きな窓からは日差しもたっぷり降り注ぎましたが、カーテンを使う学生はあまりいませんでした。左手前方に富士山が見えると案内すると、右側席の学生も体を乗り出して見ようとしていました。

横瀬駅からは、歩いて羊山公園へ。途中の景色は、ザ・日本の田舎というべきのどかさで、レンズを向ける学生もちらほらいました。ちょっと距離があるかなと思いましたが、学生たちはおしゃべりしながら歩き続けました。

羊山公園の芝桜は、ネットに書き込まれていた通り、盛りは過ぎた感じでしたが、私の目にも学生の目にも、十分美しく映りました。ネット情報を知らなかったら、もっと感激に浸れたかもしれません。

お昼を食べて芝生に寝転がったら、本気で眠ってしまいました。芝生の丘の適度なカーブが背筋を伸ばすのに持って来いで、それがとても心地よい刺激になりました。

それから、市街地に下りていきました。かなりの急坂もありましたが、そこからは街並みが手に取るように見えました。絶景に引き寄せられた学生が道を渡るのにちょっとヒヤッとしました。私たちと同じく芝桜を見に行く車が結構ありましたから。どうということはない住宅地を抜けて、秩父神社へ行きました。

秩父神社は左甚五郎の彫刻があり、日光東照宮と同じく極彩色に塗られていました。色が鮮やかすぎるとありがたみが薄れてしまうというのは、私のひがみ根性のせいでしょうか。学生たちは、彫刻を見上げては感心したような表情であれこれ友だちと語り合っていました。

神社と言えばおみくじと絵馬です。何度もおみくじを引いて先生にたしなめられたり、引いたおみくじの意味を先生に尋ねたり、そのおみくじをどこに結べばいいか聞いたり、絵馬の願文をじっくり読んだり、まあ、いろんな学生がいました。

西武秩父駅で解散でしたが、行きで味を占めたのか、ラビューで帰ろうという学生がおおぜい特急券販売機の前に並びました。一時はどうなることかと思いましたが、希望の学生を全員飲み込み、他のお客さんもみんな乗せて、定刻に出発していきました。電車の収容力は大したものです。

夕方になっても、肌寒さは感じませんでした。秩父は、もう初夏です。

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明日、特別授業実施???

4月27日(木)

昨日のクラスでやった文法テストを採点しました。満点に近い学生もいれば、合格点にはるかに及ばない学生もいました。始業から半月余り、学生間の学力の差を感じつつありましたが、それを点数という形で明確に見せつけられました。私が感じている学生の実力とテストの成績には、強い相関関係があります。

当たり前の話ですが、宿題をきちんと提出し、教師の話をしっかり聞き、授業中にちゃんと練習し、疑問点をうやむやにしない学生が、高得点をあげました。指名されても、今どこをやっていて、何を答えていいのかわからないような学生は、不合格の海底に沈みました。

文法の時間には必ず例文を書かせますが、自分の頭で考えて書いている学生はテストでも堂々〇の例文を書いてくれました。形式だけまねたいい加減な例文ばかり提出してきた学生は、微妙に何か違う文を並べていました。それにとどまらず、初級で既習の文法や語彙を間違えて減点を重ねています。この結果を見て、自分の足りないところに気づいてくれたらいいのですが、そういう学生に限って、返却されたテストを机の中に置いたまま帰ってしまったりするんですよね。

明日の秩父旅行は、このクラスを引率します。秩父までの電車内ではあれこれレクリエーションを企画していますが、この答案を見てしまうと、問題学生を集めて特別授業をしたくなってきました。芝桜を見たり銘仙に感心したりおいしいものを食べたりしていてる暇なんかないんじゃないかな。だって、そういう学生でも、来年の4月には大学や大学院に進学するつもり満々なのですから。

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ピョウをください

4月26日(水)

今学期の学校行事・秩父旅行があさってに迫ってきましたから、私のクラスでは朝からテストを2つこなして、その後、旅行の説明をしました。遅刻や欠席がおおぜいいたらいやだなあと思っていましたが、今朝はYさん1名だけでした。

今回の旅行は、今までのバス旅行とは違って、電車旅行です。去年の川越も電車で行きましたが、現地集合でしたからみんなばらばらに行き、、電車旅行という雰囲気ではありませんでした。しかし、今回は池袋から特急ラビューで行きます。乗った瞬間から旅行です。川越へ行き時に乗った通勤型電車とは、高揚感も違うはずです。

でも、それにまつわる注意事項も増えました。まず、電車は絶対に待ってくれません。バスなら出発時刻に多少融通をつけてくれますが、電車はその点シビアです。下車駅でもそうです。短い停車時間の間にてきぱき動いて降りなければなりません。だらだらでれでれ動いていたら、各方面に迷惑が掛かります。

学生たちには当日の乗車券を配りました。外国人専用の(だから、教職員は対象外)、西武線全線が乗れるチケットです。その説明をし、絶対忘れるなと注意しました。ラビューの座席指定券も渡しました。現地に着いてからは原則クラスごとの行動ですから、そこでの注意もしました。

そこまでで、前半の授業が終わってしまいました。1階の職員室に引き上げようとしていたら、説明の時にいなかったYさんが来ました。「Yさん、どうしたんですか」「先生、すみません。寝坊しました」と、予想通りの遅刻理由。そのすぐ後に、「先生、ヒョウをください」とYさん。Yさんの言いたいことはわかっていましたが、「ヒョウ?」と聞き返しました。「電車のヒョウです」「電車のヒョウって何ですか」「…ピョウ」「電車のピョウ?」とさらに聞き返すと、Yさんは口頭での説明をあきらめ、指で四角を描きました。

「ヒョウでもピョウでもいいですが、それは日本語で何ですか」と聞くと、Yさんは黙ってうつむいてしまいました。“チケット きっぷ”とホワイトボードに書きました。“ヒョウ”とは“票”であり、“ピョウ”のほうが原語音に近いのです。Yさんの思考回路が中国語で回っていることが、はっきりわかりました。

それにしても、心配です。あさって、Yさんはラビューに乗れるのでしょうか…。

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